世界一硬いダイヤモンドとは?
日本経済新聞(11/15)企業2面の記事。(NIKKEI.NETには掲載されていないようだ。)
超高硬度ダイヤ高品質で大きく 愛媛大と住友電工、工具への応用期待ということで、ダイヤモンドのナノ粒子の多結晶体のようだが、世界で最も硬いダイヤモンドというのは本当なのだろうか? 新聞記事にはこの超高硬度ナノ多結晶ダイヤモンドの写真が掲載されているのだが、これで見る限りは、とても多結晶体とは思えないような透明なペレット(円板)状である。愛媛大学は14日、住友電気工業と共同で世界で最も硬いダイヤモンド「超高硬度ナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)」の大型化、高品質化に成功したと発表した。直径5ミリメートルと従来の5倍程度になり、炭素の残留物などの不純物を少なくし、割れ目もなくしたという。超微細加工が求められる切削工具などへの利用を見込んでいる。
愛媛大地球深部ダイナミクス研究センターの入舩徹男教授らと住友電工エレクトロニクス・材料研究所などが共同で研究した。
入舩教授らは2003年、高温でも高い硬度が維持されるNPDの製造に成功した。このときは直径が1ミリメートル程度。形もいびつで均質ではなかった。NPDを作製するための超高圧装置の改良で大型化・高品質化につなげた。
入舩教授は12月に、米地球物理学連合の学会で成果を発表する予定。
調べてみると、愛媛大のニュースでナノ多結晶ダイヤモンドの大型化・高品質化に成功という記事を見つけた。このナノ多結晶ダイヤモンド(ヒメダイヤと呼ぶようだ)に関しては、今年の6月の時点で既に直径4mm程度の多結晶体が得られているようだが、今回はさらに技術が進歩したということなのだろうか? ヒメダイヤの製造方法については、この記事からリンクされている新聞記事にもある程度記載されている。人工ダイヤの製造時に従来使用されていたコバルトやニッケルなどの金属を使用せず、高純度グラファイトだけを原料として、2300℃、15~18万気圧の高温・高圧で製造するようだ。また、生成するダイヤモンドの多結晶体の粒子径は10~30nmということで、ナノ多結晶という呼び名にふさわしいものだが、これだけ粒子が微細であるからこそ、バインダーとなる金属などを含まないのに高強度な焼結体ができたということだろうか?
ダイヤモンドは最も硬い物質とはいえ、単結晶の場合には方位によって硬度が異なるのだが、この多結晶体ではどの方向でも単結晶ダイヤの最高硬度を示すということらしい。普通に考えれば、単結晶ダイヤの方位別の硬度の平均値に近い値を示しそうなものだが、何故に全方向で最高硬度を示すんだろう?
探してみると、住友電工の技術雑誌、SEIテクニカルレビューに高純度ナノダイヤモンド多結晶体の合成とその特徴という記事を見つけた。これによると、
一般に、単結晶材料を変形させた場合、面すべりによる塑性変形で転位が伝搬したり、劈開割れによりクラックが進展したりする。しかし多結晶体材料では、この粒内での転位やクラックの進展は、原子配列が不連続である粒子界面(粒界)で阻止される。粒子間結合が十分である場合、粒界が多い微細結晶粒体ほどこの効果が顕著となり、硬度や強度、靭性が向上する場合がある。このような結晶粒微細化による強化は金属材料ではHall-Petch の関係としてよく知られている。とあり、全方位で超高硬度を示すのは、微細化強化効果というもので説明されるようだ。何しろ、硬度を測定する際に、あまり強い力を掛けると圧子が破損してしまうようなので、硬度測定も大変そうである。というか、このヒメダイヤを加工するためにはヒメダイヤの工具を使う必要がありそうだし。。 まあ、逆に単結晶ダイヤや従来の多結晶ダイヤなどを加工する際には、このヒメダイヤを使用すると結構コスト削減できるということになるのだろう。。今回の高純度ダイヤモンド多結晶体は、直接変換と同時に粒子同士を結合させる焼結プロセスによるため、粒界に介在物や不純物を含まず、粒子間結合は十分強固である。そして前項で述べたように、非常に微細な粒状あるいは板状のダイヤモンドが緻密に組織を形成しており、粒界面積が極めて大きい。このため、上記の微細化強化効果が有効に作用して、単結晶と同程度以上の非常に高い硬度を示したと考えられる。
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