植物性乳酸菌とは
NIKKEI NETの新製品情報(1/6)から。カゴメ、植物性乳酸菌飲料に参入
カゴメは5日、乳酸菌飲料「植物性乳酸菌 ラブレ」を3月14日から全国発売すると発表した。動物性乳酸菌より胃や腸内での生命力が強い植物性乳酸菌のラブレ菌を使用した。2006年にラブレ向けだけで35億円の広告宣伝費を投入、初年度100億円の売り上げを目指す。ということで、FujiSankei Business iには、製品の写真やもう少し詳しい情報も掲載されているのだが、乳酸菌に動物性と植物性の違いがあったとは知らなかった。乳酸菌は菌なのだから、動物性だとか植物性だとかの区別もなかろうに、と思い調べてみることに。カゴメ株式会社のニュースリリースによると、現在カゴメの乳酸菌飲料は動物性のみ(年間売上高約60億円)だが、今後は植物性乳酸菌飲料に軸足を移す。野菜や穀物を発酵させて漬物などを作る植物性乳酸菌は酸に耐性があり、ミルクを発酵させチーズなどを作る動物性乳酸菌よりも胃や腸内での生命力が約十倍強いという。整腸作用や免疫力向上などが期待されている。
ラブレは130ミリリットル(105円)、80ミリリットル3本パック(170円)、100ミリリットル(宅配用・オープン価格)の3種類。130ミリリットルは関東や中部など一部地域のコンビニエンスストアで2月14日から先行発売する。
野菜や穀物など植物性素材を発酵させて、漬物や味噌を作る乳酸菌を「植物性乳酸菌」、乳など動物性素材を発酵させてチーズやヨーグルトを作る乳酸菌を「動物性乳酸菌」と呼んでいます。と書かれており、同じ乳酸菌でも栄養分を動物から取るのか植物から取るのかの違いのようだ。Wikipediaによると、乳酸菌とは、それぞれかなり性質が異なる数種類の菌類の総称だったようだ。で、今回のラブレ菌については、カゴメのリリースには
正式名称は、「ラクトバチルス ブレビス サブスピーシス コアギュランス」であり、通称を「ラブレ菌」と言います。乳酸菌の中の「乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)」に属し、棒状の形をしています。「すぐき漬」という漬物から発見された菌であり、酸や塩分に強く、胃液や腸液に耐えて「腸で生きぬく力が強い」のが特長です。とある。ちなみに、すぐき漬は京都の伝統的な漬物で、すぐき菜という蕪の一種を原料にしたこんな奴らしい。
また、加齢と共に腸内の善玉菌(ビフィズス菌)が減少し、悪玉菌(ウェルシュ菌)が増えるので、大人は善玉菌を増やす必要があり、そのために腸内で生存できる強い乳酸菌が必要である、という説明がされている。この説明では、植物性乳酸菌と善玉菌の関係が不明なのだが、healthクリニックの植物性乳酸菌は善玉菌を力強くサポートによると、確かに植物性乳酸菌の働きで善玉菌が増えるようだ。
こういう解説を読むと、それじゃあ従来の動物性の乳酸菌はどうなのよ?と思いたくなってしまう。たとえば同じカゴメの動物性乳酸菌のL.カゼイを使用したローリーエースは「生きて腸まで届く乳酸菌」と宣伝しているし、ヤクルトのヤクルト菌を使用したヤクルトも、「ヤクルト菌(ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株:乳酸桿菌)は、もともと人の腸内(小腸)に住んでいる乳酸菌から選び出し、胃液や胆汁に負けないよう強化培養しているので、生きて腸まで届きます。」とある。他のビフィズス菌ヨーグルトなども、大抵、生きて腸まで届くことをうたい文句にしているようだ。
さて、では動物性乳酸菌の効果はどうなのか? というと、healthクリニックのヨーグルトの乳酸菌はお腹の中には住みつかない?によると、ヨーグルト中の乳酸菌が直接腸内に住みつくわけではなく、いくつかの複合効果の結果として腸内の善玉菌を増やしてくれるようだから、全てが生きて腸まで到達しなくてもそれなりに効果があるようだ。
結局のところ、乳酸菌が腸内の細菌バランスを良好に保つために必要なのは確かのようだし、動物性よりも植物性の乳酸菌がより効果的のようだ。とは言え、植物性乳酸菌も、特に京都のすぐき漬や、乳酸菌飲料に頼らなくても、キムチを始めとした漬物類や味噌・醤油などにも豊富に含まれているようだから(参考)、いわゆる和食系の食生活をしていれば十分に摂取できそうに思える。まあ、ファストフードや洋食中心だと確かに不足気味となるかもしれないが。。 とすると、欧米人たちは何から植物性乳酸菌を摂取しているんだろう?
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コメント
ピクルスなんかは乳酸発酵だそうですし、
ザワークラウトやアップルビネガーというものも乳酸発酵させてるっぽいです。
探せば意外とあるのでは。
それに動物性には動物性の良いところもあるんじゃないでしょうか?
菌も多種多様のようですし…
単純に善玉菌を増やしたいならオリゴ糖をとったほうが良さそうです。
参考
http://main.health.msn.co.jp/back/20040901/good/tokushu/
投稿: xtc | 2006/01/12 05:37
ありがとうございます。とは言え、やっぱり日常的に味噌や漬物を食している日本人とは比べ物にならなそうです。
ちょっと気になった話としては、日本人は欧米人よりも腸が長い、というのがあったりします。これは長年の食生活に適応した結果で、だから日本人が欧米型の食生活をすると、調子が悪くなるという話。ということで、欧米人は動物性乳酸菌も腸まで届くけど、日本人は植物性乳酸菌が必要なのだ、という論理になるのかも??
ちょっと調べるとこの手の話は沢山出てくるけど、具体的な調査結果のようなものはなかなか見つからないので、真偽不明のようですね。というか、獲得形質の遺伝でもないと、腸の短い日本人や腸の長い欧米人が自然淘汰されたとは考えにくい気もするのですが。。 まあ、住みついている腸内細菌のフローラが異なるだろうとは思いますけど。
投稿: tf2 | 2006/01/12 12:34
良くまとまった内容だと関心しました。とくに、生きている乳酸菌が良いと断定されずいないところがすばらしいと感じました。少しコメントさせて頂きます。
1)植物性、動物性:微生物をこんな言葉で分けるのはおかしいと思います。植物由来とか動物由来という形容詞なら理解できるのですが、乳酸菌はあくまでも動物でも植物でもない微生物として扱って欲しいものです。
2)プログに書かれているように生きている乳酸菌を食べても腸で増える分けではありません。もし増えるなら一回食べればその菌が増えて2日目からは食べる必要がなくなるはずですが、生きて届くといっておられるメーカーも毎日食べるようにと宣伝していると思います。死んでいる菌を食べても腸内の善玉菌が増えることは乳酸菌研究の第一人者である光岡先生の報告(Microbiol.Ecology in Health Disease,16,188(2004))されています。
3)また、乳酸菌の腸管免疫作用は有名ですが、乳酸菌が増殖するのは大腸であり腸管免疫作用はほとんど小腸で発現されているので生きている菌を食べても意味はなく、大腸で増えた菌が小腸に戻って作用することも考えにくいと感じます。
以上、最近乳酸菌が注目されていますが、乳酸菌は死んでいるか生きているかよりもその数が多いほどパイエル板から体内に入る確立が高くなり腸管免疫作用の効果が期待されると考えてはいかがでしょうか。
投稿: ST | 2006/02/01 12:17
STさん、ご丁寧なコメントありがとうございます。
恥ずかしながら「バイエル板」について何も知らなかったので、調べてみました。http://www.iwata-tenjindou.co.jp/meneki.htm" target="_blank">腸管免疫というのがキーワードのようですね。
>乳酸菌は死んでいるか生きているかよりもその数が多いほどパイエル板から体内に入る確立が高くなり腸管免疫作用の効果が期待される
このあたりはhttp://www.teikoku-drugstore.co.jp/kensyoku/newsan/" target="_blank">乳酸菌生成エキスが効くというでしょうか。勉強になります。
投稿: tf2 | 2006/02/01 20:34
tf2さんのコメントに対して再度少しだけコメントさせてください。
乳酸菌生成エキスには分子量が大きいものから小さいものまでいろいろ入っていると思いますが、分子量の小さいものは通常パイエル板からではなく腸壁から吸収されます。乳酸菌そのもの(生きていても死んでいても)のような非常に大きいものでもパイエル板からなら吸収されるということになります。したがって、乳酸菌生成エキスの場合にはパイエル板と関連させない方がいいかなと思います。
投稿: ST | 2006/02/02 07:48
STさん、ありがとうございます。
ふむ、バイエル板は乳酸菌をそのまま吸収しちゃうわけですね。また少し調べてみたら、http://www.nyusankin.or.jp/new/kaminogawa1.html" target="_blank">食生活と腸管免疫・アレルギーという記事をみつかりました。バイエル板のM細胞が抗原を取り込むようですね。難しいですが、もう少し勉強してみます。
投稿: tf2 | 2006/02/02 19:54
消費者を惑わせる誤った用語をマスコミの皆さんが堂々と考えもせずに用いられていることを遺憾に思います。乳酸菌を動物性、植物性と分けられた方の主張はそれはそれでよいでしょう。しかし、誤った用語は避けるべきです。例えば、「植物性」なら何らかの植物としての因子を有するものに対して用いられる用語の筈です。一般には、また学術的には「水棲動物」や「陸生植物」、或いは「好塩性細菌」のように「植物棲」、「植物生」と記すか、「好植物性」(・・philic)などとと記すべきであります。事実、関係者は分離源と注釈されていますし、また昨年秋、つくばの国際会議の演題には、英文は論理的に記載せざるを得ませんので、「分離した」と記されています。用語が一人歩きし、何か「植物性」であれば健康に良いような印象を一般消費者に与えることを狙って用いられていることを残念に思います。この用語を利用する大手食品企業の品格を疑います。皆がよければそれで良いという問題ではないと考えます。正しい言葉遣いを本欄等では率先して用いて戴き、次代の若者たちへ正しい知識を伝えて戴きたいと考えます。H.M.
投稿: Siegfried | 2006/05/30 11:41
ご教示いただきありがとうございます。「植物性乳酸菌」という用語はどうも変だと思ったのですが、間違いであるとズバリと指摘している資料が見つからなかったのです。その後、上の方でSTさんにも変な用語であることをご指摘いただいて、やっぱりと思った次第です。
でも、残念ながら「植物性乳酸菌」という言葉は、その後大々的な宣伝の効果もあってか、ずいぶんとポピュラーな言葉になってしまったようですね。
>正しい言葉遣いを本欄等では率先して用いて戴き
と言われましても、ただの素人が主としてウエブの情報を元に書いているブログですから、いろいろな分野の用語についてすべて学術的に正しい使い方をするというのは現実的に不可能だろうと思います。もちろん用語に限らず、おかしなことはおかしいと指摘するように努力したいとは思っているのですが。。
今後とも、おかしな用語などありましたら、ご遠慮なく指摘してください。
投稿: tf2 | 2006/05/30 23:07