親知らずバンク?
YOMIURI ONLINEの記事(3/7)から。親知らずの元から“幹細胞”再生医療への利用期待
産業技術総合研究所セルエンジニアリング研究部門(兵庫県尼崎市)は7日、大阪大と共同で親知らずの元になる歯の細胞=歯胚(しはい)=を使って、肝臓、骨などに効率よく変化する“幹細胞”を取り出すことに成功したと、発表した。注意する必要があるのは、幹細胞は、抜歯した親知らずからではなく、10~16歳頃までの顎の骨の中に埋まっている親知らずの元の細胞から得られるということだろうか。ということは、大人になってしまった人にとっては残念ながら時既に遅しということだろうか?この“幹細胞”を使って傷んだ肝臓や骨が再生することをラットを使った動物実験で確認しており、歯列矯正などの際に捨てられてきた親知らずの歯胚を使った再生医療に道を開くと期待される。
歯胚は歯が形成されると消失するが、成長が遅い親知らずの歯胚は、10~16歳ごろまであごの骨に埋まっている。歯列矯正の際に抜かれてしまうことが多いが、研究グループは、この歯胚の増殖能力に着目した。
細胞1個を取り出し培養すると、短期間で急速に増殖することが判明。さらに、ホルモン投与などで刺激を与えることで、骨細胞や神経細胞だけでなく肝細胞にも、変化することを突き止めた。
研究グループは、骨髄から採取した幹細胞で骨や心筋細胞など様々な組織の細胞を作り、実際に治療に応用しているが、今回の歯胚を使った方法は、骨髄の幹細胞を使う方法に比べて、骨細胞、肝細胞などへの増殖効率がはるかに高いという。また、実際に人の歯胚から採取した細胞を、肝臓障害を起こしたラットに移植したところ、3週間で障害が治癒したという。
産総研のプレスリリースはあっさりとしており、読売の記事以上の情報はあまり得られない。この技術は実用化までどの程度の距離にあるのだろう?
MSN毎日インタラクティブの記事、親知らず:細胞分化し骨・肝臓・神経に 再生医療に利用へ--産業総合研と阪大によると、
同研究グループの大串始(おおぐしはじめ)グループ長は「受精卵を壊してしまう胚性幹細胞(ES細胞)などに比べ、簡単に採取できる。廃棄されてしまう親知らずを凍結保存しておき、病気になったときに培養して移植すれば拒絶反応がない。これまでの移植医療の課題が解決でき、広範な再生医療に利用できる」と話している。とあり、親知らずを凍結保存しておき、将来移植が必要となった時に利用することを考えているようだ。 ん?簡単に採取でき、廃棄されてしまう親知らず? 親知らずの元の歯胚を利用するんじゃなかったの? 親知らずからでも歯胚が採取できるのだろうか?
さて、読売と毎日には掲載されていて、何故か朝日には載っていないようだ。ところが、検索してみると、朝日新聞には昨年の10/25に(良く似た研究成果が)掲載されていた。既にネット上からは消えているが、こちら(坂本歯科医院)に記事が残っていた。こちらは岐阜大学の成果であり、今回とは異なる研究チームのようだ。この記事によると、従来普通に抜歯されていた親知らずからでも十分に幹細胞が得られるようだから、年齢制限はあまり問題ではないのだろうか? 何故親知らずなのかについては、「親知らずは生えていこうとする「勢い」を持っているため」と説明されている。
Yahoo!ニュース経由の共同通信の記事では、
同研究所の大串始組織・再生工学研究グループ長は「今まで捨てられていた組織から再生医療に有効な細胞が得られた。数年以内に『親知らずバンク』をつくりたい」と話している。とあり、「親知らずバンク」を作るという構想らしい。ということは、自分の親知らずを将来自分で利用するだけでなく、他人のものを利用することも考えているんだろうか? そういや、この前のがんバンクは、自分のがん細胞を保管しておいて将来自分で利用するという形態で、バンクと言うよりコインロッカーのようだという話もあったな。。
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