AGGIという新たな地球温暖化ガス指標
YOMIURI ONLINEの記事(9/28)から。温室効果ガスの温暖化への熱効果、90年の1・2倍
二酸化炭素などの温室効果ガスが地球全体の温暖化に与える熱効果が1990年の水準の1・2倍に増加していることが米海洋大気局の最新分析でわかった。「温室効果ガスが地球全体の温暖化に与える熱効果」って何だろう? 「各温室効果ガスが気温を上昇させるエネルギー(ワット)に換算し、一つの指標としてまとめた」と言われても、やっぱり何だかわからないぞ。。 単に温室効果ガスの濃度が増加したのとは別に、何か新たな知見でもあったのだろうか? NIKKEI NETの温暖化ガス効果、90年以降で20%強まる・米海洋大気局によるとデータは、二酸化炭素やメタンなど15種類の温室効果ガスを米国本土やハワイ、南極などで過去25年間にわたって観測した結果について、各温室効果ガスが気温を上昇させるエネルギー(ワット)に換算し、一つの指標としてまとめた。
各年の傾向で見ると、2・8~0・8%ほどのペースで増加しており、鈍化することはあっても、減少に転じたことはない。温暖化防止のための京都議定書から離脱した米国では、今夏、カトリーナ、リタの超大型ハリケーンが襲い、インフラや経済などに深刻な打撃を与えたことから、今回の分析結果は、温暖化による異常気象と関連付けて報じられ、関心を集めている。
新たに開発した「温暖化ガス指標(1990年=1)」によれば2004年の温暖化効果は1.2。工場や発電所、自動車などから排出されるCO2の増加が上昇の主因で、フロンガスなど他の温暖化ガスの影響はあまり変わりがない。NOAAは新指標が「温暖化ガスの排出抑制に向けた取り組みの成否を測る目安になる」として毎年4月に公表する方針だ。ということで、米海洋大気局(NOAA)が新たな指標を開発したということのようだ。NOAAのサイトに、NEW INDEX PROVIDES BENCHMARK FOR ATMOSPHERIC GREENHOUSE GASES というニュースが載っている。これによると、この指標は "AGGI" (Annual Greenhouse Gas Index)という名称で、
The index relates the total radiative forcing since pre-industrial times (defined as the year 1750) from all the gases sampled in a given year to the corresponding measurements taken in 1990. The 1990 baseline was chosen because greenhouse gas emissions targeted by the international Kyoto Protocol also are indexed to 1990.各ガス成分の大気中濃度と温室効果への寄与から計算して求める「放射強制力」(radiative forcing)の1990年の数値を1.0とし、それに対する各年の比率を AGGI と定義しているようだ。各ガスの温室効果への寄与については、ここの説明文によると IPCC の radiative efficiency を使用しているらしい。Radiative forcing is the change in the balance between solar radiation coming into the atmosphere and Earth's radiation going out. Radiative forcing, as measured by the index, is calculated from the atmospheric concentration of each contributing gas and the per-molecule climate forcing of each gas.
それにしても、放射強制力は従来から使われている指標であり、決して今回NOAAが開発した指標とは言えないだろう(グラフに載っている単位(W/m2)や数値を見ても、従来からの放射強制力そのものと思われる)。 強いて言えば、1990年の放射強制力を1として、各年の数値を指標化したことだけが新しいところだ。。 でも、NOAAのリリースでは、過去・現在・将来の大気の温室効果を総合的に比較するための優れた指標を開発した、と自画自賛しているみたいだ。。
そもそも京都議定書の温室効果ガスの排出削減目標値は、メタン、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、6フッ化硫黄のそれぞれを、地球温暖化係数を用いて二酸化炭素に換算した数値を使用しているのだから、CO2以外のガスの寄与もきちんとカウントされているのにね。(目標数値の算定方法について参照)
まあ、アメリカは政府としては京都議定書から離脱してしまったものだから、アンチ京都議定書の立場から地球温暖化防止に取り組むためにも、京都議定書とは異なる新たな指標が欲しかったということだろうか? もっとも結局のところ、この指標の増加の主因は CO2の増加によるもののようだから、どういじってみても一緒のような気もするのだが。。
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