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2005/11/15

超音波霧化分離技術

日本経済新聞の11/15、15面(企業3・ベンチャー)から。「超音波などで純度99.5%に エタノール、低コストで 超音波醸造所」という記事。ネットには掲載されていないようだ。

 研究開発ベンチャーの超音波醸造所(徳島県鳴門市、本多洋介社長、0886-689-1119)は超音波と分子吸着を組合せ、ガソリンに混入できる99.5%の高純度エタノールを精製できる技術を開発した。常温常圧で精製でき、蒸留に比べてコストは三分の一で済む。日量2千-3千リットルを生産できる実用プラントも完成し、内外の化学大手と提携交渉を進めている。

 2年がかりで開発し、昨年度は超音波で濃度10%のエタノール水溶液を霧にし、エタノールと水の分子を分離して濃度を90%程度に高めることに成功した。今年度は吸着剤のゼオライトなどを利用する工程を追加し、99.5%の高純度を達成した。
 
 超音波の振動エネルギーは蒸留に要する気化エネルギーの八分の一で済む。電源に太陽電池を組み合わせてコストを大幅に減らした。(後略)

という記事。超音波で液体を霧状に発生させるところまでは、超音波式の加湿器と原理は一緒だろう。この霧をうまく液体として回収することで、混合物の分離・精製ができるということらしい。調べてみると、関連ニュースがネット上で結構たくさん見つかった。よく見てみると、ほとんど全てが、「超音波醸造所」と本多電子に関連しているようだ。

  超音波醸造所,省エネ「超音波霧化分離技術」の実証装置が完成
  1回のプロセスで99.5%アルコールを抽出、超音波醸造所が開発
  京都議定書の発効で注目度高まる、省エネ「超音波霧化分離技術」の実証装置が完成
  省エネ,温室効果ガス削減が可能な超音波霧化分離技術

などなど。また、日本酒作りの会社が何故?という辺りについては四国の産・官・学連携が参考になる。

さて、超音波醸造所というのは、松浦酒造場の子会社らしい。松浦酒造場は、オリジナルブレンドの日本酒を作ってくれる、「しゅムリエ」というサービスをやっている、面白い会社だ。サイトには、この超音波霧化分離技術で実際に製造している、25度の純米生酒「霧造り」の開発物語や、蔵元の胸の内というコラムなどが掲載されていて、とても充実している。

このコラムの23~26には、超音波霧化分離技術の仕組みの簡単な解説がある。これによると、まず霧化の段階で成分が分離され、さらに凝縮の段階でまた分離されるようだが、予想通り、結構複雑な現象らしい。セレンディピティによると、この技術は松浦社長自らが、ある時ひらめいて試してみたものらしい

他にも、超音波霧化分離技術の紹介記事は超音波醸造所のご案内で概要を知ることができ、さらに機械学会誌に書かれた解説記事超音波分留の実用化実験プラントで読むことができる。また、代理店を超音波醸造所が募集でも、詳細な説明を読むことができる。

実験データはかなり充実しているのだが、どうも、原理や実際に起こっている現象については、まだ不明な点も多いようにも見える。超音波霧化は通常の蒸留分離よりも蒸発潜熱分だけエネルギー的には有利なのはわかるけど、直感的には分離が効率的に行われる理由が思い浮かばない。。 (超音波加湿器では、水アカ成分や微生物まで霧化してしまうのが問題となっていたはずだし。。) 一体どうなっているんだろう?

まだ物理化学的な現象と化学工学的な現象が完全には切り分けられていないようだし、経験的な要素が少なからず残っているということは、スケールアップには苦労するのではないだろうか? 現時点では、実用プラントといっても、わずか2~3000リットル/日、約1000m3/年といった規模だ。記事ではガソリンに添加するバイオエタノールの精製にも、なんて論調だけど、要求される規模が2桁は違いそうだ。

一方で、既存の蒸留技術は長年ブラッシュアップしてきたもので、大規模生産によるコストの削減や、蒸留装置単独ではなく周囲のプラントとのトータルでの最適化なども徹底的に進められている。ということで、この超音波霧化分離技術が、小規模な特殊用途はともかくも、大規模汎用技術としてどうなのか? についてはこの資料だけでは何とも言えないところだろう。。

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コメント

11/15日「超音波霧化分離技術」でお取り扱いいただいた松浦です。ありがとうございます。ご相談があります。コメントの変更をお願いしたいのですが。「セレンディピティ」に修正しております。当方の編集人が間違えたようです。大変小さいのによく気がつかれましたですね。もう一点はスケールアップが可能なことです。日量7kLの精製装置ができています。

連絡が取れればいいのですが?

投稿: 松浦一雄 | 2005/11/22 14:24

松浦様、コメントありがとうございます。

セレンディピティの部分については、本文の表示を修正しておきます。

日量7kLとなると、新聞記事の3倍程度でしょうか。

連絡については、別途メールにてやり取りさせていただきます。

投稿: tf2 | 2005/11/22 14:28

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