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2006/12/07

使い捨て体温計テンパドットは意外と優れもの?

NIKKEI NET(12/6)で見つけた新製品。スリーエムヘルスケア、使い捨て体温計・舌下用とわき用の2種

 医療用製品の製造・販売を手掛けるスリーエムヘルスケア(東京・世田谷)は5日、使い捨て体温計「3M〈テンパドット〉ディスポーサブル体温計」=写真=を同日発売したと発表した。舌下用とわき用の2種類。医療機関のほか、感染防止対策や災害時の備蓄用として自治体や交通機関などにも売る。初年度の売り上げ目標は5000万円。

 長さ91ミリメートル、幅9ミリメートルのプラスチック製体温計。温度を感じると変色するドット部分が体温を0.1度刻みで表示する。セ氏35.5―40.4度まで検温できる。衛生的で、災害時などでの感染防止にも役立つとしている。

 希望小売価格は舌下用(1箱250枚入り)が4500円、皮膚に張り付けるわき用(同80枚入り)が3600円。

というもので、今の日本の平常時ではピンと来ないものがあるものの、場所や状況によっては使い捨ての体温計が大活躍する事態も想定できないでもない。まあ、使い捨てというと、このご時世だと何だか悪者っぽく感じさせないでもないのだが。。 プレスリリースによると、使い捨て体温計は過去に日本国内でも発売されていたが現在は他にはないとのこと。このスリーエムの製品は欧米では既に使われているらしい。

3Mのサイトで情報を探すと<テンパドット>ディスポーザブル体温計というページが見つかったが、あまり詳しい情報がない。この体温計には、体温に応じて色が変化する小さな素子(ドット)が50個搭載されていて、温度測定精度は何と 0.1℃というから驚きだ。この写真で見ると、色がベージュからブルーにかなり鮮明に変化するようだ。

ちなみに、熱によって色が変化する温度指示計には、可逆性のものと非可逆性のものがあり、塗料やラベルなどいろいろな形態のものが実用化されている。例えばここここにはいろいろな製品がリストアップされている。よく見るのは液晶を使った製品でこんなものはどこかで見たことがあるだろう。

しかし、これらの製品の温度表示精度はせいぜい±1℃とか、表示温度の±1%といったレベルのようだ。一方、今回の体温計の場合、±0.1℃(約±0.3%)である。測定精度の検討結果については、Medscapeにアブストラクトが掲載されており、確かに医療現場で実用になる水準にあることが実証されているようだ。

こんなに高精度で色が変化するとは、一体どんな材料を使っているのか気になって、本家アメリカの3Mのサイトで探してみても製品カタログぐらいしか見つからなかった。そこで、特許を検索してみた結果、US6,420,184とUS2002-018512が見つかった。このうち前者は対応特許が日本に出願されており特開平8-68701で公開されている。(最近は特許電子図書館で特許明細書がPDF形式でダウンロードできるのでとても便利になった。)

この明細書を見ると、この温度計は o-クロロニトロベンゼンと o-ブロモニトロベンゼンの固溶体を基本構成としており、その組成を精密に調整することで、固体から液体へと変化する温度(融点)がちょうど人間の体温近辺となるように調整しているようだ。固体状態では不透明で液体状態では透明となることを利用し、色素などの添加物を加えて固体状態と液体状態で色を明確に識別可能としているらしい。この系の融点は0.1℃刻みにできるほど組成敏感ということなのだろうか。

固体→液体への相変化を利用するため、原理的には可逆的な変化であり、そのままでは身体から離した途端に固体に逆戻りしてしまい、体温計として使えない。そこで、この発明では過冷却現象を利用することで、体温を読み取る程度の時間は凝固点以下の温度でも液体状態を保つような工夫がなされている。

これはなかなかの優れもので、使い捨てにするにはもったいない技術ではなかろうか? というか、実際にはこういう原理なので、再利用しようと思えばできるわけで、実際保管の際に高温に触れて色が変わってしまった場合には、フリーザーで十分に冷却して温度指示をリセットすることで使用可能ということらしい。目的のひとつが感染予防なわけだから、もちろん再利用することは推奨されないのではあるが。。

それにしても、こんなに精密に温度測定が可能なものならば、体温計以外でもいろいろと使い道がありそうだが、どうなのだろう? もっとも、0.1℃単位で正確な温度を測定する必要がある用途は結構限られているし、大抵そんな場合に測定したいのは容器内部の温度だったりするんだろうけど。。

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