燃料電池バイクの実力は?
FujiSankei Business i(9/13)の記事。二輪車も燃料電池に ヤマハ発リース、ホンダは開発中
ヤマハ発動機(静岡県磐田市)は十二日、メタノールを燃料にして発電し、モーター走行する燃料電池二輪車「FC-me(エフシー・ミー)」を開発、十六日から一台を静岡県にリース販売すると発表した。リース料金は月十万五千円。燃料電池を搭載した二輪車を実用化するのはヤマハ発動機が世界で初めて。ところで、同じニュースを扱うNIKKEI NETの記事には、一方、ライバルのホンダ(東京都港区)は、高圧水素を燃料にして発電する燃料電池二輪車を開発中で、二〇〇九年のリース販売開始を目指している。四輪車に続いて二輪車も環境にやさしい燃料電池搭載車の開発競争が激化してきた。
(中略)
一方、環境負荷の面でみると、ホンダの燃料電池二輪車は酸素と水素を化学反応させて電気を起こすので、水しか排出しない。ヤマハ発動機のシステムは、メタノール水溶液を直接燃料として使用するので、ガソリン車より少ないものの二酸化炭素(CO2)も排出する。ガソリンの原付きバイクと比べると二酸化炭素排出量は約45%少ない。
ホンダは排気量一二五ccのスクーターをベースに開発しており、ある程度の遠距離ツーリングが可能なように航続距離は二百キロメートルを目指している。一方、ヤマハ発動機は電動バイクと同様の地域コミューターとしての利用を目指して開発したもので、ガソリンを使用する五〇cc原付きバイクの代替需要を主体に考えており、満タン時の航続距離は百キロメートルだ。
名称は「FC―me」。道路交通法では第一種原動機付き自転車に属する扱いで、エタノール溶液を燃料に使う。とあるけど、メタノール水溶液の間違いですね。nikkeibp.jpには、
同社の開発した「ヤマハ ダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)システム」を搭載する。液体であるメタノール水溶液を燃料とし、改質器などを必要としないため、水素ガスを使う燃料電池システムと比べコンパクトなサイズという。とあり、水素ガスを原料とする燃料電池は元々改質器は不要なので、この表現はおかしいぞ。 日経の記者さん、大丈夫かな? さて、ヤマハ発動機のニュースリリースに主要スペックが載っている。これによると、
定格出力 0.58kW
燃料 54質量%メタノール水溶液
燃料タンク 3.2リットル
車両重量 69kg
とあり、小型のバイクにしては重量が重いような気もするけど、重量や航続距離と出力の関係は、通常のバイクや最近の電動バイクと比べてどうなんだろう? 燃料タンクが3.2Lで、航続距離が100kmとのことだから、燃費は約30km/Lとなる。ガソリンと54%のメタノール水溶液では、同じ体積でも炭素含有量が大きく異なるので、結果としてCO2排出量は45%程度削減されるようだ。
同じヤマハが最近発売した、電動スクーター EC-02の場合には、
定格出力 0.58kW
最高出力 1.2kW
最大トルク 7.5N・m/rpm
リチウムイオン電池 25V-24Ah
100%充電に6時間、1充電走行距離 43km
車両重量 47kg
とあり、使用しているモーターは同じものかもしれない。この電動スクーターはかなり小型で車両重量も軽いから、燃料電池バイクの方は車両重量に対してモーター出力がやや不足気味かもしれない。それでも、リチウムイオン電池だと1回で32kmしか走れないのと比べると、燃料電池バイクの100kmの航続距離はアドバンテージではある。もっとも、電池を室内に持ち込んで充電するために電池重量を6kgに抑えているのも影響していそうだが。。
なお、電動スクーターについてはLCAの結果が掲載されている。
一方、通常の50ccクラスのガソリンバイクの場合、例えばヤマハのBJでは、
最高出力 4.6kW(6.3PS)
最大トルク 6.6N・m/rpm
車両重量 75kg
燃費 58km/L
燃料タンク 4.6L(航続距離は 267km)
となっており、意外なことに車両重量は75kgもあるのだが、さすがに動力性能は優れており、トルクはモーターには劣るもののパワーは相当大きいし、航続距離も圧倒的だ。
ということで、定格出力0.58kWというのがどの程度の走りになるのかにもよるが、現状ではコスト以外にも課題が多いという印象だ。果たして燃料電池バイクの存在意義があるのだろうか? 燃料電池自動車が普及して燃料供給インフラが整備されれば、確かにありそうだけど、メタノール水溶液の燃料電池車なんか実現しそうもないような。。 むしろ電気自動車が普及して充電インフラが整備されれば電動バイクもかなり有望になりそうだけど。
ところで、燃料の54%のメタノール水溶液だが、わざわざ水溶液にする理由は DMFCの課題の1つであるメタノールクロスオーバーに対する対策だろうか。(参考)法的にはガソリンにしてもメタノールにしても消防法の規制を受けるだろうし(注)、メタノールの毒性もこの程度の希釈では解決策とはならないだろうし。。
注:ここには17Mメタノール水溶液は危険物に該当しないとある。17Mだと、32×17=544g/Lとなり、54wt%近辺の濃度になりそうだ。
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