「フタル酸ビス」って何? 環境ホルモン??
YOMIURI ONLINEの記事(2/1)から。「トイザらス」おもちゃから環境ホルモン検出、回収へ
おもちゃ販売大手「日本トイザらス」(川崎市)が販売した塩化ビニール製のおもちゃから、食品衛生法で使用が禁じられている「フタル酸ビス」が検出されたことが、1日わかった。「フタル酸ビス」って化合物の名前は寡聞にして聞いたことがない。。 おまけに、「環境ホルモンの一種」と書いてあるけど、いわゆる「環境ホルモン」という用語は少なくとも環境省などは既に撤回していたはずだけど、新聞社はまだ使っていたのか? 他紙を調べてみると asahi.comのトイザらスで販売の玩具から禁止成分 川崎市が回収指示では、フタル酸ビスは環境ホルモンの一種とされ、なめたりすると、将来的に生殖機能などに影響が出る可能性もあり、同社は川崎市の指示で回収を決めた。
問題のおもちゃは「JUST LIKE HOME フルーツセット」。中国から2万520個を輸入し、1月30日までに全国で1万6768個を販売した。
フタル酸ビスはプラスチックなどを柔らかくするために使われるが、おもちゃへの使用は2003年8月から禁止された。大阪府堺市が、抜き取り検査でフタル酸ビスを検出、川崎市に連絡していた。
フタル酸ビスは、合成樹脂をつくる際に広く使われている。ホルモンに悪影響を及ぼす可能性が指摘されており、国内では玩具などへの使用が禁止されている。MSN毎日インタラクティブの日本トイザらス:おもちゃから禁止柔軟剤では
中国から輸入したポリ塩化ビニール製のおもちゃから食品衛生法で使用が禁止されている柔軟剤「フタル酸ビス」が検出されたため、販売した計2万520個を回収すると発表した。通常の使用では人体に影響はないという。と、共に環境ホルモンという言葉は使っていないが、物質名は「フタル酸ビス」になっている。一方、Sankeiwebのおもちゃから「フタル酸」検出 トイザらスが回収へでは、
玩具販売大手「日本トイザらス」(川崎市)が販売しているおもちゃから、内臓への毒性や内分泌撹乱(かくらん)化学物質(環境ホルモン)の疑いが指摘されている化学物質フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)が検出されていたことが1日、分かった。とあり、産経だけが化合物の名称を「フタル酸ジエチルヘキシル」と記載している。(もっとも、タイトルに「フタル酸検出」とあるのはいただけない。フタル酸と2-エチルヘキサノールとのエステルであるフタル酸ジエチルヘキシルはフタル酸とは全く別の物質である。)
物質名については産経が一番まとものようだが、一方で環境ホルモンについては毎日だけがホルモンという言葉を全く使っていない点でもっともまともと言えそうだ。
さて、フタル酸ジエチルヘキシルの正式名称はフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(化学物質ファクトシート)である。ここで、「ビス」は後に続くカッコ内の基が2個あるよということを示す倍数接頭辞であり、ビスの後の単語を省略してしまうと意味不明となってしまう。
ということで、恐らく公式発表では「フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)」と正しく表記されていたものを、記者がカッコ内の「2-エチルヘキシル」はフタル酸ビスの別名か何かだろうと勘違いして、文字数を節約する目的で省略してしまったのではなかろうか? 念のために、「フタル酸ビス」がフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)を省略する用語として定着しているのかどうか調べてみたが、「フタル酸ビス」だけで使われている例は他には見当たらなかった。。 それにしても、朝日、読売、毎日と3社そろって同じ過ちを犯すなんてこともあるのかねぇ。。 ちょっと調べてみればすぐわかることなのに。
実は、この新聞記事は問題が他にも問題が多い。このDEHPが環境ホルモンと呼ぶのが適当かどうかという部分もさることながら、そもそも問題となるおもちゃでどの程度の濃度のDEHPが検出されたのか、それを子どもが口にした際にどの程度の危険が存在すると考えられるのか、といった定量的な情報が一切出てこないことだ。これでは、いたずらに不安を煽るだけになるだけだ。試しに、「フタル酸ビス」でブログ検索してみると、案の定ほとんどが「生殖機能に異常が出るかも」という点に反応して、怖い、危険だ、という論調である。
DEHPについては、今までいろいろと調査したけど、生殖機能への異常も含めて、ヒトに対する内分泌かく乱作用は見当たりませんでしたという結論が出ているはず。(参考:環境省の化学物質の内分泌かく乱作用についてや、市民のための環境学ガイドの環境ホルモン終焉) なお、市民のための環境学ガイドの記述によると、おもちゃへのフタル酸エステルの使用禁止は、
これらの化合物が環境ホルモン性があるという理由で禁止になったのではなくて、通常毒性がたまたまセルトリ細胞という精子のお母さんみたいな細胞に対して出るために禁止になったということのようだ。
先にあげた化学物質ファクトシートや、製品評価技術基盤機構の初期リスク評価書に非常に詳しくまとまっているが、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)には内分泌かく乱作用がないとしても、全く無害ということではなく、ヒトや環境に対して何らかの有害性を持っているのは確かである。今回のトイザらスのおもちゃについては、明確な法律違反であり、きちんと対処する必要があることは言うまでもない。
今回の記事は科学面ではなく社会面の記事のようなので、担当記者の不得意分野だったのかもしれないけど、いろんな面であまりに不勉強と言えるし、こうして不正確な情報が世の中に蔓延していってしまうのだと思うと、いろいろと考えさせられる。。
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コメント
フタル酸ビス という化学名を聞いた時点で化学屋は「中途半端」「尻切れトンボ」の化学名だとわかるんですが、マスゴミ関係者は頭が悪いですからねぇ。
投稿: 化学屋 | 2007/02/07 20:59
頭が悪いかどうかはともかくも、自分の不得意分野の記事を書くときには、少しは調べてみた方がいいのではないか、と思うことは多いですね。
ついでに言うと、新聞記事のチェック体制ってのは一体どうなっているんだろう、という疑問もあります。さらに、こうして明白な間違いを記載しても、全く訂正記事も出ないようだし。。
投稿: tf2 | 2007/02/07 21:15
今日の朝刊には、日本トイザらスの謝罪広告が掲載されていたけど、この文章中にも「フタル酸ビス」が含まれていたと書かれているのを発見。確かに、http://www.toysrus.co.jp/f/kokuchi/index23.html">「ジャストライクホーム フルーツセット」の回収についてでも、フタル酸ビスって書いてありました。
結局、朝日・毎日・読売と3誌共に間違った表記をしているのは、日本トイザらスがソースだったようです。でも、だからといって、マスコミは間違った表現をそのまま垂れ流してはいけないんじゃないでしょうかね?
よく、TVのインタビューなどで、日本人の発言でも字幕がつくのを見ますけど、不適切な表現(ら抜き言葉とかノーミスしたい、など)は適宜正しい日本語に直しているようですし。
投稿: tf2 | 2007/02/08 18:53
タリウム少女のときには、「劇物ビスを購入していた」と書いた社もありました。
「ビス(トリブチルスズ)なのですが。
こちらもいくつかのブログで話題になってました。
#最初に「鳥渕留守図」と変換されてしまった・・・
投稿: mint | 2007/02/14 08:12
mintさん、ありがとうございます。
この件は気付いていなかったので、調べてみたら確かにありました。例えば、http://d.hatena.ne.jp/glmugnshu/20051104/e">この辺ですね。この記事だけだと、確かに劇物「ビス」とはなんのことだかさっぱりわかりませんが、カギカッコで囲まれているのがまた何となく意味深ですが。。 でも、やっぱりhttp://airpocket.jp/camio/20051107.html">ここの指摘のように、今回同様にカッコ内は別名だと思ったのでしょうね。。
投稿: tf2 | 2007/02/14 18:47
昨日(3.17)の朝日に続報が出てましたが、見出しにも「フタル酸ビス」でした。定着してしまいそうでこわいですね。
http://ironpen.exblog.jp/5247407
投稿: 五月兎 | 2007/03/18 09:05
五月兎さん、トラックバックおよびコメントありがとうございます。
該当記事はネットにも載っていました。 http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000160703170001">玩具の安全どう守る
このまま、なし崩し的に化学的に間違った表記が定着してしまうのは、さすがに容認できないと思いましたので、asahi.comのお問い合わせ・ヘルプのコーナーに以下の文章を投稿してみました。何かレスポンスがあれば、またお知らせします。
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3/17の第2神奈川面に「玩具の安全どう守る フタル酸ビス 中国工場で混入」という記事が掲載されています。しかし、この「フタル酸ビス」という表記は、化学的には全く意味不明な表記です。問題の化合物の正式名称は「フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)」というものであり、2-エチルヘキシル基を二つ有するフタル酸エステルであるということを意味している名称です。つまり、「ビス」はそれに続くカッコ内の官能基が2個ありますよ、ということを意味する倍数接頭辞と呼ばれるものです。
私が調べた範囲では、何らかの権威ある機関などが、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の略称としてフタル酸ビスという表記を認めたという事実は確認できませんでした。もしも短縮表記したいのであれば、世界的に認められた略号である「DEHP」を使用すればよいことです。しかも、この程度のことは、少しインターネットで検索するだけで、誰でも入手可能です。
この辺の事情については、http://ironpen.exblog.jp/5247407/ や http://tftf-sawaki.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/post_b6b6.html に詳しいので、一度ご確認いただきたいと思います。このような化学的には明らかに間違った表記は、化学に関わるものとして、決して容認するわけにはいかないと考えてますので、よろしくご検討ください。
さらに、この間違った表記を、貴社だけでなく読売新聞や毎日新聞も全く同様に使用しているということも問題です。貴社や他の大手新聞社のように影響力の大きな報道機関が、化学的に明らかに間違った表記をそろって使用することで、この用語があたかも正しいかのように認識され、結果として世の中に広がっていくことを強く懸念するものです。是非、事実関係をご確認の上、適切な対処をお願い申し上げます。
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投稿: tf2 | 2007/03/18 14:46
早速、朝日新聞横浜総局から丁寧なお返事メールが来ました。
その内容を要約すると、
「フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)」というのが、正式名称であることは承知しており、最初にでてくる箇所は、そのように表記した。見出しや2箇所目以降で「フタル酸ビス」という略号を使用したのは、確かに適切ではなかった。今後は「DEHP」という略称での記載を考えたい。
というようなものでした。残念ながら、この内容が横浜総局だけでなく、朝日新聞全体で共有されるのかどうかは不明です。また、紙面等に訂正記事を掲載するようなことは書かれていませんでしたから、あくまでも今後は適切に表記するということのようです。
投稿: tf2 | 2007/03/19 20:53
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%92%E3%83%89%E3%83%AD%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%A1%E3%83%81%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%8E%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%B3">http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%92%E3%83%89%E3%83%AD%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%A1%E3%83%81%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%8E%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%B3
>トリスヒドロキシメチルアミノメタン(tris(hydroxymethyl)aminomethane、THAM)は緩衝剤の一つで、通常はトリス(Tris)と省略して呼ばれている。
こんな例もあります。
これは業界用語かと思いますが、微妙ですね。
投稿: mint | 2007/03/25 15:00
mintさん、ありがとうございます。
確かに「トリス」もしくは「トリス緩衝液」という用語が広く使われているようですね。内輪だけで使用するのであれば良いのですが、一般的に使用する際には、この略語はいただけないですね。
もっとも、この緩衝液は英語でも tris buffer と呼ばれているようで、トリスというのはその単純な日本語訳の可能性が高そうです。かなり古い段階で定着してしまったのでしょうか?
緩衝液としては、他にも「ビス-トリス」なんて呼ばれているものもあるようです。。
投稿: tf2 | 2007/03/25 22:11
トイザラスの件に関しては
トイザラスの発表資料の時点で既にフタル酸ビスとなっています。
私はこのような慣用名は知りませんが、
もし無いとすれば内部の担当者は無知にも程があるかと。
ビス(トリブチルすず)オキシドの時もそう(劇物「ビス」)でしたが
()を別称だと思ってしまう人が多いようですね。
TrisBufferに関しては、論文などでも使用されますし
(会社によるかもしれませんが)試薬名のところにもその別名が記されていた気がします。
でもトリスとだけしてしまうと最早謎になってしまいますね。
投稿: Chemist | 2007/03/27 11:50
Chemistさま、ありがとうございます。
またまた本日の朝日、読売、毎日の各紙に、トイザらスがフタル酸ビスを含んでいる玩具を回収という記事が載っていますね。
http://www.asahi.com/national/update/0327/TKY200703270156.html">asahi.com
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070326i518.htm">YOMIURI ONLINE
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070327ddm012040137000c.html">MSN毎日インタラクティブ
なお、読売と毎日の記事では「フタル酸ビス」を環境ホルモンの一種と記載しています。
前回朝日新聞にはコメントを送って、今後はDEHPという略号を使用しますとお返事をいただいたのに、残念ながら社内で情報共有なされていなかったようです。
こうなったら乗りかかった船ということで、朝日、読売、毎日それぞれに、前回とほぼ同様のコメントを送ることにしました。さて、各社からどんな返事をいただけるのか楽しみです。
投稿: tf2 | 2007/03/27 12:56
今日見た週刊朝日でも、中国製食器にフタル酸ビスという表現がありました。
投稿: mint | 2007/07/13 01:38
3月に朝日、読売、毎日の各新聞のサイトにコメントを送ったのですが、完全に無視されてしまったようです。まあ、今回の週刊朝日の編集部署は朝日新聞の編集部とは全く別だろうとは思いますが、いずれにしても結局のところ、何も変えることができなかったということですね。無力感を感じます。。。
投稿: tf2 | 2007/07/16 21:35
いつも楽しく読ませていただいています。
今、ポップコーンに含まれるバター風味料「ジアセチル」の有害性がニュースなどで話題になっていますね。なんだか気持ち悪い尻切れトンボの名前だなーと思ったら「ジアセチル(2,3-ブタンジオン)」の事だそうです。
全く進歩していませんね...
投稿: Tod | 2007/09/05 20:50
あ、うそでした。ジアセチルで良いんですね。濡れ衣でした。
失礼しました。オレのバカ!
投稿: Tod | 2007/09/05 20:56
Todさん、情報提供ありがとうございます。これに懲りずに、今後ともよろしくお願いします。
さて、ポップコーンのバター風味に含まれるバター風味料のニュース、全然知りませんでした。調べてみたら、こんなニュースですね。http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070905-OYT8T00193.htm">レンジ用ポップコーンを毎日食べて肺病
電子レンジ用ポップコーンを毎日数袋、数年間にわたって食べ続けたとは、すごい話ですねえ。完全に想定を超えた食べ方だと思います。ちなみに、Todさんご指摘の通り、正式名称は 2,3-ブタンジオンですが、ジアセチルも慣用名として使われているようですね。http://www.k-erc.pref.kanagawa.jp/kisnet/code.asp?code=3922">神奈川県環境科学センターやhttp://www.nihs.go.jp/ICSC/icssj-c/icss1168c.html">国際化学物質安全性カードによると、毒性は多少あるとは書かれているものの、特に肺への影響については触れられていませんね。まだ調査中ということでしょうか。一方、ポップコーン工場での労働者の肺疾患については、数年前から問題になり調査を行っているということのようですね。http://www.jicosh.gr.jp/japanese/country/usa/topics/popcorn.html">参考(この時点では、ジアセチルが原因とは断定はしていないようですが)
投稿: tf2 | 2007/09/05 21:28
「ビス(トリブチルスズ)」については、どうもこれも不正確な名称のようです。
「ビス(トリブチルスズ)=オキシド」や「ビス(トリブチルスズ)=マレアート」のように、後ろに何かつく化合物はありますが、何もつかない化合物はどうも存在しないようなのです。
実際、警察発表しかソースがないのでは、一体なんという物質を手に入れたのかが分からないですね。
投稿: mint | 2008/01/16 00:41
mintさん
東京化成のMSDSを検索したら、
http://j-shiyaku.ehost.jp/msds/071/b1832.pdf">ビス(トリブチルスズ) C24H54Sn2がみつかりました。毒性はありそうですが、法的に毒劇物に該当するかどうか不明です。
ちなみに、http://www.k-erc.pref.kanagawa.jp/kisnet/code.asp?code=1067">ビス(トリブチルスズ)オキシドは劇物のようです。
投稿: tf2 | 2008/01/16 01:39
http://d.hatena.ne.jp/glmugnshu/20051114/a#c">http://d.hatena.ne.jp/glmugnshu/20051114/a#cにも書いていたのですが、ちょっと混乱してしまったようです。
東京化学同人の化学辞典ではトリブチルスタンナン(C12H28Sn)というのがありました。
これの二量体とすると水素が2個余計ですが、辞典では「水素化トリブチルスズ」との別名があるのでこのためでしょうね。
確かにその物質は毒劇物ではないようですし、有力なのは「ビス(トリブチルスズ)=オキシド」を記者か警察が「ビス(トリブチルスズ)」と発表してしまったという可能性です。
非常にマイナーな物質のようで、化学物質データベースになかったので見落としてしまいました。
http://d.hatena.ne.jp/doublet/20051108">http://d.hatena.ne.jp/doublet/20051108でも解説がされています。
投稿: mint | 2008/01/18 20:17
なるほど、詳しい情報ありがとうございます。
それにしても、フタル酸ビスにしてもビスにしても、この情報が報道されるまでの各段階の各関係者があまりにも物質名称に対して無頓着という気がしますね。
もしかしたらわざと物質を特定できないようにするために名称の一部だけを発表したなんてこともあるのでしょうかね? それならそれで、フタル酸エステルとかスズ化合物とかの適当な名称があるわけだし、勝手に名称の一部(大部分)を省略するってのはいくらなんでも雑すぎますよね。
また、マスコミの方々にはもっと言葉とか用語というものを慎重に扱って欲しいと思います。自分がよく知らない用語を使うときには、間違いないのかチェックしてから使うのが望ましい姿じゃないかという気がします。
投稿: tf2 | 2008/01/18 20:38
おそらく、化合物命名法をまったく知らない人が、適当にプレスリリースを端折って書いているのが原因だろうと思います。
特に、有機金属化合物の命名法は何種類もありますし、専門家でも見解が分かれます。
水素化トリブチルスズ(別名トリブチルスタンナン)は一つのスズ原子に3つのブチル基と一つの水素が付いたもの。
ビス(トリブチルスズ)オキシドはスズ-酸素-スズの骨格のスズ原子上にそれぞれ3つずつ、計6個のブチル基が付いたものです。これはヘキサブチルジスタンノキサンというほうがわかりやすいです。
酸素のないものでは、ヘキサブチルジスタンナンというものがあり、これはスズ-スズの骨格を持ち、スズ原子上にそれぞれ3つずつ、計6個のブチル基が付いたものです。
この3つはまったく別の化合物です。
投稿: doublet | 2008/01/30 01:03
doubletさん、どうもありがとうございます。
この辺の化合物の名称となると、さすがに普段なじみのない人にとってはついていけないでしょうね。「スタンナン」と言われても、ピンとは来ないです。
最近は、http://nikkajiweb.jst.go.jp/nikkaji_web/pages/top.html" >日本化学物質辞書データベース(日化辞Web)を良く利用していますが、ここはかなり役立ちます。
投稿: tf2 | 2008/01/30 22:54