ビタミンCを燃料とした燃料電池
nikkei BP net経由、技術&事業イノベーションフォーラムのニュース(12/25)から。ビタミンCを燃料にした安全・安心な燃料電池
産業技術総合研究所(産総研)ユビキタスエネルギー研究部門 次世代燃料電池グループ(大阪府)は,ビタミンC(アスコルビン酸)を燃料源に用いた固体高分子形燃料電池(PEFC)の開発に成功した。というもので、こちらで、産総研のニュースリリースも読めるのだが、何故かこの12/8のリリースは、産総研のサイトのプレスリリースには掲載されていないため、今まで気付かなかった。。 どうなってるんだろう?同グループは,ユビキタス機器の電源として,人体に安全・安心な燃料を用いたダイレクト燃料電池の可能性を追求してきている。今回開発したのは,ビタミンCをカーボンの電極上で直接酸化する方式で,出力密度を16mW/㎝2迄向上させることができた。
現在,携帯電話をはじめとする機器向け燃料電池の開発に各社が凌ぎを削っている。現在最も実用化に近いとされるダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)は各社高出力化に向けて研究開発が盛んである。しかしこの燃料は可燃性であり,劇物であるため,人体に密着したり,埋め込むような用途には使いにくい。エタノールのような植物由来材料を源とした燃料も,海外企業を中心に研究開発が進められているが,エタノールも,生成物として発生するアセトアルデヒドも可燃性である。
「その点で,ビタミンCやグルコースは安全・安心」と同グループ藤原直子研究員は語る。
技術&事業イノベーションフォーラムの記事には、アスコルビン酸燃料の場合の出力密度やエネルギー密度などを、メタノールやエタノール燃料の燃料電池と比べた表が掲載されているので、この技術の位置付けがわかりやすい。ただし、アスコルビン酸は固体だから、実際の使用時には水溶液とする必要があるはずで、この表のエネルギー密度のところはあまり正当な比較とはなっていないようで注意が必要だ。
この電池で使われる燃料のアスコルビン酸と、発電後の反応生成物であるデヒドロアスコルビン酸の構造式は、次世代燃料電池研究グループのページのイラストに書かれている。しかし、何故アスコルビン酸なんだろう? ニュースリリースなどを読むと、燃料極に白金などの触媒が不要、燃料も生成物も人体に対して比較的害がない、クロスオーバーが起こらない、などがアスコルビン酸の利点らしいけど、何だか今一この電池の意義が見えてこないような。。 一方、アスコルビン酸はグルコースから発酵法で製造されるようだが、燃料電池向けの大量供給は可能なのだろうか? むしろ、
例えば,人工臓器やペースメーカーといった人体埋め込み型機器。低電力で非常に長期間の作動を期待する用途において,開腹バッテリー交換といった手間を不要にできる。今回開発したビタミンCの場合は外部からの補充が必要になるが,グルコースであれば体内で生成されたグルコースを機器が自律的に取り込むことも理論上は可能になる。機器が完全に臓器化する。というグルコース燃料電池構想の方がよっぽど面白そうだ。体内のグルコースを自律的に取り込んで発電する燃料電池となると、燃料の取り込み、生成物(グルコノラクトン)の排出、発電量の制御なども考える必要があるけれど、なかなか夢のある技術じゃないだろうか?
調べてみるとやっぱりというか、このアスコルビン酸を燃料とする電池の開発に関する情報は産総研のチームのものがほとんどのようだけど、グルコースを燃料とする電池については、こちらやこちら(pdf)やこちら(pdf)など、以前から多くの研究が積極的に行われているようだ。
| 固定リンク
コメント