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2006/02/28

「人間は遺伝か環境か? 遺伝的プログラム論」

この手のタイトルの本が多く出回っているような気がする。そんなにこの2元論的な問いが幅を利かせているのだろうか? 以前、「やわらかな遺伝子」という本を読んで、ここでも紹介したのだが、そこでは、遺伝と環境のどちらか一方ではなく、その両者が互いに影響しあっているのだ、というような結論だったと思う。帯(というにはでかくて、本の半分以上を覆っているが)には、でかでかと「我々の人生を決めているのは結局のところ何なのだろう?」と書かれている。

文春新書 485
 人間は遺伝か環境か? 遺伝的プログラム論
 日高 敏隆 著 bk1amazon

当然のことながら、本書でも遺伝か環境かという二者択一ではなく、両者が共に係わり合うのであるということなのだが、それを遺伝的プログラムという概念で説明している。このあたりの説明は、お得意の動物行動学の実験結果を豊富に織り交ぜて、とてもわかりやすいし、へーと言いたくなる様なエピソードも幾つかあって楽しめる。

次に、日高さんは人類の特殊性に触れたのち、何故か教育論を展開していくのだが、これがちょっと変てこというか怪しさを感じさせる論理である。まず、人間が他の動物と大きく違っていたのは、100人、200人規模の大きな集団で行動していたことがキーであったのだろうという仮説を提示した後(p.69)、

性別も年齢も違い、そしてキャラクターも違う多くの人々は、皆、それぞれに違う振る舞いをしている。それは全体としてみれば人間という種の動物のやっていることであるが、その多様性は驚くほどである。そしてこの多様性もまた人間の特徴にほかならない。それぞれの子どもは大集団の中の多様な人々の思い思いの振る舞いを絶えず間近に見ることによって、社会生活に必要なさまざまなことを学び取っていくのである。(p.73)
と見てきたかのような話をする。さらに、現在のように数人単位の小さな家族の中で育ったり、学校のような同年齢の子どもたちの集団の中での教育では、多種多様な人々が一緒に暮らす大集団の言動から自然に学ぶ貴重な機会が失われてしまい、
結果的にどういうことになったかと言えば、かつてみんなが自然に学んでようなことが、ほとんど学習できなくなってしまったのである。つまり、石器時代の人々がごく自然な形で具体化していた遺伝的プログラムを、文明の進んだ現在ではほとんど具体化できなくなっているということなのだ。これは大変大きな問題ではないだろうか。(p.80)
と展開するのである。で、面白いのは、これが書かれている章のサブタイトルが「最近問題化している子どものしつけやコミュニケーション能力の欠如の原因を考える。」であるということ。。 うーむ、さすがにスケールが違うというか、日高さんの「最近」てのは一体いつからなんだろう?? 今の教育の問題点を、戦前の教育や戦後から高度成長時代の教育と比較した議論は良く聞くけど、石器時代と比べて今の教育の問題を語るというのは何とも壮大ではないか! で、現代においてどういう教育をすればいいのかというと、それについては残念ながら何も書かれていないみたいだ。。

実はこの本の一番の見所は、(おまけとして?)末尾に約30ページを費やして掲載されている、著者と佐倉統さんの対談かもしれない。案の定、佐倉さんは日高さんの持論の違和感をやんわりと指摘したりするのだが、それを日高さんが受け流しているような、すれ違っているような、微妙な雰囲気で進む対談はなかなか読み応えがある。

ちなみに、この書評では何故かインテリジェントデザイン論と本書が同じ発想であると指摘している。いくら世界日報の書評とはいえ、これはひどくないか? 日高さんの名誉のために言っておくけど、本書にはインテリジェントデザインの話なんか全く出てこないし、訳の分からない知性の存在を認めたりしている部分も全くない、はず。 ん? もしかしてこの書評の人は、遺伝的プログラムを書いたのが「インテリジェント」な存在だと理解したのだろうか? だとしたら全くの誤解だ。。 本書でもそんな誤解を受けることを恐れて

すでに繰り返し述べてきたように、遺伝的プログラムは人がつくったのではなくて、遺伝的にできたものである。生物のひとつの種ができたとき、それとともにできたものなのだ。

どのようにしてできたのか、それはわからない。われわれにわかるのは、遺伝的プログラムがその生物の生き方にじつにうまく合致しているということだけである。(p.133)

と書いてあるのにね。

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2006/02/27

地球型惑星候補ベストテン

CNN.co.jpの記事(2/26)。宇宙人探し、「期待できる星」のベストテンを発表

ミズーリ州セントルイス(ロイター) 地球以外の惑星に生命体が存在する可能性を探る「宇宙生物学」の研究者らがこのほど、地球に似た惑星を持つ可能性のある恒星10個のリストを明らかにした。これらの星は、米航空宇宙局(NASA)が打ち上げを予定する地球型惑星探査衛星(TPF)で、重点的に観測されることになる。

リストは、ワシントン・カーネギー研究所のマーガレット・ターンブル氏らがNASAに代わって作成し、このほど開催された米科学振興協会(AAAS)の会合で発表した。ターンブル氏は「銀河系には4000億個もの恒星がある。TPFでこれらを1つ1つ調べるわけにはいかない」と説明。「水が存在する惑星を持っている可能性が高い星を選び、さらにいくつかの条件を設けて10個に絞った」と語った。例えば、恒星が明る過ぎる場合は、その光によって惑星の観測が困難になるため、対象から外された。また、明るさが変わる変光星や、若過ぎる星、古過ぎる星などは、安定した状態が保たれず、周りに生命が育つとは考えにくい。さらに、地球の核を構成するような金属質の成分が少ないとみられる恒星は、地球に似た惑星を生んだ可能性が低いとの理由から除外された。

こうして絞り込まれたリストには、スイスの天文学者らが1995年に初の太陽系外惑星を発見した「ペガサス座51番星」、太陽によく似た「さそり座18番星」、太陽の10分の1の明るさの「エプシロン・インディA」、太陽系に最も近い恒星の1つ「アルファ・ケンタウリB」などが挙げられている。「これらの星についてはまだなぞの部分も多く、どれが一位かといったランク付けは無理だろう」と、ターンブル氏は話す。

一方、専門家の間では「宇宙の生命体は、私たちの知識を超えた構造、組成を持っているかもしれない。生命体が存在するのは、地球に似た惑星ばかりとは限らない」(コロラド大のキャロル・クレランド氏)との指摘もある。

NASAのTPFは2014年と2020年に打ち上げ予定だが、最近の大幅な予算削減で、先行きを危ぶむ声も上がっている。

この記事のタイトルは「宇宙人探し」になっているが、実際に発表されたのは地球型惑星が存在しそうな恒星の候補ということになる。TPFという探査衛星の計画は知らなかったが、これって実際に候補の星まで行って観測するんだろうか? 太陽系から最も近いアルファケンタウリでも 4.4光年だから、ロケットを飛ばして通信するなんて今の技術じゃあどう見ても無理だろうに。。

ということで、この計画について調べてみると、TPF(Terrestrial Planet Finder)については、NASAの公式サイトが見つかったが、これによるとTPFというのは複数の望遠鏡を搭載した人工衛星のようだ。系外惑星を見つけるにはによると、このTPF計画では光学干渉計を使って観測するという計画らしい。WIRED NEWSにも太陽系外の惑星と生命体を探るプロジェクトが進行中という記事で紹介されている。日本でも同様の構想があるようで、JAXA JTPF計画というのも見つかった。

ということで、TPFは候補惑星に向かって飛んでいくわけではなく、地球を回る宇宙望遠鏡衛星だったのね。それなら今の技術でもきちんと観測をすれば新たな知見がたくさん得られそうだ。

さて、肝心の地球型惑星候補ベストテンだが、SPACE.comに記事が載っている。これによると、今回のベスト10のうち、5個は電波信号をキャッチしようというSETI計画用の候補であり、残りの5個がTPF観測のための候補ということらしい。で、候補は以下の通り。

SETI stars
 ・Beta Canum Venaticorum
 ・HD 10307
 ・HD 211415
 ・18 Sco
 ・51 Pegasus

TPF stars
 ・Epsilon Indi A
 ・Epsilon Eridani
 ・Omicron2 Eridani
 ・Alpha Centauri B
 ・Tau Ceti

で、もしもNASAのTPF計画が予算の関係でキャンセルされた場合、この候補はヨーロッパのダーウィン計画で活用することも考えているようだ。

そういえば、SETI@homeにはずっと前から参加していたけど、今はBOINC SETI@homeに引き継がれており、僕のPCも日夜このために働いているようだが、最近はどれだけ計算を実行しているのか全然チェックしていないのでよくわからなかったりする。。。

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2006/02/24

平成16年度のPRTRデータ概要

今日はあまりネタがなかったので環境省の報道発表(2/24)からPRTRの最新データについてのメモのみ。平成16年度PRTRデータの概要等について-化学物質の排出量・移動量の集計結果等-によると

今般、平成16年度の1年間に届出対象事業者が把握し、平成17年4月1日から6月30日までに届け出られた事業所からの排出量・移動量について全国・全物質で集計しました。

届出事業所数 平成16年度は40,341事業所で、前年度41,075と比べて約700減少。
届出排出量  平成16年度は270千トンで、前年度291千トンと比べて減少。
届出移動量  平成16年度は230千トンで、前年度235千トンと比べて微減。
 今回は、法施行後4回目の届出分を集計したものであり、届出事業所数、届出排出量、届出移動量は前年度と比較していずれも減少傾向にあります。中でも届出排出量については相対的に減少割合が大きいことから、事業者による化学物質管理の改善が進んでいるものと考えられます。

とのこと。PRTR制度については、PRTRインフォメーション広場の説明がわかりやすい。このブログでも2004/3/31のエントリーで2年前の同様のPRTRデータについて触れている。

もう少し詳しいデータは、平成16年度PRTRデータの概要で見られるし、前年度までのデータとの比較も掲載されている。

今年の特徴として、届出事業所数、排出量、移動量共に前年よりも減少したということがあるようだが、環境省のコメント通りに「事業者による化学物質管理の改善が進んでいる」ことの表れなのかどうか? 平成13年度以降で比較してみると

         13年    14年   15年    16年
事業所数   34,820  34,497  41,075  40,341
排出量   312,794  289,873 290,756  269,558
移動量   216,388  210,117 232,267  229,946

となっており、実は何故か、事業所数、排出量、移動量共に1年毎に増減を繰り返しており、今年のデータを見て、減少傾向にあると判断するのはちょっと無理がありそうだ。

*2/24追記
五月兎さんからご指摘をいただきましたが、平成15年度データから対象事業所の基準が変更になったため、上記のように直接比較してはいけないようです。詳しくは下のコメント欄を参照ください。

ちなみに、平成16年度の排出物質のベスト10がどんなものか予想が付くだろうか? ベスト5を的中させられたら相当なものだろう。参考までにそれぞれ化学物質ファクトシートにリンクしておく。

 1位 トルエン
 2位 キシレン
 3位 マンガン及びその化合物
 4位 塩化メチレン
 5位 エチルベンゼン
 6位 鉛及びその化合物
 7位 N,N-ジメチルホルムアミド
 8位 エチレングリコール
 9位 クロム及び3価クロム化合物
10位 ふっ化水素及びその水溶性塩

トルエン、キシレンあたりはともかくも、3位のマンガンは結構意外だし、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、あるいはふっ化水素がこんなに排出されているというのもかなり意外である。それぞれがどこからどんな形で排出されているのか興味のあるところだと思うが、さすがに化学物質ファクトシートには主な用途や排出源についても解説が載っているので、それぞれのリンク先を参照願う。

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2006/02/23

マグナス風車の実用化

nikkeibp.jp(2/23)の記事。新方式「マグナス効果」を使った風力発電、メカロ秋田が開発加速

「マグナス効果」と呼ばれる原理を使った新方式の風力発電装置の開発を進めるベンチャー企業のメカロ秋田が、その実用化開発を加速し始めた。(中略)

この風力発電に使われているマグナス効果は、野球でピッチャーがカーブを投げる際にボールが曲がったり、ストレートを投げた際にボールが浮き上がったりする原理である。自転している球や円柱が向かい風を受けると、向かい風と自転方向が一致する側では風の流速が速くなって圧力が小さくなるが、その反対側では流速が遅くなって圧力が大きくなる。この結果、球や円柱は一致する側へ向いた力を受けて、その方向に進むことになる。

この原理を風力発電に利用するためには、通常の風車では羽に相当する部分に複数の円柱を放射状に取り付ける。この複数の円柱をモーターなどで同じ方向に回転させながら、向かい風を受けさせると、マグナス効果によって風車が回転する。この回転エネルギーを電力に変換すれば風力発電が可能になる。このような原理は専門家の間では従来から知られており、マグナス効果を利用した風力発電を実現することは原理的には可能であることが分かっていた。しかし、これまでは十分な出力を得ることができず、実用化には至っていなかった。(後略)

文章による説明ではわかりにくいのだが、技術&事業インキュベーション・フォーラムの新方式「マグナス効果」を使った風力発電、メカロ秋田が製品化に向けて開発を加速にはマグナス効果の図解や実際の風車の写真が掲載されており、なかなか興味深い風車であることがわかる。従来の常識的な形状の翼の代わりに回転円柱型の翼とすることで、より効率良く揚力を発生でき、従って発電効率も高くなるということらしい。

調べてみると、秋田マグナス協会のサイトに詳しい情報が掲載されている。マグナス効果そのものは野球のカーブボールが曲がる原理として理論的にも認められている理論のようだが、この原理を風力発電に応用しようとしたのは、ロシアの科学アカデミーが最初らしい。その成果に秋田県が注目し、ベンチャー企業であるメカロ秋田と大学、高専との共同開発により実用化を目指しているとのこと。

東北の元気な企業(メカロ秋田)には、この会社の社長のインタビューが掲載されているが、ロシアの風車の翼は単なる円柱形状だったのを、秋田での研究の結果、スパイラル型のフィンを取り付けることにより揚力が向上したというという成果を紹介した後に、

村上社長:円柱を回すのはモーターですから、その消費電力を差し引く必要があるのですが、それでもプロペラ型と、このスパイラルを付けたマグナス型風車とでは翼一本当たり4倍程度の揚力差があるということが発見出来ましたね。

佐々木次長:素晴らしいですね。どうしてこんな性能が出るのですか?

村上社長:それが分からないんです。流体力学を長年研究されている伊藤先生にも結果を確認して頂いたのですが、やはり現時点では分からないと仰っていました。解析しなければならない要素が多過ぎるんですね。四次元の応用になってしまうので、解明まで早くても3年、もしかしたら10年かかるかもしれないと言われました。

とある。まあ、無理やり変な理屈をつけて説明するより、正直で良いだろう。でも、わざわざ電力を使って円柱型の翼を自転させても、風車全体の回転によって得られる電力が通常の風車の4倍にもなるのであれば、もっとはるかに注目されても良いと思うのだけど。。 実験がしっかりしているならば大丈夫だとは思うが、ちょっと心配でもある。

この技術が本物ならば、応用分野としては風力発電以外にも、それこそ飛行機などの翼の代わりにマグナス型回転円柱翼を採用するとか、航空機やヘリコプターなどのプロペラをこのマグナス翼にしてみるとか、いろいろとあっても良さそうだ。こんな形の扇風機なんかも面白そうだし。。

ちなみに秋田高専のAKITA地域共同テクノセンター報の p.7/102 にこの風車の研究についての資料があるが、マグナス風車のメリットとして、

①風速域が広く,1日の稼働時間が長い②円柱は翼に比べ製作コストが安価である③円柱は翼に比べ強度が大きい④トルクが大きく,風車の回転数を小さく取れる⑤寒冷地で問題となるブレード着氷が少ない
を上げている。各円柱翼を回転させる機構は複雑になりそうだし、その分だけ回転部分が重くなりそうなのも気になる。。 今度秋田に帰った時にでも見に行ってみようかな。

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2006/02/22

「フリーランスを代表して申告と節税について教わってきました。」

確定申告のシーズンである。このブログを読む方で、個人事業主として確定申告する必要がある方がどれだけいるのかわからないが、僕も確定申告の対象者なのである。昨年の確定申告では収入も少なかったので、必要経費の計算も大雑把なところだけで十分に税金の還付を受けられたのだが、今年は少しは頑張って計算する必要がある。ということで、書店の税金コーナーを探していて見つけたのが本書。何とも長いタイトルの本である。帯には「フリーランスの著者と話のわかる税理士による“目からウロコ”の税金講座」とある。

日本実業出版社
 フリーランスを代表して申告と節税について教わってきました。
 きたみ りゅうじ 著 bk1amazon

フリーランス(個人事業主)の確定申告に関する情報は、インターネットにもAll About Japanなどがあり、個々の具体的な点についての対処方法などは調べればある程度はわかるのだが、根本的な考え方がどうもわかりにくいように感じる、というか、本当に知りたいことが何故か載っていないというようなもどかしさがある。また、通常の書籍や雑誌に載っている情報は建前的だし、何故そうしなくてはいけないのか、というような疑問点については答えてくれないものが多いようだ。

本書は、著者と匿名税理士の対話形式。著者がイラストレーターということで、4コマまんがも豊富に掲載されているし、有益で本当に知りたい情報が楽しく手に入る。特に税理士のセンセイが匿名を条件に、グレイゾーンにまで踏み込んだ節税対策を述べているため、「なるほど」と納得させられる場面が実に多い。逆に、日々の実際の帳簿の付け方などの実務的な部分に関しては不十分だけど、それは必要に応じて他の本で勉強すれば良いだろう。

特に、事業税や消費税についてのところは良く知らなかったので参考になった。例えば事業税は業種によって税率が決められており、同じような仕事をしていても業種が「デザイン業」だと税率5%となるのだが、「文筆業」だと無税となる、というような驚くべき事実が公開されていたりする。

また、個人が原稿を書いたり、コンサルティングをしたりといった、物の売買に直接関わらない仕事を行って収入を得た場合でも、これは消費税の対象となるので、最初の契約時にクライアントに対してきちんと消費税分を要求するべきである、などということも知らなかった。

他にも、必要経費には領収書が必要かと思いきや、明細が掲載されている点でレシートにも利点があり、きちんと整理するならばレシートで十分とあるとか、勘定科目は特に決まりはないので自分の都合に合わせて自由に設定して構わないなど、他の本ではなかなか得られない情報が満載である。さらに、ご丁寧にも税務調査の実態まで紹介してくれており、申告した内容に問題があった場合の対処法なども書かれていて、実にうれしい。

また、青色申告は敷居が高いと思っていたけど、白色申告を行うためにわざわざ手間を掛けるくらいなら、もう少し頑張って青色申告にすることで多くのメリットが得られるのだから、是が非でもチャレンジすべきということがわかった。まあ、今はパソコンで必要な帳簿を自動的に作成してくれることだし、今年の申告分は間に合わないけど、次からは青色申告にしよう。

ということで、先日無事に申告書類一式を持って税務署に行き、確定申告書の提出をし、さらに青色申告の申請をしてきた。青色申告会のおじさんが親切に説明してくれたけど、入会を強制されることもなかったし。ついでに、商業簿記3級のテキストを買ってきて、複式簿記の基礎をサラッと勉強してるところ。

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2006/02/21

南極観測船しらせの後継

スラッシュドット経由の京都新聞ニュース(2/17)から。次期南極観測船建造へ ユニバーサル造船舞鶴事業所

 老朽化で2007年度で退役予定の「しらせ」にかわる次期南極観測船(約12500トン)が、ユニバーサル造船舞鶴事業所(舞鶴市余部下)で建造されることが、このほど決まった。今後詳細設計を行い、07年に起工、09年5月完成予定。日本の南極観測船は次で4代目になるが、京都府内での建造は初めて。

 南極観測船は、防衛庁が所有、運用する砕氷艦。毎年度、分厚い氷を砕いて南極の昭和基地に観測隊員や物資を輸送し、オゾンホールの研究など日本の約50年間の南極観測を支えてきた。

 同事業所によると、後継艦は長さ138メートル、幅28メートル。「しらせ」より1回り大きく、観測隊員約80人、物資約1100トンを乗せて、厚さ1・5メートルの氷を砕きながら約3ノットで進める。燃料タンクを二重に防護し、事故による油流出がないよう環境に配慮する。

 初代の「宗谷」から「ふじ」「しらせ」とこれまでの南極観測船は、ともに神奈川県内の日本鋼管の造船所が改造、建造した。ユニバーサル造船は2002年、日本鋼管と日立造船の造船部門が統合して誕生。今回もこれまでの建造技術が評価され、防衛庁と先月末に随意契約し、大型艦艇を建造する舞鶴事業所で建造することになった。

 船全体の総事業費は約400億円。同造船はうち船体など(同約245億円)の建造を担当する。舞鶴事業所の鈴木直樹総務部長は「砕氷艦はわが社の事業の柱で、今まで蓄積した技術を発揮したい。地元経済の活性化に一役買えればうれしい」と話している。

ということで、財政難で次期南極観測船の建造が危ういというニュースもあったが、無事に?建造が決定となったようだ。次期観測船の予算が取れないというあたりの状況は、例えば南極観測船の話。などで大体のところが理解できる。

検索してみると、南極観測の将来を考える会が南極観測の継続を訴えたりということで、いろいろとあったようだが、予算がついた、というニュースは探してみた範囲では見つからなかった。観測中止となると大騒ぎするけど、継続決定となるとニュースバリューも小さいのか、あまり注目されないようだ。

ちなみに、現時点では第47次観測隊がちょうど昭和基地を出発して帰国の途についたところ。

ところで、しらせは南極観測船と呼ばれているが、Wikipediaによると、正式には海上自衛隊の砕氷艦という位置付けとのこと。しらせの全長が134m、幅が28m、排水量が11600トンに対して、新船は全長138m、幅28m、排水量12500トンということで、一回り大きいというよりは、ほとんど同じ大きさというイメージだ。。

さて、当初の予定では今年にも老朽化により引退という話もあったようだが、最終的にどうなったかというと、南極地域観測事業の概要の p.7/8によると、平成19年度(2007年度)でしらせの運用を終え、平成21年度(2009年度)から新しい船を運用する予定とある。結局、平成20年度(2008年度)の1シーズンだけは船が無い状態となるのだが、この年は代替輸送手段で観測を継続する予定のようだ。

ユニバーサル造船という会社名はこのニュースまで聞いたことがなかった。当初の予算が520億円に対して、このニュースでは400億となっており予算を少し削減したらしい。砕氷能力を見ると、しらせも新船も共に厚さ1.5mの氷を砕きながら時速3ノットで進めるということで、全く同等の能力のようだが。。

耐用年数が20年とすると、船のコストだけで1年あたり20億円程度。この費用を高いと見るか安いと見るか、比較対象に何を持って来るかで評価も変わるだろうと思う。この前も100万年前の氷を掘り出したというニュースがあったし、それなりの成果を上げているんだろうけど、情報公開がやや消極的だと思われる。南極観測関連のホームページを見ても、あまり親切な説明はないようだし、後継の観測船についての情報もほとんど見られないというのは、やっぱりちょっと寂しい。。

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2006/02/20

液体炭酸による人工降雨

日本経済新聞の2/20朝刊、科学面の記事から。

薄い雲から人工降雨、九大など 厚み1キロで実験成功

 九州大学などの研究グループ(代表・真木太一 九大教授)は、比較的薄い雲から人工的に雨を降らせる実験に成功した。これまでは雲の厚みが2、3キロメートル以上必要だったが、1キロメートル程度でも雨が降ることを実証した。雨をダムなどに降らせて水不足の解消などに役立てる基礎的な成果だ。

 実験には防衛大学校やユタ州立大学、海上自衛隊が酸化した。2月初旬、長崎県の壱岐上空で、飛行機から二酸化炭素の液体(液体炭酸)約1キログラムを雲の底にまいた。

 液体炭酸は大気中の水蒸気を冷やし、雨のタネになる氷の結晶を大量に作った。約1時間後に液体炭酸をまいた雲だけが、福岡県と佐賀県の県境でみぞれを降らせたことをレーダーで確かめた。雨量は1時間当たり約1ミリだった。

雲が山にさしかかる前に液体炭酸を雲に含ませると、雨量が増えた。同様の方法で「過去に2-3キロの厚さの積雲から約百万トンの水をダム流域に降らせた」(九大)という。
今回の雲の厚さは約1キロメートルで、あまり厚くない雲でも雨を降らせることができることがわかった。海辺から少なくとも20-30キロ内陸の広範囲に雨をもたらせるという。

従来も地上からヨウ化銀の煙を立ち上らせて、人工的に雨を降らせる方法があったが、煙が思うように雲まで届かないのが難点だった。雲の上からドライアイスの粒をまく方法もあるが、雲にまんべんなくまくのが難しいという。

以前、中国の人工降雨というエントリーを書いたのだが、その時の印象としては、人工降雨技術というものにやや怪しげな印象を持った。(撒いた、降った、という関係だけを強調されると、怪しげな健康食品の宣伝と通じるものがあるし。。)その際に紹介した、気象研究所の村上さんの第8回WMO気象改変に関する科学会議出席報告(pdf)というレポートは、URLが変わっていたので、再度リンクを貼っておく。

今回の実験も、撒いた、降ったという話のようなのだが、どうなのだろう? この技術については、毎日新聞のなぞなぞ科学で紹介されているが、「人工的に雨を降らせるのは可能だが、『雨が降りそうで降らない雲』が存在することが前提だ」とある。降りそうで降らない雲から雨が降ったのか、それとも降りそうで降らない雲のように見えたけど、実は降る雲だったのか、どうやって区別するんだろう?

もう一つ気になったのは、液体炭酸という重くて冷たいものを雲の底にまいても、雲の本体とは相互作用することなく、液体炭酸が降下してしまうのではないか? という疑問。炭酸ガスはガスとしては空気よりもかなり重く、液体状態であれば水と同等の密度のようだ。(参考

調べてみたら、自然災害科学60 Vol.20, No.4 (2001)の p.19/23 から、九州大学の脇水さんらの報告が載っていて、この中で、液体炭酸による人工降雨のメカニズムや実験結果の説明がされている。それによると、この方法はヨウ化銀やドライアイスを噴霧する方法とは異なるメカニズムによるもので、福田理論と呼ばれるものらしい。

この理論によると、雲の底にまいた液体炭酸により、気流や熱の出入りが複雑に絡んで、氷晶が成長し、これが融けて雨となって降下するらしいが、なかなか難しい。実際の実験の際のレーダーエコーの動きが、このメカニズムで説明されるものと一致したことから、この理論が実証されたと考えられているようだ。

人工降雨技術は、水不足の解消のために雨を降らせるという目的以外にも、例えば今年の豪雪のような際に、日本海の上で多くの雪を降らせてしまい、内陸部の降雪量を減らすことができると結構有用だと思われる。あまり大幅な気象改変などは、どんな副作用があるかわからない恐ろしさもあるが、今後は地球温暖化の影響からか、極端な気象現象が頻発するという予想もあるので、少しでもそれをマイルドにするような改変技術の有用性は今後大きくなりそうな気がする。

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2006/02/17

がんバンクとは?

FujiSankei Business i(2/17)の記事。テラ「がんバンク」開始 組織保管、免疫療法本格運用へ

 大学発ベンチャーで、がんの治療法の研究開発を手掛けるテラ(東京都港区)は十六日、将来、画期的な治療法が実現した際に利用することなどを狙い、患者のがん組織を保管するサービス「プライベートがんバンク」を開始したと発表した。

 通常、外科手術で患者から摘出したがん組織は、医療機関の研究用に利用される以外は廃棄されている。これに対し、新サービスは摘出したがん組織をマイナス一五〇度の超低温で保管・管理し、組織は手術後、再発や転移などが起きた場合、診断に利用したり、手術時点では活用できなかった新治療法を後日に適用する場合に使用する。これにより患者は、再発・転移時の備えができ、治療などに新たな選択肢を得られる。

 同様のサービスは、研究開発会社のメディネット(横浜市港北区)が、二〇〇四年からスタートさせており、国内で二件目。海外では同様の本格サービスはないという。

 テラは初年度の保管費を無料(メディネットは二十一万円)とし、二年目以降は三万千五百円(同四万二千円)にするなど大幅な低料金化を実現し、サービスの活用を拡大を図る。

 テラは、東京大学が開発した技術、ノウハウを基に、人間に本来備わっている免疫(体内に入り込んだ細菌などの異物を排除する働き)の機能を生かし、がんを治療する手法の一つである「樹状細胞療法」の本格実用を目指している。

 今回の保管サービスはこの活動の一環で、サービス自体は、ほぼ実費での運営としている。

がんバンクというのは初めて聞いたが、手術で摘出したがん組織を凍結保存しておいてどう役立てるのかよくわからない。グーグルで調べてみても、ガンバンクは見つかったが、「がんバンク」は1件も見つからなかった。。

テラ株式会社を見たが、がんバンクに関する情報は掲載されていないようだ。このホームページを見る限り、大学発のベンチャーが新しいビジネスを始める割には、情報公開が不十分な印象がある。もう一方の株式会社メディネットを見ると、さすがに既にビジネスとして自己がん細胞バンクを行っているだけあって、かなり豊富な説明が載っている。

それによると、がん組織を利用した治療として、免疫細胞療法というのがあり、これに使用されるのが樹状細胞というもので、テラが行おうとしているのも、この樹状細胞療法ということらしい。このページの説明はイラストもあってなかなかわかりやすいのだが、確かにこの療法には摘出したがん組織が必要となるようだ。面白そうだけど、実際にどの程度の効果が期待できるんだろう? 他にも、摘出したがん組織は、がん抗原検査遺伝子診断の目的でも使われるとのことだ。

テラはメディネットに比べて大幅に低料金化したとのことだが、その仕組み(ビジネスモデル)についても、よくわからない。表面的な違いとしてわかるのは、メディネットが-80℃で保管するのに対して、テラは-150℃ということぐらいで、これじゃあ安くはならないだろうし。。(それにしても、-150℃ってやけに中途半端な温度だ。)

がんバンクを調べていて見つかったのだが、リンパ球バンクというのもある。このような最新の医療を受けようと思うなら、普段から情報を集めていろいろと勉強しておく必要もありそうだ。

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2006/02/16

金属性と半導体性のカーボンナノチューブ

産業技術総合研究所のリリース(2/15)から。金属性カーボンナノチューブを簡単に80%まで濃縮

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)ナノテクノロジー研究部門【部門長 横山 浩】自己組織エレクトロニクスグループ 片浦 弘道 研究グループ長らは、過酸化水素を用いた短時間の処理で、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)中の半導体性SWCNTを除去して金属性SWCNTを80%まで濃縮する事に成功した。

 透明導電性薄膜ITO(酸化インジウムすず)は液晶ディスプレイ等広範囲に使われているが、現在、インジウムが希少資源であることからコスト増や資源の確保が問題となってきている。SWCNT薄膜は、ITOに代わる透明導電性薄膜として注目されるようになってきたが、今まで実用レベルの導電率に達していない。現在、市販のSWCNT中には高い導電性の金属性SWCNTが33%程度しか含まれず、電気を流しにくい半導体性SWCNTが多く含まれることが良好な導電性を得られない理由の一つと考えられる。今回、産総研では市販のHiPco SWCNTを用い、1時間程度、過酸化水素水により酸化処理するだけで、半導体性SWCNTを選択的に効率よく除去し、金属性SWCNTの含有量を80%まで濃縮することに成功した。この処理による純度の劣化や欠陥の増加は見られず、SWCNTの導電性フィラー、特に透明電極への応用が期待される。

 金属性SWCNTと半導体性SWCNTの構造はわずかしか違わないにも関わらず、酸化反応(広義の燃焼反応)のような激しい化学反応でも、顕著な選択性が観測されることは重要であり、選択性の機構を解明、応用することにより、これまで不可能であったSWCNTの精密な構造制御技術の開発へつながると期待される。

 本技術の詳細は、2月21日から東京ビッグサイトで開催される国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2006)で発表予定である。

カーボンナノチューブに金属性と半導体性の2種類があることは、聞いたことがあったが詳しくは知らなかった。このリリースの下の方に、金属性と半導体性のカーボンナノチューブについての図解説明が載っている。どうやら、炭素原子が6角形状に並んだシート(グラフェン)がチューブ状に丸まる際の巻かれ方の違いによって、金属性と半導体性が変わるらしく、理論的に1/3が金属性で2/3が半導体性となるみたいだ。

産総研のカーボンナノチューブの説明(こちらこちらなど)でも説明されているが、なかなか立体的にはイメージできない。九州大学先導物質化学研究所の辻研究室の説明には、金属性を示すアームチェア構造と半導体性を示すらせん構造の図が載っていて、理解しやすいようだ。

今回の産総研の方法は、金属性と半導体性の混合物を過酸化水素水で熱処理するだけのようだ。プレスリリースによると、47分間の熱処理により、試料の量が最初の1%にまで減少し、結果として金属性の割合が33%から80%に増加したということのようだ。ということは、半導体性のカーボンナノチューブが当初の0.3%まで減少する間に、金属性のカーボンナノチューブは当初の2.4%までしか減少しなかったということになりそうだ。

現時点では、確かに金属性の割合を大幅に増やすことができたものの、原料の99%がなくなっていまう(酸化してCO2になったのだろうか)し、特に半導性のナノチューブがなくなるのが辛いところで、到底現実的な手法とは言えないだろう。でも、こんな単純な処理で純度が上がったというのは面白いところだ。

ちなみに、国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2006)が近いということで、ここのところ産総研のリリースを見ると、ナノテク関係の話題が景気良く出てきているようだ。

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2006/02/15

「宇宙怪人しまりす 医療統計を学ぶ」

何とも変なタイトルの本を見つけてしまった。しかも岩波科学ライブラリーである。パラパラッとめくってみると、「しまりす」と「先生」の対話形式で、全体的に漢字が少ないようだし、イラストも入っているし、かなり読みやすそうだ。これってもしかして中学生向け? と思ったのだが、あとがきには、

できるだけ多くの、高校生、大学生のみなさんに「へーっ、医療統計っておもしろいんだ」ということをしってほしいですし、もし万が一ひょっとして医療統計を研究してみたいと興味を持った方は、先生の研究室のホームページ(http://www.kbs.med.kyoto-u.ac.jp/)をのぞいてみてください。
と書かれている。

岩波科学ライブラリー 114
 宇宙怪人しまりす 医療統計を学ぶ
 佐藤 俊哉 著 bk1amazon

本書は、高度な文明を持ち、病気が存在しない「りすりす星」に住む宇宙人が、地球を征服することをたくらむところから始まる。征服後に効率的に地球を統治するためには地球人の病気を管理する必要があることから、疫学や医療統計学を学ぼうと「りすりす星」から一人(?)の学生「しまりす君」が京都の大学にやって来て、勉強するという話である。ってどんな話なんだか?

医療統計の入門書なのかもしれないが、統計の基礎(平均とか偏差とか)の説明は一切ない。最初に先生がしまりす君に次の問題を出す。

第1問 率はどれでしょう?
 1)打率
 2)離婚率
 3)死亡率
 4)有病率
しまりす君がうまく答えられないのを見て、次に、比と割合と率の違いをいってみてください、と問いかける。答えがわかるだろうか? 医療統計の世界では、比と割合と率はきちんと区別して使われるようだ。英語では、それぞれ ratio、proportion、rate に相当するらしい。少なくとも僕は今まで、このような明確な区別を習ったことはないように思う。比と割合の違いは何となくわかるのだが、割合と率は使い分けていないように思う。

例えば、死亡率と死亡割合は異なる概念を説明する用語として使い分けられていて、定義を知らないと困るわけだ。まあ、説明されれば、なるほどそうかな、と納得できる定義ではあるのだけど。。

時には、しまりす君が薬の効き目を調べるためにタイムマシンを使って過去に戻ってみたりしながら、そんなことをしなくても医療統計によって推定する方法を学んだりするのも、面白い趣向である。

それやこれやで、本書の前半は比較的平易な内容で、説明も丁寧なのでよくわかるのだが、後半はあっさりと説明されているものの、いつの間にか相当高いレベルの話になっているような気がする。ところが、しまりす君はさすがに高度な文明の星の大学生だけあって、かなり鋭い理解力を持っているようだ。読みやすい文体とも相まって、何となくすっきりと理解した気にさせられるのだが、油断大敵である。後で思い返すと実はあまり理解できていなかったりするのだ。それもそのはず、Amazon.co.jp のレビューによると、実は医療統計学の分野の最先端領域にも触れられているらしい。

惜しむらくは、ちょっと中途半端ということだろうか。本書は120ページ弱と薄いし、説明が平易な文章で行われていることもあって、正直に言って中身が少ない。そのため、入門書としては面白いと思うが、この本で医療統計を理解しようと思ったら間違いだろう。恐らくは、まともな教科書や参考書で勉強しながら、この本を副読本とするような読み方がいいのかもしれない。

統計というと普通は数式が沢山出てくるけど、本書は難しい内容を数式も使わずに、実にわかりやすく説明している。ここまで噛み砕いて説明できるということは実はすごいことなのだろうと思うし、かなり大変だっただろうと思う。せっかくだから宇宙怪人しまりすシリーズの続編を期待したいところだ。

それにしても、何故「しまりす君」が「宇宙怪人」なのかは疑問のままだ。 っていうか宇宙怪人って普通の(?)宇宙人とはどこが違うのだろうか? 

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2006/02/14

リキッド・ナノテクノロジーというコーティング

WIRED NEWS(2/10)から。注目集める新しいナノ・コーティング剤

 「リキッド・ソリッズ」と呼ばれるこのナノ・コーティング剤は、きわめて微細な粒子からなり、並外れた柔軟性を備え、容易に付着し、腐食や細菌の繁殖に対する耐性もある――まさに製造工程に大革命をもたらす可能性を秘めているのだ。

 米エコロジー・コーティングス社の設立者の1人で主任化学者のサリー・ラムゼイ氏が、ナノ・コーティング剤のコストと環境へのメリットを探り始めたのは2003年のこと。ナノスケールの酸化鉱物の粒子を用い、紙の防水コーティング剤を合成紙の半分のコストで作ろうとしたのだ。ラムゼイ氏よると、それから派生した複数の素材が、防水性のある段ボール箱や、湿った際のカビの発生を防ぐ乾式壁などの建築資材に利用できるかもしれないという。

これを読むとナノスケールの酸化物粒子のコーティングなのかと思ったのだが、この記事を読み進めると、エコロジー・コーティングス社からライセンスを受けたデュポン社がまもなく実用化するナノ・コーティングに関しては
 ナノ粒子は極微細なため、従来のスプレー機器を用いて塗布できるとラムゼイ氏は話す。また、このコーティング剤は、塗布した部品の表面を紫外線に10秒足らず当てるだけで硬化するという。

 「紫外線に当てると、(コーティング剤は)薄いプラスチックのシート状になる」とラムゼイ氏は説明する。さらに紫外線硬化の工程は室温の状態で可能なため、部品を炉の中に入れ、摂氏200度以上で40分もの加熱が必要な現在の硬化工程に取って代わると思われる。

とあり、どうやら酸化鉱物粒子というのは開発当初の話で、ここで話題としているのは、紫外線硬化樹脂の微粒子をスプレーコーティングする技術のことらしい。

日本にはまだこの会社の商品や技術は入り込んでいないみたいなので、アメリカの同社ホームページを訪れてみると、Ecology Coatings 社は、"liquid nanotechnology" という登録商標で一連のコーティング剤を展開しているようだ。product の Overview をみると、紫外線硬化、リキッド 100% ソリッズ、ナノ材料の3点の特徴について説明している。

この中の「リキッド 100% ソリッズ」については、"Our formulations are liquid 100% solids and contain no VOC's or HAP's" とある。VOCは揮発性有機化合物(Volatile Organic Compaunds)、HAPは有害性大気汚染物質(Hazardous Air Pollutants)のことである。Liquid 100% solidsとは、水や有機物などの溶媒を含まない、100%固体粉末でできた液体状の物質ということだろうか? ただ、ナノサイズの粉末は凝集性が非常に強いので、普通はこの粉末だけでは液体のように流動性を示すとは思えない。まあ、そこがこの会社の開発した特殊な技術なのだろうけど。

これらの特徴をまとめると、VOCを含まない固体ナノ粒子を基材にコーティングして、紫外線で硬化させると、高性能なコーティング膜が得られるということらしい。金属、ポリカーボネート、紙など、コーティングする相手の基材によって何種類かの製品をラインナップしているようだが、その組成や内容については残念ながら全く触れられていない。もう少し情報公開してくれてもいいと思うけど。。

探してみると、紫外線硬化型の粉体塗料というのはこんな本にも掲載されているくらいで、既に知られた技術のようだが、それをナノ粒子にすることで、得られる塗膜の性能を向上させたということらしい。RED HERRINGによると、この新しいナノ粒子コーティングによって、従来よりも高い透明性と高い硬度が両立した高性能なコーティングが得られるらしい。メガネやiPodなどに使用することで性能向上が期待されるだけでなく、生産工程で大幅に省エネが達成でき、低公害性とも合わせて今後が楽しみな技術のようだ。将来的には車の窓ガラスの代わりに、このコーティングを使用したポリカーボネート樹脂を使用することも考えられているようだ。

従来の技術や競合する技術と比べて、どの程度の性能が得られるのか、ほとんど定量的な議論がなされていないので何とも評価しにくいのだが、技術の方向性としては注目に値するものと思われる。

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2006/02/13

244回目の献血

前回1/19以来、25日ぶりの献血。今回は久々に横浜駅西口献血ルームに行ってきた。この案内図でも三越が目印の一つとなっているが、実は三越はここから撤退しており、既にヨドバシカメラとなっていた。

ここの献血ルームは横浜駅から徒歩数分のビル1Fという好立地だと思われるが、ちょっと裏手の人通りが少なめの静かな場所にある。そのせいか、他の献血ルームと少し雰囲気が違い、学生さんや買い物のついでに寄ったような人はほとんど見られず、全体的にかなり静かな雰囲気となっている。

採血室は比較的狭いものの、ベッドの並べ方を工夫してかなり沢山並べている。待合室は比較的広く、受付は3人だが、その中の一人が帰りに記念品を渡す役専任となっているようなのもちょっと珍しい。恐らく他の献血ルームよりは訪れる人が多いだろうと思うのだが、献血に来た人を処理する一連の流れがシステム化されていてスムーズな反面、機械的に処理されているような印象を持たされる部分もあるように感じる。

ここでも受付に貼り紙があり、今年度分の血漿成分は既に確保したので、現在は保存の利かない400ml献血と血小板成分献血のどちらかをお願いしていると書かれている。ところが、実際には何故か血漿成分献血をすることになった。聞いてみたら、既に本日の血小板成分の必要量は確保し終えたので、それ以降は血漿成分をお願いしているとのこと。

前回および前々回の川崎市の献血ルームでは、採血前に生年月日と血液型および住所などを自己申告させられたが、今回は看護師さんが住所、氏名、血液型を読み上げる形での本人確認であった。

ここの特徴としては、献血前の採血検査後、献血前に食べておいてね、とビスケットを渡されることと、献血後にベッドでクラッカーを渡されること。前回の川崎では飲み物の補給を重視して、ここでは食べ物の補給を重視しているのだろうか。同じ神奈川県の献血ルームでも場所が変わると細かなところが異なっていて興味深い。

今回のおみやげは、前回もらってきたパックごはん、2005/10/21の時のデンタルファミリーセット、および2004/2/20の時の鮭ごはんの3種類からの選択ということで、久々に鮭ごはんをもらってきた。

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2006/02/10

点滴バーって何もの?

スラッシュドット ジャパンで見つけたトピック。バー感覚で気軽に点滴。元の記事、livedoor ニュースによると、

「点滴バーとは、お客さまに気軽に医療や栄養について考えていただきたくて考案した診療方法です。バーに遊びに来るような気軽な感覚で医療や栄養のことを考えていただき、点滴を受けることによって、疾患の予防・早期発見ができないかという思いからこのネーミングとさせていただきました」(司馬院長)
とのこと。東京は六本木の結び葉クリニックが最近始めた新しい試みのようだが、点滴バーの説明を読むと、担当看護師とのカウンセリングを通して、自分に合った点滴を選び、医師の承認を得てから点滴を受ける仕組みとなっているようだ。

そこそこ健康な人を対象としているように思えるのだが、何だかなあ、という気にさせられる。医療の役目とは、病気や怪我を治す以外にも、健康の増進とか病気の予防なんてのもあるのだろうから、確かにこのようなのもありだろうけど、そもそもの発想がどこかずれているように思ってしまう。。

僕の場合には毎月成分献血を行っているのだが、点滴は10年以上前にたった一度経験しただけだ。この点滴が非常に悲惨な経験だったので、点滴と聞くとイヤーな印象を抱いてしまう。

普段めったに熱なんか出さないのに、たまたま連休中に高熱を出し、倒れこむように救急病院にたどりついた。そこで点滴を受けることになったのだが、担当の看護婦さんは忙しく、僕の面倒だけを見ているわけにもいかず、点滴の針を刺した後「異常があったら知らせてください」と告げて他の患者の方に行ってしまった。しかし、こちらは何しろ点滴は初体験。当時は成分献血の経験もなかったから、体外から血管内に直接液体を補給するのは、こんなに痛くて腫れあがるものなのか、点滴って辛いんだなー、などと思いながらひたすら痛みに耐えて寝ていたのだった。

しばらくして看護婦さんが戻って来て、僕の腕を見てびっくり。何のことはない、血管にちゃんと入ってなかったらしい。慌てて、反対の腕に点滴をやり直し、今度はうまく入るのを確認したところまではまだ良かった。ところがその時、別の患者さんからのお呼びがかかり、看護婦さんが慌ててそちらに向かおうとした途端、僕の点滴チューブを見事に引っ掛けてしまったのだ。腕の中で針が暴れて、一気に血が噴き出してしまった。。 それでもめげずに3度目の点滴はどうにかうまくいったのだったかな? 結局のところ、絵に描いたようにドジな看護婦さんに遭遇してしまったということらしい。。

というわけで、点滴に良いイメージを持っていないせいかもしれないが、健康なのに針を刺して薬剤を体内に入れるってのは感覚的に嫌だなあ。価格表も載っていて、見るとビタミン剤がメインとなっているようだが、サプリメントに比べるとかなり高価だ。まあ当然のことだが、結び葉クリニックのブログによると、この点滴は保険対象外のようだから仕方ないのだろうか。

ちなみに「点滴バー」は現在商標登録出願中らしい。普通名詞の単純な組合せだけだと難しいらしいけど、意外な組合せと言えそうだから大丈夫かもしれない。(参考

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2006/02/09

「視覚世界の謎に迫る」

本書は「見る」ということはどういうことなのかを深く追求した本なのだが、主として眼から入ってきた光信号が脳に伝わった後に、脳の中でどのように認識されるのか、という部分に着目したもので、視覚に関するソフトウエアについて書かれたものである。僕自身は幸いにも見るということに関して特に大きな障害もなく、今までこんなことは深く考えたこともなかったのだが、本書には沢山の驚くべき事実や実験結果が詰まっており、実に興味深く読み進めることができた。

ブルーバックス B1501
 視覚世界の謎に迫る 脳と視覚の実験心理学
 山口 真美 著 bk1amazon

著者の専門は脳科学ではなく心理学に近い分野のようだ。本書では、主として人がどうやって眼からの信号を処理し3次元世界を認識しているのかといったことを、動物や赤ちゃんを対象として行った実験や、眼や脳に障害を持った人の事例などを通して明らかにしていく。

例えばカメラからの画像信号をコンピュータで処理して、人間が普段無意識に行っているような各種認識(物の形、距離、大きさ、動き、速度などなど)を可能とするようなプログラムを組むことを考えてみると、人間の脳が行っている画像認識というプロセスが非常に高度な処理を高速に行っているであろうことに気付かされる。

本書では、これらの処理は必ずしも生まれ付きできるわけではなく、人間の成長過程で一つずつ経験を積みながら身につけていくものが多いということを明らかにしてくれる。残念なことに、自分自身が赤ん坊の頃に、世界がどう見えていて、成長と共に視覚やその認識力がどう変化してきたのか、という点について全く記憶が残っていないのだが、乳児や幼児が見ている世界は大人が見ている世界とは思った以上に異なっているようだ。

なかなか面白いのは、そのように視覚が十分に発達していない乳児でも、絵画の遠近法を使って描かれた図形を見て遠近感を感じ取れるようになるのか? なんてことを実際に実験をしながら調べていくのだが、まだ意志表示がうまくできない赤ん坊が実際にどんな世界を見ているのかを明らかにするために、さまざまな工夫が凝らされている。本書では具体的な実験方法の詳細にはあまり触れられていないのだが、有効な実験方法を見つける段階が相当に大きなブレークスルーとなりそうだ。

他にも多くの興味深い例が出てくるのだが、視覚世界の話であり、こうして文章で説明するのは非常に難しい。本書のまえがきには、著者のホームページのデモンストレーションを見て欲しいと書かれているのだが、ちょっと専門的過ぎて解説がないと理解はむずかしそうだ。本書の内容の一部だけではあるが、顔の認識に関しては、森山さんのNetScience Interview Mailで紹介されているようだ。

顔の認識で出てくる面白い話としては、人間は人の顔の認識をかなり特殊な方法で行っているらしく、例えばサッチャー錯視なんていうのがある。興味深いことに、犬のブリーダーは似たような多くの犬を一目で識別できるのだが、そのためか彼らの場合には犬の全体像に関してもサッチャー錯視と同様の現象が起こるのだそうだ。これらのことから、似たような多くのものを素早く識別するために、ヒトが頭の中で行っている識別処理の方法を推定することができたりするわけだ。

人間の脳の情報処理のすごさを再認識すると共に、自分では全く意識していないけど、この能力が赤ん坊のときから少しずつ経験を積んで作り上げてきたかなり微妙なものであるらしい。自分が世の中を普通に認識できる視覚を持っていることを改めて感謝したい気分にさせられる。

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2006/02/08

脳をやわらかくするたんぱく質?

YOMIURI ONLINE(2/8)の記事。脳をしなやかにキープ、たんぱく質の働きを発見

 脳の神経回路をしなやかに保つたんぱく質の働きを、理化学研究所脳科学総合研究センターの吉原良浩チームリーダーらが突き止めた。

 脳の発達過程や記憶障害の解明につながる成果で、8日付の米科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」電子版に掲載される。

 神経細胞には、情報をほかの細胞に伝える「軸索」と、情報を受け取る「樹状突起」があり、発達期の神経細胞では樹状突起の表面の細長いとげが軸索とゆるやかに結合する。とげは運動性が高いが、成熟するとキノコ型に変化し、軸索との結合が強くなる。

 研究グループはマウス実験で、細長いとげに豊富に含まれるテレンセファリンというたんぱく質がキノコ型への変化を抑制し、情報伝達のための神経回路を柔軟に保っていることを確認した。これをなくしたマウスは大きなキノコ型が多数出現した。テレンセファリンにより小さくて運動性を失わないキノコ型が作られ、成熟した脳も外界からの刺激を受け入れて活性化されると考えられる。

成熟すると樹状突起のとげがキノコ型に変化してしまい、脳のしなやかさが失われるということ? 神経伝達で出てくる「シナプス」という用語が出てこないけど、この話はシナプスのことだろうか?

理化学研究所のプレスリリースを見るとやわらかな脳を保つために必要なタンパク質「テレンセファリン」が出ている。理研のリリースは以前は非常に専門的で難解だったが、最初にこのように一般向けの要旨が出るように改善されたようだ。理研の説明では、

 ほ乳類は、「学習する」「記憶する」「認知する」「感情をあらわす」「意志を決定する」といった「やわらかい」脳の機能を持ちます。こうした「高次脳機能」は、外部からの情報に対応して、脳神経細胞の結合部分である「シナプス」と呼ばれる構造が柔軟に変化する、つまり脳が「やわらかい」構造であるため保たれている、とされています。
とあり、「やわらかい」という形容詞を使用している。そう言えば、ネット上では見つからないが今日の日経新聞の夕刊では
成長期を過ぎて固まった脳の神経細胞を、再び軟らかくするたんぱく質を、理化学研究所、東京大学などの研究チームが発見した。
とあるが、これだと脳細胞そのものが軟らかくなるような印象を持ってしまう。それじゃあ脳軟化症みたいだ。。(脳軟化症は決して脳細胞が軟らかくなる病気ではない、と思う。念のため

それはともかく理研のリリース本文を読むと、このトゲがキノコに変わることについて

 神経細胞は、軸索と樹状突起という形態及び機能の異なる2種類の神経突起を有し、おもに軸索がシナプス前部の構造を、樹状突起がシナプス後部の構造を形成しています。樹状突起表面にはさらに細かな2種類の突起構造があり、それらは樹状突起フィロポディア及びスパインと呼ばれています。樹状突起フィロポディアは、脳の神経回路形成初期に多く見られる構造で、バラの棘のように細長く、運動性に富み、他の神経細胞の軸索と未熟なシナプス結合を作ります。樹状突起フィロポディアはその後、スパインといわれるキノコ型の形態へと成熟します。スパインは樹状突起フィロポディアに比べて運動性が低く、軸索と安定なシナプス結合を形成します
と説明している。なるほど、トゲがフィロポディアでキノコがスパインということらしい。この研究は、マウスを対象とした実験を行い、テレンセファリン(telencephalin)を増やすとトゲ状のフィロポディアが増え、逆にテレンセファリンが減るとキノコ状のスパインが増えることを明らかとしたものだ。ただし、その結果として実際に学習能力や記憶能力がどう変化したのかついては何も調べられていないようだ。

新聞記事からは、大人になって柔軟な思考ができなくなっても、テレンセファリンでやわらか頭に戻すことができるようなイメージが見えてくるのだが、そんなに単純なものなのかどうか? この研究では、テレンセファリンがシナプス結合の固定化を抑制することがわかったものの、特にシナプス結合の数が増えるわけではなさそうだし、むしろ結合が不安定になったという気もしないではない。。 下手にこのたんぱく質が働きすぎると、逆に記憶力そのものに支障をきたすのではないか? という恐れはないのだろうか?

まあでも、脳科学は今後とも注目の分野だろうし、「テレンセファリン」という単語は覚えておいて損はなさそうだ。

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2006/02/07

ココログ25か月

ココログを始めて2年と1か月が経過。1か月当たりのカウンターの伸びは、再び25000を超えるペースに戻ったようで、400000が間近となってきた。

 1か月目:900     2か月目:4500    3か月目:11700    4か月目:19000
 5か月目:32300   6か月目:43500   7か月目:54500    8か月目:72000
 9か月目:87700   10か月目:105400  11か月目:125400  12か月目:140600
13か月目:163000  14か月目:179300  15か月目:194700  16か月目:205300
17か月目:216800  18か月目:231700  19か月目:251100  20か月目:276400
21か月目:301200  22か月目:326400  23か月目:351400  24か月目:372400
25か月目:398100

この1か月のアクセス解析結果を求めてみると、以下の通り。

(1)リンク元
 1位 http://search.yahoo.co.jp 全体の48%(前回1位)
 2位 bookmark 全体の18%(前回2位)
 3位 http://www.google.co.jp 全体の17%(前回3位)
 4位 http://www.google.com 全体の5%(前回4位)
 5位 http://search.goo.ne.jp 全体の2%(前回5位)

順位には大きな変動はないのだが、ここ最近になって Google経由での訪問者が増え始めた傾向が見られる。先月までは Yahoo!経由が Google経由の4~5倍だったのが、この1週間ではそれが2倍程度となっているようだ。Googleの検索順位に何か変更があったのだろうか。

(2)検索キーワード
 1位 電気自動車(前回6位)
 2位 過去の天気(前回2位)
 3位 注射針(前回4位)
 4位 天気予報(前回11位)
 5位 キャパシタ(前回5位)
 6位 気象庁(前回1位)
 7位 献血(前回12位)
 8位 フラーレン(前回9位)
 9位 ETBE(前回63位)
10位 パスポート(前回18位)
11位 アメリカ(前回3位)
12位 コスモプラント(前回43位)
13位 天気(前回26位)
14位 ハイジェン液(前回8位)
15位 ポリ乳酸(前回30位)

先月からの変動は比較的小さく、概ね平和で安定した1か月だったようだ。敢えて特徴を上げると、先月に続いて電気自動車やエリーカ関連で来られる方が多かった他、ハイオクガソリンへのETBE添加を検討しているニュース関連での訪問者も目立ったことぐらいだろうか。既に加湿器の話題はピークを過ぎたようで、ベンタやハイジェン液といったキーワードは大きく落ち込んだ。

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2006/02/06

気化性防錆剤

今日(2/6)の日経新聞朝刊の地域総合1面、技術応用コーナーで見つけた記事に、「つるすだけでサビ防止」という小さな記事があった。ネットで探してみたら、NIKKEI NETの1/26の記事を見つけた。不動鋼板工業、つり下げ式サビ防止剤を開発へ

 鋼板加工・販売の不動鋼板工業(北九州市、高橋利明社長)は新しい方式の防せい剤の開発に乗り出した。防虫剤のようにコンテナや倉庫内につるすだけでさびを防げるのが特徴。フィルムにして包んだり、スプレーしたりする従来方式に比べ手間がかからない。自動車や鉄鋼関連など向けの需要を見込んでいる。

 防せい剤はその表面から特殊なガスが発生して鉄の表面を被膜。鉄が水分や酸素と反応するのを防ぐ仕組みだ。新方式は天井付近につり下げると防せい効果のあるガスが均一に広がり、鉄を包み込む。

 同社はこれまでも鋼材のさび防止にフィルムなどを開発、販売していた。ただ、従来方式は鋼板などをフィルムで包む作業が必要になる。コンテナや倉庫内にぶら下げるだけで効果を発揮する方式に切り替えれば、需要が高まると判断した。

 海上輸送中のさびは防ぎたいが、フィルムで覆うなどの新たな作業発生による経費増加を避けたい自動車関連企業などからの需要を見込む。

防虫剤のように吊るすだけでサビを防ぐとは中々の優れものだけど、だとすると防錆成分が揮散するだろうから、その有害性なんかも気になるところ。そもそもどんな原理なのだろう?

不動鋼板工業はホームページを持っており、そこに気化性防錆剤の紹介がある。アミン系の防錆剤成分が気化して、金属表面に吸着し、酸素のアタックを防ぐというメカニズムらしい。ただし、製品のラインナップを見ても、塗布するタイプの防錆液と、包装材としての防錆フィルムは載っているが、今回紹介されているつり下げ式の新製品は載っていないようだ。

こんな製品が世の中にあるとは全く知らなかったのだが、「気化性防錆剤」で検索してみると、予想に反して多くの製品があり、かなり古くから実績のあるものらしい。製品の形態としては、金属製品を包装するための気化性防錆紙気化性防錆フィルムが一般的なもののようだ。また、製品を密封したパッケージ内に入れるランランのような製品もみつかった。

防錆のメカニズムや使用される防錆剤については、スリーボンドのテクニカルニュースが非常に詳しい。アミン系のさまざまな化合物(亜硝酸塩、カルボン酸塩など)が具体的に紹介されていて、気になる毒性についても言及されている。「大量に飲まない限り毒性も累積作用もなく安全であるが、口中で多少の苦味と鼻粘膜を刺激するので、大量に取り扱う場合はマスクなどの使用が好ましい。」とのこと。ちなみに、この技術資料は昭和62年のものである。

従来の製品は気化性とは言え、金属に密着させるか非常に近くに置く必要があったのが、今回紹介された新製品はコンテナや倉庫につるすだけで良いとのことだが、どうなのだろう? このガスは空気より重いため、高所につるすことで下部に拡散させることができるようだから、例えば、従来よりも成分の密度を軽くして遠くまで拡散するようにするとか、従来よりも揮発性の高い成分、または低濃度でも効果を発揮するような成分を開発した、というような改良がなされたのかもしれない。

これらの防錆剤の金属表面への吸着は非常に弱いものらしく、あくまでも保管や輸送中の防錆が目的で、一般の使用時のサビを防ぐような使い方はできないようだ。ということであくまでも専門の業者だけが使用するもののようなので、きちんと管理して使用すれば有害性なども問題にならないのだと思われる。

それにしても、どの程度の広さのスペースにどれだけの薬剤を置く必要があるのだろうか? 倉庫全体に防錆剤のガスが充満している状態ってさすがに近寄りたくないな。。 まあ、アミン系の物質は強烈な臭いがしそうだし、マスク無しには近付けないのかもしれないけど。。

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2006/02/03

ヘモグロビンをマイクロカプセル化した人工赤血球

日経新聞2/3の朝刊のテクノロジー面の記事。ネット版では見当たらないので一部引用。

テルモ、人工血液を開発

 テルモは手術などに使える人工血液を開発した。ウイルスなどを製造段階で取り除いているので感染症にかかる恐れもないという。動物実験で効果を確認しており、来年三月をメドに臨床試験に着手する計画。病院では輸血用の血液が十分に確保できておらず、人工血液は血液不足の解消に役立ちそうだ。

 開発したのは赤血球の代わりに酸素を運搬する人工赤血球。3週間の使用期限が切れた輸血用血液から、酸素を運搬する働きを持つヘモグロビンを取り出し、直径約200ナノメートルの微小カプセルで包み込んだ。感染の恐れのあるウイルスはヘモグロビンを精製するときに取り除く。

 人工赤血球は赤血球の30分の1程度の大きさ。血管のすき間より大きいので、血管から漏れ出す恐れがなく安全という。生理食塩水に混ぜることで赤血球製剤と同様に輸血できる。サルを使った実験で血液と同じ働きをすることを確かめた。輸血した人工赤血球は48時間程度で分解され、体外に排出される。(以下略)

というものだ。さらに、この人工赤血球には患者の血液型を問わずに輸血できるというメリットもあり、最低6か月は保存可能なため、緊急時に備えた長期保存も期待できると書かれている。欧米の医薬品メーカーを中心に開発が進んでいたが、ほとんどの企業が開発中止したらしい。

ということで、テルモ ホームページで情報を見たが、それらしいニュースは載っていない。さらに探してみたら、株式関係のニュースサイト Technobahn の【株式銘柄】テルモが高い、人工血液を開発したと報じられるには、

3日付の大手経済紙が人工血液を開発したと報じたのが手掛かりとなった。

ただし、会社側はこの報道内容に関して同日「一部新聞紙上で報道されました人工酸素運搬体(人工赤血球)は、当社が23年前から開発に着手してきたものであり、現在も開発の段階にあります」とする発表を行っている。

とある。また、日経得意のトバシ記事だったようだ。。 ったく。。

まあ、せっかくなので人工赤血球のことを少し調べておこう。人工血液というと、パーフルオロカーボン系の白い血液というのは聞いたことがあったが、このニュースのように本物のヘモグロビンを使うというのは知らなかった。

Sankei ECONETの人工血液に詳しく載っている。しかも、この記事には冒頭の日経記事に出てくるテルモの開発の様子が出てくる。この人工赤血球は、ヘモグロビンをリボゾームのナノカプセルに封入するというものらしい。これによると、人工赤血球は本物よりも小さいので毛細血管にも効率よく酸素を送り込めるらしく、脳梗塞や心筋梗塞などの治療にも効果が期待できるとか、がん治療にも効果を発揮しそうなどという効果も書かれている。ちなみにこの記事は2004年の8月のものだ。

なお、冒頭の記事では期限切れの血液からヘモグロビンを取り出すとあるが、一方で慢性的な血液不足であることも指摘しており、これでヘモグロビンを安定的に入手できるのかいな? と心配になるのだが、こちらには「将来は酵母菌を使って完全合成したい」と書かれている。ふーむ、ヘモグロビンの人工合成となると、遺伝子組換え技術の応用かな?

早稲田大学 人工血液プロジェクトを見ると、アルブミンからヘモグロビン代替のアルブミン-ヘムという化合物を合成する研究や別の新規酸素輸液の合成などの研究が行われているようだ。

いろいろ検索してみたら、オキシジェニクスというベンチャー企業がOxygen Carrierという商品名で同様の人工赤血球の市場化を検討しているようだ。こちらはニプロとの共同開発とのことで、いずれにしてもこの手の人工赤血球が近い将来に実用化されそうな感じだ。

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2006/02/02

鳩が大気汚染をモニター

Exciteニュース(2/2)の記事。鳩をハイテク武装して大気汚染をモニター

[ロンドン 1日 ロイター] 大気汚染をモニターするために、携帯電話のバックパックを背負った鳩が利用されている。ニューサイエンティスト誌が1日、報じた。

今年8月、カリフォルニア州サンノゼで、20羽の鳩が空に放たれる。

鳩には、GPS衛星追尾受信機、大気汚染センサー、基本的携帯電話が取り付けられる。

大気の汚染度に関するテキストメッセージは、ネットからアクセスできる鳩の特別《ブログ》にリアルタイムで反映される。

極小カメラが鳩の首に装着されており、大気の画像を送信する。

これはカリフォルニア大学アービン校の研究員、ビアトリス・ダ・コスタ氏と彼女の学生2人の構想だ。

彼らは、携帯電話の基盤にSIMカード、通信チップ、GPS受信機、それに一酸化炭素と二酸化窒素を検知するセンサーを組み合わせ、装置のプロトタイプをつくった。

ガスセンサー、カメラ、GPS、通信機能といったものを一体化してどの程度の大きさと重量になるのだろう? NewScientist.comの記事は、お金を払わないと全文は読めないようだが、The Ageには、鳩に搭載する装置の模式図が載っている。これって鳩にとってはエライ迷惑のような気がする。。 ちゃんと飛べるんだろうな??

そもそも、この the University of California at Irvine の Beatriz da Costaさんの専門は、Department of Studio Artということで、今回の試みが狙っているものも、いわゆるリモートセンシングなどとはちょっと違う方向にあるような気がする。

鳩が測定する空域はコントロールできるのだろうか? 恐らく、鳩の帰巣本能を利用して、その鳩の巣に対して測定したい地域をはさんだ地点から離すのだろうと思われる。本当は、興味ある領域をしばらく旋回してくれたり、飛ぶ高さを変えたりといった具合に、ある程度人間が狙った領域を思い通りに飛んで欲しいところだが、もしかしたら空気が汚い領域は避けて飛んでしまったりして。。 ということで、今回の試みはあくまでもデモンストレーションのようで、実用性には疑問もあるが、気球やラジコン飛行機などでは測定が難しい場所の大気をモニターする用途としては、有効な使い道もあるのかもしれない。

ちなみに、Scotsman.com Newsには、鳩が通信手段などとして5000年以上前から使われていたことが紹介されているが、その中に、湾岸戦争でも電子ジャミングによる影響を受けないことで有用だったと書かれている。鳩は地磁気を頼りに巣に帰ると聞いた気もするが、近年の電磁波が多量に飛び交っている世の中でも鳩レースが行われているところを見ると、電磁波程度では影響されないのだろう。

Wikipediaには、湾岸戦争ではスイス軍が配備しており、フランスは今でも軍用鳩を配備していると書かれている。となると、鳩にいろんなセンサや通信機を搭載して飛ばすというアイデアは、再び軍事用に使われることもあるかもしれないな。

鳩の帰巣本能が何に由来しているかは、こちらに詳しいが、視覚、嗅覚、聴覚、太陽の位置、体内時計、地磁気などをミックスして使っているらしい。最近の研究では、くちばしに磁気センサがあることがわかったらしい。

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2006/02/01

2006年1月の天気予報傾向

東京地方の過去の天気予報 は2年目に入り、だいぶデータも蓄積されてきて格好もついてきた。

先月サイトの整理をしたついでに、アクセス解析も導入してみた。その結果、意外なことに、95%程度が1度目の訪問で、定期的に訪れている方は非常に少ないということがわかった。気象庁の天気予報の的中率が気になって、定期的に見に来る人がいるのではないか、と思っていたのだが。。 確かに、天気予報を見るだけならここに来なくても、もっと見安いサイトがいくらでもあるわけだし、わざわざ過去の天気予報を見たいというケースは非常に少ないというのも納得がいくのだが。

おもしろいことに、訪問者数はかなりコンスタントで土日も大きく落ち込むことがない。1日平均でユニークアクセスが30~40、ページビューが70~80程度である。どんな人たちがどんな情報を求めてやってきているんだろう? リピーターが少ないということは、求める情報がなかったということなのか、それとも一度の訪問で満たされたということなのか? まあ、月に1度以下の頻度で定期的に見に来てくれる人もいるかもしれないので、もう少し長い目で見ていよう。

今月から新たに、前日分の降水確率の的中率も算出するように変更した。前日の降水確率予報は6時間毎に区切って発表されているのに対し、降水実績データは1日当たりの降水量データしか入手していなかったので、そのままでは的中率の計算ができないため、従来は前日分は空欄としていた。今月からは、気象庁の昨日までのデータ(統計値)のページで、「1日の毎時の値」を選び、1時間毎の降水量から6時間毎の降水量を求め、降水確率の的中率を算出するようにした。(降水確率精度)昨年分もさかのぼってデータを集めれば同じことができるのだが、さすがに面倒なので手をつけていない。

さて、2006年1月の天気予報の精度だが、東京地方は1mm以上の降水のあった日が3日だけと総じて晴天だった一方、1/21には本格的な積雪があったりとメリハリのある天候だったのだが、そのためか全体的に予報の的中率が高かったようだ。トレンドグラフを見ても、かなり良く予想できている様子が見て取れる。

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