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2006/03/27

クローン技術で作るヘルシーな豚肉はうまいか?

中国新聞(3/27)の記事。「魚の脂肪」持つ豚が誕生 遺伝子改変でヘルシー?

【ワシントン27日共同】血液をさらさらにする効果があるという魚の脂肪成分を多く含む豚を、遺伝子組み換えとクローン技術で誕生させたと、米ミズーリ大などのチームが26日付の米科学誌ネイチャーバイオテクノロジーに発表した。

 チームは「よりヘルシーな豚肉への一歩」としている。しかし、ここまで人為的に操作した食品が消費者に受け入れられるかどうかは未知数だ。

 この成分はエイコサペンタエン酸(EPA)など、血管を詰まらせにくくするとされる「オメガ3脂肪酸」。魚に多いが、豚肉には「オメガ6」という別の成分が多い。

 チームは豚の胎児から採取した体細胞に、オメガ6をオメガ3に変える「fat1」という遺伝子を組み込んだ後、この細胞を基にクローン技術で子豚を誕生させた。

というもの。なかなか面白いというか、ついにここまで来たかというべきか。向こうのニュースを検索してみると結構話題になっているようだ。ざっと見てみたが、Los Angeles Timesがわかりやすいようだ。これによると、このオメガ3脂肪酸を作る遺伝子の導入操作は、
The team of scientists from Harvard, the University of Missouri and the University of Pittsburgh used a gene from an earthworm, which naturally produces omega-3 fatty acids, to genetically modify their pigs.

The researchers began by harvesting more than 1,600 eggs from female pigs. They removed the genetic material from the eggs and replaced it with new DNA that had the earthworm gene inserted.

The manipulated embryos were then implanted into 14 surrogate mothers. A total of 10 male piglets were born.

DNA analysis of the piglets showed that six had the earthworm gene, according to the study published online Sunday in the journal Nature Biotechnology.

というもので、earthworm (線虫 C. elegans)から取った遺伝子(fat-1)を導入した卵を14匹の代理母に戻し、10匹のオス豚が生まれ、そのうち6匹が導入遺伝子を持ちオメガ3脂肪酸を生成していることが確認されたということのようだ。SCIENTIFIC AMERICAN.COMによると、その後死んでしまった豚もいたようだが、この遺伝子が原因ではないとのこと。

面白いのは、豚の脂肪酸を改善するためにオメガ3の豊富なえさを与えて豚を育てた場合には食欲をそそらない程にまずい肉になってしまったらしいのだが、今回の場合はどうか?ということ。今回の研究者はまだこの豚の肉を食べていないので味は不明だが、少なくともこの豚は魚臭くはないし、味も変わらないのではないか、と言っているらしい。。

オメガ3とかオメガ6といった脂肪酸の分類については、こちらこちらなど。ちなみに、標準的な豚肉の場合、オメガ6脂肪酸が約15%、オメガ3脂肪酸が約1%なのだが、この遺伝子組換え豚の場合、オメガ3脂肪酸が約8%になったとのこと。(Nature Biotechnology の論文はこちら。 詳細データ

まあ、この豚肉が実際に市場に出るまでには多くのハードルを越えなくてはならないだろうけど、そんなことするよりも素直に魚を食べたらどうだ? と思わなくもない。(もっともロサンジェルスタイムスには、水銀で汚染されている魚よりも将来は有望なオメガ3脂肪酸源かもしれないとも書いてある。)

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