地球のために、180円。
「地球のために、180円。」とは何のことだかわかるだろうか? これは、環境省が提案している環境税のキャッチフレーズのようだ。現時点での計画では、総額3700億円のうち、家庭部門の負担が約1000億円で、1世帯あたりの平均負担額を求めると、月額約180円となるらしい。
今年になって、チームマイナス6%とか、クールビズやウォームビズという言葉も広く定着しているようだし、環境省の最近の広報戦略はなかなか見るべきものがあるように思える。このキャッチフレーズもわかりやすくていいんじゃないだろうか?
環境省のトップページを訪れてみたら、「環境税の4つの批判にお答えし、2つの提案をします。/地球のために、180円。」 というリンクが掲載されていた。このサイトを見てみると、小池環境大臣の名前で、環境税に関する主張がかなりストレートに述べられている。
今まで、大臣のフルネームをこれだけ前面に出したアピールというのはあまり見た記憶がないのだが、環境税が産業界などからの強い反対(経団連、日本鉄鋼連盟、石油化学工業協会など。)に遭い、劣勢に立たされている状況で、孤軍奮闘、なかなか頑張っているんじゃなかろうか?
主張している内容は置いておいても、少なくとも姿勢は高く評価したい。まあ、裏を読むと、京都議定書の約束を守るための崖っぷちに立たされた環境省としては、小池大臣の個人的なパワーにすがるしかない所まで追い詰められたのかもしれないのだが。。
それでも、環境税を巡る論議は、最後には国民全体の意向が大きく影響するだろうから、パフォーマンスと批判されようとも、環境省の立場と主張をアピールすることに意義はあると思う。今のところ、つぶされてしまいそうな状況だけど、これをきっかけにして、もしかしたらもしかするかもしれない。
で、肝心の4つの批判に対する答えと2つの提案なのだが、
批判1:日本の産業界に厳しい対策は必要ない。
批判2:温暖化対策に今以上の資金は必要ない。
批判3:環境税により日本の企業の国際競争力が失われる。
批判4:アメリカ、中国が参加しない京都議定書を守っても効果は乏しい。
提案1:石炭火力発電に使われる石炭の増加は見逃せません。
これを相殺する自然エネルギーの利用拡大が必要です。
提案2:論争ばかりしていて、森林整備を先延ばししてはいけません。
というもの。この資料では、それぞれの項目についての考え方が説明されている。総論としては確かに反対しにくい主張なんだけど、何故この金額なのか、実際に期待されるCO2削減量はどの程度なのか、などの定量的な部分がちょっと甘いという印象を受ける。
例えば、批判1に対しては、企業の努力を認めつつも、事務部門を中心により一層のCO2削減努力が必要だ、と指摘しているのだが、批判3に対しては、今回の環境税は微々たる金額であり、企業にとっては負担増とはならない、と言っている。これでは、今回の環境税は十分な効果は期待できない中途半端なものです、と言っているように聞こえなくもない。。
自然エネルギーを増やすとか、森林整備を進めるという提案も、それぞれもっともなものだけど、どうも具体性に欠けるように思える。残念ながら、環境省ひとりが孤立している状況では、説得力や実現性のあるプランになりづらいのかもしれない。
そんなこんなで、今回の環境税が十分な効果を生むものかどうかは疑問だし、規模や使い道についてもまだまだ議論の余地がありそうだ。でも、いつまでも議論ばかりしてないで、一歩踏み出してみるという選択をしてもいい時期に来ているように思える。
ということで、小池大臣を先頭にした「地球のために、180円。」キャンペーン。なかなかのグッジョブだと思うし、総論には賛意を示し、応援していこうと思う。
このキャンペーン、マスコミはきちんと取り上げてくれるのだろうか? そして、環境税反対派は、この小池大臣の回答と提案に対して、さらに反論をするのだろうか? これも注目だ。。
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コメント
家庭で月額180円ならば、工業に対しても含めてやはり排出量削減のインセンティブは期待していないように見えます。対策の費用を捻出するためと割り切って良いのではないでしょうか。
税収が3700億円と期待され、森林整備(1.3%分の吸収増)の2200億円に投入され残り1500億円が「環境対策減税」という配分のようですね。前者は数字としては非常に効率が良さそうです、まあもともと有利な約束で決められた数字だからかも知れませんが。後者は企業を対象としているのでしょうが、もともと企業から2700億円集めているはずなので、優良な環境対策に集中的に減税するのでしょうか、あまり具体的な運用は確かに見えません。ともあれ、そろそろ先延ばしを終わりにしようという環境省の態度が見えるのは良いですね。
投稿: ESD | 2005/11/26 01:01
金額を大きくするのか小さくするのか、非常に悩ましい選択だとは思います。また、どうアピールするか、によっても印象が随分変わるだろうと思います。
環境省は結局、たった180円で環境を守れるんだ、という主張を選んだというわけですね。消費税のときも、比率が小さいから影響も少ないというところから始まったような。。
投稿: tf2 | 2005/11/26 07:17