東京新聞の記事(11/7)から。時差ぼけ 寿命縮める? 高齢マウスで顕著に
【ワシントン=松川貴】時差ぼけの高齢ネズミは早死にする-。米バージニア大学の生物学者のグループが六日、学術誌「最新生物学」の電子版に調査結果を発表した。
ジーン・ブロック教授らは、昼夜の長さを人工的に調整し、海外旅行で人間が体験する時差ぼけと同じ環境をつくり、ネズミで実験した。三十匹の高齢ネズミと九匹の若いネズミを一組にし、八週間にわたり、一週間ごとに、▽六時間ずつ朝が早くなる▽六時間ずつ朝が遅くなる▽何も変えない-の三組で調査した。
その結果、何も環境を変えなかった高齢ネズミの生存率は83%だったが、朝が早くなった高齢ネズミは47%、遅くなった高齢ネズミは68%しか生存できなかった。しかし、若いネズミは元気だったという。また、四日ごとに時間を変えると、死ぬネズミが多くなった。研究によると、ブロック教授らは「高齢になるほど時差に耐えられなくなるということを、示しているかもしれない」と結論づけた。
さて、記事のタイトルでは「時差ぼけが寿命を縮める?」と書いてあるが、実際にネズミは時差ぼけになったのだろうか? 時差を与えた結果、生存率に差が出たということのようだが、時差そのものが影響したのか、時差ぼけが影響したのかは疑問だ。というのも、僕自身がどうやら時差に対して極めて鈍感というか、今までアメリカやヨーロッパとの行き来を何度かしているが、東向きの移動の場合も西向きの移動の場合も、いわゆる時差ぼけで寝られないという経験がないので、ちょっと気になったのだが。。BBC NEWSの記事によると、
In one regimen, the mice's clocks were "put forward" by six hours once a week - the equivalent of the time difference between the UK and Dhaka in Bangladesh - so they had less time in the dark.
Other mice experienced a six-hour backward shift - and therefore more time in the dark - which would equate to the difference between the UK and Chicago.
Separate groups of young and old mice had normal cycles.
Younger animals appeared unaffected by alterations to their schedule.
But only 47% of the older mice whose "nights" were shortened survived, compared with 68% of those whose nocturnal time was lengthened and 83% of those who remained on a normal schedule.
Chronic stress - which has been cited as a mechanism for causing ill-health in those with disrupted schedules and which can be measured through daily corticosterone levels - did not increase in any of the old mice.
The researchers suggest the cause of increased mortality in the mice could be linked to sleep deprivation or immune-system disruption.
They also suggest that age may alter how the circadian system works, or that their elderly mice's general frailty might mean they are less able to tolerate changes in light cycles.
実験は、毎週6時間ずつ時間を早い方に進めるグループと、6時間ずつ時間を遅い方向に進めるグループを作り、時間を変えないグループと比較したようだ。実際には、1週間に1晩だけ、夜の時間が6時間短くなるグループと、逆に夜の時間が6時間長くなるグループを作ったということになるのか。。 1週間に1度、飛行機で東へ東へ移動するとか西へ西へと移動するってのも何だか不自然だし、夜の時間が変化するってのは3交代勤務とも何だかちょっと違うような気がするな。。
結果として、年寄りマウスは夜が短くなる環境変化で早死に傾向が顕著で、夜が長くなる変化でも何も変化がないよりも早死に傾向が見られたようだ。ただし、コルチコステロンというストレス関連ホルモンには変化がなかったということで、睡眠不足や免疫系の乱れがその原因ではないかとしている。ということは、時差そのものの影響よりも、時差ぼけが寿命に影響したということになるのだろうか? この実験で、マウスの睡眠時間がどう変化したのか、興味のあるところだが。。 ちなみに、USA TODAYの記事によると、年寄りマウスというのは生後28~32か月のもので、人間にすると70~90歳に相当するとのこと。
BBCの記事では、交代勤務や飛行機による長距離移動がますます増えている状況から、今後、より詳細な検討が必要だとしているが、一方で、
He added: "People shouldn't panic, and shouldn't stop travelling or working shifts because of these findings.
"However it's a reminder that, just because humans can do something doesn't mean it's necessarily safe in the long-term.
"And it's important to remember this work was carried out on mice, who are nocturnal animals, while humans are diurnal."
マウスは夜行性の動物だが人間は昼行性という大きな違いがあり、マウスに影響が出たからといって人間に当てはまるとは限らないので、この実験結果からただちにパニックになる必要はない、と結んでいる。
当然のことながら、交代勤務の労働者や国際線乗務員を対象とした健康影響調査は、既に相当やられている(例えばこちらなど)。ところが、夜勤をすることが直接悪影響を与えるのか、生活リズムの変化に伴う他の要因(飲酒や食生活等の生活習慣の変化など)が影響するのか、いろいろと複雑な要因が絡んでいてなかなか難しい側面もあるようだ。
いずれにしても、年に数回程度の海外移動であれば、たとえ体質的に時差ぼけの影響が大きく出るような人でも、その影響は全く考慮する必要がない程度と言って良いだろう。
ところで、東京新聞の記事には、この研究が発表されたのは学術誌「最新生物学」とあるから、もしかすると何故か日本の雑誌に載ったのかと思ったのだが、実は "Current Biology" って雑誌だったのね。。。
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