東京高裁が化学物質過敏症を認定?
YAHOO!ニュース経由の時事通信の記事(8/31)。ヨーカ堂に550万円賠償命令=商品ストーブから化学物質-東京高裁
電気ストーブから発生した化学物質で化学物質過敏症になったとして、東京都内の男子学生(22)と両親が、ストーブを販売したイトーヨーカ堂(東京都)を相手に1億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は31日、請求を棄却した1審東京地裁判決を取り消し、約550万円の支払いを命じた。まだ、速報レベルで情報が不十分なので、メモだけに留めるが、何とも問題のありそうな判決が出てしまったような気がする。原告代理人の弁護士によると、家電製品から発生した化学物質をめぐる損害賠償命令は異例。メーカーでなく、販売店に賠償を命じた判決も珍しいという。
横山匡輝裁判長は、ストーブ前面の網目カバーの塗装が高温で熱せられ、有害な化学物質「ホルムアルデヒド」などが発生したとして、学生の慢性的な過敏症状との因果関係を認定した。3月の1審判決は症状との関係を否定していた。
化学物質過敏症という名前の病気が存在するのかどうか自体がかなり怪しい状況であることについては、以前「化学物質過敏症」最新情報や室内空気質健康影響研究会などで書いた。ちまたの報道などではシックハウス症候群と化学物質過敏症を混同しているケースが多いようだが、比較的因果関係が特定できていると思われるシックハウス症候群とは異なり、化学物質過敏症というのはかなり正体不明で、曖昧模糊としており、例えばNATROMの日記で紹介されているような例もあるのだ。
さて、今回の訴訟だが、現時点ではNHKニュースが詳しい。
裁判になっていたのは、台湾のメーカーが製造して平成12年9月から全国で輸入・販売された「ユーパTSKー5302」という電気ストーブです。裁判は、このストーブを平成13年1月に購入した東京都内の男子高校生が起こしていました。男子高校生は、ストーブを使っていたら手足のしびれや呼吸困難などの症状が出たうえ、使うのをやめたあとも、身の回りにあるごく少ない化学物質で体調を崩す「化学物質過敏症」になったと主張して、ストーブを販売したイトーヨーカ堂に損害賠償を求めていました。「化学物質過敏症」という病気そのものの存在や定義について議論が多くあるのにも関わらず、「加熱したストーブから発生した化学物質には、有害なものが多く含まれている。このストーブが化学物質に過敏に反応する男子高校生の症状を引き起こしたのはまちがいない」と断定できるところがすごい。手足のしびれや呼吸困難などの激しい症状が出るほどのホルムアルデヒドってどの程度の濃度なのだろう?このため、裁判の中で専門の調査機関が調べたところ、塗料が塗ってあるストーブのカバーが高温になってホルムアルデヒドなどの化学物質が発生することがわかったということです。これを受けて東京高等裁判所は31日の判決で、「加熱したストーブから発生した化学物質には、有害なものが多く含まれている。このストーブが化学物質に過敏に反応する男子高校生の症状を引き起こしたのはまちがいない」と指摘しました。そのうえで、イトーヨーカ堂に対して、「平成12年の末には異臭がするなどといった消費者からの問い合わせを受けていたのだから、販売を中止するなどの措置を取るべきだった」と指摘して、550万円余りの損害賠償を命じました。
同じ型の電気ストーブは平成12年9月から平成15年3月までに全国で29万台余りが販売されました。このうちイトーヨーカ堂では、平成13年の4月ごろまでに5341台を販売したということで、イトーヨーカ堂は「判決内容を確認したうえで、上告する方向で検討します」というコメントを出しました。イトーヨーカ堂では「販売したストーブから化学物質が発生したとは考えていない」として、これまでに販売したストーブの回収などは考えていないということです。
この判決が確定すると「化学物質過敏症」という病気の存在や、その原因を公式に認めたってことになるのだろうか? 単に、出来の悪い電気ストーブから使用中に高濃度のホルムアルデヒドが発生し、それによって有機溶剤中毒になったという判断なら良かったのだろうけど。。 判決を見ないとわからないが、もしかすると、原告は「化学物質過敏症」になったと訴えているが、判決はストーブが原因で健康被害が発生したという因果関係を認めているだけで「化学物質過敏症」と認定したわけではないかもしれない。。
そういえば、化学物質過敏症の対策として燃焼ガスやススが出ないので電気ストーブを勧めているケースが多いのだが、その意味では今回の結果は皮肉というか、実際にホルムアルデヒドが出ていたとすると、そういう理由で電気ストーブを選ぶ人にとっては大問題である。もっとも、電気ストーブからは電磁波が出るので危ないと言っているところもあるようだが。。
この訴訟については、3月に東京地裁で請求棄却となっているようだが、それに関する情報などは化学物質問題市民研究会のサイトを調べてみたが見つからなかった。 今後、周辺情報に注目しておこう。
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