気化性防錆剤
今日(2/6)の日経新聞朝刊の地域総合1面、技術応用コーナーで見つけた記事に、「つるすだけでサビ防止」という小さな記事があった。ネットで探してみたら、NIKKEI NETの1/26の記事を見つけた。不動鋼板工業、つり下げ式サビ防止剤を開発へ
鋼板加工・販売の不動鋼板工業(北九州市、高橋利明社長)は新しい方式の防せい剤の開発に乗り出した。防虫剤のようにコンテナや倉庫内につるすだけでさびを防げるのが特徴。フィルムにして包んだり、スプレーしたりする従来方式に比べ手間がかからない。自動車や鉄鋼関連など向けの需要を見込んでいる。防虫剤のように吊るすだけでサビを防ぐとは中々の優れものだけど、だとすると防錆成分が揮散するだろうから、その有害性なんかも気になるところ。そもそもどんな原理なのだろう?防せい剤はその表面から特殊なガスが発生して鉄の表面を被膜。鉄が水分や酸素と反応するのを防ぐ仕組みだ。新方式は天井付近につり下げると防せい効果のあるガスが均一に広がり、鉄を包み込む。
同社はこれまでも鋼材のさび防止にフィルムなどを開発、販売していた。ただ、従来方式は鋼板などをフィルムで包む作業が必要になる。コンテナや倉庫内にぶら下げるだけで効果を発揮する方式に切り替えれば、需要が高まると判断した。
海上輸送中のさびは防ぎたいが、フィルムで覆うなどの新たな作業発生による経費増加を避けたい自動車関連企業などからの需要を見込む。
不動鋼板工業はホームページを持っており、そこに気化性防錆剤の紹介がある。アミン系の防錆剤成分が気化して、金属表面に吸着し、酸素のアタックを防ぐというメカニズムらしい。ただし、製品のラインナップを見ても、塗布するタイプの防錆液と、包装材としての防錆フィルムは載っているが、今回紹介されているつり下げ式の新製品は載っていないようだ。
こんな製品が世の中にあるとは全く知らなかったのだが、「気化性防錆剤」で検索してみると、予想に反して多くの製品があり、かなり古くから実績のあるものらしい。製品の形態としては、金属製品を包装するための気化性防錆紙や気化性防錆フィルムが一般的なもののようだ。また、製品を密封したパッケージ内に入れるランランのような製品もみつかった。
防錆のメカニズムや使用される防錆剤については、スリーボンドのテクニカルニュースが非常に詳しい。アミン系のさまざまな化合物(亜硝酸塩、カルボン酸塩など)が具体的に紹介されていて、気になる毒性についても言及されている。「大量に飲まない限り毒性も累積作用もなく安全であるが、口中で多少の苦味と鼻粘膜を刺激するので、大量に取り扱う場合はマスクなどの使用が好ましい。」とのこと。ちなみに、この技術資料は昭和62年のものである。
従来の製品は気化性とは言え、金属に密着させるか非常に近くに置く必要があったのが、今回紹介された新製品はコンテナや倉庫につるすだけで良いとのことだが、どうなのだろう? このガスは空気より重いため、高所につるすことで下部に拡散させることができるようだから、例えば、従来よりも成分の密度を軽くして遠くまで拡散するようにするとか、従来よりも揮発性の高い成分、または低濃度でも効果を発揮するような成分を開発した、というような改良がなされたのかもしれない。
これらの防錆剤の金属表面への吸着は非常に弱いものらしく、あくまでも保管や輸送中の防錆が目的で、一般の使用時のサビを防ぐような使い方はできないようだ。ということであくまでも専門の業者だけが使用するもののようなので、きちんと管理して使用すれば有害性なども問題にならないのだと思われる。
それにしても、どの程度の広さのスペースにどれだけの薬剤を置く必要があるのだろうか? 倉庫全体に防錆剤のガスが充満している状態ってさすがに近寄りたくないな。。 まあ、アミン系の物質は強烈な臭いがしそうだし、マスク無しには近付けないのかもしれないけど。。
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コメント
気化性の防錆剤について、海外から調査を依頼されています.関係資料をお送りください.
〒350-1317
狭山市水野532-36
(有)イービーム技研
代表取締役
永倉邦男
投稿: 永倉邦男 | 2006/08/12 03:15
お問い合わせありがとうございます(^_^;) 関係資料と言われましても、残念ながら弊方ではこの製品に限らず、当ブログで取り上げました製品の取扱いは一切行っておりません。誠に恐縮ではございますが、記事内で紹介している各社さんへ直接お問い合わせくださいますようお願い申し上げます。
って、こういう間違いはこれが2件目です。どこをどう読むと、こういう間違いが起こるのか、ちょっと興味のあるところです。。
投稿: tf2 | 2006/08/12 12:08