波動歯車、またの名はハーモニックドライブ
NIKKEI NETの記事(4/12)から。ハーモニック、世界最小の波動歯車・ロボット搭載可能
精密減速機メーカーのハーモニック・ドライブ・システムズは世界最小サイズの波動歯車を開発した。直径は1円玉を下回る13ミリメートルと従来品(直径20ミリ)の3分の2。重さは14グラムで従来品(35グラム)の約4割に縮小した。半導体などの製造装置や産業用ロボットの関節の駆動部分など小型・高精度な歯車が求められる分野での利用を見込む。一般的には「波動○○」というような商品名のものにロクなものはないようだが、この「波動歯車」はどうやらまともなものらしい。でも、一体どんなものなのだろう? 実は、今朝の日経新聞の朝刊にはもう少し詳しく載っていて新製品は原材料の合金の配合を工夫し耐摩耗性を強化。工具で削り出してつくる歯車の歯の間隔を42マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルと従来比4割縮小した。従来の大きさでは難しかった人型ロボットの指の関節などにも搭載可能で、これまでの油圧による制御に比べ指の動きがスムーズになるという。
波動歯車は楕円(だえん)形にたわませた歯車を、内側に歯を刻んだ円形の歯車の内部で回転させる特殊な歯車。外側の歯車とかみ合わない部分をつくって回転数を変える。とある。この説明を読んでもピンと来ないので、ハーモニック・ドライブ・システムズ社のサイトを訪れてみたら、ハーモニックドライブの原理という説明を見つけた。ここの説明には「波動歯車」という単語は一度も出てこないが、新聞記事との整合性からみて、ハーモニックドライブと名付けられたこのギアが波動歯車ということらしい。こんな歯車機構は知らなかったが、フレクスプラインという薄肉のカップ状の部品の弾性変形がキーとなっている機構のようで興味深い。にも関わらず、多数の歯に力が分散されるために高トルク伝達が可能ということらしい。新製品は内側の歯車が百回転すると外側の歯車が一回転するしくみで、小型モーターの高速回転を低速で強い回転力に変換できる。
歯車がかみ合う際に生じるすき間がほぼゼロと一般的な歯車よりも精度が高いのが特徴。他の歯車に比べ部品数が少なく小型・軽量化するのが容易で、産業用ロボットのほか米航空宇宙局(NASA)の火星探査機などにも使用されている。
てっきりハーモニック・ドライブ・システムズ社はアメリカ当たりで生産した機械を日本で販売しているだけかと思いきや、何と1970年から日本で生産を行っている。独自の技術開発で小型化や高性能化を進め、いまや世界の小型ロボットにはなくてはならない製品となっている優れものらしい。
日本機械学会論文集のカップ型波動歯車装置の応力解析という論文の英文タイトルやキーワードを見ると、波動歯車装置は英語では "Strain Wave Gearing" と呼ぶようだ。確かに、先のハーモニック社のサイトに載っていたアニメーションを見ると、フレクスプラインの変形が波のように移動するイメージが見て取れる。ということで、その「変形の波」が移動することから「波動」と翻訳したのかもしれない。それにしても、「波動歯車」は誤解を招きかねない名称だ。。 もちろん、波動という単語や波動歯車と名付けた人には何の罪もないのだろうが。。。
なお、現時点で「波動」を検索すると、Google でも Yahoo! JAPAN でも「水の伝言 株式会社 アイ・エイチ・エム」が筆頭で、その後もクラクラするようなサイトのオンパレードである。。。 科学的に真っ当な主張をしているサイトを探すのが大変な状況となっているのだが、そんな状況の中で、どちらの検索エンジンでも波動注意報さんがかなり上位で孤軍奮闘している。
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