人類ふたたび月へ
各紙が報道しているが、NASAは2018年(13年も先だ)に再び人類を月に立たせる計画を発表した。
asahi.com 2018年に再び月へ NASAが正式発表
YOMIURI-ONLINE 2018年、有人月着陸再び…NASAが計画発表
MSN-Mainichi INTERACTIVE NASA:2018年に再び月へ 有人宇宙飛行計画を発表
Sankei Web 2018年、再び月へ NASA有人飛行計画
各紙の報道内容はいずれもあっさりとしており、計画全貌を詳細にフォローしてる記事はないようなので、全部に目を通さないと全体像が見えてこない。読売新聞の記事が最もコンパクトだ。
米航空宇宙局(NASA)は19日、新しい有人月着陸計画を発表した。2018年に4人の宇宙飛行士を月面に送り込み、1週間滞在させて、月基地建設の準備作業を行う。朝日新聞は打ち上げには、スペースシャトルの主要推進システムを受け継いだロケット2機を用いる。実現すれば、1972年のアポロ17号以来、46年ぶり7回目の月着陸を果たすことになる。
NASAの計画によると、有人探査船(CEV)を搭載する小型2段ロケットと、月着陸船を搭載する大型物資輸送ロケットを別々に打ち上げ、宇宙空間で両者をドッキングさせて月を目指す。
2008年から周回衛星やロボットを使った予備調査を始める。有人探査船の初飛行は、2012年に行い、シャトルが引退する2010年に着陸船の開発に着手する。
二つの宇宙船には液化メタン燃料のエンジンと、太陽電池パネルを搭載する。将来、火星への有人飛行が実現した際、火星の大気からメタン燃料を得る計画に備えてのことだという。と、液体メタン燃料エンジンに言及している。火星にメタンなんかあったかな?と調べてみると、AstroArtsによると、二酸化炭素:約95%、窒素:3%、アルゴン:1.6%、となっている。。 CO2からメタンを合成するのだろうか? 一方、毎日新聞には
月へは最低でも年間2回の飛行をし、将来的な火星有人探査計画などのための恒久的な月面基地を建設する。候補地としては、地下に氷が存在すると考えられ、エネルギー源となる太陽光が利用しやすい月の南極付近が検討されている。と、月面基地の建設のこととその候補地のことが書かれている。産経新聞にはミッション全体の模式図などが載っている。
さて、NASAの解説はHow We'll Get Back to the Moonで読める。もちろん英語記事だが要所要所に絵が載っていてわかりやすい。上記日本の新聞記事では得られない情報として、
And while Apollo was limited to landings along the moon's equator, the new ship carries enough propellant to land anywhere on the moon's surface.ということで、アポロでは月の赤道付近にしか着陸できなかったのだが、今度は月のどこにでも送り込めるとある。この書き方だと、そのためには推進剤が多く必要ということのようだ。また、月の軌道上で待機するオービターは無人運転でき、月面基地が完成後には飛行士は月面上に6か月滞在可能とのこと。一方、打ち上げロケットシステムについては、Once a lunar outpost is established, crews could remain on the lunar surface for up to six months. The spacecraft can also operate without a crew in lunar orbit, eliminating the need for one astronaut to stay behind while others explore the surface.
Best of all, these launch systems are 10 times safer than the shuttle because of an escape rocket on top of the capsule that can quickly blast the crew away if launch problems develop. There's also little chance of damage from launch vehicle debris, since the capsule sits on top of the rocket.とあり、スペースシャトルのロケットシステムを有効活用するけれど、人間が乗る部分がロケットの最上部にあるため、シャトルで問題になっている断熱材の破片などによるダメージが避けられるのと、緊急時の脱出が可能になるようだ。これらによって安全性が10倍になるとのことだが、この10倍という数字の算出根拠にも興味がある。 シャトルは今まで114回の打ち上げで2回大事故を起こしているので、その10倍ということは約500回に1回の死亡事故ということになりそうだ。
NASAの資料としては
解説フラッシュ
高画質イラスト
FAQ
などが公開されている。考えてみると結構途方もない巨大プロジェクトなわけだけど、一目で誰にでもわかる目標や絵を見せるやり方はさすがにNASAだなあ、と思わせる。
以前紹介したスペースシャトルの落日には、スペースシャトルの大きな欠点として、多目的型の万能機としたこと、翼を持つ着陸型としたこと、液体水素エンジンを採用したこと、の3点を指摘していた。さすがにNASAもそれは認識していたようで、先の2つは明らかにシャトルとは異なる路線に転換したようだが、最後の液体水素エンジンだけはそのまま採用することになったようだ。今でもシャトルの打ち上げの際に液体水素関係のトラブルが多いような気がするけど、大丈夫だろうか?
それにしても、アポロ計画から約50年。全体のロケットシステムや月着陸船などの絵を見ると、アポロ計画とほとんど一緒のように見える。この50年間は宇宙開発の停滞期間だったのではないかという印象もあるのもあるが、それだけ50年前の計画が優れていたということかもしれない。
2018年以降に月面に降り立つ宇宙飛行士は、現時点での中学生か高校生あたりだろうな。
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