スマートアイドリングストップシステム
日経ビジネスオンラインで見つけた記事(4/26)から。エンジンでエンジンをかける、マツダの“脱アイドル”宣言
おめでとうございます---と、こちらから言うのも妙なものだが、日経BP技術賞の「機械システム部門賞」をマツダさんにお贈りした。昨年のモーターショーに出展した「スマート アイドリング ストップ システム」のスマートさを評価したからだ。というもので、昨年のモーターショーで発表された技術のようだが、何故かその当時にはこの技術に関するニュースを見た記憶がないので、今さらではあるけれどフォローしておこう。「エンジン自身の力でエンジンをかける」というのはどういうことかというと、この記事の後半でも説明されているが、【東京モーターショー】マツダ、モータを使わない「スマート アイドリング ストップ システム」を展示にわかりやすい解説が載っている。止まってる間はアイドルをやめ、走り出す時にエンジンをかけ直すアイドリングストップは、燃費を良くする基本ワザとして定着した。「10・15モード」(新燃費測定モード)で使う燃料のうち14%は停車中に燃やしているというから大きい。ハイブリッド車には多くの利点があるのだが、燃費が良いのは実はアイドリングストップのおかげだった…というケースもあるようだ。
マツダが考えたのは、ハイブリッドのような大げさな機構を使わずに、サラッとアイドリングストップを達成しようというもの。セルモーターすら使わず、エンジン自身の力でエンジンをかける。
動作の原理は次の通り。まず圧縮行程にあるシリンダと膨張行程にあるシリンダを、ちょうど空気量が同じくらいの位置でエンジンを止める。止めるためにはオルタネータをブレーキとして使うため、特別なハードウエアを追加する必要はない。ただし、クランク位置を精密に制御するため、クランク位置センサは精度の高い物に変更している。エンジン停止後の再始動時には、最初の爆発で逆方向に軽く動かして、続く2回目の爆発で正方向に回転を始めるというもので、言ってみれば最初の逆方向の動きで反動を付けてから、本格回転を始めるらしい。次に、再始動の際は圧縮行程にあるシリンダに燃料を噴射する。噴射した燃料に点火することで、クランクは逆回転を始める。ただ、静止した時点でシリンダ内は大気圧に戻っているため、あまり強い爆発力は得られない。しかし、逆回転により膨張行程のシリンダが今度は圧縮を始める。
そこで新たに圧縮しつつあるシリンダに燃料を噴射し、爆発させることでピストンは再び下降する。クランクは正回転に戻るため、エンジンを再始動できる。
エンジン技術者ではないからよくわからないけど、セルモーターを使わずにエンジンを始動するという発想はかなり常識を超えているんじゃなかろうか? まあ、今のエンジンはコンピュータ制御されていて、各ピストンの現在位置が正確にわかっているし、特定の気筒だけに燃料を噴射して点火するなんて芸当ができるから可能になった技術ではあるけれど、歴史がある技術だけによけい普通の発想では出てこないアイデアのように思える。
セルモーターを使うよりも始動時間が短いし、バッテリーの電気は無駄使いしないし、始動時の排ガスもきれいだと思われるので、いいことばかりみたいで、かなり期待が持てる技術に見える、というかだからこそ賞を貰ったんだろうけど。。 さすがにエンジンが冷えてしまうとセルモーターを使わないと始動しないようだが、これは低温ではガソリンの気化が抑えられて、着火しにくくなるためだろうか。
従来のアイドリングストップというと、路線バスが古くから採用していて、恐らく現時点ではかなりの普及率だと思うのだが、一般の車で交差点などでアイドリングストップしている車は少ないだろう。何といってもいちいちエンジン切ってまた始動するのは面倒だし、動き出しが遅れることへの恐れもある。それに、少なくとも心理的にはバッテリーやセルモーターへの負担も気になるところだ。
現在のアイドリングストップ技術は、Driving Futureにまとまっている。省エネルギーセンターのアイドリングストップ宣言によると、アイドリングストップが省エネルギー効果を発揮するエンジン停止時間はわずか約5秒間とのこと。
自動アイドリングストップ機構を装備した車として、例えばトヨタヴィッツのInterigent Packageを見ると、シフトがDレンジでもブレーキを踏んで車が止まるとエンジンも停止し、ブレーキを離すとエンジンが再始動するようだ。停止中もエアコンなどは普通に使えるらしい。ここまで配慮してくれているなら、アイドリングストップもかなりの人に受け入れられるのではないだろうか? もっと自動車メーカーが積極的に搭載しても良いと思うのだが、現状は何故かかなり消極的のようだ。。
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