血液型別ヨーグルトって何だ?
NIKKEI NETで見つけた日経トレンディのヒット予測 07年の注目商品(4)血液型別ヨーグルトという記事から。
なかでも市場に大きなインパクトを与えそうなのが、「血液型別ヨーグルト」だ。ある大学と某大手メーカーが研究を進めているようだ。すでに関連特許を共同で取得しており、ボランティアを募っての効果検証、安全性試験などの応用研究も進んでいるもよう。早ければ07年秋には市場に投入されるだろう。血液型別ヨーグルトって、もしかして血液型占いとか血液型性格判断のような怪しげなものかと思いきや、どうやらまともな科学的根拠のある製品らしい。記事には乳酸菌が腸の表面のムチンと結合する様子がイラストで解説されているが、要するにA型、B型などのヒトの血液型別に腸に留まりやすい特定の乳酸菌が見つかったということらしい。血液型別ヨーグルトが優れるのは、乳酸菌が従来品より腸にとどまりやすいと期待される点。多くの乳酸菌は腸への付着性が弱く、すぐに体外排出されるといわれるが、腸内に乳酸菌がとどまれば、持続的に整腸作用などの健康機能が期待できる。
乳酸菌が腸にとどまるには、乳酸菌の表面にある糖たんぱく質を認識するレクチンが、腸管上皮細胞から分泌されるムチンという糖と結合することが必要。ムチンはABO式の血液型によって特性が異なるという。
研究ではこれを生かし、A型の特性を持つムチンには強くくっつくが、B型やO型のムチンにはくっつきにくいなどの性質がある乳酸菌を特定。血液型別に付着性が強い乳酸菌を複数選び出し、A型乳酸菌などと命名している。これをヨーグルトに応用すれば、血液型別ヨーグルトを作ることもできるはずだ。
ある大学と某大手メーカーなんてもったいぶっているけど、特許を取得しているのならすぐに見つかるだろうと思って探してみると、「乳酸菌」and「血液型」でヒットしたのは、ただ1件、特開2004-101249「プロバイオティクス乳酸菌のスクリーニング方法」だけ(少なくともこの特許はまだ登録されていないようだけど)。出願人は明治乳業株式会社と財団法人糧食研究会、発明者に東北大学の齋藤忠夫教授他のメンバーが名を連ねている。この特許明細書によると
近年、ヒト大腸ムチン(human colon mucin:HCM)を構成する糖鎖の化学構造が、ABO式血液型により異なることが報告(例えば、非特許文献1参照。)された。この科学的事実は、血液型が異なれば各人の消化管ムチンの糖鎖構造も異なり、そこに付着増殖するプロバイオティック乳酸菌の種類が異なることを強く示唆している。と書かれているから、新聞記事とほぼ一致する内容のようだ。探してみると、齊藤先生は、東北大のサイエンスカフェで、これに関連する講演をされているようだ。本発明により、表面プラズモン共鳴スペクトルを利用したBIACOREによる、新機能をもったプロバイオティクス乳酸菌株の、新規なスクリーニング方法が提供された。本発明により得られた乳酸菌株は、ABO血液型別に腸管付着性の高い乳酸菌であり、当該乳酸菌を用いて個人レベルに対応したオーダーメードの血液型別機能性ヨーグルトをはじめ、新しいプロバイオティクス食品、あるいは消化器プロバイオティクス、例えば感染症(歯周病、虫歯、慢性胃炎、胃十二指腸潰瘍、胃癌、腸管出血性大腸炎、溶血性尿毒症症候群、脳症、食中毒、偽膜性大腸炎)、アレルギー疾患(食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息)、炎症性腸疾患(Crohn 病、潰瘍性大腸炎)などの疾患の予防又は治療用食品の提供を可能とする。
ところで、この特許に出てくるプロバイオティクスという言葉、最近よく耳にするけど、どんな意味かと改めて調べてみるとAll Aboutにあるように、抗生物質 antibiotics に対する言葉と考えるとわかりやすそうだ。「プロバイオティクスとは、腸内フローラのバランスを改善することにより、宿主(人間)に有益な作用をもたらす生きた微生物」と定義されているらしい。
一方、今回の血液型別乳酸菌を理解するためのもう1つのキーワードであるムチンについては、こちらが詳しい。要するに腸の表面粘膜を保護する粘液の主成分である糖たんぱく質のこと。
いろいろ探していたら、この血液型別乳酸菌のことについての、比較的わかりやすい解説記事が見つかった。
ところで、この血液型と相性の良い乳酸菌を含むヨーグルトだが、実際に食べたときに、どの程度の効果があるものなのだろうか? 最近は乳酸菌も差別化が激しいようで、ヨーグルトの広告を見ても植物性乳酸菌だから腸で生き抜くとか、腸まで生きて届く乳酸菌とかそれぞれいろいろな宣伝をしているけど、この血液型別乳酸菌もちゃんと腸まで生きて届いてくれるのかな? これらの乳酸菌同士をきちんと比較したデータがあると面白そうだけど、食生活の影響も大きそうだし、個人差が大きすぎてよくわからないという結論が待っているのかもしれない。。
それにしても、こういう商品が大々的に宣伝されると、これに便乗してというか、勝手に連想して、血液型別○○ってのがまたまた流行するんではないかという嫌な予感もしないではないのだが。。 それ以前に、結果として店のレジで自分の血液型を告白しちゃう状況になってしまうのも何だかなあ。。
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