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2006/04/28

スマートアイドリングストップシステム

日経ビジネスオンラインで見つけた記事(4/26)から。エンジンでエンジンをかける、マツダの“脱アイドル”宣言

おめでとうございます---と、こちらから言うのも妙なものだが、日経BP技術賞の「機械システム部門賞」をマツダさんにお贈りした。昨年のモーターショーに出展した「スマート アイドリング ストップ システム」のスマートさを評価したからだ。

 止まってる間はアイドルをやめ、走り出す時にエンジンをかけ直すアイドリングストップは、燃費を良くする基本ワザとして定着した。「10・15モード」(新燃費測定モード)で使う燃料のうち14%は停車中に燃やしているというから大きい。ハイブリッド車には多くの利点があるのだが、燃費が良いのは実はアイドリングストップのおかげだった…というケースもあるようだ。

 マツダが考えたのは、ハイブリッドのような大げさな機構を使わずに、サラッとアイドリングストップを達成しようというもの。セルモーターすら使わず、エンジン自身の力でエンジンをかける。

というもので、昨年のモーターショーで発表された技術のようだが、何故かその当時にはこの技術に関するニュースを見た記憶がないので、今さらではあるけれどフォローしておこう。「エンジン自身の力でエンジンをかける」というのはどういうことかというと、この記事の後半でも説明されているが、【東京モーターショー】マツダ、モータを使わない「スマート アイドリング ストップ システム」を展示にわかりやすい解説が載っている。
 動作の原理は次の通り。まず圧縮行程にあるシリンダと膨張行程にあるシリンダを、ちょうど空気量が同じくらいの位置でエンジンを止める。止めるためにはオルタネータをブレーキとして使うため、特別なハードウエアを追加する必要はない。ただし、クランク位置を精密に制御するため、クランク位置センサは精度の高い物に変更している。

 次に、再始動の際は圧縮行程にあるシリンダに燃料を噴射する。噴射した燃料に点火することで、クランクは逆回転を始める。ただ、静止した時点でシリンダ内は大気圧に戻っているため、あまり強い爆発力は得られない。しかし、逆回転により膨張行程のシリンダが今度は圧縮を始める。

 そこで新たに圧縮しつつあるシリンダに燃料を噴射し、爆発させることでピストンは再び下降する。クランクは正回転に戻るため、エンジンを再始動できる。

エンジン停止後の再始動時には、最初の爆発で逆方向に軽く動かして、続く2回目の爆発で正方向に回転を始めるというもので、言ってみれば最初の逆方向の動きで反動を付けてから、本格回転を始めるらしい。

エンジン技術者ではないからよくわからないけど、セルモーターを使わずにエンジンを始動するという発想はかなり常識を超えているんじゃなかろうか? まあ、今のエンジンはコンピュータ制御されていて、各ピストンの現在位置が正確にわかっているし、特定の気筒だけに燃料を噴射して点火するなんて芸当ができるから可能になった技術ではあるけれど、歴史がある技術だけによけい普通の発想では出てこないアイデアのように思える。

セルモーターを使うよりも始動時間が短いし、バッテリーの電気は無駄使いしないし、始動時の排ガスもきれいだと思われるので、いいことばかりみたいで、かなり期待が持てる技術に見える、というかだからこそ賞を貰ったんだろうけど。。 さすがにエンジンが冷えてしまうとセルモーターを使わないと始動しないようだが、これは低温ではガソリンの気化が抑えられて、着火しにくくなるためだろうか。

従来のアイドリングストップというと、路線バスが古くから採用していて、恐らく現時点ではかなりの普及率だと思うのだが、一般の車で交差点などでアイドリングストップしている車は少ないだろう。何といってもいちいちエンジン切ってまた始動するのは面倒だし、動き出しが遅れることへの恐れもある。それに、少なくとも心理的にはバッテリーやセルモーターへの負担も気になるところだ。

現在のアイドリングストップ技術は、Driving Futureにまとまっている。省エネルギーセンターのアイドリングストップ宣言によると、アイドリングストップが省エネルギー効果を発揮するエンジン停止時間はわずか約5秒間とのこと。

自動アイドリングストップ機構を装備した車として、例えばトヨタヴィッツのInterigent Packageを見ると、シフトがDレンジでもブレーキを踏んで車が止まるとエンジンも停止し、ブレーキを離すとエンジンが再始動するようだ。停止中もエアコンなどは普通に使えるらしい。ここまで配慮してくれているなら、アイドリングストップもかなりの人に受け入れられるのではないだろうか? もっと自動車メーカーが積極的に搭載しても良いと思うのだが、現状は何故かかなり消極的のようだ。。

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2006/04/26

酸素強化水?を新聞が斬ると

日本経済新聞の4/26夕刊、スポーツ面のからだのお話というコラムに「酸素強化水、商品化続々と、消化器官吸収の効果不明」という記事が載っている。主な酸素強化水という表が掲載されており、OXYGEN O2酸素プラス酸素インO2 AQUAの4商品についての輸入・販売元、価格、酸素量、特徴が載っている。どうやらいずれもいわゆるミネラルウォーターに後から酸素を加圧溶解させているもののようで、酸素量は1リットル当たり約50~60mgというところのようだ。 それにしても、いつの間にか「酸素強化水」なんて品名ができているらしい。強化っていうと(つい大リーグ強化ギブスを思い浮かべてしまうけど)何かの効果を強めることをいうわけで、これはちょっと違うだろうと思うし、どう見ても単なる酸素富化水だ。

このブログでは、昨年6月に飲む酸素?というエントリーを書いた。その時に扱った商品は、オーツープラス・ダイレクト、AquaO2、飲む酸素 AEROBIC KO7などの濃縮系?の酸素水が中心で、そのまま飲むのはオキシジャイザーというものだけだった。 ということで、去年はこんなに多くの商品はなかったような気がする。。 約1年が経過して、酸素を多く含む水という商品分野が確立したのかもしれないなあ。 NATROMさんのブログでも現代人には酸素欠乏症の方が多いというエントリーで、その宣伝文句のいい加減さを指摘しているのだが、さて新聞はこの商品をどう料理しているかを見てみよう。

この記事では、「スポーツにおける酸素の役割に詳しい東海大学医学部の山村雅一教授」にコメントを求めているので、そのコメント部分を抜出してみる。

水が酸素を含んだ状態で腸まで到達するという条件なら、酸素を含んだ水が腸から吸収され、腸内の毛細血管で赤血球と結びつくことは想定できる。

何倍も含ませたといっても水に含まれる酸素量は微量で、1回に飲める水の量にも限界がある。

何もしないより、飲む方がいいだろうが、劇的な効果は期待できないと考えるのが妥当。

というもので、まあ可もなく不可もなくっていうコメントである。効果はないと思うけど、飲みたければ飲めば? くらいのニュアンスにも感じられる。一方、聖マリアンナ医科大の吉岡利忠客員教授(スポーツ医学)のコメントは、
分子量が小さいため、腸での酸素吸収率は高いと予想される。しかし、呼吸に比べると微々たる量。むしろ、飲むことでアスリートのメンタル面に好影響が出ることが大きい。
ということで、かなりはっきりとプラセボだよと言っていると受け取れなくもない。 また、
ある商品の酸素含有量は水100ミリリットルあたり6ミリグラム。対して、人間が呼吸1回で取り込む酸素は、生物の呼吸メカニズムに詳しい東京工業大学の清水優史教授によると約14ミリグラム。呼吸2回だけで500ミリリットルのペットボトル約1本に相当する。
と書かれている。やけに呼吸で取り込む酸素量が少ないように見えるが、なるほど、呼吸で吸い込む空気のうち、実際に体内に吸収される酸素はその程度ということか。

一方、OXYGEN O2の輸入元である協同商事(埼玉県川越市)の朝霧重治副社長の言葉も載っている。

ドイツの大学の論文で、消化器官の酸素吸入がラットの実験で確認された。
ということだが、実際にこの商品はドイツ製なのである。どうやら、酸素強化水は日本だけではなく、ドイツでも同じような効能で売られているらしい。 

まあ、新聞に商品名を入れた記事を載せるとなると、はっきりと「意味がない」とはなかなか書けないだろうし、こんなところが落としどころかもしれない。けれど逆に、人によっては飲んでみようという気になるかもしれないし、商品の宣伝になっていなくもないような。。 

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2006/04/24

アルミニウムと水から水素を発生させる燃料電池

西日本新聞のニュース(4/24)から。水とアルミで動く燃料電池 日立マクセルが開発

 日立マクセル(東京)は24日、水とアルミニウムから発生させた水素を燃料に使う燃料電池を開発したと発表した。

 出力は平均10ワットだが、構造が簡単で低コストで発電できるのが特長。同社は「アルミ廃材のリサイクル利用も期待できる。10-100ワット級の電源として実用化を進めたい」としている。

 同社によると、水素と空気中の酸素を燃料とする「固体高分子形燃料電池」の一種で、高さ16センチ、幅10センチ、奥行き6センチ。アルミと水は内部の別々のカートリッジに入っており、水を少しずつアルミに加えることで水素が発生する。20グラムのアルミで、ノートパソコンを4?5時間動かせる。

ということで、金属アルミニウムと水から水素を発生させて、その水素で駆動する燃料電池ということらしい。つい最近、金属マグネシウムを水と反応させて水素を発生させたり、反応熱を利用したりするというMAGICエンジンというのがあったが、こっちは金属アルミニウムと水から水素を発生させるらしい。燃料電池用の水素源にも色々なアイデアがあるものだな。。 でも、アルミニウムって、そんなに簡単に水素が発生するんだったかな? 日立マクセルのニュースリリースによると、
水とアルミニウムとの反応による水素発生システムは、国立大学法人室蘭工業大学渡辺正夫教授の研究に端を発しておりますが、マクセルはさらなる検討を加え独自のアルミニウム微粒子化プロセス技術の開発に成功しました。これにより、室温で1グラムのアルミニウムから1.3リットルという大量の水素発生が可能となりました。
という程度であまり詳しく記載されていない。室蘭工業大学で探してみたが、水素エネルギーの応用部門に少し出てくる程度。渡辺先生は、このニュースによると、2004年6月にハイドロデバイスというベンチャー企業を設立して、水素発生システムを利用した燃料電池を開発しているようだ。

関連ニュースを探してみると、
  PC Watch
  ASCII24
などが詳しいようだが、金属アルミニウムと水から水素を発生させる反応は、やっぱり単純な Al + 3H2O → Al(OH)3 + 1.5H2 というもののようだ。アルミニウムの原子量が27だから、1gのアルミニウムからは、1/27×1.5=0.0556モルの水素が発生する。これは20℃、1気圧で1.34リットルになるので、なるほど1.3リットルというのは理論値に限りなく近い発生量だ。

ちなみに、Wikipediaにもあるように、通常はアルミニウム表面には水に不溶性の酸化皮膜ができてしまうので、水素を発生させるには酸かアルカリが必要なのだが、アルミニウム粉末のMSDSを見ると、微粒子にすることで、空気中の酸素や水とも激しく反応が進むということらしい。

ASCII24のニュースによると、日立マクセルとしてはこのシステムをモバイル機器の電源に実用化することは当面考えていないようだが、エネルギー密度とか効率とかいう問題とは別に、危険物に該当するような粉体の取扱いにまつわる問題もかなり大きいという気がする。

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2006/04/21

『「複雑ネットワーク」とは何か』

帯にも「友だちの元カレは私の元カレだった!」という惹句があるように、若い人たちを想定読者とした本といって良さそうだ。ネットワークというと、今やインターネットに代表されるコンピュータネットワークを思い浮かべるが、本書で取り扱うのはそれだけに留まらない。様々な人間関係、感染症の広がり方、脳の情報伝達、など色々な分野に適用することのできる「複雑ネットワーク」という考え方の入門書となっている。

ブルーバックス B1511
 「複雑ネットワーク」とは何か 複雑な関係を読み解く新しいアプローチ
 増田 直紀、今野 紀雄 著 bk1amazon

前半がネットワークの科学についての導入編、後半がそれの応用編となっている。前半部では、木(ツリー)と格子、ネットワークの距離、クラスター性、スモールワールド・ネットワーク、スケールフリー・ネットワークなどのキーワードについて、基礎から説明してくれる。簡単な例を交えて非常にわかりやすい説明が続き、とても好感が持てる。元々パズル的な側面があることも大きいのかもしれないが、単にわかりやすいだけでなく、それが実際の場面を考える際にどう使えるのだろうとか、もっと発展させたらどうなるだろう、というような知的好奇心が刺激されるのが心地よい。

世界中の誰にでもたった6人の知人をリレーするだけで到達できる、というスモールワールドの話は最近有名だが、本書でも実際の実験結果が mixiでの実験例も含めて紹介されている。またそれに関連して、世界の俳優の共演関係からその距離を表す数として考案された「ベーコン数」や、世界の数学者の共著関係を表す「エルデシュ数」というアイデアも非常に興味深い。さらには、大リーガー同士の距離を計算するベースボールの神託なんていう試みもあるようだ。

この前半部分で残念なのは、後半でも度々出てくる「スケールフリー」についての説明がやや中途半端であること。ネットワークの次数分布がベキ乗則に従うものをスケールフリー・ネットワークと呼ぶということだが、本書の説明だけではここの部分は今ひとつわかりづらい。自分で簡単なネットワークの例について実際に計算してみないと理解しにくい概念だろうとは思うのだが、他の部分がわかりやすいだけに、もう少し実例を交えて解説して欲しかった気がする。

後半の応用編では、感染症の感染経路、通信ネットワーク、ニューロンのネットワークとタンパク質のネットワーク、ビジネス社会のネットワークなどが取り扱われている。前半と比べると内容に比べて分量が少なすぎるのか、やや消化不良の印象がある。通信ネットワークの部分は、直感的に理解しやすいこともあり良いのだが、脳のネットワークについてはかなり詳しく触れられている割には、今一ピンと来なかったし、タンパク質ネットワークについては具体的なイメージを抱くところまでも到達できなかったような気がする。

それでも、最後のビジネス社会のネットワークの部分では、簡単なモデルでリッチ・クラブ現象やビップ・クラブ現象といった興味深い人間関係を表現できる例が紹介されており、これらのモデルを使用して、いわゆる黒幕と呼ばれる存在を説明する試みなども、この分野の応用可能性や今後の発展を予感させる。

全体的には、全くの初心者を対象とした入門書でありながら、この理論の広がりやその面白さを伝えることにかなり成功していると思える。複雑ネットワークという考え方は、この本で紹介された応用分野以外にも、自然界や人間が作り出した、何らかの相互作用のあるもの同士の挙動、世の中で起こる様々な現象、人間が考え出した成果物、などなど非常に守備範囲が広いもので、結構有力なツールとなりうるということがわかる。もしかしたら、今後このネットワークの考え方というのは、多くの人たちが基礎的な教養の一部として身に付けるべきものとなるのかもしれない。

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2006/04/19

超薄ペットボトル、その名は与太瓶

NIKKEI DESIGNの記事(4/18)から。水をつかむ感覚を実現する極限の薄さ ●特集「官能品質」

 1.5リットル容器で16グラムの超軽量ペットボトル。その名を「与太瓶」と言う。どことなくはかなさが漂う、頼りなさげな外観。実際に触ってみると誰もが「おおっ」と声を上げて驚く。なにより人々が感心するのはその手触りだ。軽く触れるだけで、いとも簡単につぶれてしまうほど柔らかい。「ペコン」というよりはむしろ「くしゃり」と表現したほうが納得できるほどの感触。

 このペットボトルに水を入れると、印象がまた少し変化する。水の温度が直接手に伝わってくるような感覚を味わえ、ボトルをつかむと言うよりは、水そのものをつかんでいるかのような気分にさせられるのだ。

 ペットボトルなどを成形するために使われる成型器や金型。その開発や販売、容器メーカーなどへの技術支援を行う青木固研究所が開発したのが、この超軽量のペットボトルである。

 通常ペットボトルを成形する場合は、原料からプリフォームと呼ばれる試験管状の成型品を作り、いったん冷却、再加熱した後に延伸ブロー成型機に入れてペットボトルにするという工程を踏む。一方同社は、プリフォームを作った熱を利用してそのままブロー成型する技術を持つ。これにより製造コストを抑えるだけでなく、温度管理を容易にし加工の精度を高め薄肉化を実現できたり、成型の自由度が増したりするメリットがあるのだという。

 実は同社は10年前からこうした肉薄のペットボトルを製造する技術を持っていた。しかし、当時どのメーカーからも酷評された。「こんなにつぶれやすくては、商品として安心して送り出せない」「通常のラインでは充填できない」など、不良品扱いされただけだったという。

 ただ、原料の価格高騰や環境への配慮などの社会的な変化が起こる中でこのパッケージに対する認識が変わってきた。……

以前キリンのペコロジーという名の軽量ペットボトルについて調べたことがある。それによると、ペコロジーボトルは2Lで42g。経産省の資料で見ると、その他のペットボトルの場合も、1.5Lで50g以上、500mlで26~30g程度だから、この与太瓶の16gというのは「半減」どころか、驚異的と言って良いレベルに思える。

青木固研究所のホームページを見ると、この会社は樹脂成形装置や成形技術が専門の会社で、世界中に拠点を持って展開している企業のようだ。この与太瓶については、過去の記事に詳しい情報が掲載されている。なんと、あまりに薄いために「中身を入れた後、真っ直ぐに立たない」と書かれている。ということで、従来のペットボトルと同じ用途よりは、中身を絞り出すような用途に向いているようだ。(こういうのは瓶と呼んでいいのかどうか迷わないでもないが。)

ちなみに、絞り出す方式で中身が見える容器としてはマヨネーズ容器があるが、マヨネーズ用の酸素吸収ボトルで取り上げたように、こいつは酸素遮断能力がポイントとなるようなので酸素を透過しやすいPETをそのまま使うのは難しそうだ。でもPETは透明性が高いから、従来にない特性を持った容器として面白い用途が色々とありそうに思える。

この超薄肉化を可能にしたのが、青木固研究所のダイレクトヒートコンという、プリフォーム成形と延伸ブロー成形を一体化した成形技術とのこと。多分こんな薄肉ボトルを作るために開発した技術ではないのだろうけど、最初に超薄肉で試してみたときには作った人も驚いたのではなかろうか? その感触は実際に触ってみないと理解できそうもないのが残念だけど、きっとそのうちに身近に使われるようになりそうな気がする。。

ところで、青木固研究所という名前が気になったのだが(英語名は Aoki Technical Laboratory, Inc.)、創業者のお名前が青木固さんというらしい。その名前はプラスチック成形の分野の青木固技術賞となっているくらいで、その道では有名な方のようだ。

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2006/04/17

五重塔の心柱の耐震効果は?

YOMIURI ONLINEの記事(4/14)から。地震に強い五重塔の謎に迫る、有力説に疑問符も

 大地震でも倒れた記録がない、法隆寺などにある五重塔の耐震性の謎に迫る実験が14日、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)で行われ、有力説の一つとされてきた「心柱(しんばしら)振動吸収説」に疑問符がつく結果が出た。

 心柱は塔の中心を貫く太い柱。この心柱が耐震に不可欠かどうかを、実物の5分の1の高さ約7メートルの模型で実験した。心柱を外したり、心柱を接地させず1階のはりの上に建てたりして、震度5強の揺れを与えた。

 すると、屋根の上の輪飾りが大きく揺れ、扉の一部が外れたが、振動を止めると塔はすぐに復元し、心柱の有無は耐震性に大きく影響しないことがわかった。

 五重塔の耐震性については、五重構造自体の弾性が揺れを受け流す「柔構造説」など諸説あり、本当の理由は突き止められていない。同研究所では、実験を重ね、さらに耐震性の謎に迫っていくという。

ということで、かなり大掛かりな実験を行ったのだが、五重塔の耐震性と心柱の関係ははっきりしなかったとのこと。でも、同じ実験を扱った MSN Mainichi INETRACTIVEの記事(4/15)では、五重塔:心柱に耐震効果あり 防災研が模型で公開実験
 日本の伝統的木造建築物の五重塔が地震に強い理由を解明しようと、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)で14日、五重塔の5分の1サイズの模型を震度5強で揺らす公開実験が実施された。研究チームによると、塔の中心を通る心柱が、塔の変形や揺れを抑制する効果が見られたという。

 実験では、法隆寺と同じ「飛鳥様式」で製作された模型(高さ約6.6メートル、重さ約2トン)を振動台に載せ、新潟県中越地震と阪神大震災で観測された揺れを再現した。

 今後、データを詳しく解析し、心柱の働きをさらに調べる。【須田桃子】

となっており、こちらの記事では心柱に変形や揺れを抑制する効果があると結論づけている。同じ実験についての記事でこれだけ明確に結論が異なるってのも珍しい。ちなみに、NIKKEI NET の防災研など、五重塔の模型で耐震実験という記事では、実験を行ったという事実だけで、結果については特に触れられていない。また、asahi.com はこのニュースは取り上げていないようだ。

防災科学研究所のサイトには、現時点ではこの実験の結果は掲載されていないのだが、公開実験とシンポジウムの案内が掲載されている。これによると、実験終了後に専門家による実験結果の報告とパネルディスカッションがあったようだから、ここで心柱の効果についての見解が述べられたものと思われるのが。。 ここに名前が出てくる首都大学東京の藤田研究室を見ると、確かにこれをテーマとして研究を行っている。

どうやらこの実験は、五重塔を揺らす会というグループの活動によるもので、過去にも実験を実施している。この実験についての報告なども見つかったのだが、こちらの記事によるとこの2004年12月の実験で既に心柱の耐震効果についての同様の実験を行い、やっぱりその効果に疑問が出ているようで、今回の実験とどこが違うんだろう? という気もしないでもない。。

ということで、実験後の報告やディスカッションでは明確な結論は示されず、玉虫色に終わったのだろうと想像できる。その結果、読売と毎日では随分と違った論調になってしまったのだろうと思うのだが、何事も白か黒の決着をつけなくてはいけないという悪い癖が出たのかもしれない。読売新聞と毎日新聞の関係者もお互いの記事を見て驚いただろうけど、それぞれの記者同士も顔見知りだろうから、ちょっと困ったりしているかもしれない。

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2006/04/14

246回目の献血

前回3/17以来、28日ぶりの献血。今回は横浜方面に行く用事があり、そのついでに2か月ぶりに横浜駅西口献血ルームに行ってきた。このサイトには昼休みも受付するって書いてあるけど、実際には午後の受付は 13:30から。

ということで 13:20頃に行ってみたらさすがにほとんど人はいなかったので、受付、問診、検査、献血といった一連の流れが非常にスムーズに進んだ。今回も血小板成分献血で、左腕からの献血。ただしいつも針を刺さされる場所は赤くなっているということで、今日は違う場所に針を刺してくれた。献血を終わって待合室に戻ってみたら、平日の昼下がりの割には結構多くの人がいて少し驚いた。

今回いつもと違っていたのは、受付の際に小さな紙を渡され、そこに氏名、生年月日、身長、体重を記入させられたこと。これは何のためなのだろう? 本人確認にしては中途半端だし。それと、前回から問診表がタッチパネル方式になったんだけど、手書きで書き込む必要があった項目(海外旅行の行き先と時期、および心電図測定の時期)を受付の人が書き込んでくれた。おまけに、前回申告した海外の行き先についてはデータベースに登録されているようで、こちらが申告する前に受付の人が書き込んでくれたりした。そこまでやっているなら、あと少し頑張って問診表に直接プリントしてくれればいいのにね。。

おみやげは、電動歯ブラシか薬用デンタルファミリーセットからの2者択一。電動歯ブラシはサンスターGUMの新製品(たぶんこれ)に変わっていた。まあ、電動歯ブラシばっかりあっても仕方ないので、今回はデンタルファミリーセットにしたけど、もう少し多くの選択肢から選べるといいのにね。。

それと、カラダファクトリーというところのA.P.バランスご利用券(骨盤改造調整チケット 20分)というのが入っていた。A.P.バランスとは、Atlas(アトラス:頚椎)とPelvis(ペルビス:骨盤)を中心とした骨格や筋肉を調整するというものらしいけど。。。

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2006/04/13

マグネシウムと水で熱を発生するエンジン

nikkeibp.jpのニュース(4/13)から。東工大と三菱商事,化石燃料を使わない無公害エンジンの実験機を製作

東京工業大学と三菱商事は,化石燃料を使わない無公害エンジンの実験機を製作した。両者は2004年より,「新技術と知的財産の事業化による社会的価値創造」のため連携してきた。第1号プロジェクトとして2005年から,太陽光励起レーザーを基軸とした新しいエネルギシステムを研究している。エンジンはこのシステムの一翼を担う。

新型エンジンは,「MAGIC(MAGnesium Injection Cycle)エンジン」と呼び,東京工業大学の矢部教授・生田特任教授らが,品川区の精密加工メーカーである小野電機製作所の協力を得て開発を進めてきた。直径約5cm,高さ13.5cmの小型ながらも,数十kWの熱出力が発生し,そこから動力を得る。マグネシウムと水で熱を発生するため化石燃料を使わない。コージェネレーション,自動車,船舶などのエンジンとして期待している。

どんなエンジンなんだかよくわからないので、三菱商事を見にいくと、ニュースリリースが掲載されている。

簡単にまとめちゃうと、金属マグネシウムと水とを反応させて、生成する水素と熱をエネルギーとして利用するというもので、副生物の酸化マグネシウムは太陽光励起レーザーで還元して金属マグネシウムに戻して再利用するということらしい。で、今回発表したのは、マグネシウムと水を反応させてエネルギーを回収するエンジンのようだ。

この資料によると、マグネシウムと水との反応では、水素を生成物として回収し、これを燃料電池等で使用するケースと、そのまま燃焼して熱を最大限に回収するケースの2通りがありそうだ。今回のものは恐らく後者なのだろう。

確かにマグネシウムは海水中にもたくさん溶け込んでいるけど、その濃度はMgとして0.13wt% 程度だ。現在、金属マグネシウムは海水から電解法で作っているようだが、それには結構エネルギーを使いそうだ。まあ確かに、このプランでは一度Mgを取り出してしまえば、それが酸化物と金属の間を行き来するだけだから、最初にMgを製造する際のエネルギーは、最終的には考えなくても良いという論理なのだろうけど、初期に投入するエネルギーは無視できないかもしれないな。。

それと、この場合恐らくマグネシウムはそれなりに細かな粉末状で取り扱うことになりそうだけど、金属マグネシウム粉末は気をつけないと空気中で燃焼してしまいそうだ。(参考:国際化学物質安全性カードマグネシウム粉による粉塵爆発) ということで、エネルギー媒体として取り扱うんだから当然といえば当然だけど、それなりに注意が必要だろう。むしろ、ガソリンなどの取扱いは豊富な経験があるので問題ないけど、粉塵の取扱いは設備面や取り扱う人の面で問題が大きいかもしれない。

それにしても、エンジンという名前が付いているけど、どんな構造なのだろう? 原料が固体と液体で、生成物が固体とガスになるのかな? 金属マグネシウムと酸化マグネシウムの分離や酸化マグネシウムの回収方法は興味あるところ。さらに水素を回収する場合には、燃焼室を無酸素状態にする必要があるのだろうし。。

このプロジェクト全体の計画については、この辺が参考になる。また、太陽光励起レーザーについては、既に発振に成功という報道が見つかった。

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2006/04/12

波動歯車、またの名はハーモニックドライブ

NIKKEI NETの記事(4/12)から。ハーモニック、世界最小の波動歯車・ロボット搭載可能

 精密減速機メーカーのハーモニック・ドライブ・システムズは世界最小サイズの波動歯車を開発した。直径は1円玉を下回る13ミリメートルと従来品(直径20ミリ)の3分の2。重さは14グラムで従来品(35グラム)の約4割に縮小した。半導体などの製造装置や産業用ロボットの関節の駆動部分など小型・高精度な歯車が求められる分野での利用を見込む。

 新製品は原材料の合金の配合を工夫し耐摩耗性を強化。工具で削り出してつくる歯車の歯の間隔を42マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルと従来比4割縮小した。従来の大きさでは難しかった人型ロボットの指の関節などにも搭載可能で、これまでの油圧による制御に比べ指の動きがスムーズになるという。

一般的には「波動○○」というような商品名のものにロクなものはないようだが、この「波動歯車」はどうやらまともなものらしい。でも、一体どんなものなのだろう? 実は、今朝の日経新聞の朝刊にはもう少し詳しく載っていて
 波動歯車は楕円(だえん)形にたわませた歯車を、内側に歯を刻んだ円形の歯車の内部で回転させる特殊な歯車。外側の歯車とかみ合わない部分をつくって回転数を変える。

 新製品は内側の歯車が百回転すると外側の歯車が一回転するしくみで、小型モーターの高速回転を低速で強い回転力に変換できる。
 
 歯車がかみ合う際に生じるすき間がほぼゼロと一般的な歯車よりも精度が高いのが特徴。

 他の歯車に比べ部品数が少なく小型・軽量化するのが容易で、産業用ロボットのほか米航空宇宙局(NASA)の火星探査機などにも使用されている。

とある。この説明を読んでもピンと来ないので、ハーモニック・ドライブ・システムズ社のサイトを訪れてみたら、ハーモニックドライブの原理という説明を見つけた。ここの説明には「波動歯車」という単語は一度も出てこないが、新聞記事との整合性からみて、ハーモニックドライブと名付けられたこのギアが波動歯車ということらしい。こんな歯車機構は知らなかったが、フレクスプラインという薄肉のカップ状の部品の弾性変形がキーとなっている機構のようで興味深い。にも関わらず、多数の歯に力が分散されるために高トルク伝達が可能ということらしい。

てっきりハーモニック・ドライブ・システムズ社はアメリカ当たりで生産した機械を日本で販売しているだけかと思いきや、何と1970年から日本で生産を行っている。独自の技術開発で小型化や高性能化を進め、いまや世界の小型ロボットにはなくてはならない製品となっている優れものらしい。

日本機械学会論文集のカップ型波動歯車装置の応力解析という論文の英文タイトルやキーワードを見ると、波動歯車装置は英語では "Strain Wave Gearing" と呼ぶようだ。確かに、先のハーモニック社のサイトに載っていたアニメーションを見ると、フレクスプラインの変形が波のように移動するイメージが見て取れる。ということで、その「変形の波」が移動することから「波動」と翻訳したのかもしれない。それにしても、「波動歯車」は誤解を招きかねない名称だ。。 もちろん、波動という単語や波動歯車と名付けた人には何の罪もないのだろうが。。。

なお、現時点で「波動」を検索すると、Google でも Yahoo! JAPAN でも「水の伝言 株式会社 アイ・エイチ・エム」が筆頭で、その後もクラクラするようなサイトのオンパレードである。。。 科学的に真っ当な主張をしているサイトを探すのが大変な状況となっているのだが、そんな状況の中で、どちらの検索エンジンでも波動注意報さんがかなり上位で孤軍奮闘している。

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2006/04/10

最新の原子量と周期表

日本化学会の雑誌「化学と工業」の2006年4月号に、「原子量表(2005)」と「元素の周期表(2005)が掲載されている。これは、IUPAC(国際純正・応用化学連合)が発表する最新のデータに合わせ、日本化学会が毎年4月に発表しているもの。

毎年、原子量の数字が微妙に修正されるのだが、今年は、Na, Al, P, Sc, Mn, Co, Cs, La, Nd, Sm, Tb, Ta, Pt, Au, Bi, Th の16の元素の原子量が修正されている。修正内容については、IUPACのニュースにまとまっているが、この程度の違いは普通の人たちには何の影響もないのだが、もしかしたら大きな影響を受ける人もいるかもしれない。例えば化学計算にはどうしても正しい原子量を使わないと落ち着かないという人などは、忘れずに修正しておく必要があるだろう。ちなみに、白金の原子量の変化が比較的大きいのだが、それでも 0.003%変化した程度である。。

元素の周期表では、固有の元素名がついているのは従来同様111番のRg(レントゲニウム)まで。今年の周期表では 112番元素以降については以下の通り。
 112番 Uub ウンウンビウム
 113番 Uut ウンウントリウム
 114番 Uuq ウンウンクアジウム
 115番 Uup ウンウンペンチウム
 116番 Uuh ウンウンヘキシウム
 118番 Uuo ウンウンオクチウム

2004年版では、112番、113番、116番の3つだけだったので、この1年で114番、115番、118番の3つの存在が一応認められたということのようだ。ただしIUPACのPeriodic Table of Elementsには111番までしか載っておらず、日本化学会独自の判断なのかもしれない。なお、114番元素Uuqについて、従来は「ウンウンクワジウム」と表記していたが、これを「ウンウンクアジウム」に変更したとのこと。

112番元素以降の周期表上での配置は、WebElements periodic tableがわかりやすい(ここでは118番についても認めていないようだ)。 これで117番元素(Uus:ウンウンセプチウム?)を除き、第7周期までが完全に埋まった格好になる。いよいよ新元素の発見(?)競争は第8周期へと突入することになりそうだ。

参考:Wikipedia 超ウラン元素未発見元素の一覧

なお、第8周期以降ではGブロックというグループを考える必要があるようで、この辺まで来ると、従来の周期表よりも拡張周期表の方がある意味美しい表現方法のように思える。

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2006/04/08

ココログ27か月

ココログを始めて2年と3か月が経過。1か月当たりのカウンターの伸びは 17000程度で、数か月前にコンスタントに 25000程度だったのと比べるとかなり落ち込んだ。

 1か月目:900     2か月目:4500    3か月目:11700    4か月目:19000
 5か月目:32300   6か月目:43500   7か月目:54500    8か月目:72000
 9か月目:87700   10か月目:105400  11か月目:125400  12か月目:140600
13か月目:163000  14か月目:179300  15か月目:194700  16か月目:205300
17か月目:216800  18か月目:231700  19か月目:251100  20か月目:276400
21か月目:301200  22か月目:326400  23か月目:351400  24か月目:372400
25か月目:398100  26か月目:419300  27か月目:436100

この1か月のアクセス解析結果を求めてみると、以下の通り。

(1)リンク元
 1位 http://www.google.co.jp 全体の30%(前回2位)
 2位 http://search.yahoo.co.jp 全体の25%(前回1位)
 3位 bookmark 全体の22%(前回3位)
 4位 http://www.google.com 全体の9%(前回5位)
 5位 http://search.goo.ne.jp 全体の2%(前回4位)
 6位 http://search.msn.co.jp 全体の2%(前回6位)

2月後半から引き続きYahoo!サーチ経由の訪問者が減っている。昨年後半~今年の2月前半までと比べると1/3程度まで落ち込んでおり、その分だけこのブログへの訪問者が減っているということになる。 他の検索エンジンからの訪問者数に大きな変化はないようなので、Yahoo!検索の表示順位付けの方法が変わったものと思われる。 ちなみに先月から始まったYahoo! ブログ検索経由の訪問者もほとんどいない。まあ、Yahoo!で何かの情報を検索する人にとっては、わざわざブログに限定するのはまだまだ特殊なケースということだろう。 ここに来る人の中では、むしろGoogle Blog Search BETA経由の人の方が多いようだ。

(2)検索キーワード
 1位 注射針(前回5位)
 2位 食事バランスガイド(前回6位)
 3位 桜(前回8位)
 4位 キャパシタ(前回3位)
 5位 過去の天気予報(前回46位)
 6位 パスポート(前回7位)
 7位 ETBE(前回17位)
 8位 過去の天気(前回46位)
 9位 天気予報(前回11位)
10位 しらせ(初登場)
11位 気象庁(前回14位)
12位 松坂(初登場)
13位 アメリカ(前回17位)
14位 献血(前回18位)
15位 車(前回27位)

桜の季節ということで、「桜」が上位にランクイン。松阪投手のネックレス関連も人気のキーワードとなっていたようだ。それにしても、注射針がここのところコンスタントに上位に来ているのは何故なのだろう?

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2006/04/07

日本の医師数はまだまだ少ない?

YOMIURI ONLINEの記事(4/7)から。世界で医療スタッフ不足、日本の医師数は63位

 【ジュネーブ=渡辺覚】世界保健機関(WHO)は7日に公表した2006年版の世界保健報告で、世界で約430万人の医療スタッフが不足しているとの推計を発表した。

 医療スタッフの員数・配置問題に焦点を当てた今年の報告は、エイズの感染拡大が続くマラウイやタンザニアで、人口1000人当たりの医師数が0・02人と、アフリカ諸国でスタッフ不足が極めて深刻だと指摘。

 アフリカで教育を受けた医師の4人に1人が経済協力開発機構(OECD)加盟の先進30か国で働く「頭脳流出」の現状にも懸念を表明、各国に人材育成と医療環境の整備を提言している。

 一方、日本は平均寿命で82歳の世界最長寿国の座を堅持しながら、1000人当たりの医師数は1・98人と、192か国中、63位の中位水準にとどまった。

 1位サンマリノの47・35人には遠く及ばず、OECD加盟国の中では最低クラス。同様に看護師は27位、歯科医師は同28位と、世界のトップ水準には達していない。

どうやら日本は医師の数が世界的に見てかなり少ないのにも関わらず、世界一の長寿国ということらしい。医師の数と健康の度合いにはどんな関係があるのだろう? この記事では、何となく日本はまだまだ医療体制が整っていないというニュアンスが感じられるような気がするが、平均寿命と医師の数の間にはどんな関係があるるのだろう?

とりあえず、以下の4つの仮説を考えてみた。

1.日本人は健康で病気の発生率も低いので、医師が少なくとも問題ない
     → 実は医師の数と寿命には負の相関がある?
2.日本は医師の数がまだまだ少ないので、医師の数を増やすともっと寿命が長くなる
     → 医師の数と寿命には正の相関がある?
3.日本の医療は自動化や機械化が進み、少数の医師により高度な医療を実現している
     → 先進国は医師の数が少ない傾向がある?
4.日本の医師は他国の少なくとも数倍の勤務時間働いている
     → 日本は特異的?

これらの仮説のどれが正しいかは、寿命と医師の数の間の関係をグラフにして調べてみれば良さそうだ。ということで、元データを探してみた。元のデータは WHO の The world health report 2006 で入手できる。このうち、寿命や死亡率のデータは、Annex 1で、医療従事者の統計はAnnex 4に掲載されている。
Who06_1これらのデータを散布図にプロットした結果を示す。このグラフで1点だけ飛び離れたデータがサンマリノである。読売の記事では、日本の医師数はサンマリノに遠く及ばないと書いているけど、どう見てもサンマリノは異常である。人口が23000人の国に医師が1089人もいるんだから、日本に当てはめると600万人も医師がいることになってしまう。。 

Who06_2で、サンマリノを除いた国々について拡大してみたのがこちら。全体としては、寿命と医師数には弱い正の相関がありそうだ。その中で、日本は寿命の割には医師数がかなり少ない、特異な国ということが言えそうだ。日本と同じ傾向を示しているのがシンガポールやカナダ。こうして比べてみると、少ない医師数で長生き国家を支えているのだから、素直にほめてあげても良さそうだ。 一方、北欧、西欧の各国やオーストラリア、ニュージーランドなどのいわゆる先進国は、アメリカのやや右上、医師数が2.3~4.0ぐらい、寿命が78~81程度のところに分布しているようだ。

Who06_3試しに、縦軸(医師数の割合)を対数でプロットしなおしてみたのが、このグラフ。これで見ると、平均寿命と医師の数の対数との間にはまあまあの正の相関が見られるが、日本が全体の中ではかなり特異であることには違いはなさそうだ。

さて、このグラフはどう考えたら良いのだろうか? やはり仮説2と仮説4が正しいのだろうか? それとも他の要因があるのだろうか? WHOのレポートには、医療費の統計なども載っているので、詳細な検討にはそれらも含めて検討する必要があるだろうけど、少なくとも医師が多けりゃいいってものではなさそうに思える。。

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2006/04/06

物質界面での反射を消す新奇光学素子

理化学研究所のプレスリリース(4/6)。物質境界面の光の反射を止める「新奇光学素子」を開発

 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、物質の境界面で生じる光の反射を除去する新しい光学素子を開発しました。この素子は、「メタマテリアル」と呼ばれる金属のナノ構造体を用い、物質の透磁率を人工的に制御して実現しました。理研中央研究所河田ナノフォトニクス研究室の河田聡主任研究員と田中拓男先任研究員の研究成果です。

 物質は、それぞれ固有の屈折率を持ち、二つの物質が接すると、その境界は屈折率の境界ともなります。屈折率の境界は光にとっての障壁であり、この境界に光が入射すると光の一部は障壁に反射されてしまいます。今回の成果では、この障壁を完全に取り除き、物質の境界を越えて光を伝播させる全く新しい光学素子を提案しました。具体的には、メタマテリアルと呼ばれるナノサイズの金属構造体を用いて、光の反射を除去する「ブリュースター」という現象を、あらゆる状態の光に対して実現する手法の提案とその原理を用いた光学素子を提示しました。メタマテリアルでできたプリズム素子とその原理は、これまでの光学分野における常識を覆す、全く新しい原理に基づく光技術の提案であり、金属のナノ構造体が、これまでの光学の概念を越えた「新奇な光学素子」へ応用できることを示したもので、ナノテク材料の一つとして金属(メタル)が有効であることを期待させるものです。

内容はともかく、実現しようとしていることはよく理解できる。異なる屈折率を持つ物質の間で必ず起こると思われていた反射という現象を消してしまおうということらしい。それにしても、「新規」ではなく「新奇」という字を使ったところに、その意気込みというか意外性が表れているのだろうか?

従来の理研のリリースは極めて難解で「専門家以外お断り」という印象の強いものだったが、最近は随分と改善されているように思う。このリリースでも、今回の研究を理解するための基礎知識である「ブリュースター」についての図解をしたりと工夫されているのだが、残念ながらそれでも内容が難解でなかなか門外漢がスッキリと理解できるものではないようだ。

それでもわかったことをまとめてみると、

(1)異なる屈折率を持つ物質間には、ブリュースターとして知られる現象があり、特定角度で入射したp偏光が実質的に全く反射せず、ロスなく全て物質内部に入る。(参考:啓林館Wikipedia) しかしブリュースター現象はp偏光に対してしか起こらないので、s偏光が反射することは防げない。

(2)通常は物質の透磁率は1.0で固定と考えられているが、もしも物質の透磁率を変えることができれば、s偏光に対してもブリュースター現象を起こすことが可能となり、s偏光を反射せずに入射させることができるはずである。(ここがわからない。透磁率は物質によって異なるはずだと思うのだが。。)

(3)自然界の物質は透磁率は1.0だが(?)、金属のナノコイルを特定の配列で並べた物質(メタマテリアル)を作ると、方向により異なる透磁率を示す異方性の物質を作ることができる。

(4)メタマテリアルの形状と性状を巧みに設計し、設計どおりに作ることができれば、例えば空気からガラスに光を入射する場合、空気とメタマテリアルの界面およびメタマテリアルとガラスの界面の両方で、p偏光とs偏光のそれぞれ全てがブリュースターの条件を満たすことが可能となり、結果として空気からガラス内に反射ロスなく光を伝送できることになる。

ということらしいのだが、合っているのか??  ところでこの研究、タイトルには「新奇光学素子を開発」とあるものの、実際にメタマテリアルを作成して反射をゼロにしたのではなく、このようなことが理論上可能であることを計算によって示したということのように読める。こういうのを「開発」って言うのかな? それにしても、面白いことを考えたものだ。

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2006/04/04

オール磁器製のネジ口ボトル

日経新聞4/4の夕刊の社会面に、「ビンもふたも磁器 ねじ溝で密閉OK」という写真付きの記事があった。ネットでは見つからなかったが、西日本新聞社がネット上に載せていた。磁器のふたに「ねじ溝」 長崎、窯元が加工に成功

 長崎県波佐見町の窯元「清山(せいざん)」が磁器のねじ溝加工に成功、ふたも本体も磁器製の密閉容器「Ri・ピート」を開発した。名前の通り「繰り返し(リピート)」使え、環境にやさしい容器と期待されている。

 磁器は乾燥させて焼き上げると約13―14%収縮するため、ねじ溝を彫るのは困難とされてきた。約10年かけて特殊な鋳込み技術を開発し、研磨の精度を上げることで克服。この技術で特許出願中という。

 清山の瀬井辰芳社長によると、飲料用などに流通している陶磁器の容器では、ふたの素材は主にコルク。容器本体は廃棄されてしまうことが多い。そこで「ふたも本体も陶磁器製にすれば再利用できる」と考え、開発に取り組んだ。

日経の記事によると、720ミリリットルサイズの容器、およびこの容器に地元の酒造会社の日本酒や焼酎を入れたものを売り出したとのこと。探してみると、こちらに問題のキャップ部分の断面拡大写真が掲載されている。

中の液体が漏れないように密閉しようとすると、パッキンを使ったとしても、ネジの部分にはかなり大きな力が掛かるはずであり、かみ合わせの精密さもさることながら、強度面もポイントとなりそうな気がする。でも結局は、ねじ込んだ時に局所的に大きな力が掛かる箇所ができないように、高い精度の形状を作り上げる必要があるということだろうか。

考えてみると、ガラスビンではネジ口のものが多くあるけれど、いずれも蓋は金属だったり、プラスチックだったりする。陶磁器製のビンでネジ口のものはあまり思い浮かばないけど、今回のものでは「全国初」という表現は見つかるが、「世界初」とは書いてないところを見ると、世界的には前例があるのかもしれない。

特許出願中とのことで、出願人が「清山」の特許を公報テキスト検索で検索してみると、二重構造の焼物容器に関する特許が2件見つかったが、今回のネジ蓋についての特許はまだ公開になっていないようだ。それでも、この二重構造の焼物に関する特許を見てみると、この窯元がなかなか高度な技術力を持っていそうなことが伝わってくる。こういう技術をこういう小さな窯元が開発しちゃうところがすごいな。 もしかしたらこの技術は工業製品などにも応用できるのではないだろうか? (高温でも使用できるネジが必要な装置など)

蓋も本体も陶磁器なので再利用可能という説明は今一ピンと来なかったが、高級感のある容器に安っぽい金属製やプラスチックの蓋では台無しになってしまうし、コルクの蓋だと内容物が染み込んでしまう問題があるだろうから余り再利用したくないかも。ということで、確かに陶磁器製の蓋というのはそれなりの用途が考えられそうだ。まあ、お酒の容器だと再利用と言っても余り用途が思いつかないのだが、日経新聞には

 瀬井社長は「陶磁器の容器はデザイン性も高く、香水や化粧水など幅広い用途が考えられる」と話している。
とあり、確かに高級品を狙ってみるのも面白そうだ。

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2006/04/03

「空前絶後のスーパー仕事師」

文庫版のメタルカラーの時代の最新作。前作「わくわくする大科学の創造主」についてはこちらで紹介した。今回は、前半が超精密測定に関する技術、中盤がスプリング8、後半はアマゾン関係というラインナップである。

小学館文庫
 [文庫版]メタルカラーの時代12
 空前絶後のスーパー仕事師
 山根 一眞 著 bk1amazon

最初に出てくるキログラム原器の話は、間接的にはお世話になっているにも関わらず普段見聞きすることのない世界で、非常に面白かった。以前質量の定義とアボガドロ定数というエントリを書いたことがあるが、長さや時間の単位については既に普遍定数を用いて定義されているのに、質量だけがいまだに「キログラム原器」という実物をベースとして定義されている。で、このキログラム原器の正規の複製品を日本で如何に管理し、日本中の秤の較正をどのようにしているのか?という話である。

そもそもキログラム原器がどこにどのように保管されているのか? というところからして面白い。キログラム原器自身はWikipediaにも写真が掲載されているし、これと似たような写真は今までにも見たことがあったのだが、このキログラム原器の保管状況が何ともすごい。産総研のつくば研究所の地下、鉄格子のはまった部屋の奥の直接見えない場所に置かれ、外からは鏡に写った状態で見えるようにしているらしい。これは、万が一何か物を投げつけられても損傷しないようにとの配慮らしく、神棚のような置き場にキログラム原器、実験原器、副原器の3つが並んでいて、何ともおごそかというか仰々しいというか。。 この写真を見るだけでもこの本を手に取ってみる価値があると思う。

で、この日本のキログラム原器と本家フランスのキログラム原器との比較を行い校正する作業や、日本のキログラム原器の質量を副原器移す作業の段取などが紹介されており、非常に興味深い。そのための100億分の一キログラム(100ナノグラム)まで測れる超精密天秤なんてものまで存在するというから驚きだ。作業の段取も、ほとんど職人芸の世界になっているのだが、これが現時点でも日本のあらゆる取引の基準を定める作業ということになると思うと、複雑な思いになってしまう。。

さて、本書でもう一つ非常に興味深かったのが、後半に出てくる小野田寛郎さんの話。小野田さんは旧陸軍少尉で終戦後もフィリピンのルバング島に残り、1974年にようやく投降し、日本に戻ってきた。その後ブラジルに渡って元気に暮らされているようだ。当時やその後の報道をあまり詳しく見ていなかったために僕が知らなかっただけかもしれないが、この対談を読むと小野田さんは決して浦島太郎のような状況ではなかったようだ。ラジオを手に入れたりして、相当に現実の状況を把握していたらしい。(じゃあ何故、いつまでも隠れ続けたのかという点はやや矛盾しているような気がするのだが。。)

小野田さんは実は科学少年だったらしく、薬品の取り扱い方などにも精通し、銃弾の火薬を取り出して天日乾燥し、密閉保管していたり、縫い針を焼入れして自作したりと、ジャングルでのサバイバルのための様々な工夫をするための基礎知識を持っていたようだし、だからこそ生き抜くことができたということらしい。

また、ラジオ、テレビ、ジェットエンジンなどについての知識も持っていて、夜空を眺めて人工衛星が飛んでいることを理解していたり、ラジオで日本の短波放送を聴いて、新幹線の開業や大阪万博のことを知ったり、競馬中継を聴いて楽しんだりもしていたらしい。。 抱いていたイメージとのギャップに驚かされる話ばかりである。 で、今は子どもたちのために小野田自然塾というのを開校しているようだ。

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2006/04/01

2006年3月の天気予報傾向

東京地方の過去の天気予報 は順調にデータ蓄積中。3月分の統計データの集計・更新も先程終了。機械的な作業ばかりなのだが、始めた頃に比べて徐々に作業量が増えてきて、実は結構大変だったりする。

日々のデータ更新や、毎週のグラフ更新については、ほとんどエクセルのマクロで処理しているので問題ないのだが、毎月1日の更新作業には、まだ手作業が結構残っている。こういうときには、どこかで自動化のためのマクロの作成をした方が結果として効率的になることはわかっているのだが、その踏ん切りをつけるのが大変なのだ。。

さて、今年の3月は天候や気温の変動が大きく、そして1mm以上の降水のあった日も8日と多かったためか、感覚的には天気予報があまり当たらなかったように感じていたのだが、改めてこうして数値で見てみると決して悪い成績ではないようだ。

ただ、降水確率予報値の的中率を見ると、特に10~40%の降水確率の的中率が悪いのが気になる。降水確率的中率グラフを見ると、今年の3か月間のトータルで見た時に、前日予報でさえ、降水確率10%のときの実際の降水率は 0.9%にすぎず、20%では0%、30%では8.6%、40%では0%である。50%では47%、60%では57%と頑張っているので、余計に目立つのだが。。

つまり、降水確率50%以上だとそれなりに雨が降るが、40%以下だと滅多に雨が降らないということになっている。もっとも、去年も最終的には結構いい線いってたようだし、この指標については、その気になれば帳尻あわせも可能なので、いずれきちんと結果を出してくれることだろう。。 もっとも、前日の降水確率よりも5日以上前の降水確率予報の成績の方が良さそうだったり、というのもやれやれな状況なのだが。。

ところが、気象庁自らが最近始めた降水確率予報の精度を見ると、何故か全く違う結果となっているではないか! うーむ、気象庁は12月~2月、こちらは1月~3月と集計範囲が異なるんだけど、それにしてもこの違いはないだろう? 基本的な検証方法は同じはずなのに、どうしてこんなに違うんだろう? これは来月までの宿題にしよう。。

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