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2006/03/31

お祈りの心臓手術への影響を解明?

Google News のアメリカ版を見ていてみつけた記事。Los Angeles Times(3/31)Largest Study of Prayer to Date Finds It Has No Power to Healというもので、病気の治療にお祈りは実際に効果があるのかどうかを科学的に検証した結果、どうやら効果がなかったという内容。この手の調査は従来からいくつかあったようだが、今回のものはかつてなく大々的で、しかも科学的にきちんとした手続きで行われたのが特徴のようだ。調査方法を見ると、

More than 1,800 patients were divided into three groups: those who were told someone was praying for them; those who were told only that someone might pray for them and got prayers; and those who were told someone might pray for them but received no prayers. About 65% of the patients said they strongly believed in the power of prayer.

Two Catholic monasteries and one Protestant group offered the prayers. They were given patients' first names and the first initial of their last names. The groups started praying the night before surgery and continued for two weeks.

All members of the prayer groups recited the same intercession, asking for "a successful surgery and a quick, healthy recovery and no complications."

Researchers said they didn't ask family members of the sick people to stop praying because it would have been unethical to do so, meaning some people received more prayers than others.

The results showed that prayers had no beneficial effect on patients' recovery 30 days after surgery. Overall, 59% of patients who knew they were being prayed for had complications, compared to 51% of the patients who did not receive prayers. The difference was not considered statistically significant.

ということで、心臓バイパス手術を受ける1800人以上の患者を3つのグループに分け、1つ目は自分のためにお祈りしてくれる人たちがいることを知らされるグループ、2つ目は誰かのためにお祈りする人たちがいることは知っているが、自分がお祈りされるかどうかは知らされず、実際にはお祈りされるグループ、3つ目は誰かのためにお祈りしてくれる人たちがいることは知っているが、自分がお祈りされるかどうかは知らされず、実際にお祈りされないグループとした。同一条件のお祈りをカトリックやプロテスタントのグループにお願いし、手術の前夜から2週間継続して行った。その結果、お祈りによるポジティブな効果は認められず、むしろお祈りされることを知っていた第1グループでは手術後の合併症の発症率が59%であり、お祈りされなかった第3グループの51%よりも大きかったとのこと。もっともこれは統計的に有意な差ではないとのこと。

日本人から見ると、こんな研究にこんな大規模な手間暇を掛けることが滑稽に思えなくもないが、当事者というか宗教関係者にとっては必死かもしれない。大統領あたりから面白いコメントでも出てくると楽しいのだが。。 この記事でも宗教関係者の色々なコメントが載っている。

自分のためにお祈りしてくれる人たちがいると知った患者は、「自分はお祈りされるくらい悪いんだ」と感じるために逆に悪影響があるのではないかとか、実験に参加したお祈りチーム以外の家族、知人などがどれだけお祈りしたのかについてはコントロールされていないので、それが影響したのではないかという意見もあるようだ。

この実験デザインだと、手術そのものと手術後の回復過程が分離されていないのが少し気にならないでもない。もしもお祈りに効果があるとしても、特に手術そのものが成功するかどうかに関しては、患者に対してお祈りするより、手術を担当する医師に対してお祈りする方が影響が大きいような気がするんだけど。。 そうすると医師も3つのグループに分けることになり、結果がわかりにくくなるんだろうな。

ちなみにこの研究は誰がお金を出して進めたのかというと、

It was funded primarily by the John Templeton Foundation, a group based in Pennsylvania that encourages the study of spirituality and science. Results will be published next week in American Heart Journal.
ということで、この the John Templeton Foundation については、宗教と科学で紹介されているが、テンプルトン賞なんてのもあって、その世界では有名な財団らしい。

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コメント

祈りの効果については医学都市伝説でも、過去にとりあげられたことがありました。
http://med-legend.com/mt/archives/2003/12/post_159.html">http://med-legend.com/mt/archives/2003/12/post_159.html

小規模のスタディで有意差あり(偽陽性だったんでしょうが)の結果が出たものだから、大規模スタディを行ったんでしょう。手続きとしては正しいやり方です。

投稿: NATROM | 2006/03/31 21:43

おぉ、結構奧の深そうな話ですね。後からお祈りするってのはすごすぎて発想が理解を超えてますけど。。

いずれにしても、過去の流れを理解しないとこの研究の本当の位置付けはわからないということですね。それにしても、こんな研究を実施して、こういう成果を発表するのは、それなりに勇気がいりそうです。

投稿: tf2 | 2006/03/31 22:49

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