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2006/04/13

マグネシウムと水で熱を発生するエンジン

nikkeibp.jpのニュース(4/13)から。東工大と三菱商事,化石燃料を使わない無公害エンジンの実験機を製作

東京工業大学と三菱商事は,化石燃料を使わない無公害エンジンの実験機を製作した。両者は2004年より,「新技術と知的財産の事業化による社会的価値創造」のため連携してきた。第1号プロジェクトとして2005年から,太陽光励起レーザーを基軸とした新しいエネルギシステムを研究している。エンジンはこのシステムの一翼を担う。

新型エンジンは,「MAGIC(MAGnesium Injection Cycle)エンジン」と呼び,東京工業大学の矢部教授・生田特任教授らが,品川区の精密加工メーカーである小野電機製作所の協力を得て開発を進めてきた。直径約5cm,高さ13.5cmの小型ながらも,数十kWの熱出力が発生し,そこから動力を得る。マグネシウムと水で熱を発生するため化石燃料を使わない。コージェネレーション,自動車,船舶などのエンジンとして期待している。

どんなエンジンなんだかよくわからないので、三菱商事を見にいくと、ニュースリリースが掲載されている。

簡単にまとめちゃうと、金属マグネシウムと水とを反応させて、生成する水素と熱をエネルギーとして利用するというもので、副生物の酸化マグネシウムは太陽光励起レーザーで還元して金属マグネシウムに戻して再利用するということらしい。で、今回発表したのは、マグネシウムと水を反応させてエネルギーを回収するエンジンのようだ。

この資料によると、マグネシウムと水との反応では、水素を生成物として回収し、これを燃料電池等で使用するケースと、そのまま燃焼して熱を最大限に回収するケースの2通りがありそうだ。今回のものは恐らく後者なのだろう。

確かにマグネシウムは海水中にもたくさん溶け込んでいるけど、その濃度はMgとして0.13wt% 程度だ。現在、金属マグネシウムは海水から電解法で作っているようだが、それには結構エネルギーを使いそうだ。まあ確かに、このプランでは一度Mgを取り出してしまえば、それが酸化物と金属の間を行き来するだけだから、最初にMgを製造する際のエネルギーは、最終的には考えなくても良いという論理なのだろうけど、初期に投入するエネルギーは無視できないかもしれないな。。

それと、この場合恐らくマグネシウムはそれなりに細かな粉末状で取り扱うことになりそうだけど、金属マグネシウム粉末は気をつけないと空気中で燃焼してしまいそうだ。(参考:国際化学物質安全性カードマグネシウム粉による粉塵爆発) ということで、エネルギー媒体として取り扱うんだから当然といえば当然だけど、それなりに注意が必要だろう。むしろ、ガソリンなどの取扱いは豊富な経験があるので問題ないけど、粉塵の取扱いは設備面や取り扱う人の面で問題が大きいかもしれない。

それにしても、エンジンという名前が付いているけど、どんな構造なのだろう? 原料が固体と液体で、生成物が固体とガスになるのかな? 金属マグネシウムと酸化マグネシウムの分離や酸化マグネシウムの回収方法は興味あるところ。さらに水素を回収する場合には、燃焼室を無酸素状態にする必要があるのだろうし。。

このプロジェクト全体の計画については、この辺が参考になる。また、太陽光励起レーザーについては、既に発振に成功という報道が見つかった。

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コメント

先日、日立金属の高性能工具鋼SLD-MAGIC(S-MAGIC)の自己潤滑性とかいう話を日本トライボロジー学会で聞いたが、モリブデンとかカーボン、それにDLCコーティングなどの怪しげな論説とも整合し、油中添加剤の極圧効果にも拡張できる話は面白かった。そのメカニズムをひらたくいえば世界初かつ世界最小の本格的ナノマシンであるボールベアリング状の分子性結晶(グラファイト層間化合物)が金属表面に自己組織化されて、フリクションが良くなるということらしい。

投稿: 塑性加工屋 | 2013/07/01 22:34

そういうことだったのか。この材料、ハイテン用のプレス金型に広がっていて、塑性加工時のカジリはなぜ抑えられるか業界中の謎だった。このようなナノメカニズムが働いていたんですね。しかしながら、固体材料の頂点である工具鋼に自己潤滑性があるとはなんとも無敵な話ですね。

投稿: 自動車エンジンいじり | 2013/07/24 23:38

 炭素結晶の競合モデルの話が、こんなところで出てくるなんて、開発最前線ってかんじですね。わたしもトライボロジー学会で聞きました。周りには、半世紀に渡りトライボロジストの夢であった境界潤滑の原理が解明されたと評するものまでいる。

投稿: 技術の結晶 | 2017/02/02 09:28

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燃料はマグネシウムと水、三菱商事と東工大が無公害エンジン実験機を開発 三菱商事と東京工業大学は4月12日、石油などの化石燃料を使わず無公害で燃料を循環して利用できる新型エンジンの実験機を開発したと発表した。自動車や船舶、コジェネレーションなどでの利用を見込..... [続きを読む]

受信: 2006/04/19 22:34

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