トマト酢は睡眠を深くする
FujiSankei Business iのニュース(6/6)から。トマト酢で熟睡 ライオンが配合飲料「グッスミン」発売
トマトを発酵させたトマト酢を寝る前に飲むと、睡眠が深くなる傾向があると、ライオン薬品第1研究所が5日発表した。太田総合病院(川崎市)付属の太田睡眠科学センターと共同で実験を行った成果。というもの。色々な健康効果がビジネスの対象となる中で、最近は睡眠に関連する分野もかなり注目を集めているようだ。それにしても、リンゴ酢とか黒酢というのは聞いたことがある(参考:Wikipedia)が、トマト酢というのは初耳だ。一方、この成分を入れた商品の名前は「グッスミン」という中々わかりやすい名前だが、これはあくまでも清涼飲料水であるということに注意が必要かもしれない。ライオンは、主に女性向けに、トマト酢に白桃果汁などを加えて飲みやすくした清涼飲料水「グッスミン」を6日発売する。
ライオンは自社の調査で、ストレスや身体の冷えのため、よく眠れないと感じる女性が多かったことを受け、血管拡張作用がある酢の中でも、リラックス効果があると言われる神経伝達物質「ガンマ・アミノ酪酸(GABA)」が多いトマト酢に注目。
トマト酢を薄め、甘味料などを加えた飲料を20-40歳代の男女15人に飲んでもらったところ、手の指先の末梢(まっしょう)血管が拡張し、温度が上昇。男女10人に、飲んだ後に数字の足し算を続けてもらう実験では、ストレスが多いと分泌される唾液(だえき)中の特定たんぱく質の量が、飲まない場合に比べて減った。
さらに、睡眠に不満がある女性9人に就寝1時間前に飲んでもらう実験では、睡眠初期の眠りの深さに比例する成長ホルモン分泌量が増え、アンケート調査でも満足度が向上した。
同研究所の飯田教雄所長はこの効果の原因について、「酢酸の効果だけではない。トマト酢はリンゴ酢や黒酢とはアミノ酸の組成が違う」と話している。
ライオンのプレスリリースを読んでみると、比較的こじつけ的な内容の多いこの手の健康食品系のプレスリリースとしては、かなりしっかりとした検証内容が書かれているようだ。睡眠の深さの向上、睡眠中の成長ホルモンの分泌量の増加、睡眠アンケートによる満足度の向上、ストレステストによるストレスの軽減、手指先温度の上昇といった効果が、いずれもプラセボとの比較の上で確認されている。敢えて言えば、被験者数が9~15人と少ないのがやや気になるのと同時に、かなり明確に効果が出ていることに逆にちょっと違和感を感じないでもない。。
それにしても、睡眠の質の向上には体温が適度に低下することが重要だが、指先の温度が低いのは逆に体温調節機能が低下し、睡眠の質が低下する傾向があるというのは、なかなか面白い知見だ。
個人的には寝られないという悩みとは全く無縁で、むしろいつでもどこでも眠れてしまうというか、いつも何となく眠いのが問題なのだが、そういう人がこれを飲むとどうなるのかにも興味がある。
しかし、これだけきちんとした内容に見えるとはいっても、現時点では医薬品でも特定保健食品でもないので、この効果はあくまでもニュースリリースで研究成果として宣伝するだけで、商品そのものには睡眠の質を改善するなどとは書けないのだろう。何となく変な感じではある。
そういえば、先日YOMIURI ONLINEに載っていたホヤにアルツハイマー予防効果の「プラズマローゲン」という記事(6/1)によると
海に生息するホヤなどに含まれる脂質の「プラズマローゲン」がアルツハイマー病を防ぐ効果を持つ可能性が高いことが、東北大大学院農学研究科の宮沢陽夫教授(食品学)らの研究でわかった。動物実験で証明できたことから、来年にも錠剤の健康食品として発売する。(中略)とあり、現時点では医薬品として認可されるだけのデータもないので、とりあえず健康食品として発売し、その後医薬品に展開していくという、何とも露骨な戦略が見え見えなのだが、こんなんでいいのだろうか? 疑問だ。。。宮沢教授らは、細胞の培養実験の結果、プラズマローゲンに神経細胞死を防ぐ効果があることを突き止めた。さらにアルツハイマー病を発症させたラットにプラズマローゲンを食べさせ、迷路を経て餌にたどり着かせる実験をしたところ、記憶・学習能力の低下を防ぐことができた。
プラズマローゲンは牛の脳にも含まれるが、BSE(牛海綿状脳症)感染の恐れがある。そこで手に入りやすい海産物を調べ、ホヤやカキ、ウニなどに含まれていることを発見。とりわけ、ホヤの場合は廃棄する内臓への含有率が約0・1%と高く、有効活用できるという。
宮沢教授らは昨年8月、ベンチャー企業を設立。ホヤからプラズマローゲンを抽出する方法も開発している。また、4~5年をかけて患者への効果を確かめ、医薬品などの開発に結びつけたいとしている。
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コメント
トマト酢飲用者自身で投与時とそうでないとき(あるいはプラセボ投与時)に差があるかどうかを調べて欲しいとは思いますが、健康科学としてはかなり真っ当にやっていますね。さすがお金のあるところは正統派です(笑)
投稿: ESD | 2006/06/07 01:23
プレスリリースを見ると、全被験者にトマト酢飲料とプラセボ飲料の両方を飲んでもらい、それぞれ睡眠中のポリグラフによって効果を確認したようにも読めます。
お金があっても正統派ではない大メーカーもあるようですから、ライオンさんの姿勢は特筆モノかもしれません。もっと真っ当なところは、中途半端な段階では一切製品を出さないのでしょうけど。。
投稿: tf2 | 2006/06/07 20:02