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2005/08/18

電気軽自動車の実用化は近いか

NIKKEI NETの記事(8/18)。富士重、軽の電気自動車を初公開

 富士重工業は18日、高性能のリチウムイオン電池を活用した軽の電気自動車の試作車「スバル R1e」を初公開するなど環境技術への取り組みについて発表した。

 自動車各社は低公害車の開発にしのぎを削っているが、竹中恭二社長は「家庭で一晩で充電できるようになれば、電気自動車は一定の地位を得るだろう」と述べ、ハイブリッド車や燃料電池車などの技術で先行するトヨタ自動車などに、独自の電池技術を駆使して対抗する姿勢を見せた。

 リチウムイオン電池は、富士重とNECとの合弁会社「NECラミリオンエナジー」が開発。5分間で90%の充電ができ、電池は交換せずに15万キロ以上の走行が可能という。

 また富士重は、リチウムイオン電池などを用いた独自のハイブリッド車を2007年度に試験的に市場に導入する方針も明らかにした。

ということだが、この記事では自動車の性能がよくわからない。調べてみると、1週間前(8/11)のNIKKEI NETに、富士重、次世代型電気自動車を09年メド商品化という記事が載っている。
 富士重工業は高性能のリチウムイオン電池を搭載した次世代型の電気自動車を開発した。軽乗用車ベースで走行コストをガソリン車の8分の一にまで抑えることができる。年内にも公道で実用試験を開始、2009年をメドに商品化する。富士重はエンジンとモーターを併用するハイブリッド車や燃料電池車の開発で後れをとっているが電気自動車で巻き返しを図る。

 富士重が開発したのは軽乗用車「R1」に、NECとの共同出資会社「NECラミリオンエナジー」で開発した高性能リチウムイオン電池と駆動用モーターを搭載した電気自動車。ガソリンを使わないため二酸化炭素排出量はガソリン車の半分以下となる。走行コストも低価格の夜間電力を使えばガソリン車の8分の1、ハイブリッド車の5分の1で済むという。

ということで、ランニングコストもCO2排出量もなかなか頑張っているし、自動車本体の値段次第では結構魅力的なのではないだろうか。一方、YOMIURI-ONLINE(8/18)には、家庭で充電できる電気自動車、2008年発売へという記事が載っている。こちらは三菱自動車の話で、
 三菱自動車と東京電力が、家庭のコンセントで充電して走る次世代電気自動車の開発と普及に向けて提携することが18日、明らかになった。

東電は電気自動車への充電や蓄電池の技術などを提供し、三菱が開発中の小型電気自動車「MIEV(ミーブ)」の商品化を後押しする。三菱はこれにより開発期間を短縮し、ミーブの発売時期を当初予定の2010年から08年に前倒しする。3年後には1回4時間程度の充電で250キロ・メートル走れる軽自動車クラスの電気自動車が、200万円以下で市販されることになりそうだ。
(中略)
 三菱は提携で充電関連技術の開発費負担も少なくできる。電気自動車の充電は夜間が主流になると見られるため、東電も余り気味の夜間電力の需要先を確保し、原子力発電所で発電した電力を有効活用できる。夜間の電力で充電した場合、電気代はガソリン代の10分の1程度で済むという。東電以外の複数の電力会社も次世代電気自動車に関心を示しており、今後、他の電力会社が提携に合流する可能性もある。

 三菱は次世代電気自動車を、年末にも発売予定の軽自動車「i(アイ)」をベースに開発する考えで、街中など近距離の利用が多い主婦などの女性層を主なターゲットとし、新市場の開拓を狙う。東電は家庭用コンセントを簡単に改造する技術なども研究する。

ということで、こちらは電気代が1/10とスバルよりも更に安く済みそうだ。この前、電気八輪車エリーカのことを書いたが、あんなモンスターマシンは別として、むしろこの手の軽電気自動車の展開が面白そうだ。燃料電池自動車の実用化にはまだまだ課題が多いのに対して、比較的短距離の市街地走行を主とする用途には電気自動車が向いているように思える。何といっても、インフラ整備にそれ程大きな投資が不要のようだし、技術的な実現可能性やコスト面のハードルも低そうだ。

ランニングコストがガソリン車の1/10だとすると、どれだけ走るとペイするのだろう? 現行の軽自動車の価格を90万円、燃費が20km/L、ガソリン価格を120円/Lとし、電気自動車の価格を200万円、燃料コストをガソリン車の1/10と仮定すると、
 (2000000-900000)÷(120÷20×0.9)= 203704 km
ということで、20万km走ると元が取れることになる。しかし、冒頭の記事によると電池の寿命は15万kmということらしいので、ペイするのはもっと長距離の走行が必要のようだ。もう少し頑張ってコストダウンするか、ガソリン価格の高騰が必要ということになる。

もっとも、現在のガソリンにはたっぷりと税金が掛かっているわけだから、もしも電気自動車がそれなりに普及したら、電気自動車用の電気には特別な課税をするなんてことも考えられなくもないが。。


ところで、SUBARUのニュースリリースを見ると、この電気自動車のニュースは何故か掲載されていないのだが、代わりに「ターボパラレルハイブリッド」と「リチウムイオンキャパシタ」についてのリリースが載っている。このリチウムイオンキャパシタというのが気になる。

リチウムイオンキャパシタは、従来のキャパシタの特長である大容量の電気を瞬間的に充放電できることや耐久性の高いことを生かしながら、課題であるエネルギー密度を飛躍的に増大させたものである。このリチウムイオンキャパシタは、負極にリチウムイオンを吸蔵する新開発の炭素材料を、電解質にリチウムイオンを、それぞれ使用し、あらかじめ負極にたくさんのリチウムイオンを吸蔵させる“プレドーピング”とよぶ手法により、負極の容量を増大させるとともに電位差を高め、正極の性能劣化を起こさずに高電圧を取り出すことを可能としている。

さらに、リチウムイオンキャパシタの原理は、最近のキャパシタの研究による大容量化のための新材料を正極に使用し、リチウムイオンキャパシタと組み合わせることで、理論上想定の容量のさらに倍の性能を引き出すことができる汎用性の高さも有している。

現在、試作セルによる性能確認を進めているが、将来、小型の自動車用リチウムイオンキャパシタを実用化すれば、バスやトラックなどの大型車のみならず乗用車などのハイブリッド車の需要や、一般的な鉛電池の代替需要にも応える可能性をもち、環境技術のひとつとして社会貢献が期待できる。

ということだが、調べてみても今年の電気化学会のシンポジウムぐらいしか情報が見当たらない。今後の注目アイテムかもしれない。

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コメント

FujiSankei Business i の8/19の記事、http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200508190012a.nwc">充電5分で走行距離200キロ 富士重工の電気自動車によると、

 自動車は始動時に瞬間的に多量の電気を使用するため、通常は鉛蓄電池を搭載している。試作車は、この鉛蓄電池に代えて新開発したリチウムイオンキャパシタを搭載した。キャパシタは、化学反応で電気を貯蔵する蓄電池と異なり、瞬間的に多量の電気を出力できるが、蓄電量が小さいのがネックだった。

 新開発したキャパシタは、リチウムイオン電池と従来のキャパシタの長所を取り入れて蓄電量を従来品の四倍に高めた。この新キャパシタ技術は特許を取得済みだ。

とあり、この電気軽自動車にリチウムイオンキャパシタが使われているではないか。この電気自動車が5分で充電できる秘密はどうやらこのキャパシタにあるようだ。

投稿: tf2 | 2005/08/19 18:42

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