インクジェットで人工骨
YOMIURI ONLINEの記事(12/21)から。インクジェット技術で人工骨、2007年にも実用化
紙にインクを吹き付けるインクジェット方式の印刷技術を応用して、短時間で精密な人工骨を作ることに、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や東大病院、医療ベンチャーなどの共同研究グループが成功した。というもの。NEDOのプレスリリースに詳しい解説が載っている。CTスキャンのデータを基にして、埋め込む人工骨の形状の3次元データを作成し、そのデータに合わせてピッタリの人工骨を3次元プリンタで作製するということらしい。従来の人工骨は高温で焼結させていたのに対し、これはリン酸カルシウム(α-TCP)粉末と接着剤で焼成なしに作製している。粉末を接着剤で固めただけの状態のものを体内に埋め込んでも強度的に問題がないようだ。それどころか、体内で本物の骨が成長して、いずれは置換してしまうらしい。動物実験で有効性や安全性は確認しており、来年の臨床試験を経て、2007年にも実用化される見通し。
インクジェット方式は、インクの微細な粒子を細いノズルで正確に吹き付ける技術で、個人用プリンターに広く使われている。新しい人工骨は、全く同じ原理を使い、インクの代わりに、人工骨の成分であるリン酸カルシウム粉末と接着剤を使い、厚さ0・1ミリ・メートルの薄い層を何度も重ねて立体構造を作る。型枠は必要ない。
人工骨の構造データは、患者の骨の欠損部周辺のCT(コンピューター断層撮影法)画像をコンピューター処理して作り、人工骨作成機に取り込む。
従来の人工骨は、素材を焼き固めて外側から削っていたため、内部加工が難しかったが、新方式なら自由に内部構造を作れる。作成時間も1、2時間と短く、従来は発注から完成まで1週間程度はかかっていたものを、1日に縮めることも可能だという。
この技術、焼成せずに体内で機能する人工骨が作れるというところも興味あるのだが、何と言っても、事前の型取りが不用という点や、削り出しでもなく、型も使わずに欲しい形を作り上げるというところが、とてもスマートで面白い。
そう言えば、この前テレビで似たような原理の3次元コピー機の話を見たな、と思い探してみた。恐らく、MYCOM PC WEBで紹介されている Z CORPORATION の Zシリーズだったと思われる。これは目的形状の3DデータをZ軸でスライスした断面データに従って、インクジェット機構により石膏粉末、薬剤、インクを噴霧し、これをZ軸方向に少しずつずらしながら立体を作り上げるというものだ。恐らく、今回の人工骨の作製も基本的には同じ技術だろう。
この Z CORPORATION のサイトを見ると、日本語のページもある。手のひらに乗るサイズの物を出力するのに1~2時間とのこと。素材のページを見ると、石膏以外にも色々な素材が用意されているようだ。
この装置、Z510で約5万ドルとのこと。思ったより安いような気もする。プリンタ部分はそれほど複雑な機構でもなさそうだから、そのうち安価で汎用的なものが出てくるのではなかろうか。3次元スキャナの方が実用化が大変なのかもしれないが、近い将来に3次元コピー機が普及する時代が来そうで楽しみだ。
今回の人工骨は、3次元プリンタの応用例の一つと言えそうだが、他にも面白い用途が色々とありそうな気がする。。
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コメント
インクジェット技術は割と幅広く
応用が効きそうですよね
関連で
【人間の身体器官を「立体印刷」する技術】
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20051208301.html
というのを見つけました。骨以外も出来るみたいですね。
そのうちハンバーガーの肉がこれで作られたのになったりして…
いえ、自分は勿論賛成ですが。
牛を殺すより効率は良さそうですし
投稿: xtc | 2006/01/02 08:05