100万年前の氷に到達間近
YOMIURI ONLINE(1/23)の記事。あと2m…最古の氷採取へ、南極観測隊が最後の挑戦
最古の氷の採取を目指す第47次南極地域観測隊の氷床掘削作業が、深さ3028メートルを突破した。南極の氷の中に閉じ込められたガスや微粒子などを分析することで、地球の過去の様子を調べる手法については、地球温暖化の証拠データのひとつとして紹介されることもあり、何度か見聞きしたことがある。しかし、日本の観測隊が現在南極で100万年前の氷を掘り出す作業をしているのは知らなかった。掘削期限の23日深夜(日本時間24日未明)にかけ、あと2メートルの岩盤到達に向け最後の挑戦を行う。
観測隊は2003年12月から、標高3810メートルのドームふじ基地でドリルによる掘削を開始。南極の夏にあたる2か月間、直径9・4センチ、1回ごとの長さ3・8メートルの棒状の氷を切り出し続けた。採取した最深部の氷は100万年前のものである可能性が高い。氷は4月中旬、南極観測船「しらせ」で日本に到着。研究グループが氷に閉じこめられた火山灰や気泡を分析、太古の地球環境に迫る。
南極では、1998年にロシアチームが深さ3623メートルの42万年前の氷を、欧州チームが2004年に深さ3270メートルの80万年前の氷を採取している。氷の年代は掘削場所の条件によって変わり、おわん形の氷床の頂上にあるドームふじ基地の直下深さ3030メートルの岩盤付近に最古の氷が残っていると考えられていた。
氷の分析を行う国立極地研究所の藤井理行(ふじいよしゆき)所長は「未知の微生物の発見や太陽活動の地球環境への影響分析が期待できる。古い時代の気候を知れば、将来予測にも役立つ」としている。
この記事によると、目標の3030mに今晩にも到達するようだが、これが掘削期限とのことだから、今期の掘削の最終日にギリギリで目標到達ということらしい。
南極観測のホームページには、あまり有用な情報が載っていないのだが、南極ドームふじ基地へ向け、雪上車隊7名昭和基地を出発によると、この氷床掘削チームは2/10頃に昭和基地に戻り、3/28に成田に到着予定とのことであり、そろそろ今シーズンの作業については店じまいの時期のようだ。
今回の氷床掘削については、南極氷床深層掘削計画に最新の情報も含めていろいろな情報が掲載されている。例えば、ドームふじ観測拠点を見ると、今回の掘削地点は、深さは従来の記録よりも浅いけど、最も古い層に到達できる理由が理解できるし、氷期-間氷期サイクル発現の謎に迫るでは、100万年前のサンプルが入手できることの意義が説明されている。もっとも、100万年という年月はとてつもなく長いとも言えるけど、地球の歴史から見れば、ほんの最近とも言えるわけで、そんなものか、という感じもする。
ここの最新情報を見ると、途中までは1日に20m以上の速度で掘削していたようだが、ここのところは1日に数mの速度となっている。さすがにここまで進むと色々と大変なのかもしれないが、最後の2mを無事に掘りぬいてもらいたいものだ。
この氷は、もともとは降り積もった雪の塊なのだが、下部では自分自身の圧力によって気泡を含む氷になり、さらに深部では含まれるガスが氷と結合して、クラスレート・ハイドレートという結晶となっているとのこと。掲載されている写真を見ても、予想と異なり極めて透明度の高いきれいな結晶が得られるようだ。
関連情報としては、明日への道しるべ@ジネット別館がわかりやすく、よくまとまっている。(ふーむ、今や南極の氷もネットで買えるんだ。。) また、南極観測隊の隊員さんのペンギンさんの南極日記も、幅広い情報が集積していておもしろそうだ。
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コメント
1/24のYOMIURI ONLINEに続報が掲載された。http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20060124ik01.htm" target="_blank">南極の氷掘削、目標の岩盤には到達できず
うーむ。昨日からは約0.5mしか掘り進めなかったようだ。惜しくも岩盤まで到達できず、来シーズンに再挑戦とのこと。このニュース、昨日の今日だから、目標まで到達できず、という否定的なニュアンスとなっているけど、文部科学省のhttp://www.mext.go.jp/b_menu/soshiki/daijin/kosaka/06012402.htm" target="_blank">大臣談話を見ると、「当初目標とした深さ付近の氷床コアが採取できた」として、微妙な表現ながら成功であると評価している。
新聞も、ポジティブに評価して、もっと褒めてあげてもいいような気がするなあ。
投稿: tf2 | 2006/01/24 17:27