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2005/10/17

ナマコの遺伝子でマラリア根絶?

日本経済新聞の10/17朝刊、23面に「マラリア防ぐ蚊 自治医大・茨城大 遺伝子操作で開発」という記事が載っている。ウエブには掲載されていないようなので、一部引用。

 自治医科大学の吉田栄人講師と茨城大学は、マラリア原虫を媒介するハマダラカの遺伝子を操作してこの蚊の体内で原虫が増えないようにする技術を開発した。原虫に感染した人の血液を蚊が吸っても体内で血液が溶け、血中の原虫も死滅する仕組み。自然界に放って野生種と交雑させれば、マラリア根絶につながる可能性があるという。

 人の血液を溶かすナマコのたんぱく質に着目。このたんぱく質を作る遺伝子をハマダラカに組み込んだ。ネズミマラリア原虫をラットに感染させ、遺伝子を操作した蚊56匹に血を吸わせて体内の原虫数を調べた結果、平均0.4匹と通常の十分の一に減った。

とある。マラリアは海外感染症情報にあるように、世界中で毎年200万人前後が死亡している感染症だ。ワクチンのような予防接種がなく、薬剤耐性のあるマラリアという問題もあり、なかなか厄介な病気となっているようだ。人類が根絶したい病気の候補の一つとしてマラリアがリストアップされているのだが、媒介させる蚊を絶滅させるというのも現実的ではないということで大変なようだ。

今回の研究では、蚊の体内で原虫を殺してしまうらしい。IDWR: 感染症の話にはマラリア原虫の増殖の仕組みが書かれているが、蚊の体内での増殖については触れられていないのでよくわからないが、蚊が吸った血液が蚊の体内で溶けてしまい、マラリア原虫が生き延びれないということらしい。

この研究を行っている自治医科大学の感染・免疫学講座 医動物学教室の紹介は、正にマラリアの専門家集団と言えそうだ。今回のの研究を行った吉田講師は遺伝子組換えハマダラカの作製を専門としているようだ。

こんな具合に都合の良い性質をうまく導入できるとは、最近の遺伝子組換え技術には素直に驚くしかない。さすがに自然界で蚊がナマコの遺伝子を獲得するなんて可能性はほぼゼロだろうから、正に人類が作り出した新たな生物と言えるだろう。こんな具合に人間にとって都合の良い生物を作り出すことに対する倫理というのはどう考えるべきなのか、悩ましいところだ。。 マラリア原虫が絶滅するだけならば許されそうな気もするけれど、生態系に対して他の影響がないのかどうかは慎重に見極める必要があるのだろう。まあ、それ以前に、この遺伝子組換え蚊が自然界で繁殖していけるかどうかが最初のハードルかもしれないが。。

ところでハマダラカに導入したのが、何でナマコの遺伝子なの? というのがちょっと興味深い。そもそも「人の血液を溶かすナマコのたんぱく質」って、ナマコ恐るべしだが、あまり聞いた事がない。 ナマコはこりこりとしていて結構好きだし、コノワタは珍味だというのに、そんな怖いたんぱく質を含んでいるモノを食べても大丈夫なのか?

Wikipediaによると、ナマコの持つサポニンが医薬品にも使われるようだ。ということで、サポニンを調べてみると、ナマコのサポニンは確かに赤血球を溶解させる力を持っているらしい。ということは、このことなのだろうか? サポニンはたんぱく質ではなさそうだけど。。 

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コメント

この記事を書いている時には気付かなかったのですが、http://www.whatawonderfulworld.tv/" target="_blank">What a woderful world.tvの方に極めて基本的なコメントがつきました。

>今の蚊をこの蚊に置き換えるように繁殖させる・・のでしょうか??

うーむ、遺伝子組換え蚊が普通の蚊と自然交配してできた子に、ナマコ遺伝子が引き継がれるということでしょうか? あるいは、自然界で、遺伝子組換え蚊が普通の蚊を駆逐するのでしょうか? 確かに、疑問です。

投稿: tf2 | 2005/10/18 21:34

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