「気象病 天候が健康を脅かす」
著者はNHKニュースで天気予報を担当しているベテランの気象予報士。気象の変化と病気の関係を春夏秋冬の季節ごとに整理して、さまざまなデータを使いながら解説したもの。
NHK出版 生活人新書 189
気象病 天候が健康を脅かす
村山 貢司 著 bk1、amazon
著者は気象予報士であって医者ではないから仕方ないのかもしれないけど、何だかなあ、という内容。気温、湿度や気圧などの変化と病状の変化との相関がいろいろ出てくるんだけど、ちょっと表面的な見方が過ぎるのではないか? という印象もある。
例えば、気温の急激な変化は健康に悪影響を与えたり、病状を悪化させたりすることが多いのだけど、気圧の変化は巷で言われているほどには影響はないようだ、という指摘。その具体例として、台風が通過する前後数日間の、気圧や風速などとぜんそくの発作で病院に搬送される病人の数の関係を調べているんだけど、台風の真っ只中にいたら、たとえ病状が少々悪化しても病院に行けない人もいるだろうし、これで本当に意味のあるデータとなるのだろうか、などの疑問が残る。。
本筋とは関係ないんだけど、気になったのがマイナスイオンについてのコラム。
最近の健康ブームで注目されているのがマイナスイオンです。エアコンの中にはマイナスイオン発生をセールスポイントにしているものまであります。空気中には目には見えませんが様々な微粒子が浮いており、その中の帯電している微粒子をイオンといいます。マイナスがあるわけですから当然プラスイオンもあります。プラスイオンは人間の交感神経を刺激し、心臓の活動を活発にし、血管を収縮させる働きがあり、いわば人間を興奮状態にするものです。これに対してマイナスイオンは人間の副交感神経に作用します。プラスイオンとは逆に心臓の働きを鎮め、血管を拡大させる働きがあります。こちらは人間をリラックスさせることになります。マイナスイオンがたくさんある場所にいるとリラックスし、ストレスが減少するといわれています。この本の発行は2006年8月であり、さすがに今もマイナスイオンのお話を素直に信じ込んでいるとすると、大手マスコミの現役のキャスターでもある気象予報士の文章としては、あまりに無邪気というか、勉強不足というか、心配したくなる。(参考) まあ、この本の内容は、そういうセンスの人の文章だということを念頭に置いて、思いっきり眉にツバを付けて読むことになるな。自然界でマイナスイオンがたくさんあるのは水しぶきの上がる場所で、滝の近く、渓流、海岸、高原の水辺などになります。これらの多くは夏の保養地になっているところであり、特に水辺の散策はマイナスイオンをたくさん浴びることができます。
雨も水しぶきの一種ですから、雨上がりの空にはマイナスイオンがたくさん含まれています。雨上がりの空が気持ちよいのは、空気が澄んでいるだけでなく、マイナスイオンが増加したことも加わっています。普段の生活の中ではシャワーを浴びるときにたくさんのマイナスイオンが発生しています。浴槽の中でリラックスし、さらに上がるときにシャワーを浴びることでより気持ちが落ち着くことでしょう。
もう1点、読んでいて気になったのがグラフ。恐らくパソコンの表計算ソフトで「折れ線グラフ」を選んで描いているんだろうけど、こんなグラフがいくつか出てくる。これを見て、特に気にならない人もいるだろうけど、普通(少なくとも理系の教育を受けた人)はかなり違和感を感じるんじゃなかろうか?
ということで、気象予報士という資格は結構難しいと聞いているけど、こういうセンスの人も合格しているってことで、やっぱり、何だかなあ、という感想だ。。。
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コメント
>こういうセンスの人も合格しているってことで、やっぱり、何だかなあ、という感想だ。。。
気象予報士試験にイオンの話は出てきません。
なので、イオンに対するセンスや知識は関係ありません。
それこそ試験の内容も知らずにこういうことを書くなんて、
「なんだかなあ。」と思ってしまいます。
人の著書を批判するなら、事実をきちっと調べてから
公にすべきかと思います。
それこそ、批判する「センス」のなさを感じました。
投稿: ある気象予報士 | 2006/09/30 00:53
気象予報士さん全体を批判したり貶めたりする意図は全くなかったのですが、気分を害した気象予報士さんがいらっしゃったとしたら、それは私の文章力のなさが悪かったのでしょう。申し訳ありませんでした。
ところで、少なくとも私は、「気象予報士さんというのは、普通の人よりは科学的な知見を持っていて、この手のセンスも身に付けているだろう」と思っていたのですが、これは幻想だったのですね。適切なご指摘をいただき、ありがとうございます。
私が心配しているのは、このような本が世に出ることで、気象予報士という資格に対する信用に傷が付かなければ良いのだけどということと、気象予報士という「権威」が怪しげなマイナスイオンビジネスに利用されてしまうのではないか、ということです。
私の批判の仕方にはセンスがなかったかもしれませんが、本書のマイナスイオンのコラムは批判されるような内容であったこともご理解いただければと思います。
投稿: tf2 | 2006/09/30 11:23