リキッド・ナノテクノロジーというコーティング
WIRED NEWS(2/10)から。注目集める新しいナノ・コーティング剤
「リキッド・ソリッズ」と呼ばれるこのナノ・コーティング剤は、きわめて微細な粒子からなり、並外れた柔軟性を備え、容易に付着し、腐食や細菌の繁殖に対する耐性もある――まさに製造工程に大革命をもたらす可能性を秘めているのだ。これを読むとナノスケールの酸化物粒子のコーティングなのかと思ったのだが、この記事を読み進めると、エコロジー・コーティングス社からライセンスを受けたデュポン社がまもなく実用化するナノ・コーティングに関しては米エコロジー・コーティングス社の設立者の1人で主任化学者のサリー・ラムゼイ氏が、ナノ・コーティング剤のコストと環境へのメリットを探り始めたのは2003年のこと。ナノスケールの酸化鉱物の粒子を用い、紙の防水コーティング剤を合成紙の半分のコストで作ろうとしたのだ。ラムゼイ氏よると、それから派生した複数の素材が、防水性のある段ボール箱や、湿った際のカビの発生を防ぐ乾式壁などの建築資材に利用できるかもしれないという。
ナノ粒子は極微細なため、従来のスプレー機器を用いて塗布できるとラムゼイ氏は話す。また、このコーティング剤は、塗布した部品の表面を紫外線に10秒足らず当てるだけで硬化するという。とあり、どうやら酸化鉱物粒子というのは開発当初の話で、ここで話題としているのは、紫外線硬化樹脂の微粒子をスプレーコーティングする技術のことらしい。「紫外線に当てると、(コーティング剤は)薄いプラスチックのシート状になる」とラムゼイ氏は説明する。さらに紫外線硬化の工程は室温の状態で可能なため、部品を炉の中に入れ、摂氏200度以上で40分もの加熱が必要な現在の硬化工程に取って代わると思われる。
日本にはまだこの会社の商品や技術は入り込んでいないみたいなので、アメリカの同社ホームページを訪れてみると、Ecology Coatings 社は、"liquid nanotechnology" という登録商標で一連のコーティング剤を展開しているようだ。product の Overview をみると、紫外線硬化、リキッド 100% ソリッズ、ナノ材料の3点の特徴について説明している。
この中の「リキッド 100% ソリッズ」については、"Our formulations are liquid 100% solids and contain no VOC's or HAP's" とある。VOCは揮発性有機化合物(Volatile Organic Compaunds)、HAPは有害性大気汚染物質(Hazardous Air Pollutants)のことである。Liquid 100% solidsとは、水や有機物などの溶媒を含まない、100%固体粉末でできた液体状の物質ということだろうか? ただ、ナノサイズの粉末は凝集性が非常に強いので、普通はこの粉末だけでは液体のように流動性を示すとは思えない。まあ、そこがこの会社の開発した特殊な技術なのだろうけど。
これらの特徴をまとめると、VOCを含まない固体ナノ粒子を基材にコーティングして、紫外線で硬化させると、高性能なコーティング膜が得られるということらしい。金属、ポリカーボネート、紙など、コーティングする相手の基材によって何種類かの製品をラインナップしているようだが、その組成や内容については残念ながら全く触れられていない。もう少し情報公開してくれてもいいと思うけど。。
探してみると、紫外線硬化型の粉体塗料というのはこんな本にも掲載されているくらいで、既に知られた技術のようだが、それをナノ粒子にすることで、得られる塗膜の性能を向上させたということらしい。RED HERRINGによると、この新しいナノ粒子コーティングによって、従来よりも高い透明性と高い硬度が両立した高性能なコーティングが得られるらしい。メガネやiPodなどに使用することで性能向上が期待されるだけでなく、生産工程で大幅に省エネが達成でき、低公害性とも合わせて今後が楽しみな技術のようだ。将来的には車の窓ガラスの代わりに、このコーティングを使用したポリカーボネート樹脂を使用することも考えられているようだ。
従来の技術や競合する技術と比べて、どの程度の性能が得られるのか、ほとんど定量的な議論がなされていないので何とも評価しにくいのだが、技術の方向性としては注目に値するものと思われる。
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