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2005/08/05

サイコロ状のシリカ結晶

Yahoo!ニュース経由の共同の記事(8/5)。天王星の“水晶”は立方体 300万気圧再現で実証

 天王星や海王星の内部の深い場所では、二酸化ケイ素の結晶が地球上で一般的に見られる水晶のような6角柱状ではなく、サイコロ形(立方体)をしていることを、東京工業大の広瀬敬・助教授らのグループが高温・高圧環境を再現する実験で突き止め、5日付の米科学誌サイエンスに発表した。

 両惑星の核にある結晶が立方体をしていることは、1980年代に理論的に予想されていたが、実証したのは「今回が初めて」(広瀬助教授)という。

 赤道半径が2万5000キロ前後の両惑星は、外側から順に水素やヘリウムのガス、水やメタンの氷で覆われ、深さ8000-1万2000キロ付近から中心にかけ、二酸化ケイ素などを含む核があるとされる。

 この場所と同じ約300万気圧は、これまで実験室で再現された最大圧力の2倍以上だが、グループは、カットの仕方を工夫したダイヤモンドで二酸化ケイ素を挟むことにより実現に成功。

記事のタイトルの“水晶”はきれいな石英のことを指すのであって、この場合には“シリカ”とか“二酸化ケイ素”が正しい、という指摘はともかくも、結晶形状が立方体であることがわかったのか? 結晶構造が立方晶であることが分かったということではないのだろうか?

探してみたら、YOMIURI-ONLINEでも記事になっている。天王星や海王星の核を作る鉱物の合成に成功

 海洋研究開発機構などの研究チームは、天王星や海王星内部の核を作る鉱物を合成するのに成功した。
 (中略)
 この状態の試料を、大型放射光施設スプリング8で分析したところ、「パイライト型」と呼ぶ立方体の結晶構造を持つ新しい鉱物に変化したことがわかった。
 (中略)
 同機構地球内部変動研究センターの広瀬敬・研究員は「水晶は高温高圧でサイコロ状の鉱物に変わった。実験条件よりも高温高圧で、鉄などでできている地球の核も再現したい」と話している。
研究者の広瀬さんの所属が先の記事では東京工業大学だったのに、こちらでは海洋研究開発機構になっているんだな。。 「立方体の結晶構造を持つ新しい鉱物」という表現も微妙だけど、研究者のコメントで「サイコロ状の鉱物」と書いてあるから、実際に立方体の結晶が得られたのかな?

海洋研究開発機構のプレスリリースには、装置や結晶の写真が掲載されているが、

研究グループは、大型放射光施設(SPring-8)の強力X線を用いたX線回折法によってシリカの相転移の解明を進めた結果、270万気圧以上の圧力で、パイライト型と呼ばれる新鉱物を発見した。この新鉱物の安定圧の範囲は、ガス惑星深部に相当する。

 特に、天王星・海王星の核はこのパイライト型のシリカから構成されている可能性が高い。

 シリカ鉱物は常温常圧では石英(水晶)として知られており、水晶は六角柱状の結晶である。一方、パイライトはサイコロ状の鉱物である。

 今回の結果は、六角柱状の水晶に高い圧力、高い温度をかけていくと、サイコロ状の鉱物に変化することを示している。

とあり、スプリング8に高圧装置を持ち込んで、高温高圧下でin-situで構造解析をした結果、立方晶のパイライト型構造であることが確認されたということのようだ。でも、その状態で結晶の形状まで確認されたんだろうか? 何故か「サイコロ状の鉱物」という表現にこだわっているようだけど。。

共同の記事にあった「カットの仕方を工夫したダイヤモンド」はプレスリリースでは「ブリリアントカットされた宝石用の2つのダイヤモンドの先端同士を向き合わせて、その間に実験試料を挟んで加圧」とある。何故、わざわざブリリアンカットなんて複雑な形状を選んだのだろう? この写真を見ると、確かにブリリアントカットされているな。面白い。。 (参考

シリカの多形についてはKato's Collectionの解説がとても充実している。

太陽系惑星の内部構造については、水星、金星、地球、月火星、木星、土星天王星、海王星、冥王星にまとまっている。天王星や海王星は、表面はガス惑星だけど、中心には固体状態の岩石の核があったんだな。

サイエンスの記事
Science, Vol 309, Issue 5736, 923-925 , 5 August 2005
"The Pyrite-Type High-Pressure Form of Silica"
Yasuhiro Kuwayama, Kei Hirose, Nagayoshi Sata, Yasuo Ohishi

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コメント

http://ja.wikipedia.org/wiki/ブリリアントカット
ここをみると
いくつかの種類があるが、すべて58面体(下面の面取りをしない場合は57面体)で、上部から進入した光が全て内部で屈折して上部から放たれるように設計されている。
とあるのでそこらへんが関係してるのではないかと。細かい事はわかりませんがw

投稿: xtc | 2005/08/08 04:33

xtcさん、コメントありがとうございます。

んーと、どうでしょう? ブリリアンカットされた宝石が、キラキラと輝いて見えるのは、確かにこの性質によるもので、宝石の外側のいろんな角度から光が入ってきても、正面のテーブル面から光が出てくるってことですよね。(http://www.kei-j.com/kagaku2.htm" target="_blank">参考)

でも、今回の場合には、テーブル面に対して垂直に光(レーザーやX線)を入れて、テーブル面から垂直に出しているようなので、回りの多くのカット面は何の役にも立っていないように見えるんですけど。単に巨大な圧力を1点に集中させるためなら、単純な円錐台形でもいいのではないかと思ったのですが。 もしかして、わざわざダイヤモンドを特別な形状にするより、市販のカットされたダイヤモンドを買ってくるほうが安いなんて理由なのかな? とも思ったりもしています。。

投稿: tf2 | 2005/08/08 19:01

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