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2005/09/08

土壌中の炭素が減少

共同通信(9/8)のニュース。代表して、中国新聞から。土壌中の炭素、減少続く 温暖化が原因と英研究者

 過去25年間に、土の中にある炭素の量が減少を続けており、これまで考えられていたより広い範囲の土地から二酸化炭素(CO2)が大気中に出ている可能性が高いとの分析結果を、英国立土壌研究所などの研究者が8日付の英科学誌ネイチャーに発表した。

 地球温暖化で土壌中の炭素を分解する微生物の活動が活発になったことなどが原因とみられ、放出されたCO2が温暖化をさらに加速する悪循環につながる可能性がある。

 グループは「調査をしたのは英国の土だけだが、同様のことが温帯の広い範囲で起こっているのではないか」と指摘しており、今後、詳しい調査が必要になりそうだ。

というのだが、土壌中の平均的な炭素含有量を求めるのも難しそうだし、地球全体の炭素循環の中でどの程度の割合を占めるものなのかが不明である。Google Newsで検索して見つけたBBC NEWS、Warmer soils add to climate worryによると、
They base their assessment on a huge analysis of soil samples gathered from across England and Wales over 25 years.

The team says its findings, if extended to the whole of the UK, suggest some 13 million tonnes of carbon are being lost from British soils each year.

The Cranfield University group reports its work in the journal Nature.

The scientists say computer models used to forecast future climate trends will now have to be revised because the calculations on which they are based will be wide of the mark.

"Our findings suggest the soil part of the equation is scarier than we had thought," Professor Guy Kirk, of Cranfield University, told journalists at the British Association's Festival of Science in Dublin, Ireland.

"The consequence is that there is more urgency about doing something - global warming will accelerate."

Indeed, as an illustration of how big a problem this is, it is likely the carbon lost from British soils since 1990 will have completely wiped out any reductions the country might have made through technological gains over the same period.

イングランドとウェールズから採取した過去25年間の多量の土壌サンプルを分析した結果、イギリス全土に換算して1300万トン-C/年が土壌から大気に放出されている計算になるということで、この量は、イギリスがこの間に技術的に削減してきた二酸化炭素の排出削減をそっくり帳消しにする程度らしい。さらに
At its beginnings in 1978, almost 6,000 soil locations were sampled at various depths down to 15cm. Over the intervening years something like 40% of these sites have been re-sampled and their chemistry analysed in detail.

Professor Kirk and his colleagues have been able to show that the two countries' soils have given up around 0.6% of their carbon content per annum - or just over four million tonnes in the 25 years to 2003.

ということで、6000箇所以上から土壌をサンプリングして、平均で炭素含有量が年間0.6%減少しているという結果を得たようだ。原因については、土地の利用方法の変化も考えられるが、その影響はほとんどなく、大部分は平均気温がこの間に約0.5℃上昇したことによる微生物の活発化によるもの、という結論のようだ。そうだとすると、地球温暖化が土壌からの炭素の放出を加速するという悪循環(正のフィードバック)が起こってしまうので、地球温暖化予測モデルの修正が必要ではなかろうか、という話になっている。

ちなみに、イギリスからの二酸化炭素の放出量は全国地球温暖化防止活動推進センター資料によると、2000年で5億6900万トン-CO2/年であり、今回見積もられた土壌からの放出分はCO2換算で約4800万トン-CO2/年となり、全体の8.4%に相当する。確かに影響の大きそうな数字だ。もっとも、BBC Newsにも書いてあるが、土壌から失われた炭素が全て大気に出たかどうかは疑わしく、水や地下深くに移動したものもありそうだ。NewScientist.comのニュースによると

Soils are a vitally important sink for carbon dioxide - twice as much carbon is wrapped up in soils as in Earth's vegetation or atmosphere. It is estimated that they store 300 times the amount of carbon dioxide now released annually by burning fossil fuels.
とあり、土壌中に存在する炭素は化石燃料を燃やすことで1年間に放出される量の300倍に相当するとある。とすると、その0.6%が毎年失われるということは化石燃料での放出分の1.8年分もが土壌から放出されることになるぞ??

地球全体での炭素循環やその中での土壌中の炭素の位置づけについては、環境省の地球温暖化解説の炭素循環のメカニズム<炭素の短期循環>や、炭素循環のメカニズム<地球の物質循環>あたりに比較的わかりやすくまとまっている。これによると気温上昇による土壌からの炭素放出は今のモデルに既に折り込み済みのようだけど、その影響の大きさが従来の予想以上だったということだろうか。

少し詳しく調べ始めてみると、このあたりはまだまだ不明な点が多い領域のようで、気温の変化による炭素バランスの変化については諸説ふんぷん(紛紛と書くらしい)だ。土壌中の炭素と温度の関係も、緯度や土地の利用形態によって異なるようで、今回の結果をそのまま地球全体に外挿するわけにはいかないようだ。まあ、このような事実を少しずつ積み重ねていくしかないってことだろう。

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