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2006/04/19

超薄ペットボトル、その名は与太瓶

NIKKEI DESIGNの記事(4/18)から。水をつかむ感覚を実現する極限の薄さ ●特集「官能品質」

 1.5リットル容器で16グラムの超軽量ペットボトル。その名を「与太瓶」と言う。どことなくはかなさが漂う、頼りなさげな外観。実際に触ってみると誰もが「おおっ」と声を上げて驚く。なにより人々が感心するのはその手触りだ。軽く触れるだけで、いとも簡単につぶれてしまうほど柔らかい。「ペコン」というよりはむしろ「くしゃり」と表現したほうが納得できるほどの感触。

 このペットボトルに水を入れると、印象がまた少し変化する。水の温度が直接手に伝わってくるような感覚を味わえ、ボトルをつかむと言うよりは、水そのものをつかんでいるかのような気分にさせられるのだ。

 ペットボトルなどを成形するために使われる成型器や金型。その開発や販売、容器メーカーなどへの技術支援を行う青木固研究所が開発したのが、この超軽量のペットボトルである。

 通常ペットボトルを成形する場合は、原料からプリフォームと呼ばれる試験管状の成型品を作り、いったん冷却、再加熱した後に延伸ブロー成型機に入れてペットボトルにするという工程を踏む。一方同社は、プリフォームを作った熱を利用してそのままブロー成型する技術を持つ。これにより製造コストを抑えるだけでなく、温度管理を容易にし加工の精度を高め薄肉化を実現できたり、成型の自由度が増したりするメリットがあるのだという。

 実は同社は10年前からこうした肉薄のペットボトルを製造する技術を持っていた。しかし、当時どのメーカーからも酷評された。「こんなにつぶれやすくては、商品として安心して送り出せない」「通常のラインでは充填できない」など、不良品扱いされただけだったという。

 ただ、原料の価格高騰や環境への配慮などの社会的な変化が起こる中でこのパッケージに対する認識が変わってきた。……

以前キリンのペコロジーという名の軽量ペットボトルについて調べたことがある。それによると、ペコロジーボトルは2Lで42g。経産省の資料で見ると、その他のペットボトルの場合も、1.5Lで50g以上、500mlで26~30g程度だから、この与太瓶の16gというのは「半減」どころか、驚異的と言って良いレベルに思える。

青木固研究所のホームページを見ると、この会社は樹脂成形装置や成形技術が専門の会社で、世界中に拠点を持って展開している企業のようだ。この与太瓶については、過去の記事に詳しい情報が掲載されている。なんと、あまりに薄いために「中身を入れた後、真っ直ぐに立たない」と書かれている。ということで、従来のペットボトルと同じ用途よりは、中身を絞り出すような用途に向いているようだ。(こういうのは瓶と呼んでいいのかどうか迷わないでもないが。)

ちなみに、絞り出す方式で中身が見える容器としてはマヨネーズ容器があるが、マヨネーズ用の酸素吸収ボトルで取り上げたように、こいつは酸素遮断能力がポイントとなるようなので酸素を透過しやすいPETをそのまま使うのは難しそうだ。でもPETは透明性が高いから、従来にない特性を持った容器として面白い用途が色々とありそうに思える。

この超薄肉化を可能にしたのが、青木固研究所のダイレクトヒートコンという、プリフォーム成形と延伸ブロー成形を一体化した成形技術とのこと。多分こんな薄肉ボトルを作るために開発した技術ではないのだろうけど、最初に超薄肉で試してみたときには作った人も驚いたのではなかろうか? その感触は実際に触ってみないと理解できそうもないのが残念だけど、きっとそのうちに身近に使われるようになりそうな気がする。。

ところで、青木固研究所という名前が気になったのだが(英語名は Aoki Technical Laboratory, Inc.)、創業者のお名前が青木固さんというらしい。その名前はプラスチック成形の分野の青木固技術賞となっているくらいで、その道では有名な方のようだ。

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