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2005/11/22

フラーレンからさまざまな形状の素材を作る

YOMIURI ONLINE(11/22)の記事。極微粒子フラーレン自由な形に、医療材料など応用期待

 炭素でできた極微の粒子「フラーレン」を材料にして、さまざまな形の立体を簡単に作る方法を、物質・材料研究機構(茨城県つくば市)の研究グループが開発した。

 フラーレンは、燃料電池や医療材料などへの活用が期待されているが、微細加工の難しさが応用への壁だった。今回の成果で実用化が大きく進みそうだ。

 フラーレンは60個の炭素原子でできた直径約0・7ナノ・メートル(ナノは10億分の1)のボール状の炭素化合物。将来の応用が期待される「ナノテク素材」の代表だ。

 研究グループは、フラーレンにさらに炭素をくっつける特殊な加工などを施したうえで、アルコールの一種に溶かした。これを加熱、冷却すると、ラッパ状の筒や球状カプセルなどの形ができあがった。立体の形は、溶かし込む液体によって、いろいろに変えることができるという。

 研究グループの中西尚志研究員は、「できあがった素材は、抗がん剤を病巣に運ぶ微小カプセルや、燃料電池の電極などへの応用が考えられる。今後は共同研究する企業を募り、実用化に取り組んでいきたい」と話している。

というもの。一度読んでもよくわからない記事である。タイトルの「極微粒子」という用語からして何となく、定義の不明確な用語だ。(超微粒子とかナノ粒子とどう使い分けるんだろう?)

この記事では、いわゆるC60に炭素をくっつけ、それをアルコールに溶かし、加熱・冷却することでフラーレンの形状がいろいろと変わるかのように読める。何だかイメージできなかったのだが、物質・材料研究機構のプレスリリースには、この方法で作った、球状、繊維状、円盤状、コーン状のそれぞれの素材の写真が掲載されている。例えば球状粒子の直径は400~500nmであり、繊維状粒子の長さは数μm程度ありそうだ。つまり、これは多数のフラーレンが集合してそれぞれの形状となったもので、フラーレン自身の形状が自由に変わるのではなく、フラーレン粒子の集合の様式を自由にコントロールできるということらしい。

リリースにもあるように、0次元、1次元、2次元、3次元のそれぞれの形状を作り出せることが興味深いのだが、しかも球状粒子はとてもきれいな球状だし、繊維状粒子は非常に細長くて立派なファイバーだ。これらの粒子の物性がどうなっているのか(カーボンナノチューブと比べてどうなんだろう?)、非常に興味のあるところだが、今回はそこまでは調べていないようだ。

具体的な製法は、PDF版資料に書かれている。まずフラーレン(C60)にアルキル鎖を3本くっつけるようだ。最終ページの構造を見ると、このアルキル鎖化合物は、C16の直鎖が3本伸びたちょっと変わった構造で、これをC60と結合させている。(読売の記事では炭素をくっつける特殊な加工と書いてあるけど。。)

これを、それぞれ異なる溶媒に溶解し、これを加熱した後に冷却すると、

 ・ジオキサン溶媒 → 円盤状粒子
 ・1-プロパノール溶媒 → ファイバー状、チューブ状粒子
 ・2-プロパノールトルエンの混合溶媒 → 球状粒子
 ・テトラヒドロフラン溶媒 → コーン状粒子

が得られるようだ。ふうむ、フラーレンはトルエンには溶けると聞いていたけど、このアルキル鎖処理をすると、極性の異なるいろんな溶媒に溶けるようになるらしい。それに、ここに出てくる溶媒はかなり単純で、ポピュラーなものばかりというのも面白い。何故この形になるのかは不明のようだし、これならもっと色んな溶媒で試してみたら、面白い形が得られそうで楽しそうだ。。

操作も簡単そうだし、いろんなバリエーションが考えられる点で、今後の応用が楽しみな技術だと思う。この研究は、物質・材料研究機構の物質研究所、超分子グループで進められているものであり、今後の進展を期待しよう。

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