微粒子の強度測定装置
産業総合技術研究所のプレスリリース(10/26)微粒子強度測定装置を開発に注目。多分、普通の人にとっては、特に興味のなさそうな話だけど、粉末関係の仕事をしてきた関係もあって、僕にとっては興味のある分野だ。まあ、最新技術の備忘録として書いておこう。
独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)先進製造プロセス研究部門【部門長 神崎 修三】 集積加工研究グループ 明渡 純 研究グループ長、小木曽久人主任研究員は、サブマイクロメートル粒径(サブマイクロメートル:ここでは0.1マイクロメートル程度を示し1000万分の1メートル)の微粒子一個一個の形状の測定と、その微粒子の圧縮試験ができる微粒子強度測定装置を開発した。ということで、0.1μm程度のサイズの粒子の圧縮破壊試験を行う装置を開発したようだ。このプレスリリースは、グラフや図が掲載されており、とてもわかりやすい。(って、単にこちらの専門領域と重なっているからだけかもしれないが。。) ナノテクノロジーばやりで、1μm以下の粒子をナノサイズと呼んでしまう風潮がある中、サブマイクロメートルと呼ぶところも謙虚で、ちょっと好感が持てたりする。
現在、微粒子の圧縮強度を測定する装置としては、おそらく島津製作所の粒子圧縮強度評価装置ぐらいしか存在していないのではないかと思う。この装置で測定できる粒子のサイズは、10μm程度が限界だろうか? 何しろ、破壊試験を行う粒子を光学顕微鏡で見つけて、試験装置の中央に持ってこなくてはならないので、光学顕微鏡で判別できることは最低限の条件となる。もちろん、そんな小さな粒子一個が潰れる際の、荷重と変形の関係をそれなりの精度で検出できる必要もある。
今回の産総研の装置は、サブミクロン粒子を対象としているということで、もちろん光学顕微鏡は使えない。SEM(走査型電子顕微鏡)だと見やすいかもしれないが、強度測定との組合せは構造的に難しそうだし、試料を前処理する必要も出てくるし、ということでAFM(原子間力顕微鏡)を使っている。
これだけ小さな粒子を一粒ずつ確実に圧縮するために、色々と苦労して工夫したようだけど、それでも実際の測定は相当に大変そうだ。ここには、きれいな実験結果だけが載っているけど、島津の装置で数十μmの粒子の圧壊強度を測った経験から推定すると、測定に適した粒子を見つけて、きちんとセットするだけでも大変だろうと思われる。
凝集していない球状粒子ばかりだったらいいけど、不規則形状の粒子の場合にはどの方向の圧縮強度なのかという問題が出てくるだろうし、そもそもこの程度の微小粒子だと1粒ずつバラバラに分散させるだけでも大変そうだ。そういう点では、この装置が適用できる対象も限られているのだろうと思う。
ここには、アルミナ粒子の強度は、粒子径の-0.5乗に比例するという結果が載っているが、この結果はどう解釈すべきなのだろう? 粒子径以外の条件がすべて一緒であれば比較できるだろうから、例えばすべてが単結晶粒子であればわかりやすいのだが、もしもそうでないとすると個々の粒子を構成する1次粒子の数も桁違いに異なるだろうし、なかなか解釈も難しいと思われる。。
それにしても、島津製作所のサイトをちょっとお邪魔してみて感じたのだが、ここは企業のサイトとしては非常に充実していて感心させられる。特に、粉体関係などは地味な分野だけど、粉博士のやさしい粉講座のようなコンテンツも、とても丁寧な作りでなかなか出来がいいと思う。田中耕一さんのようなノーベル賞受賞者が出てくるのも、こういう企業の姿勢と関係があるのだろうか?
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