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2005/10/19

燃焼時のCO2発生を削減する添加剤

MSN-Mainichi INTERACTIVE(10/18)の記事。添加剤:廃プラ燃焼時、CO2が半減 東京理科大ベンチャーが新開発

 プラスチックに数%加えるだけで、燃焼時の二酸化炭素(CO2)発生量を半減させる添加剤を開発したと17日、東京理科大の教員らが出資するベンチャー企業「日本ボロン」(東京都渋谷区)などが発表した。添加剤にはプラスチックの強度を高める働きもあり、製品の軽量化や原料の使用量の削減にもつながるという。同社などは「焼却されることが多いレジ袋などへの需要が期待できる」と話している。11月に本格出荷する。

 添加剤の商品名は「ナノハイブリッドカプセル2」。酸素を吸着する性質を持った脂質成分でできた粒子で、直径を50ナノメートル(ナノは10億分の1)まで小さくしたことで、酸素を吸着する能力が飛躍的に高くなったという。

 同社によると、添加剤を3%入れたポリエチレンを燃やしたところ、同量のポリエチレンだけを燃やした時に比べCO2発生量を約4割削減できた。灰はその分多く出る。

 添加剤の粒子にはプラスチック結晶化を促す働きがあり、引っ張り強度が最大2倍に高まるという。1キロ2800円程度で販売する。

というものだが、数%添加するだけで、燃焼時のCO2発生量を4割も削減できるという優れものらしいけど、焼却してもCO2にならずに何になるんだろう?「灰はその分多く出る」と書いてあるが。。

日本ボロンのホームページで探すと、ナノハイブリッドカプセル2の紹介記事がみつかった。これによると、

「ナノ ハイブリッド カプセル 2」は、10億分の1という超微細技術であるナノテクノロジーと環境融和型溶媒として注目されている超臨界二酸化炭素流体の特性を活用した新技術によって開発したナノカプセルを樹脂に応用した添加剤です。これは、脂質という物質を超臨界技術を使用してナノ化したもので、PP、PE、PETなど現在汎用されているプラスチックに3%程度混入させることにより結晶の発達が促進され、強度が最大2倍に高まるとともに、燃焼時には不燃焼性ガスと燃焼性ガスとが反応してCO2(炭酸ガス)排出量がほぼ半減します。

また、このカプセルにポリ乳酸などの生分解性物質を保持させることにより、生分解性プラスチックとすることができ、PPやPEに混入した場合、最終的には分解し土に還ります。

とある。通常のプラスチックに少量加えるだけで、全体が生分解性になるのかどうかにも疑問はあるのだが、今回はCO2削減に着目しよう。CO2発生量の削減については、「不燃焼性ガスと燃焼性ガスが反応」することで達成されるらしい。特許電子図書館で調べてみたら、まだ特許が公開になっていないようだ。この段階では、まだ技術の詳細を明らかにできないのかもしれないが、大学発のベンチャーということだし、もう少し科学的な記述が欲しいところだ。

このナノハイブリッドカプセル2は、イーベーシックという会社から販売されるということで、次世代型プラスチック化へのご提案という紹介ページが見つかった。こちらには

プラスチックの燃焼時に発生する可燃性ガスがCO2発生の原因となっています。「ナノ ハイブリッド カプセル 2」を樹脂に添加した場合、この可燃性ガスを中和させて不活化させる不燃性ガスが同時に発生します。これにより、CO2発生量が既存品のほぼ半分まで抑えられることが証明されています。
と書かれているが、「可燃性ガスを中和させて不活性化させる不燃性ガス」という記述は、化学の世界の用語の使い方ではないようだ。「証明されています」と書かれても、データが何もないので判断のしようがないし。

「可燃性ガスを中和させて不活性化させる」というのをそのまま解釈すると、プラスチックから発生する可燃性ガスが、酸素と反応する前に、ナノハイブリッド2から発生するガスと反応し、何か別の安定な化合物(って何よ?)が生成するということだろうか? ちょっと考えにくいけど、特許が公開となるのを楽しみに待ってみるか。

あるいは、ナノハイブリッド2が、周囲の酸素を奪い取る能力をもつ還元性のガスを発生させるということかもしれない。でも、わずか数%の添加剤が周囲の酸素を奪い取ってしまうというのも考えにくい。もしかすると燃焼方法や燃焼条件も通常のものではないのかもしれない。。

一方、毎日新聞の記事には「酸素を吸着する性質を持った脂質成分でできた粒子」と書いてあるけど、これだと不燃性ガスを発生させるというホームページの記載と話が違う気もしないではない。まあ、いずれにしても、簡単に言えば、不完全燃焼させることで二酸化炭素の発生を抑制する技術ってことになるのかな?

でも、二酸化炭素が発生しない代わりに何が生成するのかは注意深くチェックする必要があるだろう。例えば、有害な一酸化炭素が発生すると、結局はそれを酸化してニ酸化炭素にしないと排出できないし、もしかすると蒸し焼き状態で生成しやすい炭化水素などが発生し、排ガス中に含まれているかもしれない。

さらに、生成する「灰」は炭素を含有する固体となるのだろうけど、有害なタールなどを含むかもしれないし、中途半端に可燃性の物質となるかもしれないが、どう処理するのだろう? 固体燃料に応用できるかもしれないけど、これだと、結局二酸化炭素になってしまうし。。

ところで、この添加剤を加えたプラスチックを他の普通のプラスチックと一緒に焼却処理するとどうなるんだろう? この時に「可燃性ガスを中和させて不活性化させる」ガスが生成しちゃうと、焼却炉の運転は著しく困難にならないだろうか? 発生熱量は不足するし、排ガス処理条件は変わってしまうし、焼却灰も多量に発生するし。。 そこまで考えていないのかなあ?

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