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2006/11/20

ドップラーライダーって何?

YOMIURI ONLINEの記事(11/19)から。「風の急変」キャッチ、羽田空港にレーザー光線装置

 航空機にとって重大な脅威となる空港周辺の急激な風の変化をとらえるため、気象庁は近く、レーザー光線を使った観測装置「ドップラーライダー」を羽田空港に設置する。

 通常では観測が難しいとされる晴天下の風も観測できる最新鋭の装置で、国内の空港での設置は初めて。12月中旬から試験運用し、来年秋に本格稼働する。

 地表に近い低層域で起こる風向や風速の急激な変化(ウインドシアー)は、航空機にとって極めて危険。1993年4月に岩手・花巻空港で58人が重軽傷を負った日本エアシステム(当時)機の着陸失敗・炎上事故の原因になったほか、海外でも、75年6月に米ニューヨークで115人が死亡したイースタン航空機墜落事故など、多くの事故を引き起こしてきた。

 気象庁は現在、羽田を含む全国八つの主要空港に、電波を雨粒に反射させて空港周辺の気流変化をとらえるためのレーダーを設置。国土交通省や空港の管制官らに警報を出し、注意を呼びかけている。例えば羽田空港では昨年1年間に174件の警告が出された。

 しかしレーダーには、降雨がないと十分に観測できないという欠点がある。

 新たに設置されるドップラーライダーは、レーザー光線を空気中のチリに当てることで、降雨がなくても半径10キロ以内の風の動きが観測できる。気象庁によると、同種装置を運用しているのは、世界中でも香港国際空港ぐらいだという。

 羽田空港では、旧整備場地区にあるビルの屋上(地上約30メートル)に設置し、あらゆる天候下で風の急変を検知できる体制を構築して空の安全に役立てる方針だ。

最近、竜巻被害に関連して、ドップラーレーダーという装置のことはよく目にしたのだが、このドップラーライダーというのはどうやらそれとは違うらしい。ドップラーライダーなんて言葉を知っている人がどれだけいるんだろう? ドップラーレーダーと比較するなどして、もう少し丁寧に説明してくれてもいいと思うのだが。。 

ドップラーレーダーについては、例えばNIKKEI NET(11/10)の突風警戒レーダー、整備前倒しを検討・国交相

 北海道佐呂間町の竜巻災害を受け、冬柴鉄三国土交通相は10日、閣議後の記者会見で「(気象)ドップラーレーダー網をできるだけ早期に構築できないか検討するよう気象庁に指示した」と明らかにした。

 気象ドップラーレーダーは積乱雲に電波を発射し、風の動きを詳しく観測する装置。気象庁は全国20カ所の気象レーダーを順次、ドップラーレーダーに切り替える方針だが、設置費用が高額なため、今年度までに設置を終えるのは東京、仙台など4カ所、来年度も沖縄のレーダー切り替えを予算要求するにとどまっている。

なんて記事があった。一方、読売の記事にはレーダーは降雨がないと観測できないとあるが、気象レーダーの画像などを見ると降雨がなくても雨雲のキャッチはできているような気もする。。 ドップラー・レーダー(Wikipedia)によると、
雲内部の降水粒子の移動速度を観測することで、雲内部の風の挙動を知ることが出来るため、気象観測に多く用いられる。特に空港においては、離着陸する航空機に対するダウンバースト(下降噴流)などの発生を把握するため、順次更新設置されている。
ということで、正確に言うと、ドップラーレーダーは雨雲内部の雨粒の動きを観測することのできる装置ということになるようだ。

さて、では読売の記事にあるドップラーライダーとは何ものか? ライダーによる大気計測によると、ライダー(LIDAR)とは Light Detection and Rangingの略で、レーザーを光源とするレーダー手法のことらしい。ちなみにレーダー(RADAR)とは Radio Detection and Rangingの略である。普通のライダーはレーザー光と大気の相互作用(散乱や吸収)を測定することで大気観測を行うもののようだが、ドップラーライダーは風に乗って運動する物質(エアロゾル粒子等)のドップラーシフトを測定することで、風向・風速を測定する手法ということになる。

三菱電機のドップラーライダシステムの説明がわかりやすいようだ。特徴としてレーダーとは異なり晴天時でも風速を測定できる、とあるのだが、逆に雨天時や曇天時にはあまり威力を発揮できなさそうだから、レーダーとは使用目的がそもそも異なり、組み合わせて使うということだろう。

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コメント

レーダーにはいろいろな波長の電磁波を使うものがあり、光を使うライダーさえ含めることもできますが、気象観測の文脈で単にレーダーと言えば、雨粒(あるいは雪の結晶)には感じるが雲粒には実際上感じないような波長の電波を使うレーダーをさすのがふつうです。雲粒に感じるものは区別して「雲レーダー」と言います。雨粒も雲粒も水滴に変わりはないのですが、雨粒は大きさ約0.1 mm以上のものです。これくらい以上の大きさがあると、上昇流がある雲の中でも落下するのがふつうだからです。(雨観測用の)レーダーのエコーは雨雲に対応しているとはいえますが、エコーのもとは雲粒ではなく雨粒です。
読売新聞のいう「降雨がないと十分に観測できない」というのは、(この種の)ドップラーレーダーでは風の情報は雨粒の動きから得ているので空中に雨粒がある場合に限られるという意味です。雨粒が落下の途中で蒸発してしまい地表に達しないような状況も含まれはしますが。
なお、ウィンドプロファイラーというのは別の種類のドップラーレーダーで、大気の密度の細かい不均一による電波の散乱をつかまえ、不均一パタンの動きから風を求めます。こちらは雨粒を必要としません。
ドップラーライダーはおっしゃるとおりエーロゾル粒子の動きを観測するものです。今回、風の観測にウィンドプロファイラーでなくこれを気象庁が選択した理由はわたしにはよくわかりませんが、空港付近の狭い範囲の風を見るのに適しているという判断かもしれません。

投稿: macroscope | 2006/11/22 22:08

専門的な見地からのコメントありがとうございます。

「雲粒」という言葉も日常生活ではお目にかからない用語ですね。。 気象レーダーは、やっぱり雨粒を見ているとのご指摘、了解しました。結局レーダーで見てる雲は雨粒を含んだ雨雲で、雨雲の下では雨が降っている(途中で蒸発することもあるが)ということでしょうか。でも、一般には雨が今にも降りそうな雲のことも「雨雲」と呼ぶような気もするので、その辺で多少混乱があるのかもしれません。

ウインドプロファイラー、何度か聞いたことがあったような。調べてみると、気象の教室の説明が、図解付きで一番分かりやすそうでした。でも「ブラッグ散乱」て、結晶のX線回折の原理となるブラッグ回折の親戚みたいですが、空気の粗密って回折現象が起こるほどに周期的な状態になるものなのでしょうか? 今一原理が理解できていません。。

投稿: tf2 | 2006/11/22 23:17

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