男の子と女の子の確率
8/2の日本経済新聞の夕刊のコラムに面白い話が載っていた。9面の「マーケット総合2」ページにある「プロに聞く目からウロコの投資塾」というもので、今日のテーマは、人は日常生活で必ずしも統計的な発想はできない、というもの。その中で子供の性別に関する2つの犯しやすい誤りの例を紹介している。
1問目は「Aさんには子どもが2人いるとする。うち1人が女の子とわかっているとする。残りの1人が男の子の確率は?」というもの。
2問目は「5人兄弟がいて、その全てが男の子である場合と、末っ子だけが女の子の場合はどちらがより珍しい現象か?」というもの。
前提として、男の子が生まれる確率と女の子が生まれる確率は常に50%として考える。
1問目の答えは「50%」、2問目の答えは「全て男の子のケースの方が珍しい」、と答えるのが一般的な解答傾向なのだそうだ。
1問目のポイントは、実はこの女の子が1人目の子なのか2人目の子なのかが明示されていないことにありそうだ。そんなことが関係するのか?と思いきや、実は重要なことのようだ。
例えば、女の子が1人目の子どもであるとわかっていれば、2人目が男の子の確率は確かに50%となる。しかし、この問題の場合には1人目/2人目の性別が、女の子/女の子、女の子/男の子、男の子/女の子の3ケースを想定することができ、そのそれぞれが同一の確率なので、2/3の67%が正解というもの。
でも、その女の子が何番目の子どもだろうが、それともう1人の子が男か女かとは無関係の筈だから、やっぱり答えは50%だ、と答えたくなるのもよくわかるし、正解を知った後でも何となくすっきりしないような。。 この問題は特定の親Aさんについてではなく、親の集合で考えるとちょっと違ってくるかもしれない。 「子どもが2人いる家庭の集合を考える。子どもの1人が女の子である家庭のうち、もう1人が男の子である家庭の割合は?」という問題ならばどうだろう? これと最初の問題は等価なのだろうか?
2問目はどうだろう? 5人全てが男の子のケースと、4人が男の子で1人だけが女の子というケースを比較すれば、5人全てが男の子のケースが珍しいのは確かだが、この問題では末っ子だけが女の子のケースと比較している。従って、上の4人の子の性別はこの際全く無関係であり、5人目の子どもの性別だけを考えることになる。ということで、5人目が男の子のケースと女の子のケースは同じ程度に起こりやすいということになる。まあ、こちらはちょっと考えると正しい答えに到達できそうに思える。
確かに、人が必ずしも合理的な行動を取らないということは、株式投資のスタンスを決める際には重要な前提だろうと思うのだが、ここで紹介された問題は、人が必ずしも統計的に正しい判断ができない例というよりは、問題設定のちょっとした違いで、人は簡単に間違えるという例のような気がしないでもない。。
追記:少し調べてみると、ベイズの定理の説明で、こんな解説を見つけた。この一番下によく似た問題が載っている。これによると正解は50%となる。
ところが、ここやここの問題7と問題8によると、話はもっと複雑で、日経の1問目と上の50%の例は、実は異なる問題で、日経の問題の正解は2/3で良いということらしい。思った以上に奧の深い問題だったようだ。
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コメント
こんにちは。
「宝くじに当たりやすいイニシャル」について検索してたどりつきました。
偶然今日の記事が男の子女の子の問題でしたので、なんだかうれしくなってコメントしているしだいです。
面白そうな記事がたくさんあるのでちょくちょく訪れてよんでいきます。
投稿: びい | 2006/08/03 13:04
コメントありがとうございます。びぃさんのサイトを見させてもらいましたが、http://people.vanderbilt.edu/~tatsuki.koyama/beetama/prob2/boygirl3.html">男の子か女の子か まとめの説明はとても丁寧で、わかりやすかったです。実にシンプルで、実にややこしい、おもしろい問題だったのですね。。 結局のところ、問題文をどう数学的に理解するか、という問題のような気もしてきました。
投稿: tf2 | 2006/08/03 18:54