五重塔の心柱の耐震効果は?
YOMIURI ONLINEの記事(4/14)から。地震に強い五重塔の謎に迫る、有力説に疑問符も
大地震でも倒れた記録がない、法隆寺などにある五重塔の耐震性の謎に迫る実験が14日、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)で行われ、有力説の一つとされてきた「心柱(しんばしら)振動吸収説」に疑問符がつく結果が出た。ということで、かなり大掛かりな実験を行ったのだが、五重塔の耐震性と心柱の関係ははっきりしなかったとのこと。でも、同じ実験を扱った MSN Mainichi INETRACTIVEの記事(4/15)では、五重塔:心柱に耐震効果あり 防災研が模型で公開実験心柱は塔の中心を貫く太い柱。この心柱が耐震に不可欠かどうかを、実物の5分の1の高さ約7メートルの模型で実験した。心柱を外したり、心柱を接地させず1階のはりの上に建てたりして、震度5強の揺れを与えた。
すると、屋根の上の輪飾りが大きく揺れ、扉の一部が外れたが、振動を止めると塔はすぐに復元し、心柱の有無は耐震性に大きく影響しないことがわかった。
五重塔の耐震性については、五重構造自体の弾性が揺れを受け流す「柔構造説」など諸説あり、本当の理由は突き止められていない。同研究所では、実験を重ね、さらに耐震性の謎に迫っていくという。
日本の伝統的木造建築物の五重塔が地震に強い理由を解明しようと、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)で14日、五重塔の5分の1サイズの模型を震度5強で揺らす公開実験が実施された。研究チームによると、塔の中心を通る心柱が、塔の変形や揺れを抑制する効果が見られたという。となっており、こちらの記事では心柱に変形や揺れを抑制する効果があると結論づけている。同じ実験についての記事でこれだけ明確に結論が異なるってのも珍しい。ちなみに、NIKKEI NET の防災研など、五重塔の模型で耐震実験という記事では、実験を行ったという事実だけで、結果については特に触れられていない。また、asahi.com はこのニュースは取り上げていないようだ。実験では、法隆寺と同じ「飛鳥様式」で製作された模型(高さ約6.6メートル、重さ約2トン)を振動台に載せ、新潟県中越地震と阪神大震災で観測された揺れを再現した。
今後、データを詳しく解析し、心柱の働きをさらに調べる。【須田桃子】
防災科学研究所のサイトには、現時点ではこの実験の結果は掲載されていないのだが、公開実験とシンポジウムの案内が掲載されている。これによると、実験終了後に専門家による実験結果の報告とパネルディスカッションがあったようだから、ここで心柱の効果についての見解が述べられたものと思われるのが。。 ここに名前が出てくる首都大学東京の藤田研究室を見ると、確かにこれをテーマとして研究を行っている。
どうやらこの実験は、五重塔を揺らす会というグループの活動によるもので、過去にも実験を実施している。この実験についての報告なども見つかったのだが、こちらの記事によるとこの2004年12月の実験で既に心柱の耐震効果についての同様の実験を行い、やっぱりその効果に疑問が出ているようで、今回の実験とどこが違うんだろう? という気もしないでもない。。
ということで、実験後の報告やディスカッションでは明確な結論は示されず、玉虫色に終わったのだろうと想像できる。その結果、読売と毎日では随分と違った論調になってしまったのだろうと思うのだが、何事も白か黒の決着をつけなくてはいけないという悪い癖が出たのかもしれない。読売新聞と毎日新聞の関係者もお互いの記事を見て驚いただろうけど、それぞれの記者同士も顔見知りだろうから、ちょっと困ったりしているかもしれない。
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