脳をやわらかくするたんぱく質?
YOMIURI ONLINE(2/8)の記事。脳をしなやかにキープ、たんぱく質の働きを発見
脳の神経回路をしなやかに保つたんぱく質の働きを、理化学研究所脳科学総合研究センターの吉原良浩チームリーダーらが突き止めた。成熟すると樹状突起のとげがキノコ型に変化してしまい、脳のしなやかさが失われるということ? 神経伝達で出てくる「シナプス」という用語が出てこないけど、この話はシナプスのことだろうか?脳の発達過程や記憶障害の解明につながる成果で、8日付の米科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」電子版に掲載される。
神経細胞には、情報をほかの細胞に伝える「軸索」と、情報を受け取る「樹状突起」があり、発達期の神経細胞では樹状突起の表面の細長いとげが軸索とゆるやかに結合する。とげは運動性が高いが、成熟するとキノコ型に変化し、軸索との結合が強くなる。
研究グループはマウス実験で、細長いとげに豊富に含まれるテレンセファリンというたんぱく質がキノコ型への変化を抑制し、情報伝達のための神経回路を柔軟に保っていることを確認した。これをなくしたマウスは大きなキノコ型が多数出現した。テレンセファリンにより小さくて運動性を失わないキノコ型が作られ、成熟した脳も外界からの刺激を受け入れて活性化されると考えられる。
理化学研究所のプレスリリースを見るとやわらかな脳を保つために必要なタンパク質「テレンセファリン」が出ている。理研のリリースは以前は非常に専門的で難解だったが、最初にこのように一般向けの要旨が出るように改善されたようだ。理研の説明では、
ほ乳類は、「学習する」「記憶する」「認知する」「感情をあらわす」「意志を決定する」といった「やわらかい」脳の機能を持ちます。こうした「高次脳機能」は、外部からの情報に対応して、脳神経細胞の結合部分である「シナプス」と呼ばれる構造が柔軟に変化する、つまり脳が「やわらかい」構造であるため保たれている、とされています。とあり、「やわらかい」という形容詞を使用している。そう言えば、ネット上では見つからないが今日の日経新聞の夕刊では
成長期を過ぎて固まった脳の神経細胞を、再び軟らかくするたんぱく質を、理化学研究所、東京大学などの研究チームが発見した。とあるが、これだと脳細胞そのものが軟らかくなるような印象を持ってしまう。それじゃあ脳軟化症みたいだ。。(脳軟化症は決して脳細胞が軟らかくなる病気ではない、と思う。念のため)
それはともかく理研のリリース本文を読むと、このトゲがキノコに変わることについて
神経細胞は、軸索と樹状突起という形態及び機能の異なる2種類の神経突起を有し、おもに軸索がシナプス前部の構造を、樹状突起がシナプス後部の構造を形成しています。樹状突起表面にはさらに細かな2種類の突起構造があり、それらは樹状突起フィロポディア及びスパインと呼ばれています。樹状突起フィロポディアは、脳の神経回路形成初期に多く見られる構造で、バラの棘のように細長く、運動性に富み、他の神経細胞の軸索と未熟なシナプス結合を作ります。樹状突起フィロポディアはその後、スパインといわれるキノコ型の形態へと成熟します。スパインは樹状突起フィロポディアに比べて運動性が低く、軸索と安定なシナプス結合を形成しますと説明している。なるほど、トゲがフィロポディアでキノコがスパインということらしい。この研究は、マウスを対象とした実験を行い、テレンセファリン(telencephalin)を増やすとトゲ状のフィロポディアが増え、逆にテレンセファリンが減るとキノコ状のスパインが増えることを明らかとしたものだ。ただし、その結果として実際に学習能力や記憶能力がどう変化したのかついては何も調べられていないようだ。
新聞記事からは、大人になって柔軟な思考ができなくなっても、テレンセファリンでやわらか頭に戻すことができるようなイメージが見えてくるのだが、そんなに単純なものなのかどうか? この研究では、テレンセファリンがシナプス結合の固定化を抑制することがわかったものの、特にシナプス結合の数が増えるわけではなさそうだし、むしろ結合が不安定になったという気もしないではない。。 下手にこのたんぱく質が働きすぎると、逆に記憶力そのものに支障をきたすのではないか? という恐れはないのだろうか?
まあでも、脳科学は今後とも注目の分野だろうし、「テレンセファリン」という単語は覚えておいて損はなさそうだ。
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