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2005/11/17

大学生の数で見る理科系離れ

NIKKEI NET(11/17)の記事。学生の理科系離れ、日本は深刻・OECD調査

 日本の学生の理科系離れは主要先進国の中でも深刻――。理科系大学への進学率や学位取得などの状況を各国で比較するため、経済協力開発機構(OECD)がまとめた初めての調査で、こんな結果が明らかになった。

 日本は2003年と1993年の比較で理科系学部への大学入学者数が1.1%減少。フランスに次いで大きなマイナス幅だった。

 日本のもう1つの特徴は、理科系学部で男子学生が約9割を占めること。調査対象の13カ国で女子学生の比率は最低だった。

 OECDは「理科系への進学者が減れば、数年後には修士号や博士号の取得者も減る。ゆくゆくは日本の科学技術や企業の研究開発の土台も揺らぐ」と警告している。

 理科系離れは「先進国共通の課題」という。OECDは調査をもとに2006年に若者の理科系離れに歯止めをかけるための提言をまとめる。

ということで、11/17の日本経済新聞の夕刊の22面には各国を比較した表が載っている。それによると、2003年と1993年の主な理科系学部の大学入学者の増減率は、

  フランス    -1.62%
  日本      -1.12%
  ポルトガル   1.15%
  オランダ     1.37%
  韓国       2.61%
  フィンランド   4.13%
  ドイツ      4.84%
  オーストラリア 6.02%
  ポーランド    6.96%
  トルコ      9.24%

となっている。確かに最近は「理科系離れ」という言葉を聞く機会が多いし、この数字を見ると、その傾向が表れているように見えるのだが、本当にこの10年間の増減率だけで「日本は深刻」などと判断しても良いのだろうか? OECDのサイトでニュースやデータを探してみたが、今回の報道の元となったデータは見つけられなかった。

他国はともかく、日本がどうなっているのかを文部科学省のサイトで探してみると、データからみる日本の教育(2004)というデータがあった。この中の学校教育というPDF資料には、大学進学率の推移や学部別の学生数のグラフが掲載されている。

9ページの大学等への進学率のグラフを見ると、大学進学率は1993年(平成5年)の28%程度から、2003年(平成15年)の41.3%へとかなり大きく増加している。OECDの数字では理科系への入学者数は1.12%の減少となっており、だとすると、全体の大学進学者数は増えているはずなので、理科系学生の割合は大きく減少していることになりそうだ。。

6ページには、大学学部の分野別学生の構成のグラフが載っている。ここでは、1970年と2003年が比較されている。残念ながら1993年のデータは不明だが、とりあえず抜出してみると、以下の通り。

昭和45年(1970年)   平成15年(2003年)

トータル 1,344,358人 2,509,374人
人文科学 12.7%   16.3%
社会科学 41.8%   39.0%
理学     3.1%    3.5%
工学    21.1%   17.8%
農学    3.7%     2.8%
医・歯学  2.8%     2.5%
薬学    1.9%     1.6%

うち女性  244,006人 994,506人
人文科学 38.6%   27.8%
社会科学 11.9%   30.3%
理学     2.3%    2.3%
工学     0.7%    4.8%
農学     1.2%    2.9%
医・歯学   1.9%    2.2%
薬学     6.3%    2.4%

ということで、確かに理科系、特に工学系の減少が目立つ一方、人文科学が増加しているのがわかる。理学~薬学までを理科系とした場合、理科系の比率は1970年が32.6%、2003年が28.2%となる。確かに比率は減少しているのだが、全体の学生数が大幅に増えているので、理科系の学生数は約44万人から約71万人へと大きく増加している。これはこの33年間の比較だけど、本当に新聞記事の通りに、この10年では理科系の学生数が減少しているのだろうか?

一方、女性については、全体数も大きく増加しているし、この33年間では工学系がかなり増えているのがわかる。これから、2003年の理科系の学生に占める女性の比率を求めると 20.5%(薬学を除いても18.2%)となる。OECDの調査では女性比率は約10%程度とのことだが、文部省のデータとOECDのデータでは基本的なところで何かが大きく違っているような気がする。。 一体どこが違うんだろう??

ということで、OECDの調査の元となったデータを見ないと何とも言えないのだが、それぞれの国の事情があるだろうし、どちらにしても、この10年間の理科系進学者数の増減だけで議論するのは乱暴な印象がある。全体の傾向としては間違っていないのかもしれないが、もっと詳細な考察が必要と思われる。

それに、理科系の学生数が全体の30%程度というのは、それほど悲観する数字ではないようにも思う。これを他の国と比較するとどうなるんだろう? まあ、学生数が多ければ良いというものでもないだろうし、量ではなく質で評価すると、また違った側面も見えてくるのかもしれないけど。。

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