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2007/02/26

バラスト水の処理技術

NIKKEI NETの記事(2/26)から。船に積む海水中の微生物を破壊、外来種問題防止へ新技術

 空荷の船体を安定させるために積む海水「バラスト水」中に含まれ、外来種問題を引き起こす微生物などを、バラバラにして高確率で殺す新技術を日本海難防止協会(東京)や三井造船などの研究グループが26日までに開発した。

 簡単かつ低価格な装置で、船に搭載して国際的な「バラスト水管理条約」の基準をクリアできる世界初の技術となる可能性があり、実現すれば日本など各国の条約批准にも弾みがつきそうだ。

 バラスト水をめぐっては、その中に含まれるプランクトンや貝、海藻などが本来の生息地から他国に運ばれ、外来種として生態系を壊すことが問題化。オーストラリアなどではアジアのワカメが繁殖、米国の5大湖では東欧原産の貝が発電所の吸水口を詰まらせるといった被害も出ている。

 国際海事機関(IMO)が2004年、国際船舶のバラスト水に厳しい生物濃度基準を定めた条約をまとめ、この基準を満たす処理技術の開発が課題になっている。

この記事では、バラスト水中の微生物の写真が掲載されている一方で、この技術の内容については何も触れられていない。日本経済新聞の2/26の夕刊には、
 グループは、日本財団の助成を受け、バラスト水の取水パイプ内に幅1ミリ以下のすき間を何本も入れた仕切り板2枚をはめる手法を開発した。2枚の板は、すき間が互い違いになるように配置。ポンプで吸い上げた海水がすき間に勢いよく流れ込んだときに、流水中で速度の速い部分と遅い部分ができるようにして微生物の体がちぎれるようにした。また、水が細いすき間を通る際に生じた泡が砕けるときに発生する圧力でも微生物を破壊する。

 殺菌力のあるオゾン発生装置を併用して体の小さい細菌も殺し、陸上実験では微生物がほぼ100%死滅した。

と書かれている。今ひとつ具体的にイメージしにくい説明だが、ある程度大きな生物は機械的に破壊し、微生物はオゾン殺菌で殺すという二段構えのようだ。

バラスト水については、ウィキペディアに説明がある。日経の夕刊の記事によると、このバラスト水中の生物の量を一定以下にすることを定めた国際条約は2004年に採択されたものの、実用レベルの処理技術が未開発であることを理由として日本を含む多くの国が批准していないため、まだ発効していないようだ。現時点で批准しているのはスペインなどの6カ国。発効するためには、30カ国以上が批准し、かつ合計商船船腹量が世界の35%以上となる必要があるとのこと。

今回の技術については、日本財団 六分儀 海・船によると、スペシャル・パイプ・ハイブリッド処理装置と名付けられている。このページには、実際の装置の模式図や写真が掲載されており、構造や原理がよくわかる。スリットのすき間と死滅する微生物のサイズの関係が不明だが、スリットサイズのほうがかなり大きそうに見える。このようなスリットを高速で通過させるだけで、海水中に含まれている生物の大半が死滅するってのも、考えてみるとちょっと面白い技術である。

より一般的なバラスト水の処理方法については、こちらに詳しい。物理的除去、機械的殺滅、熱処理、化学的処理などがあるものの、大きな生物と微生物を共に処理する必要性から、これらを複合させた技術が本命となっているとのことで、今回のスペシャル・パイプ・ハイブリッド処理技術も、その方向に沿ったものと言える。日経の記事では、今回の技術が基準をクリアする世界初の技術となる「可能性がある」と書かれているが、他の技術も実用化に向けてテスト中のようであり、今回の技術が特に飛びぬけているわけではなさそうに見える。

説明を読む範囲では、船舶への取水時に完全に殺してしまうというもののようだが、その後の航海期間中に、再びいろんな生物が繁殖してしまうことはないのだろうか? それなりに栄養分を豊富に含んでいそうな水だし、一旦完全に殺菌したとしても、航海中に大気などから微生物が混入するのを完全に防ぐのも非現実的だろう。とすると、廃水時にも再び同じ装置を通して微生物の破壊と殺菌を行うのだろうか。。

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