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2005/09/30

239回目の献血

前回8/24以来、37日ぶりの献血。今日もまた相模大野献血ルームで血漿成分献血。検査が右腕で献血は左腕、注射針を刺す位置もここのところずっと同じだ。さすがに、同じ位置ばかりが続くものだから、赤い跡が残っているような。。 もしかすると前回の跡を見つけて、そこを狙ってるんじゃないか、という気もしないではないのだが。。

おみやげとして用意されていたのは、Tシャツ、パックごはん、歯磨きセットと、特に目新しいものもなかったので、前回と色違いの紺色の献血Tシャツにした。まあ、おみやげ目当てに行くわけではないけれど、たまには新しいものがラインナップされるとうれしいかもしれない。。 あと、神奈川県独自の成分献血者ウィークデーカードのスタンプが10個たまったので、ミッフィーのタオル(こんな奴)をもらえた。

前回は夏休みで子どもたちが結構多かったけど、今日はうって変わって、何故か働き盛りの年頃の男性が多数待っていて、ちょっと異様な雰囲気だった。何だったんだろう?

献血はトラブルもなく無事に終了したし、献血ルームにも目新しいものはなく、今日のところは、特にコメントすることもないようだ。次回は気分を変えて、別の献血ルームに行こうかな。。

ところで、献血関連のネタを探す場合、けんけつ・どっと・こむあたりが参考になる。特に2ちゃんねる献血関連スレッド案内は献血マニアにとって非常に便利なリンク集だ。世の中に献血マニアがいかに多いかもよくわかるし。

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2005/09/29

温暖化の海への影響

昨日に引き続き、今日も地球温暖化関連ニュースが報道されている。お彼岸も過ぎて急に涼しくなったけど、温暖化のことも忘れないでね、というメッセージを込めて2件のニュースを無理やり1つのエントリにしてしまおう。。

asahi.com(9/29)のCO2増加で海水酸性化、サンゴ溶解も 研究チーム予測では、

 大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が現在のペースで増すと、海水の酸性度が上がって、50年後にはプランクトンやサンゴが溶け出し、生息海域が減り始めることを日米欧など8カ国の研究チームが予測した。29日発行の英科学誌ネイチャーに発表した。海の生態系全体に深刻な影響を与える恐れがあるという。
  (中略)
 現在の海水はpH(水素イオン濃度)が8程度の弱アルカリ性だが、水温が低くてもともとCO2が多く溶けている南極付近からアルカリ性の度合いが弱まり、50年後にはプランクトンの翼足類や、冷水サンゴの殻が溶ける海域が現れることがわかった。翼足類は世界中に分布する一般的な動物プランクトンで多くの魚種がエサにする。冷水サンゴは多くの魚種がすみかとする。これらが生息できない海域が100年後には南極海全体と北太平洋の一部に広がることがわかった。
というもので、このニュースは温暖化そのものの影響ではなく、大気中の二酸化炭素濃度の上昇の影響の話だ。以前、大気中の二酸化炭素を減らすために、二酸化炭素を回収して深海に捨てちまおう、というアイデアもあったようだけど、そう簡単にはいかないということか。海洋研究開発機構(JAMSTEC)のリリースには、Natureに載せたグラフが転載されており、なかなか興味深い。海水の酸性化が進むといっても、地球全体の海水が平均的に酸性化するわけではなく、ほとんど南極海にだけ顕著に現れるようだ。朝日の記事にあるように、水温が低いことが影響しているらしい。

この数値は過去数百万年なかったレベルとのことだが、過去のCO2濃度や海水のpHについては、岐阜大学のデジタル地球博物館の全地球史ナビゲータが参考になる。確かに、数千万年前には相当CO2濃度が高かったようだが、それ以降は海水のpHも比較的高い数値で安定している。この先わずか100年間で急激にpHが低下したら、さすがに適応できない生物も出てくるだろう。

もっとも、大気中のCO2濃度が増加した時の海水への溶解量は計算できそうだけど、実際には海底からのアルカリ分の溶出とか、温暖化による海水温度の変化とか、それに伴う海流の変化や氷の溶解に伴う塩濃度の変化だとか、いろいろと複雑な要素を考える必要がありそうだ。どこまでモデルに組み込んでいるんだろう? リンク先を探してみたら、Natureの論文の全文がこちらに転載されているので読めるようだ。

もう1件はYOMIURI ONLINEの今世紀末、北極海から氷消滅?ホッキョクグマ絶滅危機

米国立雪氷データセンター(コロラド州)と米航空宇宙局は28日、衛星観測の結果、今月の北極海の海氷面積が観測史上最低を記録したと発表した。急速に融解が進んでいるという。

 9月期の海氷は、これまで、年ごとに増減を繰り返しながら、10年あたり約6~7%のペースで減少してきた。今年は昨年に続いて面積が大幅に減り、過去最低を記録した2002年をさらに下回る約530万平方キロにまで落ち込んだ。10年間の減少率は約8%にまで上昇した。

 地球温暖化の影響に加え、太陽光の反射率が高い雪氷が減少することで熱の吸収量が増え、融解に拍車をかけていると考えられている。この状態が続けば、今世紀末までに夏季の北極海から氷が完全に消失する可能性があり、氷上を狩りの場とするホッキョクグマなどの絶滅が危惧(きぐ)されている。

というもので、こちらは地球温暖化の直接の影響というか証拠となるのだろうか。

これについては、米国立雪氷データセンターのリリースが出ていて、ここ数年の北極の氷の量の変化のグラフも掲載されている。一方、NASA のNewsでは、衛星写真での氷面積の比較やアニメーションが見られるのでわかりやすい。

もっとも、21世紀末の時点で、地球温暖化の影響の中でホッキョクグマの絶滅がどの程度重要な問題となっているのかは疑問だろう。(他にもっと深刻な問題があるだろうに。。) この問題は何といっても地球のアルベドが低下することによる温暖化への正のフィードバック効果が重要だろうと思われる。

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2005/09/28

AGGIという新たな地球温暖化ガス指標

YOMIURI ONLINEの記事(9/28)から。温室効果ガスの温暖化への熱効果、90年の1・2倍

 二酸化炭素などの温室効果ガスが地球全体の温暖化に与える熱効果が1990年の水準の1・2倍に増加していることが米海洋大気局の最新分析でわかった。

 データは、二酸化炭素やメタンなど15種類の温室効果ガスを米国本土やハワイ、南極などで過去25年間にわたって観測した結果について、各温室効果ガスが気温を上昇させるエネルギー(ワット)に換算し、一つの指標としてまとめた。

 各年の傾向で見ると、2・8~0・8%ほどのペースで増加しており、鈍化することはあっても、減少に転じたことはない。温暖化防止のための京都議定書から離脱した米国では、今夏、カトリーナ、リタの超大型ハリケーンが襲い、インフラや経済などに深刻な打撃を与えたことから、今回の分析結果は、温暖化による異常気象と関連付けて報じられ、関心を集めている。

「温室効果ガスが地球全体の温暖化に与える熱効果」って何だろう? 「各温室効果ガスが気温を上昇させるエネルギー(ワット)に換算し、一つの指標としてまとめた」と言われても、やっぱり何だかわからないぞ。。 単に温室効果ガスの濃度が増加したのとは別に、何か新たな知見でもあったのだろうか? NIKKEI NETの温暖化ガス効果、90年以降で20%強まる・米海洋大気局によると
 新たに開発した「温暖化ガス指標(1990年=1)」によれば2004年の温暖化効果は1.2。工場や発電所、自動車などから排出されるCO2の増加が上昇の主因で、フロンガスなど他の温暖化ガスの影響はあまり変わりがない。NOAAは新指標が「温暖化ガスの排出抑制に向けた取り組みの成否を測る目安になる」として毎年4月に公表する方針だ。
ということで、米海洋大気局(NOAA)が新たな指標を開発したということのようだ。NOAAのサイトに、NEW INDEX PROVIDES BENCHMARK FOR ATMOSPHERIC GREENHOUSE GASES というニュースが載っている。これによると、この指標は "AGGI" (Annual Greenhouse Gas Index)という名称で、
The index relates the total radiative forcing since pre-industrial times (defined as the year 1750) from all the gases sampled in a given year to the corresponding measurements taken in 1990. The 1990 baseline was chosen because greenhouse gas emissions targeted by the international Kyoto Protocol also are indexed to 1990.

Radiative forcing is the change in the balance between solar radiation coming into the atmosphere and Earth's radiation going out. Radiative forcing, as measured by the index, is calculated from the atmospheric concentration of each contributing gas and the per-molecule climate forcing of each gas.

各ガス成分の大気中濃度と温室効果への寄与から計算して求める「放射強制力」(radiative forcing)の1990年の数値を1.0とし、それに対する各年の比率を AGGI と定義しているようだ。各ガスの温室効果への寄与については、ここの説明文によると IPCC の radiative efficiency を使用しているらしい。

それにしても、放射強制力は従来から使われている指標であり、決して今回NOAAが開発した指標とは言えないだろう(グラフに載っている単位(W/m2)や数値を見ても、従来からの放射強制力そのものと思われる)。 強いて言えば、1990年の放射強制力を1として、各年の数値を指標化したことだけが新しいところだ。。 でも、NOAAのリリースでは、過去・現在・将来の大気の温室効果を総合的に比較するための優れた指標を開発した、と自画自賛しているみたいだ。。

そもそも京都議定書の温室効果ガスの排出削減目標値は、メタン、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、6フッ化硫黄のそれぞれを、地球温暖化係数を用いて二酸化炭素に換算した数値を使用しているのだから、CO2以外のガスの寄与もきちんとカウントされているのにね。(目標数値の算定方法について参照)

まあ、アメリカは政府としては京都議定書から離脱してしまったものだから、アンチ京都議定書の立場から地球温暖化防止に取り組むためにも、京都議定書とは異なる新たな指標が欲しかったということだろうか? もっとも結局のところ、この指標の増加の主因は CO2の増加によるもののようだから、どういじってみても一緒のような気もするのだが。。

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2005/09/27

ワールドソーラーチャレンジを知ってる?

Exciteニュース(9/27)から。第8回ワールドソーラーチャレンジ 世界のソーラーカーが豪縦断

日曜日、昆虫を思わせる形のソーラーカー22台が、オーストラリアの荒野に集合した。第8回ワールドソーラーチャレンジの開幕だ。

ワールドソーラーチャレンジは、オーストラリア北部のダーウィンから南部のアデレードまで3000キロ走破を競うソーラーカーレース。世界各国の企業や大学が開発したソーラーカーが参加している。芦屋大学の「芦屋スカイエースTIGA」が好調だ。

芦屋大学の中川邦夫教授によれば、TIGAは時速95キロを出すことが可能だという。

「第一の目標はレースを安全に終えること、第二の目標は上位3位内に入ることです」中川教授はオーストラリア国営放送ラジオで語った。

2001年と2003年の大会で優勝したオランダのチームも、「Nuna 3」で再び参戦している。その他、アメリカ、フランス、カナダなど10ヶ国からの参加があった。

Nuna 3は2003年に、30時間54秒の大会記録を出した。

先頭集団は今週半ばにアデレードに到着するとみられている。

このレースは、次世代のエネルギーと交通テクノロジー問題において革新的な存在であるソーラーカーの研究開発促進のために開催されている。

このニュースを見て最初に思ったのは、「ほー、まだやってるんだ。。」というもの。 というのも、最近ソーラーカーレースをTVで見ることはないけれど、10年程前はちょっとしたブームで、鈴鹿サーキットや大潟村のレース中継や、オーストラリアのソーラーチャレンジのドキュメントをTVで見た記憶がある。当時は大手自動車メーカーなどが積極的に参加していて、オーストラリアの大会でもホンダが優勝したはずだ。

そういえば、このレース関連の本を読んだことがあるなと思い、探してみたら 1994年に発行された

 光の国のグランプリ  ワールド・ソーラー・チャレンジ
 中部 博 著 (bk1amazon

という本が本棚にあった。10年以上も前に読んだものだから内容はあまり覚えていないけど。。

芦屋大学のソーラーカープロジェクトを見ると、この大学が1993年から10年以上も継続してソーラーカーの製作とレースへの参加を行っていることがわかる。今年のワールドソーラーチャレンジへの参加車は2000年に完成したSky Ace TIGAのようだ。

オーストラリアのワールドソーラーチャレンジ(WSC)の公式サイトを見ると2005 World Solar Challengeは、9/25の朝8時に北側の街ダーウィンをスタートし、南側の街アデレードまでの約3000kmを太陽光だけをエネルギーとして昼間だけ(午後5時まで)走り、4日程度でゴールする。本日(9/27:3日目)現在の成績は、Provisional Resultsによると、前回優勝の Nuna3がトップで、芦屋大学の Sky Ace TIGA は4番手のようだ。

前述の「光の国のグランプリ」を見ると、1993年の大会には14か国から55台が参加、日本からはホンダ、トヨタ、日産、京セラなどのメーカーと早大、東海大、芦屋大などの大学などから合計20チームも参加している。一方、今年のリストを見ると、全部で11か国、25台の参加のようだが、日本からは芦屋大学チームただ1台である。

日本人は熱しやすく冷めやすいのだろうか? それでも、こうして続けている芦屋大学は、それだけで偉い!と言ってあげたくなる。 「継続は力なり」だし、これだけ続けるとノウハウも蓄積され、伝統も生まれるんだろうな。。

今年の参加者を見ると、ほとんど各国の大学チームであり、ほぼ大学選手権という位置づけということのようだ。(調べた範囲ではレギュレーションには企業チームを排除する項目はなさそうだ。) まあ、自動車メーカーにとっては、ソーラーカーから得られるものには、今ではあまり魅力を感じられないってことだろうか。一方、次世代自動車として有望な電気自動車や燃料電池車については、学生主体の手作りレベルのレース(電気自動車燃料電池車)があるだけのようだ。この手のエコカーの技術レベルをアピールするには、そろそろ大手自動車メーカーが本格的に参加するようなレースがあってもよいのではないだろうか。

ちなみに、レギュレーションも変わっているようで大きさも違うし、恐らく掛けたお金も全然違うだろうけど、1996年大会で優勝したのホンダの新型「ドリーム」と、今年の芦屋大学のSky Ace TIGAの性能を比べてみると、9年前のホンダの性能(太陽電池、巡航速度など)がかなり優れていることがわかる。もっとも、昨年の優勝タイムが30時間54分に対し、1993年のホンダの優勝タイムが35時間28分なので、トップレベルの技術はそれなりに進歩しているようだ。

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2005/09/26

左利き女性は乳がんのリスクが倍?

washingtonpost.com(9/26)の記事、Breast Cancer, Handedness Could Be Linkedによると、

Are left-handed women at increased risk for breast cancer? A new study suggests that might be the case.

Cuno Uiterwaal of the University Medical Center in the Netherlands and colleagues examined the relationship between handedness and breast cancer in 12,178 healthy, middle-age women from Utrecht participating in a breast cancer screening study.

Between 1982 and 2000, the left-handed women in the study were more than twice as likely as right-handed women to develop breast cancer before going through menopause, the researchers found. The association held up even after the researchers took into account other factors, such as social and economic status, smoking habits, family history of breast cancer, and reproductive history.

ということで、要約すると、オランダで12178人の女性を対象に調査した結果、更年期前に乳がんに罹る割合は、先天的な利き腕が左利きの人の方が右利きの人と比べて2倍であった、ということらしい。これだけを見ると、右利き・左利きと乳がんの間に関係なんかあるわけがないじゃないの、これは偶然だろう、と考えたくなるのだが、この研究者が言うところによると
"The origin of the association may lie in intrauterine exposure to steroid hormones," they wrote in a paper published online yesterday by the British Medical Journal. Women exposed to the hormonal drug diethylstilbestrol, or DES, for example, when they were in the womb were more likely to be left-handed, they noted.
子宮内で女性ホルモン、例えばDES(ジエチルスチルベストロール)を多量に浴びると左利きになりやすいという傾向があるので、一方で女性ホルモンを多量に浴びると乳がんに罹りやすくなる傾向があるとすると、結果として両者に相関関係が現れる、と推定しているようだ。

Google Newsで探してみると、このニュースはWired Newsでも扱っているので、そのうち日本語訳が出てくるかもしれない。他の新聞記事も眺めてみたが、この研究結果に真っ向から反論する意見も出ているようで、真偽の程は定かではないようだ。

ところで、右利き/左利きの問題については進化論や社会学的な見地から多くの研究がなされているようだ。(参考:進化研究と社会左右と左利きについて考える本など) 例えば右利きか左利きは子宮の中で決まるというニュースは見つかったが、女性ホルモンが影響するという話は見つからなかった。

一方、この時期に子宮内で男性ホルモン(テストステロン)を多量に浴びると、薬指が長くなるという話がEP : end-pointに載っていた。そういえば以前どこかで、手の人差し指と薬指の長さを比べて、薬指が長い人は男性的というような話を聞いたことがあったが、一応こういう根拠があったんだ。。(手のひら側から見るよりも、手の甲側から見たほうが比較しやすい。)でも、男性が薬指を長くすることに何か進化論的な意味があるんだろうか? ここの記事によると、単に男性的か女性的かというだけでなく、文系/理系の傾向や同性愛の傾向などなど、色々と関係付けて考えられているようだけど、本当かいな?

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2005/09/23

「暗証番号はなぜ4桁なのか?」

コンピュータ関係のセキュリティに関する入門レベルの本である。非常にわかりやすい説明で、文体も軽く、具体例が豊富なので、あっという間に楽しく読み終えることができる。

光文社新書
 暗証番号はなぜ4桁なのか? セキュリティを本質から理解する
 岡嶋 裕史 著 bk1amazon

タイトルにある4桁の暗証番号の代表例は銀行のキャッシュカードだろう。本書によれば、現金自動支払機(CD)の発祥は1967年のイギリスだそうで、当時から暗証番号は4桁の数字だったようだ。日本には昭和44年(1969年)の住友銀行のものが1号機。ただし、これはオフラインのCDで、暗証番号は4桁だけどプッシュ式ではなくダイヤル式だったそうだ。当初暗証番号はキャッシュカード自体に書き込まれていたが、それが昭和63年(1988年)からキャッシュカードには書き込まない方式に変わったようだ。

で、なぜ4桁か?という質問への答えは何だかあいまいだけど、安全性と実用性の妥協点がたまたま4桁だったということのようだ。導入当初は、誕生日や電話番号などと関連付けられるから4桁が覚えやすい、というのも理由の1つだったらしいので、時代が変われば価値観が変わるということだろうか。

本書はこのような暗証番号やコンピュータのパスワードの話だけでなく、住基ネットの話や個人情報保護法の話も含め、セキュリティの基本的な問題点や考え方を、初心者にもわかりやすく書かれている。企業での新入社員へのコンピュータ教育の副読本なんかに使えそうな雰囲気だ。

ところで本書では、各種パスワードなどを安全に使用するためには、文字数を多くして、類推困難なものとし、定期的に変えることが大切で、もちろん簡単に見ることのできるようなメモに記録しておくこともまずいよ、ということが書かれている。その通りだとは思うのだが、実際にはどうしたらよいのだろう? あんたのパスワードは危ないよ、ということだけ指摘して、具体的に上記条件を満たすパスワードを作成する(あるいは覚える)コツを教えてくれないというのは、ちょっと片手落ちではないだろうか?

ということで、ちょっと探してみたら安全性の高いパスワードを作るコツには、簡単なルールでパスワードを生成させる例が紹介されていて、参考になる。また、推測されにくいパスワードの作成方法にも、作成方法が載っているが、これは覚えるのが大変そうだ。そういう時には、このようなツールを使うことも有効かもしれないが。(参考:スラッシュドット ジャパン

まあ、キャッシュカードやクレジットカードのように、数字4桁しか許さない暗証番号で安全性を確保しようというのは、もともと限界があるわけだ。色々と補償制度もできつつあるようだけど、自衛手段を講ずるのが賢いやりかたということだろう。そこで、この前、現金引き出し専用の少金額口座を新たに作り、従来からの主口座には手のひら認証キャッシュカードを導入したのだった。これだと、通帳と印鑑を盗まれても引き出しできないようだし。実はまだ一度も手のひら認証を使ったことがない。。

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2005/09/22

青色発光ダイオードの進歩とLED照明

asahi.com(9/21)の記事。青色ダイオード、消費電力9割減 中村教授ら成功

 青色発光ダイオード(LED)の消費電力を10分の1にできる材料の開発に、中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授らが成功した。同大のほか、筑波大などが参加する科学技術振興機構(JST)の「ERATO中村不均一結晶プロジェクト」の成果として、21日、東京都内で発表した。

 中村教授が90年代に開発した青色LEDは、明るく消費電力が少ないため携帯電話のバックライト用などに普及した。しかし、現在の製造法では、理論的にエネルギー効率に限界があることがわかっていた。

 プロジェクトでは、従来使っている窒化ガリウム半導体を、工夫した基板の上で結晶成長させ、新しい半導体膜を開発。この膜なら発光の効率が10倍にできるとわかった。

 窒化ガリウムに別の物質を混ぜることで青より波長の長い黄色などを出すようにできるが、従来の半導体膜では暗くなるため実用化に至らなかった。新しい半導体膜は発光効率が落ちず、黄色や赤色LEDやレーザーダイオードの開発も可能という。ほかの化合物の赤色LEDより高い発光効率が期待できる。

 グループは、この技術を使い、信頼性の高い長寿命の青色レーザーダイオードも開発中だ。次世代DVDの読み取り装置への応用が期待される。また、信号に使われているLEDをこれに置き換えることができれば、消費電力が少なくてすむ。自動車のヘッドライトなど、とくに明るい光が必要な分野にも応用の可能性が開けるという。

 「1、2年で実用につながるだろう」と中村教授は話す。

ということで、日亜化学との職務発明に関する訴訟で一躍有名人になった中村修二さんだが、アメリカの大学教授になってからも着実に成果を出しているようだ。このニュース、具体的にどんな技術なのかよくわからないのだが、NIKKEI NETの中村修二氏ら、次世代DVD光源向け半導体の新結晶開発という記事では、
米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の中村修二教授らの研究グループは21日、次世代DVDの光源として実用化が進む窒化ガリウム半導体の新型結晶を開発したと発表した。発光効率が高く、液晶ディスプレーのバックライトに使用すれば消費電力が10分の1以下になるとみている。共同研究を希望する企業を募り、1年以内にも実用化を目指す。
とあり、朝日の記事には出てこない「新型結晶」という言葉が載っている。このERATO中村不均一結晶プロジェクトについては、JSTのプロジェクトの紹介中間評価が読める。結晶欠陥を減らすことが課題となっているのだが、単に純粋な結晶を作るというよりも、結晶転位や不純物などの欠陥をコントロールしつつ意図的に導入するという考え方のようだ。また、プロジェクトメンバーの筑波大学秩父研究室にも専門的情報が載っているようだが、中に立方晶窒化ガリウムの話も出ている。

さて、朝日の記事には発光効率が10倍になると書かれている。しかし、LEDは既に発光効率は十分に高いんじゃなかったの? と思って調べてみた。省エネルギーセンターのLEDの特徴には、「電気を光に変換する効率が極めて高く、白熱灯約15%、蛍光灯約60%に比し、LEDは90%以上です。」と書いてある。うーむ、90%の効率がさらに10倍になるとどうなるんだろう?? 環境省の環のくらしの説明だと、LEDの消費電力は「同じ明るさの電球の約1/10、蛍光灯の約1/2」とあり、EICネットのQ&Aの書込みには、同じ数字だけどより詳しく

810ルーメンの光束(光源が全ての方向に放射する光の量)を発する機能を有する白熱電球、蛍光ランプ、照明用白色LED(光量を揃えるためにLED素子を30~100個程度集積したもの)を比較すると、白熱電球の消費電力が57W、蛍光ランプは14W、LEDランプは約6Wですので消費電力は白熱電球の約1/10、蛍光灯の1/2と言えます。
と書かれている。一方、国連大学の安井先生のエコプレミアム研究所では、
LEDの効率は改善されつつあるものの、まだ、蛍光灯の85lm/Wというレベルにはなっていない。ただし、将来は、この値を超す可能性がある。

B君:しかし、一般用照明の場合、光の量が問題。蛍光灯だと1本で3400lmといった光を出すことができるが、LEDだとまだ100lmといったところで桁が違う。まだ将来の課題。ここ5年ぐらいは、白熱電球を蛍光灯に変えるのが妥当なところ。

とあるし、日経エレクトロニクスには、
照明機器メーカーは,白色LEDを使った照明機器の開発に本腰を入れ始めた。2005年~2006年にかけて,発光効率が60lm/Wを超え1個当たりの光束が60lmを大きく上回る。この結果,蛍光灯の置き換えが,いよいよ始まると読むからだ。
とあるのだが、どうなっているんだろう? ちなみに、LED照明推進協議会のサイトでみつけた、世界最高発光効率の白色LEDは、発光効率が 70 lm/W、全光束が 245 lmとあるから、やっぱり蛍光灯には追いついていないように見える。どうも、「明るさ」の定義が、このような混乱状態の原因となっているような気がするのだが、ルクスとルーメンを読んでもやっぱりわからん。。

なお、現在のLED照明の開発状況についてはITmedia ライフスタイルが参考になる。Fuji Sankei Business iによると、新幹線の照明にも採用されるようだが。

いずれにしても、冒頭の記事にあるように発光効率が10倍になるとすれば、蛍光灯を大幅に上回るのは間違いなさそうだし、これは相当に画期的なのかもしれない。もっとも、このあたりは多くの企業が激しい開発競争を行っている分野だから、どんな技術が最終的に生き残るのかわからないと思うけど。。

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2005/09/21

ハリケーン名称が枯渇

CNN.co.jpのニュース(9/20)。北大西洋の熱帯低気圧、今季は発生多数で「名前」不足に?

(CNN) 今年6月1日から北大西洋で発生した熱帯低気圧の個数は、今月20日までに17個に達した。米海洋大気局(NOAA)のハリケーンセンターは毎年、熱帯低気圧に付ける名前を21個準備しているが、残り4個となり、ハリケーン・シーズンが終了する11月30日までに、名前が足りなくなる可能性が出てきた。

ハリケーンセンターは、北大西洋に発生する風速17メートル以上の低気圧を「熱帯低気圧」と定め、発生順に名前を付けている。熱帯低気圧のうち、最大風速33メートルを超えたものを「ハリケーン」と呼ぶ。

準備する名前はアルファベット順で、男女の名前を交互に選んでいる。ただし「Q」「U」「X」「Y」「Z」で始まる人名は数が少ないため、このアルファベットで始まる名前はつけられていない。

熱帯低気圧もしくはハリケーンの名前は、6年分の計126個が準備されており、最後まで使い切ると、最初の名前に戻って、再度使われる。ただし、非常に規模が大きく、甚大な被害をもたらした場合は、その名前を使用リストから外す。

例えば、1992年に米フロリダ州やバハマで20人以上の死者が出たハリケーン「アンドルー」や、2003年の「イサベル」、04年の「アイバン」などは除外済みだ。「カトリーナ」も間違いなく同じ例になるという。

ハリケーンセンターによると、今月9月20日までに17番目の「リタ」が発生。熱帯低気圧が発生しやすい11月末までに、あと2カ月以上を残して、使える名前は「スタン」「タミー」「ビンス」「ウィルマ」の4つとなった。

このため、今後5つ以上の熱帯低気圧が発生した場合、名前が足りなくなる。この場合は、新たに名前を付けずに、ギリシャ文字の「アルファ」を使うという。「アルファ」以降の熱帯低気圧は、順に「ベータ」「ガンマ」「デルタ」となる。

ハリケーンセンターによると、これまでに最も多く熱帯低気圧が発生したのは、1933年の計21個だった。

そんなこともあるんだ、というニュースだが、この機会にハリケーンや台風について少し調べてみることに。そもそも、カトリーナとかリタなどの名前は、ハリケーンになった低気圧に付けられるものと思いきや、熱帯低気圧の段階で名前が付けられるということも知らなかったし。。

ハリケーンの基礎知識は、Wikipediaが良くまとまっている。ハリケーンといっても、発生する場所によって別々のグループに分類され、それぞれにアルファベット順の名前が付けられるようだ。ハリケーン、タイフーン、サイクロンなどの定義については、デジタル台風NOAA AOMLにまとまっている。

ハリケーンの名前リストは、National Hurricane Centerのリストがわかりやすい。ここには2005年から2010年までのそれぞれの年のハリケーン名が掲載されているが、2011年には元に戻って2005年のリストが再度使われることになるらしい。ただし、大きな被害を出したハリケーン名は「永久欠番」としてリストからはずされ、新たな名前がリストに加わる仕組みとなっていて、過去の永久欠番名称はこちらに掲載されている。カトリーナも永久欠番リスト入りするのは間違いなさそうだ。

リストを使い果たしたときにどういう名前になるかは、これらのサイトにも書かれていなかったが、Alpha、Beta、Gamma、Delta などと呼ばれることになるようだ。もしも、Alphaなどが永久欠番になったらどうするんだろう??

今回のカトリーナの大きな被害に関連して、実在の Katrinaさんの複雑な心境をLA Daily Newsが報じている。人名をハリケーン名に採用するのはわかりやすいのかもしれないが、これだけ暴力的なハリケーンと同じ名前を持つ Katrinaさんが今後味わう気持ちを考えると、罪作りなシステムと言えそうだ。

なお、あまり使われることがないが、台風(Typhoon)も番号ではなく、アジア各国で統一して使用する名前が140個リストアップされている。(ただし、これは人名ではなく、動物や植物の名前などから選ばれているようだ) 気象庁の台風の番号と名前に、その由来も載っているが、例えば最近発生した台風18号は"DAMREY"で、先のリストの1番最初に戻っている。(ということは2000年以降、141個目の台風ということのようだ。)

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2005/09/20

人類ふたたび月へ

各紙が報道しているが、NASAは2018年(13年も先だ)に再び人類を月に立たせる計画を発表した。
 asahi.com 2018年に再び月へ NASAが正式発表
 YOMIURI-ONLINE 2018年、有人月着陸再び…NASAが計画発表
 MSN-Mainichi INTERACTIVE NASA:2018年に再び月へ 有人宇宙飛行計画を発表
 Sankei Web 2018年、再び月へ NASA有人飛行計画

各紙の報道内容はいずれもあっさりとしており、計画全貌を詳細にフォローしてる記事はないようなので、全部に目を通さないと全体像が見えてこない。読売新聞の記事が最もコンパクトだ。

米航空宇宙局(NASA)は19日、新しい有人月着陸計画を発表した。2018年に4人の宇宙飛行士を月面に送り込み、1週間滞在させて、月基地建設の準備作業を行う。

 打ち上げには、スペースシャトルの主要推進システムを受け継いだロケット2機を用いる。実現すれば、1972年のアポロ17号以来、46年ぶり7回目の月着陸を果たすことになる。

 NASAの計画によると、有人探査船(CEV)を搭載する小型2段ロケットと、月着陸船を搭載する大型物資輸送ロケットを別々に打ち上げ、宇宙空間で両者をドッキングさせて月を目指す。

 2008年から周回衛星やロボットを使った予備調査を始める。有人探査船の初飛行は、2012年に行い、シャトルが引退する2010年に着陸船の開発に着手する。

朝日新聞は
 二つの宇宙船には液化メタン燃料のエンジンと、太陽電池パネルを搭載する。将来、火星への有人飛行が実現した際、火星の大気からメタン燃料を得る計画に備えてのことだという。
と、液体メタン燃料エンジンに言及している。火星にメタンなんかあったかな?と調べてみると、AstroArtsによると、二酸化炭素:約95%、窒素:3%、アルゴン:1.6%、となっている。。 CO2からメタンを合成するのだろうか? 一方、毎日新聞には
 月へは最低でも年間2回の飛行をし、将来的な火星有人探査計画などのための恒久的な月面基地を建設する。候補地としては、地下に氷が存在すると考えられ、エネルギー源となる太陽光が利用しやすい月の南極付近が検討されている。
と、月面基地の建設のこととその候補地のことが書かれている。産経新聞にはミッション全体の模式図などが載っている。

さて、NASAの解説はHow We'll Get Back to the Moonで読める。もちろん英語記事だが要所要所に絵が載っていてわかりやすい。上記日本の新聞記事では得られない情報として、

And while Apollo was limited to landings along the moon's equator, the new ship carries enough propellant to land anywhere on the moon's surface.

Once a lunar outpost is established, crews could remain on the lunar surface for up to six months. The spacecraft can also operate without a crew in lunar orbit, eliminating the need for one astronaut to stay behind while others explore the surface.

ということで、アポロでは月の赤道付近にしか着陸できなかったのだが、今度は月のどこにでも送り込めるとある。この書き方だと、そのためには推進剤が多く必要ということのようだ。また、月の軌道上で待機するオービターは無人運転でき、月面基地が完成後には飛行士は月面上に6か月滞在可能とのこと。一方、打ち上げロケットシステムについては、
Best of all, these launch systems are 10 times safer than the shuttle because of an escape rocket on top of the capsule that can quickly blast the crew away if launch problems develop. There's also little chance of damage from launch vehicle debris, since the capsule sits on top of the rocket.
とあり、スペースシャトルのロケットシステムを有効活用するけれど、人間が乗る部分がロケットの最上部にあるため、シャトルで問題になっている断熱材の破片などによるダメージが避けられるのと、緊急時の脱出が可能になるようだ。これらによって安全性が10倍になるとのことだが、この10倍という数字の算出根拠にも興味がある。 シャトルは今まで114回の打ち上げで2回大事故を起こしているので、その10倍ということは約500回に1回の死亡事故ということになりそうだ。

NASAの資料としては
 解説フラッシュ
 高画質イラスト
 FAQ
などが公開されている。考えてみると結構途方もない巨大プロジェクトなわけだけど、一目で誰にでもわかる目標や絵を見せるやり方はさすがにNASAだなあ、と思わせる。

以前紹介したスペースシャトルの落日には、スペースシャトルの大きな欠点として、多目的型の万能機としたこと、翼を持つ着陸型としたこと、液体水素エンジンを採用したこと、の3点を指摘していた。さすがにNASAもそれは認識していたようで、先の2つは明らかにシャトルとは異なる路線に転換したようだが、最後の液体水素エンジンだけはそのまま採用することになったようだ。今でもシャトルの打ち上げの際に液体水素関係のトラブルが多いような気がするけど、大丈夫だろうか?

それにしても、アポロ計画から約50年。全体のロケットシステムや月着陸船などの絵を見ると、アポロ計画とほとんど一緒のように見える。この50年間は宇宙開発の停滞期間だったのではないかという印象もあるのもあるが、それだけ50年前の計画が優れていたということかもしれない。

2018年以降に月面に降り立つ宇宙飛行士は、現時点での中学生か高校生あたりだろうな。

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2005/09/16

中西応援団に参加します

環境ホルモン濫訴事件:中西応援団というサイトがオープンした。「ネット評論と濫訴を考える会」という、ボランティア組織が立ち上げたサイトだ。この訴訟に関する直接の利害関係者でもなく、中西準子さんの個人的なサポーターでもなく、当然、普段は本来の仕事をしている方々が中心となって運営されていることに、まずは深く敬意を表したい。

このサイトには、今回の訴訟の経緯、訴状を始めとした各種関連資料、この訴訟を考えるための基礎知識(民事訴訟や名誉毀損とは何か?)、「ネット評論と濫訴を考える会」が考えるこの訴訟の問題点、掲示板、関連リンクなどの非常に充実した情報が掲載されている。訴訟関係の素人や、この問題自体になじみがない人のことまでよく考えられ、かなり丁寧な作りとなっていることにも感心させられる。

さて、中西さんの本は今まで何冊か読んだし、中でも最近の「環境リスク学-不安の海の羅針盤」は、まさにサブタイトルの通り、複雑なトレードオフの絡む事象に対処していくための1つの指針として非常に参考になる本だと思う。また、今回の訴訟も絡んでいる、ダイオキシンを始めとする環境ホルモンの問題や、化学物質の環境影響評価の問題を考えていく上では、中西さんの従来の業績や考え方はもはや避けて通れない存在となっていると思うし、その筋の通った考え方など多くのことを学ばせていただいた。

そこに今回の名誉毀損訴訟問題である。中西さんの雑感は定期的に巡回して読んでいたので、問題となった2004/12/24の雑感286もリアルタイムで読んだはずだったが、実はあまり記憶に残っていなかった。ところが、その後、その文章が削除され、名誉毀損問題に発展したことを知った。それ以降の経緯は、訴訟となったためか我々第3者にとっては、何が問題だったのかが良くわからないまま、中西さんの雑感や応援する人のサイトなどから進捗を読み取ることしかできなくて、非常に歯がゆい状態であった。

ありがたいことに「環境ホルモン濫訴事件:中西応援団」には、その問題となった雑感286を始めとして、原告・被告両者の提出書面が(少なくとも一部)掲載されている。全部を読んで理解するには少し時間を要するのだが、現時点で自分なりの考えをまとめておくと同時に、この中西応援団への参加表明としたい。(参加というよりも、中西応援団ウォッチング宣言という感じだけど。)

今回の訴訟の問題点、特にこの訴訟自体が濫訴ではないのか、という点については、このサイトに詳細に記載されているので、今後、資料をよく読みながら勉強していこうと思う。ここでは、現時点で個人的に気になる点を整理しておきたい。

一つ目は、何が名誉毀損に該当するのか?という最もプリミティブな問題である。僕なりに解釈すると、中西さんの雑感の中の記述のうち、

パネリストの一人として参加していた、京都大学工学系研究科教授の松井三郎さんが、新聞記事のスライドを見せて、「つぎはナノです」と言ったのには驚いた。要するに環境ホルモンは終わった、今度はナノ粒子の有害性を問題にしようという意味である。
(中略)
学者が、他の人に伝える時、新聞の記事そのままではおかしい。新聞にこう書いてあ るが、自分はこう思うとか、新聞の通りだと思うとか、そういう情報発信こそすべき ではないか。情報の第一報は大きな影響を与える、専門家や学者は、その際、新聞や TVの記事ではなく、自分で読んで伝えてほしい。でなければ、専門家でない。
という辺りが問題となっていると思える。中西さんが環境ホルモン問題について「空騒ぎ」であったという立場の主張をしているのは周知のことであろう。とすると問題点は、上の文章の中の「環境ホルモンは終わった」という部分は、果たして松井さん自身の言葉なのか、あるいは松井さんのプレゼンの内容を中西さんが要約した言葉なのか、はたまた中西さんの勝手な思い込みなのか、という点なのではなかろうか? 原告の背後に見え隠れする団体を考えると、「環境ホルモン問題は終わった」という言葉は原告が口にしたのではなく、被告が勝手に脳内変換した言葉だよ、ということを言いたいのかな?と思うのだが。。 だとすると「言ってもいないことを言ったかのように書かれた」という主張になるのかな? 

もう1点は、後半部分の「専門家でない」に代表される部分のようだ。 ここだけを抜出すと侮辱したかのように思えなくもないが、全体の文脈としては無理があるのじゃなかろうか。。 これらの点については、これからの口頭弁論の中でも徐々に明らかになっていくだろうと思うので、今後の成り行きを見ていこうと思う。

二つ目は、ネット上の個人の文章表現が、こうも簡単に、名誉毀損で訴えられるというのは他人事ではないという点である。このブログも、ひとさまの書いた文章をネタにして言いたいことを書いている以上、同じ危険性を有していることを覚悟せざるを得ない。まあ、こっちは匿名で気楽にやってるので、訴えられたらさっさと引っ込めることも可能だが、それにしたって、こんな具合に問答無用でいきなり訴訟に持ち込まれたらたまらない。そもそもどこまでがセーフでどこからがアウトか、というのはネットで何らかの表現活動をしている人にとっては非常に重要なポイントである。

つまり、今回の案件を題材として、ネット上の表現で名誉毀損と判断される基準が少しでも明確になることを期待している部分がある。ただし、考えておく必要があると思うのは、今回の場合であれば、相手が中西さんだったからこそ訴えられたという部分があるだろうという点である。もしも僕が同じシンポジウムに出席していて、たまたま中西さんと同じような文章をこのブログに書いたとしても、多分訴えられないで済むだろう。影響力が違いすぎて相手にされないということだ。

とすると、名誉毀損となるかならないか、という単純な線引きは意味がないのかもしれない。しかし、影響力の大きさを考慮するとしても、あまり客観的な基準にはなりにくそうだし、議論の余地があるのは間違いないだろう。この辺も、この訴訟の進展や、それに対する議論の中で理解を深めていきたい点である。

名誉毀損については、民事訴訟って?・名誉毀損って?にまとまっているのだが、具体的な事例についてどう判断するべきか?となるとやっぱり難しい。過去の実例が複数あれば参考になるのかもしれない。

何はともあれ、このような形でオープンな議論ができる材料や場所を提供してくれた皆さんに感謝しつつ、今後の様子を注意深く見ていきたい。

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2005/09/15

「機長からアナウンス 第2便」

このブログで紹介している硬めの本ばかりの中ではちょっと異質ではあるが、帯には

飛行機の安全が気になったら、本書を手にとってください。
読めば安心。 故障、緊急時のエピソード満載!
とあるように、「安全」に関する航空業界の取組が幅広くエッセイ形式で紹介された、なかなか学ぶ所の多い本である。

新潮文庫
 機長からアナウンス 第2便
 内田 幹樹 著 bk1amazon

タイトルに「第2便」とあるように、本書は「機長からアナウンス」(bk1amazon)の続編にあたる。第1弾の方をしばらく前に読んだのだが、こちらは飛行機に関連した蘊蓄や裏話が読める気軽なエッセイという感じだった。今回の「第2便」は大部分が「安全」をテーマとして、著者の考えが表明されている点で少し趣きが異なる。また、おまけとして、最近JALで頻発したトラブルやJR西日本の脱線事故に対して、元機長としての経験と見識を元にしてコメントしており、これもなかなか興味深い。

旅客機の機長は乗客の安全を守る重い責任を持つわけで、それなりの権限も与えられているのだが、定期的な試験をクリアしないと資格を維持できないという点では、他の国家資格などとは一線を画している。そういう立場で長年飛行機を飛ばしていると、それなりに多くのトラブルに遭遇し、それを解決していく経験を積んでいるわけで、ここで語られる言葉には重みがある。

本書では、ハイジャックや、航空機や飛行場のトラブルなどについてのエピソード、パイロットの訓練や機体整備の実態、日本の飛行場の問題点、航空業界の問題点などが、広範囲にわたって、とてもわかりやすく書かれている。

これを読むと、旅客機の機長という仕事は非常に大変なんだなあ、と素直に尊敬したくなる。それに、飛行機は事故が起きたときの被害が大きいし、それなりに事故が起きるので、安全に対する考え方が体系化されていて、しかも徹底しているという印象だ。従って、ここで語られている安全な飛行のための様々な考え方、仕組み、方法などは、他の分野でも非常に参考になるものが多いだろう。

それでもトラブルや大事故が起きるのは何故か? という問いに対する著者の出した結論、「人間は誰でもミスを犯すから、事故は必ず起きるもの」は、ある意味でとても常識的ではあるが、やはりこれが全ての出発点となるべきなのだろう。

ところで、著者は、新幹線の座席にシートベルトがないこと、新幹線の頭上の荷物棚に扉がないこと、最近の無人運転列車の非常時の安全対策、モノレールなどの高架からの安全な脱出方法、などについて、飛行機と比べて余りにも基準や対策が遅れていると指摘している。確かに、明確な根拠がなく何となく決められている部分もあると思うけど、乱気流などで急降下する可能性のある飛行機と、電車などを同列に扱うのはどうだろう? 

例えばシートベルトについて考えると、新幹線が高速で脱線や衝突する確率をどの程度と見積もるかだが、実績から考えるとシートベルトが必要となるケースは非常に稀だろう。乗客がそんなレアケースを想定して、素直にシートベルトを着用するとは思えないし、それを確認するための手間暇まで考えるとやっぱり非現実的と思うなあ。。

ともあれ、交通関係に限らず、広く安全に関心を持っている人にとっては、安価で軽く読めるし、いろいろと考えさせられる点が多いということでお勧めの本である。

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2005/09/14

朝ごはんを食べると成績は向上するか?

文部科学省の新着情報を見ていてみつけた、文部科学省のマナビィくんの統計コーナーに、朝食を食べることとテストの結果を比べてみよう。という資料が掲載されている。「朝食の摂取状況とペーパーテストの結果との関係」と題した棒グラフが掲載されており、驚くべきことに、国語、数学、理科、社会、英語の5教科すべてについてテストの平均点が、朝食を「必ずとる」「たいていとる」「とらないことが多い」「全くまたはほとんどとらない」の順にきれいに並んでいる。

ここまでは、調査結果らしいので、(その調査に問題があるかもしれないが)、「朝食をきちんととっているほうが、各教科ともテストの結果が良いことがわかります。」という表現も、まあ間違ってはいないかもしれない。しかし、その下に描かれた子どもが、

朝ごはんを食べて成績アップだね!
と言ってるのは、問題じゃないの? 朝食をとることとテストの成績にたとえ相関関係があったとしても、因果関係があるかどうかとは別の話だ。「朝食をとれば、他に何もしなくても成績が良くなる」わけがないことは、誰でも常識的に理解しているはずだけど、こういうデータで示されると、ついつい「そうは言っても、何か関係がありそうだ」と思ってしまうのかもしれない。

朝食の栄養分が脳に供給されて学習効率が良くなるのではないか、のような仮説もありえるだろうけど、せめて学習時間や睡眠時間など、もっと影響の大きそうな条件を揃えて議論しないと、こんなデータをいくら取っても検証の役には立たないだろう。それに、少なくとも大学受験生あたりで同じ統計を取ったら、朝食をとらないグループの成績がかなり高くなるような気もするし。。

この資料は、明らかに子どもを対象にしているようなのだが、これを見て、全てのデータが余りにもきれいな序列で並んでいるのは不自然じゃないかとか、朝食と成績の間に因果関係なんかあるだろうか、というような疑問を抱くような子どもの方が、よっぽど有望だと思う。(どの方面に有望なのかは議論もあるだろうけど。。)

別に朝食をとることを否定するつもりは全然ないけど、相関関係と因果関係の違いを見極める能力は社会生活を送る上で極めて重要だと思うので、子ども相手にこういう嘘のロジックを展開するのはいけないでしょう、ってことだ。(推奨図書:「社会調査」のウソ

ちなみに、同じマナビィくんの統計コーナーに並んでいる、みんなは朝食をきちんととっているのかな?によると、朝食を「必ずとる」が中学3年でも70%もいて、これまた「たいていとる」「とらないことが多い」「全くまたはほとんどとらない」の順にきれいに並んでいる。ここまで来ると、元のデータが見てみたくなる。

そのものズバリのデータは見つからなかったのだが、良く似たデータとして、平成13年度小中学校教育課程実施状況調査の結果概要についてという資料のp22/23に中学2年生を対象とした朝食アンケートとテスト成績の関係が掲載されている。調査方法を見ても、この調査の対象者が何人だったのか非常にわかりにくいのだが、平成13年度小中学校教育課程実施状況調査の結果概要をみるに当たってを見ると、どうやら各学年88000人程度のようだ。これだけの人数を相手にしているとすると、こんなニュースのような少人数の統計でありがちな問題点はクリアしていそうだ。ちなみに、この資料には

今回,質問紙調査の回答状況とペーパーテスト結果の関係を示しているが,この表から見て取ることができるのは,結果として示された2つの状況に何らかの関係があるということだけである。
もちろん,双方に何らかの因果関係がある場合もあると考えられるが,この結果からだけでは,双方に因果関係があるかどうかまでを判断することはできないことに,留意されたい。(p.9)
としっかり書いてある。

他の多くの要素を全く区別していないこういった調査では、判断できることは限られている。おそらく朝食を食べる習慣が、他のいろんな生活習慣の代表的な尺度となっているのだろう、と考えるのが常識的な線だろう。調べてみたら、なんと朝ごはん実行委員会なんてサイトがある。。(案の定、農水省がらみのようだ) 朝ごはん実行委員会ニュースを読むと、相関関係がいつのまにか因果関係に置き換えられ、学習意欲や夜更かしまで全て朝食が原因ということなってしまっている。。

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2005/09/13

燃料電池バイクの実力は?

FujiSankei Business i(9/13)の記事。二輪車も燃料電池に ヤマハ発リース、ホンダは開発中

 ヤマハ発動機(静岡県磐田市)は十二日、メタノールを燃料にして発電し、モーター走行する燃料電池二輪車「FC-me(エフシー・ミー)」を開発、十六日から一台を静岡県にリース販売すると発表した。リース料金は月十万五千円。燃料電池を搭載した二輪車を実用化するのはヤマハ発動機が世界で初めて。

 一方、ライバルのホンダ(東京都港区)は、高圧水素を燃料にして発電する燃料電池二輪車を開発中で、二〇〇九年のリース販売開始を目指している。四輪車に続いて二輪車も環境にやさしい燃料電池搭載車の開発競争が激化してきた。

(中略)

 一方、環境負荷の面でみると、ホンダの燃料電池二輪車は酸素と水素を化学反応させて電気を起こすので、水しか排出しない。ヤマハ発動機のシステムは、メタノール水溶液を直接燃料として使用するので、ガソリン車より少ないものの二酸化炭素(CO2)も排出する。ガソリンの原付きバイクと比べると二酸化炭素排出量は約45%少ない。

 ホンダは排気量一二五ccのスクーターをベースに開発しており、ある程度の遠距離ツーリングが可能なように航続距離は二百キロメートルを目指している。一方、ヤマハ発動機は電動バイクと同様の地域コミューターとしての利用を目指して開発したもので、ガソリンを使用する五〇cc原付きバイクの代替需要を主体に考えており、満タン時の航続距離は百キロメートルだ。

ところで、同じニュースを扱うNIKKEI NETの記事には、
 名称は「FC―me」。道路交通法では第一種原動機付き自転車に属する扱いで、エタノール溶液を燃料に使う。
とあるけど、メタノール水溶液の間違いですね。nikkeibp.jpには、
同社の開発した「ヤマハ ダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)システム」を搭載する。液体であるメタノール水溶液を燃料とし、改質器などを必要としないため、水素ガスを使う燃料電池システムと比べコンパクトなサイズという。
とあり、水素ガスを原料とする燃料電池は元々改質器は不要なので、この表現はおかしいぞ。 日経の記者さん、大丈夫かな? さて、ヤマハ発動機のニュースリリースに主要スペックが載っている。これによると、

  定格出力 0.58kW
  燃料 54質量%メタノール水溶液
  燃料タンク 3.2リットル
  車両重量 69kg

とあり、小型のバイクにしては重量が重いような気もするけど、重量や航続距離と出力の関係は、通常のバイクや最近の電動バイクと比べてどうなんだろう? 燃料タンクが3.2Lで、航続距離が100kmとのことだから、燃費は約30km/Lとなる。ガソリンと54%のメタノール水溶液では、同じ体積でも炭素含有量が大きく異なるので、結果としてCO2排出量は45%程度削減されるようだ。

同じヤマハが最近発売した、電動スクーター EC-02の場合には、 

  定格出力 0.58kW
  最高出力 1.2kW
  最大トルク 7.5N・m/rpm
  リチウムイオン電池 25V-24Ah
  100%充電に6時間、1充電走行距離 43km
  車両重量 47kg

とあり、使用しているモーターは同じものかもしれない。この電動スクーターはかなり小型で車両重量も軽いから、燃料電池バイクの方は車両重量に対してモーター出力がやや不足気味かもしれない。それでも、リチウムイオン電池だと1回で32kmしか走れないのと比べると、燃料電池バイクの100kmの航続距離はアドバンテージではある。もっとも、電池を室内に持ち込んで充電するために電池重量を6kgに抑えているのも影響していそうだが。。

なお、電動スクーターについてはLCAの結果が掲載されている。

一方、通常の50ccクラスのガソリンバイクの場合、例えばヤマハのBJでは、

  最高出力 4.6kW(6.3PS)
  最大トルク 6.6N・m/rpm
  車両重量 75kg
  燃費 58km/L
  燃料タンク 4.6L(航続距離は 267km)

となっており、意外なことに車両重量は75kgもあるのだが、さすがに動力性能は優れており、トルクはモーターには劣るもののパワーは相当大きいし、航続距離も圧倒的だ。

ということで、定格出力0.58kWというのがどの程度の走りになるのかにもよるが、現状ではコスト以外にも課題が多いという印象だ。果たして燃料電池バイクの存在意義があるのだろうか? 燃料電池自動車が普及して燃料供給インフラが整備されれば、確かにありそうだけど、メタノール水溶液の燃料電池車なんか実現しそうもないような。。 むしろ電気自動車が普及して充電インフラが整備されれば電動バイクもかなり有望になりそうだけど。

ところで、燃料の54%のメタノール水溶液だが、わざわざ水溶液にする理由は DMFCの課題の1つであるメタノールクロスオーバーに対する対策だろうか。(参考)法的にはガソリンにしてもメタノールにしても消防法の規制を受けるだろうし(注)、メタノールの毒性もこの程度の希釈では解決策とはならないだろうし。。

注:ここには17Mメタノール水溶液は危険物に該当しないとある。17Mだと、32×17=544g/Lとなり、54wt%近辺の濃度になりそうだ。

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2005/09/12

はやぶさがイトカワに到着

MSN-Mainichi INTERACTIVE(9/12)のニュースから。探査機「はやぶさ」:小惑星「イトカワ」に接近、11月着陸へ--JAXA

 小惑星から岩石などを地球に持ち帰る世界初の試みを目指して宇宙を飛んでいる探査機「はやぶさ」が、12日にも、目標の小惑星「イトカワ」から約20キロに到達する。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機で、11月に「イトカワ」に着陸する予定だ。

 「はやぶさ」は03年5月に打ち上げられた。到達後しばらく「イトカワ」と並んで飛び、エックス線計測装置や赤外線観測装置などで表面を調べる。11月に第1回の着陸をする。着陸時間は約1秒間で、探査機から地表に金属球を撃ち込み、舞い上がった岩石の破片などを採取する。さらに2回目の着陸とサンプル採取をした後、地球を目指す。予定通りなら07年6月にも地球に帰還する。

 「イトカワ」を含めた小惑星の岩石は太陽系の形成当時からあまり変化していないとみられる。サンプルの分析で、太陽系の成り立ちなどを解明する貴重な手掛かりが得られると期待される。

 「イトカワ」は98年にアメリカの研究チームが発見した。日本側の依頼で、日本のロケットの生みの親、故糸川英夫博士にちなんだ名前が付けられた。長径500メートルのジャガイモのような形で、太陽の周囲を約1年半の周期で回る。軌道は地球と火星の間にある。

ジャガイモといっても、いろんな形があるが、JAXAのサイトで探してみると、こんな奴で、どうみてもジャガイモには見えない。こちらではちょっと遠い所からの画像だけど、自転している様子が見られる。

JAXAのサイトの小惑星探査機「はやぶさ(MUSES-C)」を読むと、小惑星に自律的に接近・着陸し、サンプルを採取し、また地球にサンプルを送り返すという、このプロジェクトは日本の宇宙技術もなかなかやるもんだ、という印象がある。小惑星と地球との往復航行にはイオンエンジンを使用しているということ。イオンエンジンは、イオン化させた気体を電界で加速して放出させるもので、Wikipediaや、JAXAの説明にもあるように、電気推進エンジンとも呼ばれるようだ。マイクロ波を当ててキセノンをイオン化し、これを噴射するようだ。非常に効率が良いと書かれているが、キセノンを使用するのは原子量が131と大きいのも魅力なのだろう。それにしても、こちらによると、搭載しているキセノンはたった60kgとのことだから恐れ入る。

ところで、毎日新聞の記事には着陸時間は1秒間とあるが、着陸の方法や地表のサンプル採取の方法については、サンプル採取方法に解説が書かれている。着陸といっても、相手は大きな岩みたいなもんだし、重力は地球の10万分の1以下とのことだから、「自由落下」といっても具体的にイメージするのが難しいところがあるような。。 着陸とサンプル採取は11月に2回実施の予定とのことだが、ちょっと注目してみたい。

そもそも、なぜ小惑星をめざすのか、というと月や火星などの惑星は「変成」していて、生成当初の状態を保っていないため、とのこと。ここには「太陽系の考古学」なんて書いてある。「変成」とは何だろうか? 恐らく地球のような惑星の場合、その内部で自分自身が少しずつ変化するし、大気があるとさまざまな相互作用による変化が起こることを意味していると思われる。(参考)他にも、大きいと外部の他の天体が衝突して汚染されることもありそうだが、YOMIURI ON-LINEの記事には、

 地球と火星の間の軌道を回る直径500メートルのジャガイモ形小惑星で、クレーターとみられる地形も確認されている。
と書かれており、小さくても他の天体の衝突の影響はあるのかもしれない。

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2005/09/08

土壌中の炭素が減少

共同通信(9/8)のニュース。代表して、中国新聞から。土壌中の炭素、減少続く 温暖化が原因と英研究者

 過去25年間に、土の中にある炭素の量が減少を続けており、これまで考えられていたより広い範囲の土地から二酸化炭素(CO2)が大気中に出ている可能性が高いとの分析結果を、英国立土壌研究所などの研究者が8日付の英科学誌ネイチャーに発表した。

 地球温暖化で土壌中の炭素を分解する微生物の活動が活発になったことなどが原因とみられ、放出されたCO2が温暖化をさらに加速する悪循環につながる可能性がある。

 グループは「調査をしたのは英国の土だけだが、同様のことが温帯の広い範囲で起こっているのではないか」と指摘しており、今後、詳しい調査が必要になりそうだ。

というのだが、土壌中の平均的な炭素含有量を求めるのも難しそうだし、地球全体の炭素循環の中でどの程度の割合を占めるものなのかが不明である。Google Newsで検索して見つけたBBC NEWS、Warmer soils add to climate worryによると、
They base their assessment on a huge analysis of soil samples gathered from across England and Wales over 25 years.

The team says its findings, if extended to the whole of the UK, suggest some 13 million tonnes of carbon are being lost from British soils each year.

The Cranfield University group reports its work in the journal Nature.

The scientists say computer models used to forecast future climate trends will now have to be revised because the calculations on which they are based will be wide of the mark.

"Our findings suggest the soil part of the equation is scarier than we had thought," Professor Guy Kirk, of Cranfield University, told journalists at the British Association's Festival of Science in Dublin, Ireland.

"The consequence is that there is more urgency about doing something - global warming will accelerate."

Indeed, as an illustration of how big a problem this is, it is likely the carbon lost from British soils since 1990 will have completely wiped out any reductions the country might have made through technological gains over the same period.

イングランドとウェールズから採取した過去25年間の多量の土壌サンプルを分析した結果、イギリス全土に換算して1300万トン-C/年が土壌から大気に放出されている計算になるということで、この量は、イギリスがこの間に技術的に削減してきた二酸化炭素の排出削減をそっくり帳消しにする程度らしい。さらに
At its beginnings in 1978, almost 6,000 soil locations were sampled at various depths down to 15cm. Over the intervening years something like 40% of these sites have been re-sampled and their chemistry analysed in detail.

Professor Kirk and his colleagues have been able to show that the two countries' soils have given up around 0.6% of their carbon content per annum - or just over four million tonnes in the 25 years to 2003.

ということで、6000箇所以上から土壌をサンプリングして、平均で炭素含有量が年間0.6%減少しているという結果を得たようだ。原因については、土地の利用方法の変化も考えられるが、その影響はほとんどなく、大部分は平均気温がこの間に約0.5℃上昇したことによる微生物の活発化によるもの、という結論のようだ。そうだとすると、地球温暖化が土壌からの炭素の放出を加速するという悪循環(正のフィードバック)が起こってしまうので、地球温暖化予測モデルの修正が必要ではなかろうか、という話になっている。

ちなみに、イギリスからの二酸化炭素の放出量は全国地球温暖化防止活動推進センター資料によると、2000年で5億6900万トン-CO2/年であり、今回見積もられた土壌からの放出分はCO2換算で約4800万トン-CO2/年となり、全体の8.4%に相当する。確かに影響の大きそうな数字だ。もっとも、BBC Newsにも書いてあるが、土壌から失われた炭素が全て大気に出たかどうかは疑わしく、水や地下深くに移動したものもありそうだ。NewScientist.comのニュースによると

Soils are a vitally important sink for carbon dioxide - twice as much carbon is wrapped up in soils as in Earth's vegetation or atmosphere. It is estimated that they store 300 times the amount of carbon dioxide now released annually by burning fossil fuels.
とあり、土壌中に存在する炭素は化石燃料を燃やすことで1年間に放出される量の300倍に相当するとある。とすると、その0.6%が毎年失われるということは化石燃料での放出分の1.8年分もが土壌から放出されることになるぞ??

地球全体での炭素循環やその中での土壌中の炭素の位置づけについては、環境省の地球温暖化解説の炭素循環のメカニズム<炭素の短期循環>や、炭素循環のメカニズム<地球の物質循環>あたりに比較的わかりやすくまとまっている。これによると気温上昇による土壌からの炭素放出は今のモデルに既に折り込み済みのようだけど、その影響の大きさが従来の予想以上だったということだろうか。

少し詳しく調べ始めてみると、このあたりはまだまだ不明な点が多い領域のようで、気温の変化による炭素バランスの変化については諸説ふんぷん(紛紛と書くらしい)だ。土壌中の炭素と温度の関係も、緯度や土地の利用形態によって異なるようで、今回の結果をそのまま地球全体に外挿するわけにはいかないようだ。まあ、このような事実を少しずつ積み重ねていくしかないってことだろう。

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2005/09/07

ココログ20か月

ココログを始めて1年と8か月が経過。この1か月のカウンターの伸びはかなり多く、25000以上増えた。何と、1日平均すると800カウント以上にもなるのだ。。

 1か月目:900     2か月目:4500    3か月目:11700    4か月目:19000
 5か月目:32300   6か月目:43500   7か月目:54500    8か月目:72000
 9か月目:87700   10か月目:105400  11か月目:125400  12か月目:140600
13か月目:163000  14か月目:179300  15か月目:194700  16か月目:205300
17か月目:216800  18か月目:231700  19か月目:251100  20か月目:276400

この1か月のアクセス解析結果を求めてみると、以下の通り。

(1)リンク元
 1位 http://search.yahoo.co.jp 全体の57%(前回1位)
 2位 http://www.google.co.jp 全体の14%(前回2位)
 3位 bookmark 全体の14%(前回3位)
 4位 http://www.google.com 全体の4%(前回4位)
 5位 http://search.goo.ne.jp 全体の2%(前回5位)

ということで、リンク元の順位は上位については安定しているようで、前月と一緒。今月は特に訪問者が多かったのだが、どうやらその増加した分のほとんどがYahoo!経由であったようだ。実訪問者数としても、Yahoo!経由が増えている一方で、Google経由はやや減少気味である。

(2)検索キーワード
 1位 7月の天気(初登場)
 2位 合計特殊出生率(前回1位)
 3位 2005年7月の天気(初登場)
 4位 過去の天気予報(前回2位)
 5位 7月の天気予報(初登場)
 6位 注射針(前回28位)
 7位 電気自動車(前回43位)
 8位 フラーレン(前回29位)
 9位 環境危機時計(前回圏外)
10位 航空機事故(前回23位)
11位 にんにく注射(前回8位)
12位 アメリカ(前回13位)
13位 献血(前回12位)
14位 検索(前回32位)
15位 ポリ乳酸(前回11位)

ということで、この1か月のこのブログの人気キーワードは「7月の天気」関連だったようだ。そういえば、8月末に掛けてアクセス数が急増し、その多くが「7月の天気」関連での訪問だったようだし、その後9月になってやや沈静化しているようだから、やっぱり夏休み宿題対策だった可能性が高い。

今や、各地の天気や気温などの情報は非常に詳細なデータを気象庁などのサイトから簡単に入手できるのに、そんな宿題を出すこと自体に大して意味がなさそうにも思える。あるいは夏休み中の天気予報を調べる宿題などもあるのだろうか?(どちらにしても新聞をとってあれば、昔も今も特に苦労しなくてもデータは集まるわけで、この宿題にどんな意味があるのだろうか?)

ところで、7月の天気を調べたいと思ったときに、検索エンジンに「7月の天気」と入力してしまうのはまだまだ修行が足りない証拠だろう。たまたまこのサイトがヒットしたから、もしかしたら目的のデータまで到達できたかもしれないけど、こういう時には「気象データ」のような検索用語を思いつくようになって欲しいものだ。どんな用語で検索したらうまくいくのかを検討するだけでも、おもしろい自由研究になりそうだけど。。

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2005/09/06

「決定版 失敗学の法則」

著者の畑村先生は「失敗学」という学問体系を構築したということで、知名度も高い。このブログでは、失敗知識データベースを覗いてみたで、失敗学に関するサイトを紹介してはいるものの、今まで著書を読んだことがなかった。今回、その決定版と称する本が文庫化されたということで、試しに読んでみた。

文春文庫
 決定版 失敗学の法則
 畑村 洋太郎 著 bk1amazon

この先生のキャラクタなのだろうけど、独善的というか強引というか、複雑な事象を相当に単純な見方で決め付けたという印象が強い。ある種の人々にとっては見通しが開けて心地よいのかもしれないが、生理的に受け付けられない人には軽くスルーされてしまいそうだ。何というか、全体を通して謙虚さが足りない、というような感じを受けてしまうのだ。

本書は過去の事故や事件を例にあげ、そこから教訓を学び取る形で、様々な「失敗学の法則」を解説している。もちろん、過去の失敗から学ぶことは重要だし、その方向性は間違っていないと思う。ただ、本書で取り扱っている個々の事例についての解析は比較的常識的だし、さほど深く突っ込んでいるようにも思えない。本書で「法則」と称するものも、一見するとかなりバラバラに並んでいて、あまり体系化されているようにも見えない。

世の中一般に対して「失敗学」という言葉を知らしめて、失敗から学ぶことの重要性をアピールしたり、原因究明と責任追及は独立させる必要があることなどを主張した点では、著者の試みは高く評価したい。しかし、事件や事故を含めて失敗と呼ばれるものは、古今東西多くの事例があるわけで、昔からいわゆる「安全工学」を初めとして多くの体系化の試みがあるし、決して著者が初めてこの分野の学問化に成功したというものではないはずだ。

ところが本書では、せいぜいハインリッヒの法則が紹介されている程度で、リスクの考え方を初めとして、既に体系化されている従来の知見がほとんど紹介されていないし、取り入れられているようにも見えない。逆に「失敗のからくり」とか「失敗の脈絡」などのような新たな用語を敢えて定義して論理展開するところも、何だかなあ。

しかも「失敗学」は先生の専門の機械設計だけでなく、様々なものにその考え方を応用できるらしく、本書の中では会社をやめるかどうかの判断や上司や同僚との付き合い方、さらには浮気の仕方にまで、失敗学の考え方を応用しての(?)かなり無理やりな感じのQ&Aやアドバイスが載っていて、結構脱力させられる。。

さらに疑問を感じるのが、Q&A全体を通して伝わってくる保身的な考え方だ。組織内での自分の立場を守るためには、敢えて告発せずに口をつぐんだり、小さな失敗を隠すこともやむなし、という立場のアドバイスが多い。しかし、いやしくも「学問」の看板を掲げるのなら、本来は倫理の原則を示すべきであり、止むを得ない場合の例外もあるよ、という紹介程度にとどめるべきではなかったか?

なお、本書は文庫化に際し、六本木ヒルズの回転ドア事故の解析に関する説明が追加されている。

蛇足ではあるが、既存の「安全工学」については、音声付き教材ではあるが、Webラーニングプラザが充実している。「分野・映像から選ぶ」から「安全」を選び、「リスク管理と危機管理コース」や「計画・管理・分析の数理的手法コース」を見ると、よくまとまった資料が手に入る。また「技術者倫理」を選ぶと「事例に学ぶ技術者倫理コース」という資料もあり、この中にはスペースシャトル・チャレンジャーの事故事例やJCOの臨界事故事例などが取り上げられており結構面白い。

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2005/09/05

二酸化炭素排出量表示機能付き駅すぱあと

Yahoo!ニュース経由で見つけた、Web BCN(Business Computer News)のニュース(9/5)。ヴァル研究所、CO2排出量順で経路選び、「駅すぱあと」に新検索条件

 ヴァル研究所(鈴木和夫代表取締役)は、10月から発売する「駅すぱあと」各製品に、新たに二酸化炭素総排出量順(CO2排出量順)の探索ができる機能を搭載すると発表した。「Yahoo! 路線情報」での経路探索サービスにも12月以降に実装する予定。

 同社では、温室効果ガス削減策の一つとして、自動車の利用を控え鉄道などの公共交通機関の利用促進する活動を支援するため、従来の「時間順」「運賃順」「定期順」に続く経路探索条件として「CO2排出量順」の機能を追加。探索結果には、当該経路の二酸化炭素総排出量のほか、同じ距離について乗用車を利用した場合の二酸化炭素総排出量も併記されるため、環境を考慮した経路探索ができる。

(中略)

 二酸化炭素総排出量は、距離(km)×二酸化炭素排出原単位(g-co2/人km)の計算式で算出する。なお、二酸化炭素排出原単位は、交通エコロジー・モビリティ財団発行の「運輸・交通と環境 2005年版」のデータを利用している。

「駅すぱあと」といえば、この手の経路探索ソフトの元祖的な存在だが、最近は携帯やPCでオンラインで時刻表を含めて探索できるサイトが多いので、販売という点ではかなり苦戦しているのではないだろうか。それでも「駅すぱあと」は企業内のシステムと連携させて出張管理などに使用するケースも多いようなので、二酸化炭素の排出量表示機能を付けることで、直接移動手段の選択が変わるとは思えないけど、企業の環境マインドを刺激したり、という効果は多少期待できるかもしれない。

ヴァル研究所のニュースリリースには、探索結果画面の例が掲載されている。今回使用した二酸化炭素排出原単位は、運輸・交通と環境(2005年版)から申し込むことで無料で入手できるようだが、残念ながらオンラインではデータが公開されていないようだ。

ただし、同じ交通エコロジー・モビリティ財団の、交通部門における地球温暖化問題の現状のページで2000年度の二酸化炭素排出原単位のデータが見られる。念のために「駅すぱあと」のサイトに載っていた例(品川→大阪で、新幹線が9.8kg、飛行機が59.4kg、乗用車が95.0kg)と比較してみよう。

距離は新幹線が約550km、飛行機が約450km、自動車が530kmとして、このサイトの原単位(単位がg-C/人・kmなので換算が必要)で計算すると、新幹線が550×6×44÷12÷1000=12.1kg-CO2/人、飛行機が450×30×44÷12÷1000=49.5kg-CO2/人、乗用車が530×45×44÷12÷1000=87.5kg-CO2/人となり、やや差が大きいのが気にならないでもない。いずれYahoo!路線情報でも提供されるそうなので、いろいろな条件で探索してみると、使用している原単位が逆算できそうだけど。。

調べてみると、金沢市のエコチャレンジでは、各自の交通関係の二酸化炭素排出量を計算してくれる。ここでは単位時間当たりの二酸化炭素排出原単位が使用されているので比較するには換算が必要。でもこの表ではタクシーの原単位が自動車の10%しかなかったり、やや疑問がないでもない。(どちらのデータでもバスは自動車の40%程度なのだが、乗車人員を考えると、一人当たりの排出量はもっと少ないような気もする。。)

実際には、乗用車といっても、車種や条件(高速/一般道/都会/郊外)、乗車人員や搭載貨物量で大きく変わりそうだし、飛行機だってジャンボなのか737なのかで違うだろう。最初は大雑把な比較から始めるにしても、いずれ、色々な条件を細かく指定できるようなオプションがあると面白いようにも思える。さらに言えば、単なる移動時の二酸化炭素排出量だけでなく、LCA的な視点を加えてみるのも面白そうだけど。

ちなみに、LCAで使用するための各種排出原単位は、産業連関表による環境負荷原単位データブックで入手できるようだが、専門的すぎて一般には使いにくそうだ。

一般家庭でできる温暖化対策については、全国地球温暖化防止活動推進センターあたりが参考になるけど簡単すぎるような。極端に専門的な資料や極端に簡単な資料はあるのだけど、一般の人が少し専門的なことも調べてみようと思ったときには結構困る。レベルに応じて階層的に専門的な資料に到達できるような使いやすいデータベースがあるといいのだが。。

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2005/09/02

RNA新大陸の発見

セントラルドグマの見直しに繋がるかもしれない大ニュース。さすがに各紙が取り上げている。

asahi.comのマウスゲノムの70%に重要な機能 理研など解析という記事。

 理研ゲノム科学総合研究センターの林崎良英氏らが、マウスの細胞で作られているRNAを詳しく調べた。たんぱく質を作る遺伝子の領域が2万929個あり、たんぱく質を作らないがRNAを作る遺伝領域2万3218個が新たに見つかった。これらを合わせて、何らかに使われている領域はマウスゲノム全体の長さの約70%に達した。

 たんぱく質を作らない遺伝領域のRNAを調べると、他の遺伝子の働きを調節するものがあることも分かった。たんぱく質を作らないRNAが、生命活動の重要な役目を担っていることになる。

ということで、従来DNAのうちのほんの一部だけがアミノ酸を合成するためのコードとなっており、残りの大部分がジャンクであった、という概念そのものを覆す可能性があり、さらにRNAが従来考えられていた役割とは別の重要な役割を持っていることを示したようだ。

YOMIURI ON-LINEの生命に役立つ機能、ゲノムの7割も…定説は2%もほぼ同等の内容。一方、MSN-Mainichi INTERACTIVEでは、RNA:遺伝子を起動 ”がらくたDNA”が大量作成という記事と、もう1つRNA:解説=生命解明の新鉱脈 糖尿病などの新薬へ道という解説の2本が載っている。この解説記事には、朝日や読売が扱っていない「二本鎖RNA」という聞きなれない言葉が出てきている。その点、Sankei Webの記事、遺伝子制御などRNAが調整役 理化学研チーム解明は、その両者に触れているようだ。

 ゲノムは、染色体のDNAに4種類の塩基の配列で記された「生命の設計図」。マウスゲノムはヒトゲノムとほぼ同じの約30億個の塩基配列からなる。ヒトゲノムではタンパク質の設計情報が書かれている領域は全体の2%程度とされ、RNAはこの部分の塩基配列をコピーして、タンパク質合成のための情報伝達や材料運搬が主要な役割と考えられていた。

 研究チームは新たに開発した技術で、約450万個のマウスのRNA分子を解析した。その結果、塩基配列のなかで何らかの意味を持つ遺伝子は4万4147個にのぼり、7割の領域を占めていた。このうち約2万3200個はタンパク質の合成に関与せず、転写したRNAが遺伝子の働きを制御するなど調整役として生命活動を支えているとみられる。
 また、RNAの72%は、DNAと同じ2本鎖の構造を持つことも分かった。2本鎖RNAには遺伝子の発現を阻害する働きがあることが最近の研究で確認され、病気に関連する多くの遺伝子が2本鎖RNAを形成することもわかっている。

 研究チームの林崎良英・理研プロジェクトディレクターは「2本鎖RNAを作る遺伝子を突き止めれば、その遺伝子の制御方法が見つかったのと同じ。新たな治療法の開発につながる」と話す。

一般向けの速報記事としてはこんなものかもしれないが、内容が従来の「常識」を覆すような重要なもののようなので、もう少し詳しく突っ込んで書いて欲しい気がする。いずれわかりやすい特集記事が出ることを期待しよう。

一方、従来から難解なことで定評のある(?)、理化学研究所のプレスリリース、哺乳動物のトランスクリプトームの総合的解析による「RNA新大陸」の発見は、やっぱり非常に難解で、タイトルからしてよくわからない。専門的な内容はちんぷんかんぷんなので置いておくとして、この研究の意味について

 本研究を通じて、遺伝子とは何か、という基本的概念にパラダイムシフトが起きたと考えています。ゲノムというもののなかに遺伝子がオアシスのように散在するという旧来のゲノム観から、かつてジャンクDNAと呼ばれていた領域は実際には機能しており、ゲノムは総体として働いているという新しいゲノム観が生じたといっても言い過ぎではありません。

 さらに、本研究における「RNA大陸」の発見は、「タンパク質が最終生理活性物質であり、遺伝子とは、単にタンパク質をコードするもの」であるという既成概念を崩す結果となりました。遺伝子から、表現形質を分子レベルで説明するネットワークの中に、新たにncRNAが登場することとなります。これにより、RNAがいろいろなレベルで遺伝子の発現を調節する新たなメカニズムの研究がスタートすることになるでしょう。

と書いている。これが本当であれば、教科書から何から大幅に書き換える必要が出てくるわけで、是非とも各階層向けのわかりやすい解説を理化学研究所から出して欲しいと思う。ちなみに、今回のポイントとなるRNAは、非タンパクコードRNAと呼ばれ、通称はncRNA(Non-coding RNA)らしい。(参考:Wikipedia、やっぱり難解だけど)

2本鎖RNAについては、同じく難解だが、理化学研究所のプレスリリースがある。

2%から70%まで一気に増えてしまったということのようだが、数字の部分をまとめてみよう。ゲノムの30億の塩基配列のうち、従来の知見だと 2%程度にたんぱく質がコードされていると考えられていた。今回、たんぱく質合成に関与するRNAが20927個、関与しないRNAが23218個、合計で44147個の何らかの意味を持つRNAが見つかった。しかも、この44147個でゲノム全体の70%を占めるらしい。ということで、何だかよくわからないのだが、たんぱく質に関与するRNAは全体の2%で、関与しないRNAは全体の68%を占めるということだろうか? ということは今回見つけたncRNAというのは、非常に長い塩基配列を持つということだろうか? どこかで間違えたかな?

これに関して、NIKKEI NETでは、

これまでRNAはたんぱく質の設計情報を伝え、材料のアミノ酸を運ぶ仲介役として考えられており、DNAの約3割の部分で作られていることしか確認できていなかった。
とあるのだが、結局どういうこと?

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2005/09/01

2005年8月の天気予報の傾向

東京地方の過去の天気予報 は、ここまで半年分以上の天気予報データを順調に蓄積中。ただし、データ入手元のtenki.jpで本日、大幅なサイトリニューアルがあったようで、天気予報取り込みのスクリプトが動かなくなってしまった。修正作業を早急に完了させる予定。

さて、8月は夏らしい晴れて暑い日もあれば、台風が来て大雨になったりと、中々あわただしい天候だったが、天気予報の精度にとっては、やや厳しい状況だったようだ。トレンドを見るとわかるのだが、前日の予報は、天候も気温もそれなりに傾向を的中させているのだが、週間予報はかなり的中率が低いようだ。特に、8月後半の週間最低気温予報は、ほとんど25℃近辺の数字しか出ていないみたいだし、何だか投げやりな印象がないでもない。

今月の予報の苦戦状況は、天候相関や、気温相関でも明らかで、前日や2日前の予報はかなりまともだが、それ以外は相関がない、または負の相関があるというような状況となっている。

ただし、気象庁が採用している気温の適中率の指標、RMSE(2乗平均平方根誤差)に相当する数値で見ると、このように、先月よりもむしろ良好となっているようだ。全体の傾向を予測することには失敗しているのだが、実績値とのズレは大きくなかったということになる。

これは先月も指摘したように、週間予報の存在意義にかかわる問題と思われる。偏差を小さくしようとするならば、1週間も先の詳細な予測などせずに、例えば平年値をそのまま示しておいた方が結構いい線いきそうで、実際に8月の気温予報はその傾向があったので、RMSEが良かったと言えなくもない。。

ところで先月も指摘したように、週間天気予報で「晴れ」の予報が7/30~8/1の3日間だけ集中的に出されたのだが、結局なんだったんだろう?? (8/5と8/6は確かに晴れだったので、結果としては的中したようだが。。)

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