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2005/09/15

「機長からアナウンス 第2便」

このブログで紹介している硬めの本ばかりの中ではちょっと異質ではあるが、帯には

飛行機の安全が気になったら、本書を手にとってください。
読めば安心。 故障、緊急時のエピソード満載!
とあるように、「安全」に関する航空業界の取組が幅広くエッセイ形式で紹介された、なかなか学ぶ所の多い本である。

新潮文庫
 機長からアナウンス 第2便
 内田 幹樹 著 bk1amazon

タイトルに「第2便」とあるように、本書は「機長からアナウンス」(bk1amazon)の続編にあたる。第1弾の方をしばらく前に読んだのだが、こちらは飛行機に関連した蘊蓄や裏話が読める気軽なエッセイという感じだった。今回の「第2便」は大部分が「安全」をテーマとして、著者の考えが表明されている点で少し趣きが異なる。また、おまけとして、最近JALで頻発したトラブルやJR西日本の脱線事故に対して、元機長としての経験と見識を元にしてコメントしており、これもなかなか興味深い。

旅客機の機長は乗客の安全を守る重い責任を持つわけで、それなりの権限も与えられているのだが、定期的な試験をクリアしないと資格を維持できないという点では、他の国家資格などとは一線を画している。そういう立場で長年飛行機を飛ばしていると、それなりに多くのトラブルに遭遇し、それを解決していく経験を積んでいるわけで、ここで語られる言葉には重みがある。

本書では、ハイジャックや、航空機や飛行場のトラブルなどについてのエピソード、パイロットの訓練や機体整備の実態、日本の飛行場の問題点、航空業界の問題点などが、広範囲にわたって、とてもわかりやすく書かれている。

これを読むと、旅客機の機長という仕事は非常に大変なんだなあ、と素直に尊敬したくなる。それに、飛行機は事故が起きたときの被害が大きいし、それなりに事故が起きるので、安全に対する考え方が体系化されていて、しかも徹底しているという印象だ。従って、ここで語られている安全な飛行のための様々な考え方、仕組み、方法などは、他の分野でも非常に参考になるものが多いだろう。

それでもトラブルや大事故が起きるのは何故か? という問いに対する著者の出した結論、「人間は誰でもミスを犯すから、事故は必ず起きるもの」は、ある意味でとても常識的ではあるが、やはりこれが全ての出発点となるべきなのだろう。

ところで、著者は、新幹線の座席にシートベルトがないこと、新幹線の頭上の荷物棚に扉がないこと、最近の無人運転列車の非常時の安全対策、モノレールなどの高架からの安全な脱出方法、などについて、飛行機と比べて余りにも基準や対策が遅れていると指摘している。確かに、明確な根拠がなく何となく決められている部分もあると思うけど、乱気流などで急降下する可能性のある飛行機と、電車などを同列に扱うのはどうだろう? 

例えばシートベルトについて考えると、新幹線が高速で脱線や衝突する確率をどの程度と見積もるかだが、実績から考えるとシートベルトが必要となるケースは非常に稀だろう。乗客がそんなレアケースを想定して、素直にシートベルトを着用するとは思えないし、それを確認するための手間暇まで考えるとやっぱり非現実的と思うなあ。。

ともあれ、交通関係に限らず、広く安全に関心を持っている人にとっては、安価で軽く読めるし、いろいろと考えさせられる点が多いということでお勧めの本である。

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