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2005/12/28

はやぶさ、帰って来い・・・

今年の更新は恐らくこれが最後となる。年末年始はPC環境があまり充実していない状況となるので、来年の更新開始は少し遅くなるかもしれない。

さて、今年もいろんなことがあったけど、今日は今年の日本の科学成果のトップではないかと思う「はやぶさ」に触れて終わりにしたい。というのも、非常に感動的なフラッシュはやぶさ、帰って来い・・・を見て、一人でも多くの人に、この健気な「はやぶさたん」のことを覚えておいて欲しいと思ったからだ。何となく年末にふさわしいというか、新年のお参りの際にも、神様にもお願いしておきたい気分というか。。

はやぶさについては、9/12のエントリーで紹介しているが、その後の劇的な着陸・離陸の成功、および直後に襲ったトラブルについては、敢えてここで触れることもないだろう。経緯については、JAXAのはやぶさ公式サイトを参照願いたい。そして、これもとても良くできたフラッシュ、hayabusaも見て欲しい。はやぶさはとても大きな成果を上げたんだと思うし、僕らにとても素敵な夢やストーリーを与えてくれたと思う。やっぱり今年のピカイチだと思う。

はやぶさの現在の状況については、12/14付けの「はやぶさ」探査機の状態についてで読める。まさに冒頭のフラッシュの絵の通り、ボロボロ状態で、決して楽観できる状況ではなさそうだが、何とか遭難せずに帰って来られる見込みも十分にあるというところだろうか? 来年中には何とか帰還ルートに乗せて、2010年に地球に帰ってくるという計画らしい。今までも幾多の困難を何とか乗り切ってきたことだし、時間が掛かってもいいから、地球に帰って来て欲しいものだ。

なお、はやぶさについての各種情報へのリンク集としてははやぶさまとめwikiというのが作られており、実に充実している。また、はやぶさを含めて宇宙開発に関しては、松浦晋也さんのブログ、松浦晋也のL/Dもはずせない。


さて、皆様本年もこのブログをお読みいただき、本当にありがとうございました。どうぞよいお年をお迎えください。

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2005/12/27

「いなほ」脱線事故の社説比較

今日の社説では、朝日・読売・毎日の3紙とも、羽越本線の特急脱線事故について論じている。
 朝日:特急脱線 冬の強風、北国の悲劇
 読売:[特急脱線転覆]「強風対策は万全だったのか」
 毎日:特急転覆 安全管理で浮ついてないか

タイトルを見ただけでも大体想像がつくが、朝日、読売、毎日の順にJRの安全に対する姿勢に対する批判的な姿勢が強くなっている。まだ事故の全貌も、原因も明らかとなっていない時点で社説でどこまで主張するのか、結構悩ましかっただろうと思う。

朝日は、

 風速計に故障がなかったとすれば、鉄橋付近を予想もしない局所的な突風が襲ったのだろうか。

 この鉄橋は、川面からの高さが8~9メートルある線路がむき出しの「開床式」だ。運転士は「突風が吹き、車体が浮き上がった」とも語っている。下から吹き上げる風にはもろい車体が持ち上げられた、と推測する専門家もいる。

 国土交通省の事故調査委員会や山形県警が原因の調査を始めている。強風にさらされる鉄道は各地にある。効果的な再発防止策をとるためにも科学的な原因解明の努力を尽くしてほしい。

とあり、今回の事故は避けることが難しかったかもしれないというニュアンスをにじませ、ともかく原因究明を徹底的にして欲しいという主張である。まあ、朝日にしては穏健な主張と言えるのではないだろうか。

読売は、

 原因究明に向け、国交省の航空・鉄道事故調査委員会が調査を始め、山形県警も捜査本部を設置した。自然現象による不可抗力の事故、などといった先入観を持たず、原因の徹底究明が必要だ。

 運転士は「橋の上を走行中に突風を受けて車体が浮いた」と話している。「ものすごい突風が吹いた」とか「風がすごくて窓がバリバリと鳴るほど」だったという乗客の証言もある。しかし、JR東日本の輸送指令室は、徐行運転や運転停止の措置を採っていなかった。(中略)

 複数の要因が絡んで起きた可能性はある。だが、山形地方気象台も暴風雪警報を発令中だった。

 沿線の気象に細心の注意を払わず、マニュアル頼みだったとすれば、刻々と変わる状況に対応できない。鉄橋上に特有の強風を計算せず、適切な指示や改善を怠った人災ということはないのか。安全運行システムや車両性能にまで踏み込んだ検証が欠かせない。

 現場は緩い下りの直線で、時速120キロまでの高速運転が可能な区間だが、運転士の運転に問題がなかったかも、詳細に調べる必要がある。

ということで、マニュアル任せではなく、現場の状況に最新の注意を払っていれば避けられたのではないかということらしい。さらには、運転士の運転にまで言及している。運転士が現場の判断で勝手に徐行するようなシステムを作ったら、日本中のダイヤが大変なことになりそうな気もするけど、どうなんだろうな?

毎日はもっと過激で、現時点でここまで書くか?という印象を持たせるものなので、ちょっと長いけど全文載せておく。

 4月の兵庫・尼崎の悪夢がよみがえった。山形県の羽越線で起きた特急「いなほ」の脱線転覆事故。先頭車両は今度も線路脇の建物に激突し、車体を「く」の字形に曲げていた。閉じ込められた乗客の救出に時間を要したのも、尼崎の事故と同様だ。死者4人、負傷者三十余人を数える痛ましい事故である。乗客が少なかったのがせめてもの救いで、込んでいれば、さらに大きな惨事となっただろう。尼崎の事故後、鉄道事業者は安全対策に万全を期していたはずだが、年も変わらぬうちに再発させるとは利用者への背信行為だ。取り組みの姿勢や関係者の意識を疑わずにはいられない。

 強い横風が原因、とみられている。運転士も「突風で車体がふわっと浮いた」と話しているという。雪国では冬の嵐に見舞われ、台風並みの強い風が吹き荒れることが珍しくない。その風にあおられたらしい。現場付近の風速は毎秒約20メートルで減速規制するほどでなかったというが、平時と同じ時速約100キロで最上川の橋梁(きょうりょう)を渡ったことに問題はなかったか。突風とは言いながら、風の息づかいを感じていれば、事前に気配があったはずだ。暴風雪警報下、日本海沿いに走るのだから、運行には慎重であってほしかった。

 風速25メートルで速度規制、30メートルで運転中止--というマニュアルに違反していない、との説明にも納得しがたいものがある。設置場所が限られた風速計に頼っているだけでは、危険を察知できはしない。五感を鋭敏にして安全を確認するのが、プロの鉄道マンらの仕事というものだ。しかも86年の山陰線余部鉄橋事故などを引き合いにするまでもなく、強風時の橋梁が危ないことは鉄道関係者の常識だ。ましてや「いなほ」は秋田県の雄物川では風速25メートル以上だからと徐行したという。現場では計測値が5メートル低いと安心していたのなら、しゃくし定規な話ではないか。

 国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会は直接の原因だけでなく、列車の遅れとの関係、運転士や列車指令の強風への危機意識なども徹底的に調査し、再発防止に資する具体的な提言をすべきだ。

 惨事を繰り返しても、関係者の安全意識が高まらないことが歯がゆくてならない。JR西日本では先月、30カ所のカーブなどに設置した自動列車停止装置(ATS)が設計ミスのため、通過列車が速度超過しても作動しない状態になっていたことが発覚し、問題となっている。JR各社の在来線では国鉄の分割・民営化後、輸送障害と呼ぶトラブルが増加し、他の大手私鉄よりも安全面で劣っていることを示す国交省統計もある。

 鉄道のほか航空機、バス、タクシーも規制緩和された後、コスト削減によって安全面で不安が生じているとの指摘が相次いでいる。耐震偽造事件でも民間が参入した建築確認のあり方が問題化したが、経済規制を緩和しても、安全面までむやみに緩めるべきでないことは言うまでもない。この際、公共交通のすべてについて、安全対策を総点検すべきである。

今回脱線した特急「いなほ」は、秋田発新潟行きだったが、以前の「いなほ」は新潟回りで秋田と上野をつなぐ特急で、僕自身何度も利用した経験がある。今回の事故現場付近は、多分数十年前から大きくは変わっていないのではないだろうか? ここを時速100km程度で走行する列車は、一日に何本も走っているはずだから、数十年間に延べ数万本の列車が走って、今回初めて事故が起こったのだろうと思う。

偶然が重なって起こった事故なのか、それとも偶然が重なって今まで事故が起こらなかったのか? 確かに、鉄橋の構造に問題があったのかもしれないし、風速の観測システムや、規制の基準に問題があったのかもしれない。それでも今まで数万回問題がなかったわけだし、だから安全だろうと思い込むことは、果たして安全を過信していたという非難を受けるべきことなのだろうか? これだけ大規模な事故の発生確率は、通常百万分の一以下レベルを目標とするのだろうと思うから、今回のケースは結構微妙だと思われる。 それに対して、毎日の社説は随分と断定的で、JRを思いっきり非難している。しかも、今回の事故が、まるでコスト削減の結果起きたかのように書いてあるけど、そんな因果関係は今のところ出ていないと思うのだが??

もちろん、こういった事故はできることなら起きて欲しくないし、起きたからには原因を究明して、再発防止をするべきだ。でも、それはやっぱり結果論だ。むしろ「すべての事故は未然に防ぐことができる」という信念を持つことの方が、よっぽど安全を過信していると言えるのではないだろうか? 想定外の現象が起こればどんなシステムでも事故は起こりうるのだ。それを許さないとするならば、当然コストは膨大となるし、ダイヤも乱れ放題ということになりかねない。それでも、人の命は守られるべきだ、というのであれば、皆が納得してコストや時間を負担すればよいのだが、本当にそこまでの覚悟があるのだろうか?

もちろん今回の事故の犠牲者の方は、不運だったと思うし、無念だろうと思う。謹んでご冥福をお祈りしたい。でも、考えてみると、いわゆる不慮の事故で亡くなる方というのは結構多くて、死亡数、死亡率、性×死因分類別(Excel表)を見ると、年間4万人弱もいるのだ。世の中は結構不条理だし、人の命は思った以上にはかないものだという悟りのような感覚も必要だと思う。

それと、目に見えるところで人の命をあまりにも尊重しすぎると、全体のバランスを欠くことになり、却っていろんな弊害があるようにも思うのだが。。

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2005/12/26

納豆を毎日食べて健康に

日本経済新聞の夕刊でみつけたニュースだけど、河北新報の12/23に載っていた。納豆で病気予防? 毎朝30g、佐賀で調査

 毎日納豆を食べると健康にどんな効果があるかを確かめるため、国立循環器病センター(大阪府吹田市)と佐賀県西有田町は23日までに、来年1月から町民の協力を得て調査を始めることを決めた。

 数人を対象にした調査で、納豆に含まれるナットウキナーゼが高血圧や血栓予防によいとする報告はあるが、まとまった人数の調査は初という。

 20-79歳の町民80人が対象。納豆を毎朝30グラム食べてもらい、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞、内臓脂肪蓄積による生活習慣病のメタボリックシンドローム予防に効果があるかを検証する。

 「納豆手帳」を配って食べた物や体調の変化を記録してもらい、血圧や血液中のコレステロール値などの変化を測定し効果を判定する。約1カ月続け、効果がなければ摂食量を2倍にするなど調査方法を変更。効果があれば長期間詳細に調べる。

何とも、不思議な味わいのあるニュースである。
  何故に佐賀県西有田町なの?
  80人とはまた中途半端な人数だこと
  納豆手帳って何?
  摂食量を2倍にしても効果なかったら、もしかして更に倍々にしていくの?

この件については、佐賀県西有田町国立循環器病センターにも詳しい情報は掲載されていないようだ。検索してみると、過去の国立循環器病センター倫理委員会議事などに、西有田町の住民を対象とした研究が何件か出ており、以前からこの町を対象とした研究をやってきているらしい。どうやら SNPs が関連しているらしいけど、夢と希望と笑いと涙の英語塾によると、この町には遺伝的に特徴があるらしい。

Wikipediaによると、納豆があまり消費されない西日本の中で、熊本県だけは例外らしいが、佐賀県西有田町って微妙に熊本に近いような遠いような? 納豆学会の市販納豆博物館によると、佐賀県には納豆メーカーは存在しないようだ。消費量は、納豆横丁によると全国で中間程度ということらしい。

この納豆横丁のコラムはなかなか充実しており、今回に関連しては血圧効果作用動脈硬化予防効果の説明などが読める。なるほど、納豆にはいろんな効果(オナラ防止なんて効果も)があるんだな、というところだが、念のために「健康食品」の安全性・有効性情報を見ると、

ナットウキナーゼが、俗に「血栓の溶解に関与する」といわれているが、ヒトでの有効性については信頼できるデータがない。ビタミンK2は骨たんぱく質の働きや骨形成を促進することから、ビタミンK2を多く含む納豆が、特定保健用食品として許可されている。また豆鼓(トウチ:大豆の発酵物)の抽出物は、糖の吸収をおだやかにすることから、その抽出物を関与成分とした特定保健用食品が許可されている。安全性については、納豆に含まれるビタミンK2が抗凝血薬(ワルファリン)の作用を弱めることから、併用摂取を避けるべきと報告されている。
とあり、公的に認められている効果としては、骨形成促進と糖の吸収緩和の2つだけのようだ。MSN-Mainichi INTERACTIVEの記事(12/20)国立循環器病センター:生活習慣病予防に、納豆の効果研究によると、
研究に参加してもらうのは、コレステロールや血圧が高めの20~79歳の男女80人。納豆は栃木県内のメーカーが無料で提供。1カ月後に同町内の病院で採血し、コレステロールなどの数値が改善されたかを同センターで解析する。
とあり、もともとコレステロールや血圧が高い人を対象とした実験らしい。最低1か月、毎朝納豆を食べ続けるのも大変そうだが、比較対照群はどうするんだろう? 納豆摂取以外の様々な条件をコントロールするのは相当困難だと思われるし、解析は大変そうだ。さすがに納豆は和食との組合せだろうから、みそ汁とか塩サケとか、洋風の朝食より塩分摂取が増える可能性も有りそうな気もするし。。 それに、納豆以上に血圧やコレステロールに大きく影響する生活習慣がありそうだし、そっちをコントロールしなくていいのかな。

実験を行う前に何らかの仮説を立てることは普通だし、納豆の効果が認められなければ、ある程度まで摂取量を増やす、という実験方法も問題ないと思うのだが、何となく最初から結論が決まっていて、それが得られるまであの手この手で実験を続けるみたいな印象もあるし。。 そもそも、納豆さえ食べてればそれだけで健康になるというものでもないだろうし、無料で納豆を提供してくれるメーカーの存在も含め、実験の動機も勘ぐりたくならないでもない。。 まあ、いずれ実験結果が公表されるだろうから、それを楽しみにしていよう。

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2005/12/22

「地球の内部で何が起こっているのか?」

光文社新書のラインナップとしてはちょっと異色な印象の本だが、現役の研究者が地球科学の基礎から最新事情までを紹介したとてもまじめな内容である。このブログでも 8/2に紹介したマントルまで掘り進む船「ちきゅう」のことや、それを使ってやろうとしている研究内容の紹介もされている。

光文社新書 214
 地球の内部で何が起こっているのか?
 平 朝彦、徐 垣、末廣 潔、木下 肇 著 bk1amazon

前半は、プレートテクトニクスの話や、地球の歴史の話についてわかりやすく解説されている。また、どうやってそういう地球観が得られたのか、というストーリーも織り交ぜ、科学の面白さも伝わってくる。断片的にはテレビなどで知っていたけど、何しろ「地学」を学校で学んだのは数十年も前のことになるので、最新の考え方をコンパクトにまとめてあって、ありがたい。

一方、後半は最新の掘削船「ちきゅう」についてや、これを使った掘削の計画について語られている。関係する研究者が寄せたコメントが数多く紹介され、正に現在進行中のプロジェクトについて、さまざまな面から説明されている。ところが、この後半部分はどうも今一つまらない。どんな読者を想定して書かれたのかが不鮮明な印象で、技術的な解説も中途半端だし、これを使って得られる将来像についてもどうもピンと来ない。

前半部がとてもわかりやすくて面白かっただけに、後半もその調子で、素人を対象として、海底の掘削というのがどういう技術で、一つ一つの課題をどうやって解決し、どういう情報から何がわかるのか、といったことをもっと丁寧に語って欲しかったのだが。。

そもそも、どうやって海底深くの地層を数千メートルも削り取って来れるのか、という根本的な技術の部分が、どうもうまくイメージできない。特に、従来の技術の壁となっていたものを、「ちきゅう」ではどうやって乗り越えたのか、というような点がよくわからない。この辺は、JAMSTECの 地球深部探査船「ちきゅう」のサイトあたりを読んだ方が図が多いこともあってわかりやすい。

やっぱり、こういう最先端の部分については、科学者自身が語るのでは限界があって、「メタルカラーの時代」のように「プロの素人」が突っ込まないと、わかりやすくならないのかもしれない。。

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2005/12/21

インクジェットで人工骨

YOMIURI ONLINEの記事(12/21)から。インクジェット技術で人工骨、2007年にも実用化

 紙にインクを吹き付けるインクジェット方式の印刷技術を応用して、短時間で精密な人工骨を作ることに、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や東大病院、医療ベンチャーなどの共同研究グループが成功した。

 動物実験で有効性や安全性は確認しており、来年の臨床試験を経て、2007年にも実用化される見通し。

 インクジェット方式は、インクの微細な粒子を細いノズルで正確に吹き付ける技術で、個人用プリンターに広く使われている。新しい人工骨は、全く同じ原理を使い、インクの代わりに、人工骨の成分であるリン酸カルシウム粉末と接着剤を使い、厚さ0・1ミリ・メートルの薄い層を何度も重ねて立体構造を作る。型枠は必要ない。

 人工骨の構造データは、患者の骨の欠損部周辺のCT(コンピューター断層撮影法)画像をコンピューター処理して作り、人工骨作成機に取り込む。

 従来の人工骨は、素材を焼き固めて外側から削っていたため、内部加工が難しかったが、新方式なら自由に内部構造を作れる。作成時間も1、2時間と短く、従来は発注から完成まで1週間程度はかかっていたものを、1日に縮めることも可能だという。

というもの。NEDOのプレスリリースに詳しい解説が載っている。CTスキャンのデータを基にして、埋め込む人工骨の形状の3次元データを作成し、そのデータに合わせてピッタリの人工骨を3次元プリンタで作製するということらしい。従来の人工骨は高温で焼結させていたのに対し、これはリン酸カルシウム(α-TCP)粉末と接着剤で焼成なしに作製している。粉末を接着剤で固めただけの状態のものを体内に埋め込んでも強度的に問題がないようだ。それどころか、体内で本物の骨が成長して、いずれは置換してしまうらしい。

この技術、焼成せずに体内で機能する人工骨が作れるというところも興味あるのだが、何と言っても、事前の型取りが不用という点や、削り出しでもなく、型も使わずに欲しい形を作り上げるというところが、とてもスマートで面白い。

そう言えば、この前テレビで似たような原理の3次元コピー機の話を見たな、と思い探してみた。恐らく、MYCOM PC WEBで紹介されている Z CORPORATION の Zシリーズだったと思われる。これは目的形状の3DデータをZ軸でスライスした断面データに従って、インクジェット機構により石膏粉末、薬剤、インクを噴霧し、これをZ軸方向に少しずつずらしながら立体を作り上げるというものだ。恐らく、今回の人工骨の作製も基本的には同じ技術だろう。

この Z CORPORATION のサイトを見ると、日本語のページもある。手のひらに乗るサイズの物を出力するのに1~2時間とのこと。素材のページを見ると、石膏以外にも色々な素材が用意されているようだ。

この装置、Z510で約5万ドルとのこと。思ったより安いような気もする。プリンタ部分はそれほど複雑な機構でもなさそうだから、そのうち安価で汎用的なものが出てくるのではなかろうか。3次元スキャナの方が実用化が大変なのかもしれないが、近い将来に3次元コピー機が普及する時代が来そうで楽しみだ。

今回の人工骨は、3次元プリンタの応用例の一つと言えそうだが、他にも面白い用途が色々とありそうな気がする。。

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2005/12/20

来年の花粉飛散予測

環境省のサイトに平成18年春の花粉総飛散量の予測(速報)についてという報道発表資料が載っている。これによると

今般、平成18年春の花粉総飛散量予測(速報)をとりまとめました。

 平成18年春の花粉総飛散量は、平年並からその半分程度になると予測されます。また、スギの開花及び飛散開始は例年より遅れると予測されます。

とのこと。花粉症で悩んでいる人にはとりあえず朗報と言えるだろう。これは
 環境省では、花粉症に関する調査研究の一環として、平成16年度から、NPO花粉情報協会により花粉飛散予測に関する調査研究を実施しております。今般、当該研究において、平成18年春の花粉総飛散量予測(速報)をとりまとめました。
ということで、花粉情報協会が行った予測らしい。花粉情報協会の全国花粉情報■花粉いんふぉには花粉症や花粉についての情報がいろいろと掲載されているが、来年の花粉飛散予測については今のところ何も載っていないようだ。環境省の報道発表には、平成18年春における都道府県別花粉総飛散量予測平成18年スギ花粉前線予測というPDF資料が掲載されている。

これらの資料を見ると、来年のスギ花粉の総飛散量予測の元となっているのは、どうやら今年の7月の気温と日照時間で、これらが平年を下回ったことから飛散量は少ないと予測しており、

平成17年春と比較すると、各地の予測飛散量は15~50%程度であり、特に昨年大飛散となった関東甲信越では15%程度と少なく、北陸・東海では50%程度になる
とのこと。一方、花粉飛散開始時期については、
秋の気温が高めに推移したことから、スギ雄花の休眠が遅れており、そのため開花が例年よりも遅れることが予想されます。
とのこと。ところで、このニュースは今のところ何故か報道されていないようなのだが、探してみると、既に12/7の asahi.com などに同様のニュースが載っている。 来春の花粉 「少なそう」
 民間の気象情報会社「ウェザーニューズ」は7日、来年の花粉(スギ・ヒノキ)の飛散について「量は少なく、飛ぶ時期は遅め」との見通しを発表した。

 同社によると、花粉の飛散量は前年の夏、特に7月の天候に大きく左右される。(1)気温が高い(2)雨量が少ない(3)日照時間が長い――の3条件が重なると花粉の育成が活発となり、翌春の飛散量が多くなるという。

 今年の7月は気温は昨年ほど高くなく、降水量は多く、日照時間は少なかった。このため、来春は今年の飛散量を大幅に下回るとみる。飛散開始時期は例年は2月中旬から下旬。1月以降の積算気温が高いほど早いとされ、来年は2月に寒気が入り込むと予想され、飛散時期は「例年並みか遅い」とみている。

とあり、飛散量および飛散開始時期についての予測内容はほぼ同じなのだが、ニュースソースが異なるようだ。内容を見ると、花粉の飛散量が7月の天候に影響されるという点は一緒だが、飛散開始時期について、こちらは1月以降の積算気温が影響するとしており、環境省の予測とは考え方が異なっているようだ。

ウェザーニュース社の発表内容はこちらで見られる。両者の飛散開始前線を比較すると、3/1の線が随分と異なっているのがわかる。

探してみると、他にも協和発酵の花粉症*ナビでも同様の予測を行っている。面白いことに、この飛散開始前線は気象庁の予測とほぼ一致している。ただし、こちらの説明では、飛散開始時期は12月末から1月初めの気温が影響するとしており、昨日のエントリーで書いたように、従来の暖冬予想がはずれてしまったようだから、今後飛散開始時期も遅れる可能性がありそうだ。

ということで、花粉の飛散開始時期の予測については、報道された内容だけから見ると、それぞれ少しずつ異なっているようだが、いずれにしても今後の気温の推移によってさらに見直しが必要となりそうな気がする。少なくとも環境省のリリースはそのまま保存されると思われるので、今後の予想の見直しや実績との比較が可能なデータとなりそうだ。

なお、花粉の飛散量の観測については、1/17に花粉観測システム「はなこさん」の記事にしている。参考まで。

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2005/12/19

3か月予報の見直し?

MSN-Mainichi INTERACTIVEのニュース(12/19)から。大雪:想定外?の寒波襲来 気象庁は3カ月予報見直し

日本列島付近の寒波 日本列島が凍(い)て付いている。長期予報で今冬は暖冬と見込んでいた気象庁にとって“想定外”の寒波襲来。寒さはしばらく続きそうだという。(中略)

 気象庁天気相談所によると、日本列島の冬季の寒暖は、北極周辺の高緯度地域の海面の気圧の変動によって、寒気が蓄積と放出を繰り返す「北極振動」と呼ばれる現象の影響を強く受けるとされる。一般的に「寒波」とは、北極振動によって放出された寒気が蛇行した偏西風に乗って南下して来ることを指す。

 北極周辺の気圧が平年より低いと、日本付近の気圧は逆に高くなり、冬は暖冬になりやすい。反対に北極付近の気圧が高いと日本付近の気圧は低くなり、寒波が訪れやすくなるという。(中略)

 気象庁は10月末発表の「今年は暖冬」とする3カ月予報の見直し作業に入っている。11月末の3カ月予報では「12月の気温は平年並みかやや寒いが、1月は高い」とし、さらに今月17日発表の1カ月予報では「寒さは1月中旬まで続く」と修正した。

 同庁気候情報課は「当初はここ10年ほどの傾向から『暖冬』と予測した。北極振動はメカニズムが解明し切れておらず、事前にこうした寒波を予測するのは難しい」としている。(後略)

ということで、今年の12月はとんでもない寒波に襲われているのだが、3カ月予報があまりにも大きく外れてしまっているので見直し作業をしているとのこと。東京地方の過去の天気予報において、日々の天気予報データの蓄積を行い、その的中率を調べているのだが、長期予報については今のところは対象外だ。

それにしても、3か月予報の見直し作業とは何だろう? 予報というのは事前に予測するから予報なのであって、いくらなんでも、結果が出てから予報を修正しちゃったらいかんだろう。。 と思い、気象庁のサイトで情報を探してみた。季節予報の種類と内容によると、季節予報には1か月予報、3か月予報、暖候期予報および寒候期予報があり、3か月予報は毎月25日頃に発表されているとのこと。知らなかった。。

最新の3か月予報は季節予報のページで見られる。実はこの形式の予報を見るのも初めてなのだが、確率予報となっている。地図の色分けがされていて直感的にはわかりやすいのだが、よく見ると奧が深いというか、なかなか理解するのが難しい形式だ。具体的には、平均気温、降水量、日照時間などについて、低い・平年並・高いなどの3階級に分けて、それぞれの出現確率で表現されている。

例えば、最新の平均気温の3か月予報を見ると、低い/平年並/高いの各確率が、西日本では軒並み 20/40/40 %となっていて、確かに暖冬傾向となっている。関東甲信地方についてその内訳を見ると、12月は40/40/20で低温傾向だが、1月と2月は20/40/40で高温傾向と予報しているようだ。

ということで、毎日新聞のニュースでは3か月予報の見直しと書いてあるけど、これは以前に出した予報を後から修正するという話ではなく、10月には暖冬と予想したけど、11月の予報では少し見直したし、12月の予報ではさらに見直しを計画中だよ、ということらしい。まあ、これなら当たり前のことだろうし、単に10月に出した予報が外れてしまいましたって話のようだ。 そもそも気象庁自身が「事前に・・・予測するのは難しい」と言っているらしいし。。 そもそも週間予報だって、天候や気温の予報が覆ることは日常茶飯事だし、この手の予報は元々そんなに当てにできないものと考えるべきだろう。

ちなみに、1か月予報については 1か月予報における確率の評価 というのがあるのだが、3か月予報については自己評価や第三者評価は見当たらない。これらのデータを蓄積してみてもいいのだけど、評価が難しいのが難点だな。。

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2005/12/16

242回目の献血

前回11/18以来、28日ぶりの献血。今回は、みぞのくち献血ルームを初体験。ビルの10Fで、採血室はガラス面積も大きく、とても明るくて見晴らしの良いところ。ショッピングビルなので、中の様子を見ながらエスカレータで上がっていったのだが、エスカレータは9Fまで。ビルの最上階である10Fへはエレベータか非常階段を使わないと上がれない。最初から献血する目的で来る人だけが来る特別の場所という感じで、ショッピングのついでに見つけて寄ってみるという感じではない。

問診の際に医師から、血圧の値がとても素晴らしいと褒められた。心身ともにストレスのない理想的な健康状態に違いないと言われてしまった。血圧をこんな風に褒められたのは初めてだ。。

神奈川県では今、血液不足状態が深刻のようで、献血ルーム内にも、400ml献血キャンペーン実施中という貼り紙がある状態。何と、川崎市のページでは、あの「けんけつちゃん」が耳が小さくなって泣いている。。実際に、僕の前の人は、受付で 400ml献血を依頼されていたのだが、何故か僕は血小板成分献血を依頼された。検査の際に聞いてみたら、どちらも不足しており、血小板をお願いできる人には成分献血をお願いしているとのこと。

ベッドで採血直前に、生年月日と血液型を自己申告させられた。本人確認のための手順のようだが、これも初めての経験。この献血ルーム独自のルールなのだろうか?

おみやげは、選択の余地もなく、コシヒカリ 750g と川崎市のシンボルマーク入りのクリアファイル。同じ神奈川県でも場所が変わると変わるものだ。。 このシンボルマークは川崎市のページの左上に載っているちょっと印象的なマークだが、調べてみると、あの岡本太郎さんの作品とのこと。岡本太郎さんは川崎市出身なのだそうだ。

今年の献血回数は結局 11回となった。5月に海外に行き、その後 4週間の献血禁止期間があったので、それを考えるとまあ頑張ったと言えそうだ。来年もコンスタントに献血ができるような年でありたいものだ。

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2005/12/15

将来の風力発電は海や空で

nikkeibp.jpの記事(12/14)。東京電力と東京大、フロート式洋上風力発電の共同研究

東京電力と東京大学は2005年12月13日、海上風力発電設備の建設技術について共同研究を開始すると発表した。従来、建設が困難だった沖合10km以上への設置を可能にする「フロート式洋上風力発電」に関するもので、期間は2007年3月までの1年3カ月あまりを予定している。

フロート式洋上風力発電は、洋上に浮かぶフロート(浮体)上に風車を設置する発電設備。海底から基礎を立ち上げる従来の設備に比べ、水深が深い海域でも利用できる可能性があるという。

共同研究では、風の実測調査を行い、数値シミュレーションで風力発電に適した関東沖合の地点の評価を実施する。また、波や風に対する安全性と安定性の高いフロートの構造・材料・メンテナンス方法を模型実験で研究し、あわせて経済性も検討する。研究費は6000万円。

風力発電の導入は、風が安定して吹く場所に限られるほか、周波数変動が大きいことから接続規模が制限されるなどの課題があった。関東沖で評価を行うのは、電力系統の規模が大きい地域であり、多量の風力エネルギーが得られるため。また両者は、周波数変動を蓄電池で抑えるための研究に9月から着手している。

最近どんどん増えている風力発電だが、騒音、景観、鳥への影響などの問題の他、そもそも安定した高出力が得られないという欠点があり、今のところはあくまでも補助的なエネルギー源という位置付けだろうか。一方、日本は海に囲まれた国だし、風を遮る障害物のない海洋での風力発電というのは確かに魅力のある分野だろう。

東京電力のプレスリリースからリンクされている研究概要を見ると、関東の沖合い 10km程度の洋上に風力発電機を浮かべる計画だが、まだ研究段階で具体的な実用化計画があるわけでもないようだが、面白い取組みだと思う。

フロート式ではない固定式の洋上風力発電の場合には、設置場所は沿岸になるようだが、すでにデンマークなど海外では実用化されている。この辺の事情については、ガイアの夜明け インタビューが詳しい。

一方、安定した強風が得られるという点では、高空も風力発電の候補箇所となりうる。既に1996年の日本総研のレポートにも、安定した風資源としてジェット気流を利用することができないかの提案がされている。実際に、風力発電を高空で行うアイデアとしては、飛行船で高空に浮かす方法や、凧のように風を受けて高空に係留する方法、エンジンを使って高空にホバリングする方法などなどが提案されているようだが。。

調べてみたら、今年の4月の Hot Wired News に高高度の安定した強風を利用する「飛行発電機」(上)高高度の安定した強風を利用する「飛行発電機」(下)という記事が載っている。スカイ・ウィンドパワーというアメリカの会社が、高度 4600mでの風力発電を計画しているというもの。Sky WindPower Corporation のサイトで調べると、この発電装置はFlying Electric Generatorというもので、ヘリコプターのような方式で、高空の風を受けプロペラで発電しながら、同時に浮力も得る方式のようだ。地上にはケーブルで発電した電気を送るとのこと。

とりあえず、アメリカの砂漠地帯で実験を計画しているようだが、地上と高空の発電機をケーブルでつなぐというのはどうなのだろう? ケーブルに航空機がぶつかったりしたら大事故になりそうだ。スカイ・ウィンドパワー社は、この方式を大々的に採用しても、実際に制限される空域は非常に狭いので問題にならないだろうと考えているようだが、日本のような過密な地域では無理そうだ。。

まあ、現実性から見ると海上での風力発電に軍配が上がりそうだが、高空での風力発電も、宇宙での太陽光発電などと同様に夢のある技術ということで注目していたい。

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2005/12/14

温度を上げると縮む物質

理化学研究所のプレスリリース(12/13)。温度が上がると縮む新物質を発見

 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)と独立行政法人科学技術振興機構(沖村憲樹理事長)は、温度が上昇するにともない連続的に体積が小さくなる新たな物質を発見しました。理研中央研究所高木磁性研究室(高木英典主任研究員)の竹中康司先任研究員らによる研究成果で、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業・チーム型研究(CRESTタイプ)の研究課題「相関電子コヒーレンス制御」の一環としても進められたものです。

 通常、物質は温度が上昇すると体積が大きくなります。これが「熱膨張」で、グラスに熱湯を注ぐと割れることなど、生活になじみの現象です。ところが、ごく希に、温度が上昇すると逆に体積が小さくなることもあります。これは「負膨張」と呼ばれ、身近には氷が水になると体積が小さくなる例があります。竹中先任研究員らは、「逆ペロフスカイト」と呼ばれる構造をもつマンガンの窒化物が、構成元素の亜鉛、ガリウムや銅の一部をゲルマニウムで置き換えると、室温付近で大きな負膨張を示すことを発見しました。

 負膨張物質は、材料の熱膨張を抑制・制御できるため、温度による形状の変化を極端に嫌う精密光学部品はじめ各種精密デバイスに利用される他、最近ではファイバー・グレーティングと呼ばれる光フィルターの性能安定化に貢献するなど、様々な分野で活躍しています。しかし、これまで実用の負膨張材料は、タングステン酸ジルコニウムなどほんの数例に限られていました。(後略)

というものだが、負の熱膨張を示すというのは確かにかなり珍しい。ここでは、氷が水になる例が出ているが、これは固体→液体の相変化に伴うものなので、ちょっと違うような気もする。ちなみに、水の場合には 0℃から 4℃の間も、温度の上昇と共に体積が減少するが、これはもちろん液体状態の話である。固体の場合にはどんなものがあるだろう?

身近なところでは、耐熱性の結晶化ガラスが負の熱膨張をする結晶を、通常の正の熱膨張をするガラスと混ぜることで、熱膨張がほとんどゼロのガラスを作り出している。

調べてみると、RuO2 などのように結晶の特定方向だけに負の熱膨張を示すものもあるが、上のプレスリリースにもある ZrW2O6 などは等方的に負の熱膨張を示すようだ。

普通の物質が正の熱膨張をするのは、温度の上昇と共に原子の熱振動が激しくなり、原子間の平均結合距離が長くなるためだ。一方、負の熱膨張は、例えば低温では何らかの歪みを含み、隙間の多い構造をしているものが、温度の上昇とともに歪みが解消することで体積が減少するケースなどがあるようだ。

今回の理研が発見した物質は、「逆ペロブスカイト」という構造を持つマンガン窒化物 Mn3XN で、Xの位置にある亜鉛、銅、ガリウムなどの一部をゲルマニウムに置換したもの。(プレスリリースは「逆ペロフスカイト」となっている。)プレスリリースに掲載されている熱膨張のグラフを見ると、室温付近の100℃程度の温度範囲に限られるものの、確かにきれいな負の熱膨張を示す領域がある。この負の熱膨張は、磁気体積効果と呼ばれるもので、インバー合金で知られる現象と同じとのこと。これは温度の上昇に伴い、その磁気特性が変化することによって体積が減少するようだ。

このMn3XN(ガリウム置換マンガン系窒化物)の特徴として、組成を調節することで熱膨張率を制御可能であること、大きな負の熱膨張を示し、それが等方的で均一であること、電気伝導性や熱伝導性が高いこと、機械的強度が高いこと、安価な原料からなることなどがあるそうで、今後の応用が期待できそうだ。

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2005/12/13

「コクと旨味の秘密」

帯には「科学の目で探検する『美味しさの世界』」とある。実は少し前に購入したのだが、味に関する話は難しそうで、読まずに置いてあった本。読み始めてみたら、なかなか面白くて、あっと言う間に読み終わった。「コク」は、科学で扱うには漠然としすぎているテーマだと思うし、そのせいもあって科学書としては突っ込みが浅く、どうかと思う面もあるのだが、読み物としてみれば、論理展開もわかりやすいく、役に立ちそうな雑学知識も豊富でお勧めだ。

新潮新書
 コクと旨味の秘密
 伏木 亨 著 bk1amazon

「コク」という極めて曖昧な用語について、その正体は何者で、それが食生活や文化にどう関わっているのかについて解きほぐそうという、ある意味ではとても壮大な挑戦である。ビール、日本酒、コーヒーなどの飲料における「コク」や、和洋中の各料理における「コク」など、全く別のカテゴリーのものを一括して取り扱おうというのもすごいが、さらには音楽や演技などの文化的な意味での「コク」までを守備範囲にしようというのだから、面白い試みである。

その「コク」の正体について、本書では3層構造をしていると説明している。第1層がいわばコク本体そのもので、ここではそれを「コアーのコク」と呼び、その正体は油、糖、ダシの3つの成分とのこと。第2層は、食感や香りなど、コアーのコクのおいしさを倍増させる役目をするものであり、第3層には、さらに抽象的で文化的な要素が存在しているとしている。コクをこのような3層構造と定義することで、カテゴリーの異なる食料や飲料だけでなく、食文化やさらには文化一般にまでコクという概念を拡張できるという、それなりになかなか興味深い論考となっている。

そもそも、コクの本体は油分と糖分とダシ成分であるという説の説明部分では、ネズミを使った実験が紹介されており、これがまた面白い。まず、ネズミにドライタイプとモルトタイプのビールを選ばせると、モルトタイプを選ぶことから、彼らもコクを好むらしいという興味深い結果が紹介される。さらに、ネズミは、油分、糖分、ダシについてはやみつきになるのだが、塩分などは必要に応じて摂取するが決してやみつきにはならないという実験結果から、これら3成分は生存本能に訴えかける性質を持っていて、それこそがコクの正体なのだ、と論理展開する。実際にはこの結論に至るまでに、世界各国のさまざまな食品の旨さの正体や、美味しさについての研究成果なども紹介され、結構説得力がある。

でも、よく考えてみるとネズミがこれらの物質にコクを感じているのかどうかは不明だし、ネズミと人間が同じものをコクと感じる必然性もないだろう。。 ネズミが食べるのを止められなくなる成分が人間にとってのコクである、と結論づけるのは強引すぎないか? 実は本書の前半では、コクというのは、単一の成分ではなく、多くの成分が複雑に混ざり合ったものだろうと述べていて、こちらの説明は納得できるのだが、これとコクの3成分の関係が今一スッキリ来ない。

実際には、もともと「コク」という用語が漠然としているので、そのままではどうやっても皆が納得できるような科学的な定義のしようがないわけで、ここではとりあえずこのように定義してみた、と理解しておいたほうがよいのかもしれない。

それでも本書は、「コク」というキーワードでいろんな料理や食文化を説明しようという試みとしては大成功だろうと思う。たとえば、子どもは濃くて単純な味が好きだけど、大人になると微妙な味やあっさりした味を好きになるという傾向や、鰹ダシをうまいと感じる日本人に特有の味覚は、どのように子どもに受け継がれていくのかなども、ネズミでの実験を交えてとてもわかりやすく説明されている。

味覚の存在意義は、もともとは生きていくために必要なものと有害なものを識別するという役目だったのだろうけれど、現代の人間にとっては、触覚や嗅覚、さらには想像力とか過去の経験や学習までを動員した総合的な感覚であり、だからこそ食は文化となるのだろうと、何となく納得させられる本である。

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2005/12/12

検疫探知犬とは?

農水省のサイトで見つけたプレスリリース(12/9)。動物検疫所における検疫探知犬の導入について

1. 動物検疫所は、平成17年12月12日(月)から成田国際空港において動物検疫業務の広報及び補助手段として「検疫探知犬」2頭を導入することとしましたのでお知らせします。

2. 検疫探知犬は、鋭敏な嗅覚を利用し畜産物等の存在を探知し、人に知らせることができるよう訓練された犬で、既に米国、豪州等で導入されています。

3. 検疫探知犬は、成田国際空港内の手荷物受取りフロアーに配置され、旅客の皆様の入国手続において動物検疫対象畜産物の申告漏れが起こることのないよう手荷物を対象として探知を行います。

4. 高病原性鳥インフルエンザや口蹄疫等、世界的に拡大傾向にある家畜の悪性伝染病の我が国への侵入防止のため、国民の皆様には検疫探知犬による動物検疫に御理解と御協力をお願いします。

というもの。成田空港の預け入れ荷物を受け取るターンテーブル付近で麻薬探知犬と思われる犬が歩き回っているのを見たことがあるが、今後は検疫探知犬というのも活動するようだ。動物検疫所については、そのものずばり、動物検疫所というサイトで勉強できる。

今回、成田空港で働くことになった検疫探知犬はこちらによると、どちらもビーグル犬で、キャンディーとクレオという名前らしい。調べてみると、既に実績を上げているオーストラリアの検疫探知犬もビーグル犬のようだ。ホットな犬のニュースによると、日本で働く検疫探知犬もオーストラリアで訓練したようだし、世界的に見てもこの分野はオーストラリアが進んでいるのだろう。

この手のものの持ち込みを検知するには、今のところ機械よりも、訓練した犬による方が圧倒的に高感度であろうことは容易に想像できる。犬が臭いを特定できるのであれば、原理的には機械でも検出可能となるのかもしれないが、むしろこうやって動物の能力を活用する方がコスト面でも応用面でも賢いやり方と言えるだろう。

調べてみると、dog dataというワーキングドッグに関するサイトがあった。麻薬探知犬爆発物探知犬が成田などで働いており、これらは、ラブラドール、シェパード、ゴールデンレトリバーなどなので、ビーグル犬を見たら検疫探知犬と考えて良さそうだ。

他にも、結構知らないワーキングドッグがリストアップされているが、アメリカあたりには、シロアリ探知犬ガソリン探知犬などのように、日本では知られていないけど活躍している特殊な犬がいるようだ。(地震探知犬はジョークなのだろうか??)

ちなみに、BSE問題で輸入禁止となっていたアメリカ産の牛肉がようやく条件付で輸入解禁となるようだが、ビーフジャーキーなどの加工牛肉は引き続き持ち込み禁止なので、ご注意を。

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2005/12/10

気象庁が天気予報アンケート実施中

気象庁のサイトで、天気予報に関するアンケートをやっている。アンケートページは全部で35ページにもおよび、意外とボリュームがある。ともかくも、こうやって外部の声を聞く姿勢を見せていることは評価できる。

天気予報全般や、ここでやっている過去の天気予報データに興味のある方は、アンケートに答えてみては如何だろう? 12/22まで実施しているとのこと。まあ、アンケートに答えても何も特典はないようだけど。

ついでに、フリー入力欄に「過去の天気予報データやその適中精度についての情報公開をもっと積極的にして欲しい」なんて書いてみるのもおもしろいかもしれない。。

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2005/12/08

COP/MOP1、ポスト京都の行方

ポスト京都議定書を議論する国際会議、COP11、COP/MOP1がカナダで開かれている。閣僚級会議が開かれたということで、関連ニュースをいくつか拾っておく。河北新報経由の共同通信ニュースがコンパクトにまとまっている。

米の拒否姿勢変わらず ポスト京都、打開困難に

カナダ・モントリオールでの気候変動枠組み条約・京都議定書締約国会議は7日、閣僚級会合で、議定書から脱退した米国に欧州などから「京都議定書以降の将来枠組みをめぐる議論に加わってほしい」と呼び掛けが相次いだ。

 しかし米国は「効果があるのは米国のやり方だ」と拒否の姿勢をあらためて明確にした。交渉打開は難しくなってきた。

 議長国カナダのマーティン首相は会見で「これ以上行動を遅らせることに弁解の余地は全くない」と厳しい調子で指摘。「米国など(消極的な国々)に言いたい。『地球的良心』とも言うべきものに耳を傾ける時だ」と名指しで米国を批判した。

ということで、まあ予想通りの展開である。確かに、二酸化炭素の排出を少々削減することで、どれだけ将来の人類社会に貢献するのか疑問もあるけど、だからといって何もしなくて良いというわけではないだろう。そもそも今のアメリカ型の社会では、温暖化以外の点でもいろいろな限界が見えているのも確かだろうに。。 案の定、米のCO2排出、04年は最大 エネルギー関連の速報値によると
石油や石炭などエネルギー利用に伴う2004年の米国の二酸化炭素(CO2)排出量が、1990年以降最大の約59億トンに達したことが米エネルギー省がまとめた速報値で8日までに分かった。

 こうした化石燃料の燃焼に伴うCO2排出は、米国が排出する温室効果ガスの80%超を占めており、専門家は他のガスを含めた04年の排出総量も最大となる可能性が大きいとみている。

 カナダ・モントリオールで開催中の温暖化条約会議で米政府代表団は、2000から03年の間だけについて温室効果ガスの排出が「減った」と演説などで表明している。

ということだから、アメリカが「米国のやり方」の効果を主張しても説得力がないのは明確のようだ。

一方、日本はどうかというと、環境省のサイトに小池大臣のプレゼン資料が掲載されている。モントリオールの会議で小池大臣がこの資料でプレゼンしたようだが、見てみると「志」がないというか、これまた何とも迫力がない。ハイブリッドカーや燃料電池などの紹介で、トヨタ、東京ガス、旭化成といった固有名詞が前面に出ているのにも驚かされるが、チームマイナス6%や、クールビズ、ウォームビズの宣伝がやや鼻に付く。 これについては、共同通信は日本製品の魅力アピール 小池環境相

気候変動枠組み条約・京都議定書締約国会議が開会中のカナダ・モントリオールで7日、日本政府主催の公式行事が開かれ、小池百合子環境相が、トヨタ自動車のハイブリッド車や住宅向け燃料電池など、日本企業の環境型製品の魅力をアピールした。

 流行語大賞のトップテンに選ばれた「クールビズ」など環境政策の成功事例も紹介。「2台あった公用車を1台に減らした」と身近な取り組みも披露した。ただ、聴衆の多くは日本の政府や企業関係者が占めた。

と何とも寂しい状況をかなり正直に伝えている。まあ、環境省としてはもっとカッコ良く決めたかったのだろうけど、日本も産業界を中心とした抵抗勢力が頑張っており、本音ではアメリカと似たり寄ったりといったところだろうから、これでも頑張った方だろうか。。

この国際会議を巡っては、excite ニュースに京都議定書と「今日の化石」賞のゆくえという記事が掲載されている。ここで紹介されているFossil of the Day AWARDSはアニメーションなども楽しめるので、是非 左上の"> INTRO" から入ってみることをお勧めする。ちなみに日本の順位は少し下がってただいま第4位のようだ。

なお、この会議の公式サイトは、こちら。ちなみに、COP/MOPは、"the Conference of the Parties serving as the Meeting of the Parties to the Kyoto Protocol" の略号である。

この会議は12/9までということで、今回は各国ジャブの応酬をしたところで終わりだろうし、実質的な大きな進展は望めないだろう。それでも、今の時代、こういった公式の場以外でもいろいろなレベルで声を上げ続けることで、アメリカ包囲網を強めていけば、いずれは国際的な流れを変えられるかもしれない、という期待を持って見守っていきたい。

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2005/12/07

ココログ23か月

ココログを始めて1年と11か月が経過。1か月当たりのカウンターの伸びは、ここのところ約25000で安定している。平日が約1000カウント、休日が約600カウントといったところ。

 1か月目:900     2か月目:4500    3か月目:11700    4か月目:19000
 5か月目:32300   6か月目:43500   7か月目:54500    8か月目:72000
 9か月目:87700   10か月目:105400  11か月目:125400  12か月目:140600
13か月目:163000  14か月目:179300  15か月目:194700  16か月目:205300
17か月目:216800  18か月目:231700  19か月目:251100  20か月目:276400
21か月目:301200  22か月目:326400  23か月目:351400

この1か月のアクセス解析結果を求めてみると、以下の通り。

(1)リンク元
 1位 http://search.yahoo.co.jp 全体の59%(前回1位)
 2位 bookmark 全体の17%(前回2位)
 3位 http://www.google.co.jp 全体の13%(前回3位)
 4位 http://www.google.com 全体の4%(前回4位)
 5位 http://search.goo.ne.jp 全体の1%(前回5位)

こちらも、前月とほとんど変化無く、平穏で安定した日々だったようだ。

(2)検索キーワード
 1位 アメリカ(前回4位)
 2位 注射針(前回2位)
 3位 フラーレン(前回10位)
 4位 肥満(前回6位)
 5位 献血(前回11位)
 6位 岩盤浴(前回1位)
 7位 グラフ(前回13位)
 8位 過去の天気(前回位)
 9位 ベンタ(前回88位)
10位 青色発光ダイオード(前回5位)
11位 化粧品(前回12位)
12位 地震(前回圏外)
13位 ハイジェン液(前回圏外)
14位 世界(前回圏外)
15位 気象庁(前回圏外)

最近は、「ベンタ」「ハイジェン液」といったキーワードが急上昇中。これは昨年の2月頃に書いた、ドイツ製の加湿器、ベンタ エアウォッシャーに関する記事がヒットしたもの。この加湿器、既に購入してから2シーズン経過しているのだが、いまだに現役で、しかも根強い人気があるようだ。この辺が日本製と違うところだ。。

加湿用の水に、純正のハイジェン液という薬品を加えて使うことになっているのだが、これが高価なので替わりに洗濯用の柔軟剤を使用したという話なのだが、もちろん今も同じようにして使用している。ただ、柔軟剤もどんどん中身が見直されているようで、今の製品はほんの少量でも結構泡が立ってしまい、ちょっと困っている。。

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2005/12/06

ゴムメタルとは

日本経済新聞の消費面、ニューフェース(12/6)から。「ナノテク新素材を採用、ヨネックス」という記事。

ヨネックスのアイアン「サイバースター ナノブイ アイアン」

2008年からの高反発クラブ規制に対応したドライバーを業界に先駆けて投入した「サイバースター ナノブイ」シリーズのアイアンを開発。ナノテクノロジー(超微細技術)を使った新素材「ゴムメタル」をヘッド部やシャフト部に採用した。しなりやすく復元力があるため飛距離が伸びるほか、ボールを打ったときに心地よい感触が得られるという。

というものだが、調べてみるとニュースリリースは、9/22に出ているし、販売も10月末から行われているようだ。何で今頃ニューフェースとして紹介されるんだろう?? それはともかく、今回注目したのは「ゴムメタル」。ニュースリリースによると、これは、豊田中央研究所が開発したチタン合金のことで、豊田中央研究所の登録商標らしい。

ヨネックスのサイトで探してみるとゴムメタルの解説によると

サイバースターナノブイに採用された新チタン合金「ゴムメタル」は、ナノ(10億分の1)の領域における特異な変形組織により従来にない多機能をもたらします。例えば、低弾性率化と高強度化、この相反する二つの特徴を併せ持つのもそのひとつです。つまり、少ない力でも弾力を示し、それでいながら高強度を誇るというものです。また、温度の高低差(-273度~300度まで)による弾性率の変化がないのも大きな特徴。「ゴムメタル」は、様々な機能を同時に備えた多機能新チタン合金です。
とある。弾性率が小さいということは、一定の変形を起こすのに必要な力が小さいということで、「ゴムメタル」という名称も合わせると、何となくグニャグニャのイメージを持つのだが、あくまでも金属なんだし、ゴルフクラブに使うくらいだから、いくら何でもゴムという名称は行き過ぎじゃないのだろうか?

豊田中央研究所のゴムメタルのパンフレットには、他の材料と比較した弾性率と引張り強さのグラフやひずみ-応力曲線が載っている。確かに、低弾性率で高強度であり、しかも広い範囲で弾性変形を示すという特徴があり、これは面白い材料のようだ。日本機械学会誌に掲載された記事によると、この特異な挙動の発現機構については、

以上のようなゴムメタルの特異な機能は、それが持つ不思議なナノ構造に起因している。すなわち、強加工後も「転位」や「双晶」は観察されず、フラクタル的な階層構造の離散的なひずみ場を内包する、マーブル状の組織に変化するとともに、結晶格子が大きく湾曲することから、従来の金属材料とは異なる未知の塑性変形メカニズムが働いていると推定している。
とあり、結局のところ、よくわかっていないようだ。。 それにしても、結晶格子が大きく湾曲するって、どうなっているんだろうと思いきや、こちらには、電子顕微鏡写真なども掲載されており、確かに湾曲しているように見える。。

実用化された例としては、メガネフレームがあり、これを見ると確かに「ゴムメタル」という名前にもうなずけるものがある。他には緩みにくいネジもあるようだ。

ヨネックスではゴルフクラブ以外にテニスラケットにも採用しているのだが、フラーレンやらゴムメタルやら、本当にスポーツ用品はハイテクの塊だ。とても面白いと思うし、新素材の実験場として、もっとどんどん突っ走ってもいたいとも思うのだが、実際に使ってみた場合、一体どの程度の差を実感できるものなのだろう??

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2005/12/05

暗闇で光るバラ

CNN.co.jp(12/5)の記事。世界初「暗いところで光る花」の販売を開始 オランダ

アムステルダム(AP) オランダの花卸売会社「FloraHolland」が2日、世界初という「暗いところで光る花」の販売を開始した。花はバラとキクの2種類。オランダの生花会社社長が発明したものという。

光る花には、人体や花に無害な薬品が吹き付けられている。このため、通常の光の下では白色だが、暗がりでは数時間にわたり緑色の奇妙な光を放つという。

販売初日はキクが1本1.09ドル(約130円)、バラが同2.93ドル(約350円)と、通常価格の1.5倍で取り引きされた。

同社は「生花市場でも新しいアイデアや革新が必要。光る花は最近の(ラッパーたちがはやらせている派手好みな)『ブリンブリン』の流行にマッチしている」として、南欧や東欧で受けるはずだと自信を示している。

ということで、いわゆる蓄光スプレーを吹き付けただけじゃないの? という気もするのだが、これが世界初なのだろうか? 「緑色の奇妙な光」ってあるけど、普通の蓄光とどこか違うのだろうか?

オランダの FloraHolland 社のサイトに行ってみると、写真入りのニュースリリースがある。

Luminous roses and plumed chrysanthemums were auctioned for the first time. These cut flowers "light up" in the dark and are marketed under the brand name of Glowing Flowers. For a moment, the lights went off in the galleries in the auction halls so buyers could see for themselves what the Glowing Flowers look like when they reach the consumers.
ということで、"Glowing Flowers" というブランド名で売り出されているようで、専用のサイトGlowing FLowersも開設されているのだが、このサイトはオランダ語だけだし、特に詳しい情報もなさそうだ。でも、写真を見る限りは特に「奇妙な光」でもなく、普通のグリーン系の蓄光に見える。。

こんなの他にもありそうだ、と思って探してみるとこんなものが見つかったが、残念ながら造花のようだ。(光触媒までついてるから、こっちの方がお徳かも?) ひかり商会☆分室の情報によると、蓄光剤を生花に吹き付けようとしても、有機溶媒を使用すると花が痛むなどの問題点があるようで、これらが実現の障害となっているのかもしれない。このオランダの会社は何か新たな蓄光剤の塗布方法を発明したのかもしれない。。 あるいは、プリザーブドフラワーにしてしまって、その上から普通の蓄光スプレーを吹き付けるとうまくいくかもしれない。。

蓄光については、ここのQ&Aなどが参考になる。蓄光剤と言えばN夜光が有名で、いろんな蓄光製品が売られている。(探してたらこんなものも見つかったが、こっちの方が世界初じゃないのか?)

ところで、冒頭のニュースでもう一つ気になったのが『ブリンブリン』。聞いたことがないのだが、実はオランダのメーカーのニュースリリースにも 'bling-bling' と書かれていた。TBS「ブリンぶりん家」の解説によると、

“Bling-Bling”(ブリンブリン)…この言葉は、スラングで“アイス”と呼ばれるダイヤモンドがキラキラ光る様子を形容したのが語源の英語。それが転じて、ラッパーの間で流行っている過剰にド派手なジュエリーや、現金、高級外車などに象徴される、きらびやかなライフスタイルのことを意味するようになった。
とある。試しに、Google イメージしてみたが、何だかわかったようなわからないような。。 というか、暗闇でボーっと光る花って、どちらかというと暗いイメージで、キンピカスタイルとはマッチしないような気もするが。。

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2005/12/02

「わくわくする大科学の創造主」

「メタルカラーの時代」の文庫版シリーズの第11巻。このシリーズは結構お気に入りで、今までも、第6巻「ロケットと深海艇の挑戦者」、第7巻「デジタル維新の一番走者」、第9巻『「壊れぬ技術」のメダリスト』、第10巻「猛速度こそ我が人生」を紹介している。

小学館文庫
 文庫版 メタルカラーの時代 11
 わくわくする大科学の創造主
 山根 一眞 著 bk1amazon

今回は、15本のストーリーのうち、6本が「すばる望遠鏡」の話で、5本が北海道の「無重力実験施設」の話である。すばる望遠鏡は、NHKなどでも何度か取り上げられたこともあり、多少は予備知識があったのだが、無重力実験施設の方は、相当地味な施設のようで、実は全く知らなかった。残りの4本は、衛星画像解析、熱帯降雨観測衛星、宇宙太陽光発電所、超高感度TVカメラの話で、宇宙太陽光発電所だけ、実用化という点でちょっとレベルの異なる話と言えそうだが、全体としては、日本も基礎分野でここまで頑張っているぞ、という話を集めている。

すばるに関する話で一番驚いたのは、反射望遠鏡の直径8.2mの主鏡は、特殊なガラス表面にアルミニウムを真空蒸着したものなのだが、汚れなどによる性能低下に対応するために年に1度程度、この表面の蒸着を溶かして除去し、再度現地(!)で蒸着し直しているということ。そのための真空チャンバが望遠鏡の下部にあって、そこで作業が行われるというからすごい。

他に興味深かった話としては、すばるが置かれているハワイのマウナケア山には多くの国の天文台が集まっているのだが、そうなった経緯。1960年代に、当時の現地の主産業の一つであるサトウキビ栽培が不振になったとき、日系人の一人が天文台を誘致することを思いつき、それで町おこしをしようとしたのが発端らしい。実現するまでにかなりの紆余曲折があったようだけど、粘り強く働きかけた結果、今やここには12カ国、13基の観測施設が置かれ、天文観測のメッカとなっているのだから面白い。

一方の、無重力実験施設の話は、内容を全く知らなかったので、すべての話がとても面白かった。昔の炭鉱跡を改造して、深さ710mの真っ直ぐな穴を作り、実験設備を入れたカプセルをここから自然落下させ、約10秒間の無重力状態を作るというもの。これだけの時間、無重力状態を作れる設備は世界にただ一つ。たった10秒で何がわかるの?という気がしてしまうのだが、あのNASAでさえも、わざわざ使わせてもらっているとのことで、貴重な施設のようだ。

あまり知られていないし、宣伝もしていないようで、公式ホームページ?も随分そっけないが、長崎大学のサイトでもう少し親切な説明が見つかった。

最大速度は時速360kmにもなるのだが、この穴の中は真空ではないので空気抵抗があり、このままでは無重力状態とはならない。そのため、圧縮空気のジェットを上向きに噴射して空気抵抗分を相殺するように加速している。このための速度制御や、この状態から無事に停止させるためのブレーキ技術、さらには高速移動中のリアルタイム通信技術などが、この実験設備のために、それぞれ独自に開発されたというのもすごい。

考えてみると、望遠鏡とか無重力実験施設の話が面白いのは、世界の最先端レベルの技術でありながら、やっている内容がわかりやすい点にあるのではなかろうか? 超高感度TVカメラの話などは、いろいろと説明されているようでいて、実際にどんな技術をどのように開発したのかがどうもピンと来ない。多分、山根さんも詳細にはわかっていないのだろうから仕方ないのかもしれないが。。 それに比べて、「すばる」は結局のところ光学望遠鏡だし、無重力施設もニュートン力学の世界だ。どんなに大きくなったり、速くなっても、山根さんも僕らも、その基本的な部分は理解できるし、だからこそ、そのすごさも想像できるし、わくわくするんじゃなかろうか。

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2005/12/01

2005年11月の天気予報傾向

今年の2月から始めた、東京地方の過去の天気予報 は、過去の天気予報データを順調に蓄積中。

10月は雨の日が多かったのだが、一転して11月は雨が降らないなあ、という実感があった。実際にデータを見ると、1mm以上の降水のあった日数がわずか3日間ということで、以下のように、今年の中では最低日数を記録。

  1月: 4日
  2月: 6日
  3月: 7日
  4月: 8日
  5月:12日
  6月:10日
  7月: 9日
  8月: 9日
  9月: 8日
 10月:17日
 11月: 3日

このため、11月の降水確率予報はかなり空振りが多かったようだけど、まあ、仕方ないか。。 

一方、気温については、最近になって、グッと冷え込んでいるような感覚がある。実際の気温の変化幅は、最高気温が12度、最低気温が9度と、10月の変化幅(15度と7度)と比べると、最高気温の変化は小さく、最低気温の変化は大きい。この最低気温の変化が寒さを実感させているのだろう。

ところで、天候や気温の予報精度について、これまで相関グラフの傾きや誤差の平均値を一覧表にして表示していた。さすがに数字の羅列を見ても何だかわからないので、グラフにしてみた。まあ、これを見てもやっぱり何だかよくわからないのだが、見る人が見れば何かわかるかもしれない。。。 例えば、11月は最低気温の予報誤差がかなりマイナス(実績が予報よりも低い)側にずれたこととか。(気象庁の11月の天候でも、関東地区の11月の気温は平年に比べて低めとなっている。)

なお、先月の記事で、

 ・「晴れ 時々 くもり」はあるけど「晴れ 一時 くもり」はない
 ・「くもり 時々 晴れ」はあるけど「くもり 一時 晴れ」はない
 ・「くもり 時々 雨」はあるけど「雨 時々 くもり」はない
 ・「くもり 一時 雨」はあるけど「雨 一時 くもり」はない

という傾向が見られるが、それは何故だろう? という疑問に対して、xtcさんが答えを調べてくれた。どうやら、これらは「気象予報作業指針」というもので規定されているとのことで、例えば、晴れで一時雲が多くなって曇りになったとしても、大した問題ではないので、この場合は「晴れ 一時 くもり」ではなく「晴れ」としてしまう、というような具合らしい。

まあ、必ずしも納得できるものではないけど、ルールはルールなのでしようがない。ということで、今後はこの空白だらけの表も、少し整理することにしようかな。。

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