最古のメタン生成菌の存在確認
YOMIURI ONLINEの記事(3/23)。35億年前の地球に生命体?従来より7億年さかのぼる
最も古い生命体とされるメタン生成菌が約35億年前に存在していたことを示す証拠を、東京工業大学の上野雄一郎助手(地球科学)らが発見した。というもの。随分早い時期にメタン生成菌なんて奴がいたらしい。この研究を行った上野さんの所属する丸山・廣瀬研究室のホームページを見ると、なんだか楽しそうな研究環境のように見える。これまでの証拠より約7億年古い。
メタンガスは、二酸化炭素の約20倍の温暖化効果があり、太古代(25億年以前)に地球の寒冷な気候を緩和し生物が暮らしやすい環境を作ることに貢献していたと考えられる。
23日付の英科学誌ネイチャーに発表する。
上野助手らは、西オーストラリア・ピルバラの約35億年前の古い地層で、石英に閉じ込められていた気泡の中に生物が作ったメタンがあることを突き止めた。
この石英は、熱水が岩盤を上昇し海底に達した時に溶けていた成分が結晶化してできた。炭素には原子量が12と13の2種類があり、生物は軽い12を取り込みやすいため、炭素と水素でできているメタンの炭素を調べると生物が作ったものかどうかがわかる。メタンは海底の熱水中の菌が作ったらしい。
生命の最も古い痕跡は約38億年前のグリーンランドの堆積(たいせき)岩のものだが、どのような生物が作ったのかわかっていない。上野助手は「昔の地球がどのような気候だったのか考える手がかりになる」と話している。
実はこの記事で気になったのは、「炭素には原子量12と13の2種類があり~メタンの炭素を調べると生物が作ったものかどうかがわかる。」というくだり。歴史的年代特定に使われる同位体炭素年代測定法という奴では、炭素14を使うはずだし、そもそもこんなに古い年代特定には使えないはず。例えば、Wikipediaでは、炭素14の半減期は5730年なので測定限界は約6万年前までとある。同じニュースを扱った asahi.com のメタンつくる微生物、35億年前にも存在?には、
上野さんらは、オーストラリア西部の35億年前の岩石中にとりこまれた泡を解析し、水や二酸化炭素のほか、微量なメタンを見つけた。メタンに含まれる炭素を分析した結果、これは生物がつくったものだとわかった。とある。そうか、よく読むと、炭素同位体の割合で年代を測定しているのではなく、生物由来かどうかを判定しているんだ。その年代はメタンが含まれていた岩石の年代を別の方法で特定したということらしい。ややこしいな。炭素には、質量が異なる2種類があり、噴火などでもたらされたメタンと、生物の活動によってできたものでは、2種類の比が異なっている。
でも、炭素14を用いた炭素同位体年代測定法は、生物が自然界の炭素同位対比と同じ組成で炭素を自分の体に取り込み、生きている間はその組成を維持するものの、死後は炭素14が自然崩壊して同位体組成が変化することを利用したもののはず。今回のメタン生成菌の証拠とされるものは、炭素12と炭素13の比率が生物由来と噴火由来で異なるということによるようだが、矛盾してないだろうか?
探してみたら、Jabionコラムに、そのものズバリの解説記事が掲載されているが、生物由来と地球由来の炭素同位体比の違いについては、最近明らかになったとだけ記されている。(もっとも、この記事によると既に2004年の段階で、南アフリカで35億年前の生物由来と思われるメタンを発見されていたようだが、今回の発見では、その辺の関係はどう考えられているのだろうか?) NHKのかがく用語集でも、「化石の認定」の項目で
生物が炭酸同化で炭素を取り出すときに、炭素の安定同位体である炭素12と13のうち、選択的に炭素12を多く取り込みます。もし、炭素の同位体が12Cが多い方に大きく偏っていれば、それが生物源の炭素であるという決め手になります。と書かれている。また、この原理を利用して、森林からのCO2放出量を見積もるという研究もある。とすると、炭素14で年代を測定する際にも同様の問題が起こりそうなものだが 放射線炭素(炭素14)で年代を測る にも、この辺の問題は出てこない。自然界の炭素同位体比率を見ると、C13は約1%であり、C14は1兆分の一(1ppt)と非常に少ないためなのだろうか?更に調べてみたら、年代測定のパレオ・ラボという会社の年代値の補正に、同位体分別効果の補正として、
樹木などは重い14Cよりも軽い12Cを選択的に取り込むために試料中の14C濃度が大気中の14C濃度より低くなり、貝などの炭酸塩でできたものは大気中の14C濃度とほぼ同じか高くなる傾向があります。同位体分別効果は同位体の質量差に比例するので、安定同位体である12Cと13Cの同位体比をみれば、試料が外部からの炭素の供給を絶った時点の試料の14C濃度を知ることができ、同位体分別効果による年代値のずれを補正することができます。とあるではないか。よかった、C14法でも同位体の取り込み量補正をしているようで、なんとなくひと安心。
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コメント
先生の言うには進化論などありえない?
になっちゃうんでしょうか?
最近なんだか奇妙に思えてきまして。
投稿: めい | 2011/07/11 23:30