環境ホルモン最新情報 by ためしてガッテン
今日6/28の午後8時からのNHK「ためしてガッテン」は「?にお答えします 環境ホルモン」というものであった。何とか事前に情報をつかんだので、録画して見てみた。この番組の概要は、現時点ではこちらに載っていて、既に過去の放送に詳しい情報が掲載されている。また、再放送予定は7/5(水)16:05~となっていて、通常行われている火曜深夜の再放送はウィンブルドン中継のために行われない可能性が高いようだ。
で、とりあえず内容をまとめておくと
1.過去の環境ホルモン報道の内容の復習、環境ホルモンの作用機構の説明
2.環境省のSPEED98の調査結果の結論
3.最近の新たな研究成果
(1) 生まれたばかりのネズミの場合、環境ホルモンを投与する時期で結果が異なる
(2) 従来よりも長期に調べたら、ネズミの閉経の時期が早まる結果が得られた
(3) 農薬を投与した母ネズミから産まれたオスの精子形成能力が4世代に渡り低下した
(4) 環境ホルモンとなる可能性のある物質は2000種類以上ある
(5) ネズミに少量の環境ホルモン物質を7種類複合投与した結果、単独では問題ないのに複合影響が出た
(6) 人間の精子数の調査を改めて行った結果、日本人の精子数が少なかった
4.予防原則が重要だろうという結論めいたものを提示
2では環境省の上家和子課長のインタビューがあり、調べた範囲では人への影響のある物質は見つからなかったと述べていた。しかし、番組全体の中ではむしろ国の調査は一面的で不十分であるにも関わらず、人への影響はないと結論したのは適切ではないという印象を持たせるための導入部として使われている印象である。本当はこの項目はもっと丁寧に説明する必要があるのに、例えば女性の尿由来の女性ホルモンが環境に与えている影響が大きい事実などは全く触れられなかった。
3(1)は岡崎総合バイオサイエンスセンターの井口泰泉教授の研究で環境ホルモンを投与するタイミングが生後3日目と4日目で大人になってからガンの発生に差が見られたという結果。3(2)はアメリカのタフツ大学アナ・ソト教授の研究。3(3)はワシントン州立大学マイケル・スキナー教授の研究で、最初の母親に投与した物質は農薬で、かなり高濃度とのこと。しかし、最初の子どもへの影響はともかく、父親から子どもにどうやって異常が伝わるんだろう? 3(4)はコンピュータによる分子形状計算の研究。3(5)はアメリカEPAのアール・グレイ博士の研究で、あの環境ホルモン学会の森田昌敏会長がコメントしている。また、ここで井口泰泉教授がスタジオに来て、「要するにわからないことがわかったのだ」と強調していた。
3(6)については、聖マリアンナ医科大学の岩本晃明教授のインタビューがあり、今回の結果から精子が減ったかどうかは不明であり、環境ホルモンの影響があるのかどうかも不明なので、今後この関係を明らかにするために研究を続ける必要がある、と述べていた。
4では、北里大学の坂部貢教授のインタビューがあり、予防原則で危険性のあるものは排除するという考え方が重要と述べていた。
「決して不安を煽ることを意図しているわけではない」という主旨のコメントを何度かしていたが、番組全体のニュアンスとしては、依然として環境ホルモンの人間への影響が疑われており注意が必要というものであった。
最近の研究結果の1つ1つについては、詳しく見てみないと何とも言えないが、この番組の取り上げ方は結局以前と何も変わっていないように思えた。与えた物質、その量、影響の程度などの具体的で定量的な話には全く触れておらず、これでは「影響があった」という結果だけが一人歩きしてしまう。ある意味、すべての物質に何らかの影響があるのは当然で、その影響がどの程度の大きさであるかということが問題なのだが。。 「わからないことがわかった」という言葉は何となく意味ありげだけど、所詮レトリックであり、何の意味もない言葉であることは、専門家なら誰でも同意するのではないだろうか?
また、環境ホルモンに関する多くの研究の中から、影響のあったというものだけを数点選んで紹介するのも公平なやり方とは思えない。そもそも環境ホルモンという言葉はNHKが広めたようなものだが、いまだに環境ホルモンという言葉を使い続けているのを見ても、NHKが勉強不足なのか、それともこの問題をどうしても従来の延長線上に置いておきたいという狙いがあるのじゃないか、と疑いたくなる。。
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