「ウェブ進化論」と「グーグル Google」
「ウェブ進化論」は今や大ヒットとなったようで、あちこちで扱われているし、確かに非常に明快にウェブ社会で起きている現象と今後の方向性を示しており、ネットに精通した人もそうでない人も必読だと思う。一方、「グーグル Google」もそれなりに売れ始めているらしいけど、こちらは「ウェブ進化論」程の評判にはなっていないようだ。でも、こちらは「ウェブ進化論」と共通する現象を取り上げているけど、より多面的な切り口で、特にグーグルが席巻するネット社会の光と影の両面を取り上げている点で見逃せない本である。
ちくま新書 582
ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる
梅田 望夫 著 bk1、amazon
文春新書 501
グーグル Google 既存のビジネスを破壊する
佐々木 俊尚 著 bk1、amazon
この2冊は「ロングテール」を中心とした、検索をキーテクノロジーとした新しいネット社会についてわかりやすい解説を行っている点で、共通している点も多いのだが、一方で互いに補完している点も多く、できれば両方合わせて読むのがいいだろうと思う。でも、何故か amazon のお勧めではどちらの本のページでも「あわせて買いたい」本には違う本しかラインナップされないのが不思議である。。
「ウェブ進化論」はネット社会が如何にビジネスを変えつつあるのか、今後はどうなっていくのか、についてロングテールを中心としてかなり詳しく述べている。今までネットを使いながら漠然と感じていたイメージが、本書を読むと実にクリアになってくる。あちこちの書評を読んでみると、読む人が違うと実に多様な読まれ方をしていることにも気付く。それだけ多くのイメージを読者に与えてくれるという点でも良書なんだろうと思う。
一方、「グーグル」はネット社会全体を相手にするのではなく、その中でもグーグルに的を絞り、そのビジネスモデルについて実例をたくさん混ぜて非常にわかりやすく見せてくれる。さらに、グーグルが中心のネット社会が持つ問題点を描くことにもかなりの分量を割いている。本の後半が影の部分となっているだけに、読み終えたときに、グーグル1社が余りに多くの情報を支配することへの不安感が強調される仕掛けとなっている。
グーグル八分の話や中国での検索結果への検閲導入、あるいはグーグルマップから特定施設が消えた件などの負の側面は、既に知っている人はとっくに知っているような問題ばかりなのだが、この手の一般向けの本にきちんと記載されたことの意義が大きいだろうと思う。著者も指摘しているように、これらの問題は、個々の問題よりも、グーグル社が説明責任を果たしていないという点や、強いものに甘く弱いものに厳しいというダブルスタンダードな企業姿勢が大きな問題なのだろうと思う。たかが一民間企業の話なんだから、嫌ならグーグルを使わなければ良いじゃないか、で済めば良いのだが、どうやらそうもいかないところまでグーグルは大きくなってしまっているように思える。これらの問題点が今後どういう方向に向かっていくのか、ということにこれからも注目していきたい。
まだまだ大きな変化が起こっている真っ最中に敢えて出版されたということで、この手の本は賞味期間が極めて短いので、是非2冊合わせて早めに読んでみて欲しい。
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