マグナス風車の実用化
nikkeibp.jp(2/23)の記事。新方式「マグナス効果」を使った風力発電、メカロ秋田が開発加速
「マグナス効果」と呼ばれる原理を使った新方式の風力発電装置の開発を進めるベンチャー企業のメカロ秋田が、その実用化開発を加速し始めた。(中略)文章による説明ではわかりにくいのだが、技術&事業インキュベーション・フォーラムの新方式「マグナス効果」を使った風力発電、メカロ秋田が製品化に向けて開発を加速にはマグナス効果の図解や実際の風車の写真が掲載されており、なかなか興味深い風車であることがわかる。従来の常識的な形状の翼の代わりに回転円柱型の翼とすることで、より効率良く揚力を発生でき、従って発電効率も高くなるということらしい。この風力発電に使われているマグナス効果は、野球でピッチャーがカーブを投げる際にボールが曲がったり、ストレートを投げた際にボールが浮き上がったりする原理である。自転している球や円柱が向かい風を受けると、向かい風と自転方向が一致する側では風の流速が速くなって圧力が小さくなるが、その反対側では流速が遅くなって圧力が大きくなる。この結果、球や円柱は一致する側へ向いた力を受けて、その方向に進むことになる。
この原理を風力発電に利用するためには、通常の風車では羽に相当する部分に複数の円柱を放射状に取り付ける。この複数の円柱をモーターなどで同じ方向に回転させながら、向かい風を受けさせると、マグナス効果によって風車が回転する。この回転エネルギーを電力に変換すれば風力発電が可能になる。このような原理は専門家の間では従来から知られており、マグナス効果を利用した風力発電を実現することは原理的には可能であることが分かっていた。しかし、これまでは十分な出力を得ることができず、実用化には至っていなかった。(後略)
調べてみると、秋田マグナス協会のサイトに詳しい情報が掲載されている。マグナス効果そのものは野球のカーブボールが曲がる原理として理論的にも認められている理論のようだが、この原理を風力発電に応用しようとしたのは、ロシアの科学アカデミーが最初らしい。その成果に秋田県が注目し、ベンチャー企業であるメカロ秋田と大学、高専との共同開発により実用化を目指しているとのこと。
東北の元気な企業(メカロ秋田)には、この会社の社長のインタビューが掲載されているが、ロシアの風車の翼は単なる円柱形状だったのを、秋田での研究の結果、スパイラル型のフィンを取り付けることにより揚力が向上したというという成果を紹介した後に、
村上社長:円柱を回すのはモーターですから、その消費電力を差し引く必要があるのですが、それでもプロペラ型と、このスパイラルを付けたマグナス型風車とでは翼一本当たり4倍程度の揚力差があるということが発見出来ましたね。とある。まあ、無理やり変な理屈をつけて説明するより、正直で良いだろう。でも、わざわざ電力を使って円柱型の翼を自転させても、風車全体の回転によって得られる電力が通常の風車の4倍にもなるのであれば、もっとはるかに注目されても良いと思うのだけど。。 実験がしっかりしているならば大丈夫だとは思うが、ちょっと心配でもある。佐々木次長:素晴らしいですね。どうしてこんな性能が出るのですか?
村上社長:それが分からないんです。流体力学を長年研究されている伊藤先生にも結果を確認して頂いたのですが、やはり現時点では分からないと仰っていました。解析しなければならない要素が多過ぎるんですね。四次元の応用になってしまうので、解明まで早くても3年、もしかしたら10年かかるかもしれないと言われました。
この技術が本物ならば、応用分野としては風力発電以外にも、それこそ飛行機などの翼の代わりにマグナス型回転円柱翼を採用するとか、航空機やヘリコプターなどのプロペラをこのマグナス翼にしてみるとか、いろいろとあっても良さそうだ。こんな形の扇風機なんかも面白そうだし。。
ちなみに秋田高専のAKITA地域共同テクノセンター報の p.7/102 にこの風車の研究についての資料があるが、マグナス風車のメリットとして、
①風速域が広く,1日の稼働時間が長い②円柱は翼に比べ製作コストが安価である③円柱は翼に比べ強度が大きい④トルクが大きく,風車の回転数を小さく取れる⑤寒冷地で問題となるブレード着氷が少ないを上げている。各円柱翼を回転させる機構は複雑になりそうだし、その分だけ回転部分が重くなりそうなのも気になる。。 今度秋田に帰った時にでも見に行ってみようかな。
| 固定リンク
コメント
ちょっとしらべてみました
マヌグス効果
http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%8C%E3%82%B9%E5%8A%B9%E6%9E%9C&oldid=3173050
揚力の話
http://www.mitene.or.jp/~kazu-ya/youryoku.htm
ここによると、どうも帆船の替わりとしてこの原理が使われた事もあったようです。
そして飛行機の翼には前からの風圧が大きすぎて適さなかったとのことです。
回転凧
http://www.sci-museum.niihama.ehime.jp/tomo/kagaku/topics0306/index.html
マヌグス効果を使った凧のようです。
ここらへんを見たところやはり見た目よりもかなり大きな力がかかるように思えます。
個人的には放射状に配置するよりも
http://www.domani-eco.com/modules/tinyd0/index.php?id=2
こう言う風に縦型に配置した方が良さそうな気がします。
いえ、単なる憶測ですが。
投稿: xtc | 2006/02/24 20:25
マヌグス(誤
マグヌス(正
でした。スイマセン。
あ、マグナスでも
まちがいじゃないっぽいです。
投稿: xtc | 2006/02/24 20:29
マグナスで調べたらなかなか見つからなかったのですが、そうかマグヌスで検索する必要があったのですね。ありがとうございます。
実際に船に使われていたってのは面白いですね。でも帆船なら動力は不要なのに、ローター船は動力が必要なわけですね。
回転凧も強い風がないと上がらないようだし、一般的にはマグナス効果は通常の翼形状で得られる揚力よりも小さそうですね。
ただ、単なる円筒だと効率が良くないことは秋田の実験でも示されているようですから、このスパイラルフィン付きの回転円筒がどの程度優れているかがポイントでしょうか?
航空機の翼としては空気抵抗が問題となるってのは確かになるほどです。抵抗は速度の2乗に比例するはずなので、風力発電程度の風速では問題にならないのかもしれません。
私もダリウス型に一票かな。でもインパクトは通常の放射状の方が大きいですね。
投稿: tf2 | 2006/02/24 20:49
スパイラルの効果を妄想してみたところ、まず、野球のボールの縫い目のようにマグナス効果を大きくすると思われるし、更に、柱の回転による遠心力で空気が外に飛ばされて無駄になるのを、端の円盤とスパイラルの回転で防止するという機能があるのでは?といった所です。
投稿: ガ | 2006/03/24 16:29
はじめまして笹研です。
私は東京新聞の記事でこの風車を知りました。
大変ユニークな風車で興味をそそるのですが、その性能についてはちょっと懐疑的です。性能を表すデータは以下に少しだけ公開されていますが、
http://venturewatch.jp/nedo/20060223.html
これを見る限り効率の良い風車とは思えません。また10kW機の仕様は以下の通りで、
http://www.akita21.com/magnus/
直径10mを必要としていますが、以下のプロペラ型風車の仕様を見ると、
http://www.neicjapan.com/s-wind.htm
10kWに必要な直径は6.2m。直径10mなら倍の20kW程度発電できることが分かります。つまりマグナス風車の発電効率は、従来のプロペラ型風車の半分程度と低いわけです。
「発電効率は従来の半分程度だが、強風に強い風車」
と言うのなら分かりますが、秋田マグナス協会の言うように
「従来のプロペラ型風力発電よりも発電効率が良く、建設コストも安く、しかも強風に強い」
とはならないでしょう。また翼が5本もあって、しかも回転させるのですからコストも高そうに感じます。「建設コストが安い」と言うならその根拠も明示してもらいたいものです。
この風車に関しては、ネガティブな意見をあまり見かけないので、あえて書いてみました。
投稿: 笹研 | 2006/05/06 15:02
ありがとうございます。なるほど、通常の風車との比較では、どうやら分が悪そうですね。目標とする性能と現時点の実力をきちんと整理して、従来型の風車との比較をする必要がありそうです。まあ、大手のメーカーなどが今のところは放っているようなのも、その辺がクリアになっていないためという気がします。
投稿: tf2 | 2006/05/06 23:49
久しぶりにマグナス風車が話題になっていた。
http://www.nikkeibp.co.jp/style/eco/report/080212_windmill/">自転するブレードが揚力を生む、静かさと安全性を武器に商品化
実証実験の成果なのか、2006年時とは少し視点が異なり、強風時に自転を止めることで簡単に風車を止められるという安全性およびコスト面のメリットと、騒音面でのメリットが前面に出ている。
いくつか具体的に導入したいという動きがあるようなので、引き続き注目しておこう。
投稿: tf2 | 2008/02/13 18:16