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2005/10/03

燃料電池用の固体水素燃料

nikkeibp.jpの記事(10/3)。オリンパス、英キネティック社に水素エネルギー技術の研究を委託

オリンパスは、欧州最大の科学技術研究機関である英キネティック社に対し、燃料電池に使用する次世代の水素エネルギー技術に関する研究を委託した。同技術により、携帯機器用の小型で高出力、長時間駆動可能な燃料電池の実用化を目指す。

今回の研究委託により、キネティック社は水素含有率が20%と高く、エネルギー効率の良いアンモニアボランを使った小型水素発生器の試作機を2008年に完成させる計画。その後、オリンパスは同社の未来創造研究所が目指すセンサーネットワークシステム(定点カメラなど通信機能を持つセンサーを多数設置して、設備の管理や環境の計測などに役立てるシステム)やユビキタスシステムなど、様々な携帯機器に適用すべく、燃料電池の研究を行う。

現在、世界的には電池に直接メタノールを供給し化学反応により発電させる方式の「ダイレクト・メタノール型燃料電池」の開発が進んでいるが、実用化には多くの課題が残っている。アンモニアボランを燃料とする燃料電池は、小型、高出力(10W以内)を実現し、4G次世代携帯電話など、ピーク電力変動の大きい機器でも安定して長時間駆動することが期待できるという。

どうやら、水素を多量に含むアンモニアボランという固体を燃料電池の燃料として使うということらしい。固体燃料というのは確かに使い勝手は良さそうなのだが、具体的にはどんなものなのだろう? オリンパスのニュースリリースを見ると、
キネティック社の技術は、約20%を水素で構成するアンモニアボランという固形材料を使います。原理としてはまず、この材料を小粒に加工したものを加熱することで水素が放出されます。次に、その水素が水素燃料電池に供給されて電力を発生します。この小粒燃料を交換式カートリッジに入れておけば、そのカートリッジを差し替えるだけで瞬時に『燃料補給』されます。
とあり、この固形燃料を加熱して水素を発生させるらしい。アンモニアボランはあまり聞かない物質だが、化学式は NH3BH3 で、四面体型のNH3とBH3のNとBがエタン分子のような形に配位している物質のようだ。分子量から計算すると、水素の含有量は確かに19.6wt%となるのだが、含有する水素を全部放出してしまったら化学式としてはBN(窒化ホウ素)になってしまうけど、本当かな?

探してみたら、US DOEのサイトのHydrogen Storageの中に説明があった。

  NH3BH3 → NH2BH2 + H2 → NHBH + H2

ということで、実際に使える水素はその 2/3の 13%程度のようだ。(ちなみにメタノール中の水素含有量が12.6wt%) 原理的には1段目の反応が120℃、2段目の反応が160℃で起こると書かれているが、Azonano.comによると、最近ナノサイズにすることで、80℃以下でも効率よく水素を発生できるようになったようだ。

この技術を開発中の、イギリスのQinetiQ社のNews Releaseには、何も技術的な内容が書かれていないのだが、固体燃料の写真が掲載されている。通常の乾電池型のケースの中に白色の固形燃料が詰められていて、これなら確かに操作性が良さそうだ。でも、この乾電池型ケースの中で熱分解により水素を発生させるのだろうか? 本体との接続部のシールも気を使いそうだ。

それにしても、この固体燃料は水素の発生効率を良くすると、保管時にちょっとした熱でも水素が発生してしまいそうだし、なんか危なそうだけど大丈夫だろうか? MSDSを見ても、結構取り扱いには注意が必要と思われる。それに、携帯電話などの電源として使用するとなると、原理的に加熱する必要があるわけで、相当うまく冷却しないと熱くなって使えないような気もする。。 これらの問題に、一体どんな答えを出すのか興味のあるところだ。

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