ヘモグロビンをマイクロカプセル化した人工赤血球
日経新聞2/3の朝刊のテクノロジー面の記事。ネット版では見当たらないので一部引用。
テルモ、人工血液を開発というものだ。さらに、この人工赤血球には患者の血液型を問わずに輸血できるというメリットもあり、最低6か月は保存可能なため、緊急時に備えた長期保存も期待できると書かれている。欧米の医薬品メーカーを中心に開発が進んでいたが、ほとんどの企業が開発中止したらしい。テルモは手術などに使える人工血液を開発した。ウイルスなどを製造段階で取り除いているので感染症にかかる恐れもないという。動物実験で効果を確認しており、来年三月をメドに臨床試験に着手する計画。病院では輸血用の血液が十分に確保できておらず、人工血液は血液不足の解消に役立ちそうだ。
開発したのは赤血球の代わりに酸素を運搬する人工赤血球。3週間の使用期限が切れた輸血用血液から、酸素を運搬する働きを持つヘモグロビンを取り出し、直径約200ナノメートルの微小カプセルで包み込んだ。感染の恐れのあるウイルスはヘモグロビンを精製するときに取り除く。
人工赤血球は赤血球の30分の1程度の大きさ。血管のすき間より大きいので、血管から漏れ出す恐れがなく安全という。生理食塩水に混ぜることで赤血球製剤と同様に輸血できる。サルを使った実験で血液と同じ働きをすることを確かめた。輸血した人工赤血球は48時間程度で分解され、体外に排出される。(以下略)
ということで、テルモ ホームページで情報を見たが、それらしいニュースは載っていない。さらに探してみたら、株式関係のニュースサイト Technobahn の【株式銘柄】テルモが高い、人工血液を開発したと報じられるには、
3日付の大手経済紙が人工血液を開発したと報じたのが手掛かりとなった。とある。また、日経得意のトバシ記事だったようだ。。 ったく。。ただし、会社側はこの報道内容に関して同日「一部新聞紙上で報道されました人工酸素運搬体(人工赤血球)は、当社が23年前から開発に着手してきたものであり、現在も開発の段階にあります」とする発表を行っている。
まあ、せっかくなので人工赤血球のことを少し調べておこう。人工血液というと、パーフルオロカーボン系の白い血液というのは聞いたことがあったが、このニュースのように本物のヘモグロビンを使うというのは知らなかった。
Sankei ECONETの人工血液に詳しく載っている。しかも、この記事には冒頭の日経記事に出てくるテルモの開発の様子が出てくる。この人工赤血球は、ヘモグロビンをリボゾームのナノカプセルに封入するというものらしい。これによると、人工赤血球は本物よりも小さいので毛細血管にも効率よく酸素を送り込めるらしく、脳梗塞や心筋梗塞などの治療にも効果が期待できるとか、がん治療にも効果を発揮しそうなどという効果も書かれている。ちなみにこの記事は2004年の8月のものだ。
なお、冒頭の記事では期限切れの血液からヘモグロビンを取り出すとあるが、一方で慢性的な血液不足であることも指摘しており、これでヘモグロビンを安定的に入手できるのかいな? と心配になるのだが、こちらには「将来は酵母菌を使って完全合成したい」と書かれている。ふーむ、ヘモグロビンの人工合成となると、遺伝子組換え技術の応用かな?
早稲田大学 人工血液プロジェクトを見ると、アルブミンからヘモグロビン代替のアルブミン-ヘムという化合物を合成する研究や別の新規酸素輸液の合成などの研究が行われているようだ。
いろいろ検索してみたら、オキシジェニクスというベンチャー企業がOxygen Carrierという商品名で同様の人工赤血球の市場化を検討しているようだ。こちらはニプロとの共同開発とのことで、いずれにしてもこの手の人工赤血球が近い将来に実用化されそうな感じだ。
| 固定リンク
コメント
裏づけを取ってない情報ですが、慢性的な血液不足というのは血小板とかグロブリンとかのことで、赤血球は充分だとか聞いたことがあります。
そういうわけで、献血も成分献血のほうがありがたいそうです。(成分献血は赤血球を本人に戻す)
投稿: ガ | 2006/02/06 17:23
おぉ、そう言われればそうですね。毎月成分献血をやってる割に、頭が回ってませんね。。
そういえば、以前赤血球だけを取る赤血球成分献血の導入を検討しているという記事をネタにしたこともありました。→http://tftf-sawaki.cocolog-nifty.com/blog/2004/09/post_4.html">赤血球成分献血の導入?。ここで取り上げた記事には、将来的には赤血球の不足が予想されると書かれてますね。人工赤血球用にも赤血球が必要となると、ますます赤血球成分献血が必要になりそうな気もします。
ん? 現状で血漿や血小板は不足気味なのだから、将来的にはやっぱり全血献血が重要となるのかもしれませんね。。
投稿: tf2 | 2006/02/06 19:55